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  • Wizards of the Coast
  • 発売日:2014/07/03
  • 価格:スターターセット:2200円(税込)
    プレイヤーズ・ハンドブック:5500円(税込)
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ワシントン州務長官(本物)がゲームマーケットに参戦! ワシントン州ゲーム出版社連合「Tabletop Game Alliance」が日本に来た理由とは
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印刷2024/05/07 10:53

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ワシントン州務長官(本物)がゲームマーケットに参戦! ワシントン州ゲーム出版社連合「Tabletop Game Alliance」が日本に来た理由とは

 毎年2回開催される「ゲームマーケット」は,日本最大級のアナログゲームイベントだ。近年は国内のみならず海外出版社の出展も増えており,2024年4月27日と28日に行われた「ゲームマーケット2024春」では,海外出展者向けのカテゴリ“W”が用意され,かつてないほど多くの海外ブースが並んでいた。

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 アメリカのワシントン州で活動するパブリッシャの共同ブース「Tabletop Game Alliance」(米国ワシントン州アナログゲーム出版業者連合)もまた,そんな海外ブースの一つだ。彼らはなんと,ワシントン州からの後援を受けて,日本にやってきたのだという。
 詳細が気になったので事情を聞いてみようと声をかけてみたところ,応対してくれたのがまた,驚きの人物だった。今回の出展を率いていたのは,ワシントン州務長官を務めるSteve Hobbs氏その人だったのだ。
 本稿では,そんなTabletop Game Allianceブースの様子を紹介すると共に,Steve氏へのインタビューをお届けする。

「Tabletop Game Alliance」公式サイト



ワシントンのアナログゲームを世界へ。日本企業との連携にも意欲的


 まずTabletop Game Alliance(以下,TGA)について,改めて紹介しておこう。冒頭でも紹介したとおり,TGAはワシントン州のアナログゲームパブリッシャを中心とした企業組合だ。最大の特徴はワシントン州からの支援を受けている点で,官民連携によるパートナーシップの構築や,ワシントン州におけるアナログゲーム業界の成長を目的としているとのこと。

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 会場で確認できた参加企業は以下のとおり。調和の取れた生態系を組み上げるボードゲーム「カスカディア」のFlatout Gamesなど,日本のボードゲームファンに馴染み深い企業も見て取れる。またボードゲームだけでなく,テーブルトークRPG関連のパブリッシャもあって,かなり幅広い企業が参加しているようだ。

社名 主な活動や作品 リンク
Cherry Picked Games 「Hair of the Dog」など 公式
Flatout Games 「カスカディア」など 公式
Green Ronin Publishing 「Mutants & Masterminds」など 公式
Heart of the Deernicorn 「FALL OF MAGIC」など 公式
Lone Shark Games 「Lords of Vegas」など 公式
Thing 12 Games 「Oaxaca: Crafts of a Culture」など 公式
Violet Daisy Games 「Epilogue」など 公式

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 TGAの会長を務めるのは,Heart of the Deernicornの代表であるRoss Cowman氏だ。Ross氏はクリエイターとしてテーブルトークRPGを中心に多数の作品を発表しており,代表作「FALL OF MAGIC」はハロウ・ヒルから日本語版が発売されている。

Ross Cowman氏が手掛けたFALL OF MAGICは,布製の巻物を使って物語を紡いでいくRPGだ。プレイヤーたちは,旅する魔法使いの“お供”となるキャラクターを演じ,旅の中で設定を構築していくことになる
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FALL OF MAGICの基本的な構造は,即興で物語を作り上げていくカードゲーム「ワンス・アポン・ア・タイム」に近い。キャラクターに付与される称号,旅の分岐など,物語を発想しやすい仕組みが多数用意されている
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 Ross氏によると,ワシントン州はアメリカでもとくにアナログゲーム産業が盛んな地域であり,それらを後援するために生まれたのがTGAだという。
 今回の出展について,Ross氏は「これによって即時的な利益を得ようとは思っていません。まずは知ってもらうことが大切だと考えています」と語った。現時点での活動は,日本のパブリッシャやファンとのコミュニケーション確立を目的としているようだ。

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 今後はTGAのタイトルを日本国内で販売する交渉を行いつつ,日本のゲームを海外に向けて出版するにあたっての支援も行っていくとのこと。さらに,アメリカ最大級のアナログゲームイベント「Gen Con」のオーナーであるPeter D. Adkison氏もTGAに参加しており,日本企業がGen Conに参加するにあたっての相談を受け付けることも考えているという。

 最後にRoss氏は「TGAのゲームを日本向けに出版したい企業や,海外向けに出版する意欲がある人は,ぜひ連絡をください」とコメントしていた。TGAの公式サイトに連絡先が記載されているので,興味がある人はチェックしてみよう。

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ワシントン州務長官にして熟練のDM,Steve Hobbs氏インタビュー


 なかなか興味深い話が聞けたので,満足してブースを後にしようと思ったところ「実はもっと偉い人が来てるから話していかないか?」と声をかけられた。「組合の代表より偉い人って誰だろう」と思いながらブース内に入ると,そこに居たのがワシントン州務長官のSteve Hobbs氏だ。ワシントン州のナンバー3だという氏が,なぜゲームマーケット会場にやってきたのか。話を聞いてみた。

ワシントン州務長官のSteve“龍馬”Hobbs氏
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4Gamer:
 まずは,簡単な自己紹介をお願いします。

Steve Hobbs氏(以下,Steve氏):
 2021年からワシントンの州務長官を務めています,Steve Hobbsです。高知県出身の母を持つ日系二世で,ミドルネームを“龍馬”といいます。

4Gamer:
 Rossさんの紹介では「州務長官はかなりコアなオタク」とのことですが……そうなんですか?

Steve氏:
 ええ。オフィスにはたくさんのボードゲームがありますし,ドラゴンのオブジェもあります。それにソ―のハンマーも,キャプテン・アメリカのシールドも。1970〜80年代のコンテンツで育ちましたから,日本の「宇宙戦艦ヤマト」も大好きです!
 それに「ダンジョンズ&ドラゴンズ」も初期から遊んでいて,ダンジョンマスターとして数々のアドベンチャーを回してきました。お気に入りのクラスはLore Bard(知の楽派バード)とEvocation Wizard(力術ウィザード)です。

4Gamer:
 それはまた……想像以上で驚きました。アナログゲーム業界への支援を推進しているのも納得ですね。政治家として支援活動を始めたのは,いつ頃からなんですか?

Steve氏:
 州務長官になる以前は,上院議員として16年間にわたって活動してきましたが,アナログゲーム産業を支援する呼びかけは,その当時から行ってきました。ワシントン州で盛んな産業は航空業や農業で,そういった業界への支援は積極的に行われていましたが,アナログゲームを後援する動きはほとんどなかったんです。
 例えばゲームを日本に輸出しようとしても,すべて自力でやらなければいけません。私はアナログゲームが大好きなオタクなので,その状況をなんとかしたかった。なので私は政策として,ワシントン州のハイレベルなクリエイターを世に広めるミッションに挑むことにしたのです。

4Gamer:
 アナログゲーム業界を後援するような試みは,アメリカでも珍しいものなのでしょうか。

Steve氏:
 アメリカは州が強い力を持っていますので,それぞれの州政府が特定の産業を支援することは珍しいことではありません。ただ,アナログゲーム業界を後援する試みは,アメリカでも私が初だと思います(笑)。

4Gamer:
 公式サイトによるTGA設立は2022年頃とのこと。これはどういった経緯だったのでしょうか。

Steve氏:
 私の部署は,ワシントンにおける公的な団体を統括する仕事をしています。多くの業界は,業界団体を設立して支援を受けやすい仕組みを作っているのですが,アナログゲームのパブリッシャにはそういった動きがありませんでした。なので,私から声をかけて一つに纏めたのです。

4Gamer:
 Steveさんに応援したい気持ちがあっても,政治的な動きをするとなると,それだけでは難しいのではないですか?

Steve氏:
 まず,ワシントンには「マジック:ザ・ギャザリング」「ダンジョンズ&ドラゴンズ」を擁するWizards of the Coastや,Steamを提供するValve,「ポケモン」シリーズを展開するPokémon USAなど,非常に多くの有名企業が集まっています。
 そして,アメリカではアナログゲームとデジタルゲームの業界が地続きですので,人材の交流も盛んです。どちらの分野にも,全米トップクラスの才能を持つクリエイターが集結しているわけです。これを支援するのは,ワシントンにとって大きな価値があることなんですよ。

4Gamer:
 なるほど。TGAは比較的小規模なパブリッシャで構成されているように見えます。意図してそういった会社を集めたのでしょうか。

Steve氏:
 もちろんです。Wizards of the Coastのような大企業は自力で販路を開拓できますが,それを小さなパブリッシャが行うのは容易なことではありません。そのため,最初に支援すべきは小規模な出版社だと考えました。彼らを“連合”として送り出し,普段は手の届かない大きな市場に向けたアウトリーチを狙っています。
 感覚としては,日本の中小企業の海外展開を支援するJETRO(日本貿易振興機構)と同じようなものですね。その中に,アナログゲームを加えたものを想像してもらえれば,だいたい合っていると思います。

4Gamer:
 今後はどういった活動をしていくのでしょうか。

Steve氏:
 このミッションは一方通行ではなく,日本のパブリッシャがアメリカで市場開拓をする手伝いもしたいと考えています。TGAに直接連絡しても構いませんし,我々はJETROとも連携しているので,そちらを通じてノウハウを提供することもあるでしょう。こうした活動を通じて交流を深め,互いのコンテンツを取引できる環境を構築していくのが,現在のミッションだと考えています。

4Gamer:
 分かりました。本日はお時間をいただき,ありがとうございました。

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