［インタビュー］「十三機兵防衛圏オーケストラコンサート」で演奏を担当する東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団に聞く，ゲーム音楽との関わり方

　2023年1月7日に「十三機兵防衛圏オーケストラコンサート」で演奏を担当する東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団は，「ドラゴンクエスト」のコンサートをコンスタントに開催するなど，柔軟な取り組みで知られている。そんな楽団の成り立ちとゲーム音楽への取り組みについて，事業部長である星野繁太氏に聞いた。

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団公式サイト

ゲーム音楽をきっかけに

オーケストラの楽しさを見つけてほしい

4Gamer：
　本日はよろしくお願いします。
　まずは東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団（以下，東京シティ・フィル）の沿革を教えてください。

星野繁太氏（以下，星野氏）：
　我々は1975年に設立され，間もなく50周年を迎えるオーケストラです。もともとは，海外からの依頼演奏のために音楽大学を卒業したばかりのメンバーの集まりで，海外での演奏後には解散する予定でした。しかし，せっかく始めた活動を止めるのはもったいないということで，プロのオーケストラとして再スタートを切ったのです。
　そうした成り立ちもあって，我々は自主運営のオーケストラとして活動をしています。

4Gamer：
　もうじき50周年というのは長い歴史ですね。演奏者の皆さんはどれ位の年齢なのでしょう？

星野氏：
　現在の平均年齢は42歳です。最近はちょうど新旧のメンバーが入れ替わる時期ということもあり，都内にあるほかのオーケストラさんよりも若いんですよ。一番若いメンバーが，大学卒業直後に入った22歳ですね。

4Gamer：
　日ごろのクラシック主体のコンサートの場合，観客の年齢層はいかがでしょうか？

星野氏：
　定期公演の平均年齢はだいたい60歳くらいですね。

4Gamer：
　やはりそうなんですね。ほかのオーケストラの方からも，若年層の観客の開拓が大きな課題であると聞いたことがあります。
　東京シティ・フィルさんでは10年ほど前から「ドラゴンクエスト」のコンサートを開催されていますが，どういったきっかけで始められたのでしょうか。

星野氏：
　直接のきっかけは2006年から，「PRESS START -Symphony of Games-」というゲーム音楽のオーケストラコンサートに出演させていただいたことです。クラシック畑の我々からすると，ゲーム音楽の集客力と観客の若さに驚かされました。
　その頃からクラシック行会の事業規模が縮小傾向にあり，一方でたくさんのお客様が集まるジャンルがあることに驚きがありました。おこで，きちんとニーズがあるところに音楽を届けることの重要性も考慮して，「ドラゴンクエスト」のコンサートに挑戦してみようということになりました。それまでは東京都交響楽団さんぐらいしか「ドラゴンクエスト」のコンサートを展開していなかったのですが，すぎやまこういち先生にお願いしたところ，我々が演奏することをご快諾いただき，2013年に我々にとって初めての「ドラゴンクエスト」コンサートが実現しました。

4Gamer：
　楽団内でゲーム音楽の公演を行うことについて，ネガティブな意見などはありませんでしたか？

星野氏：
　我々は自主運営のオーケストラで，そもそもクライアントさんからオファーいただいた曲を演奏する機会が多いので，楽曲のジャンルで区別をするようなことはないという下地がありましたね。
　それに楽団員には「ドラゴンクエスト」に親しんでいるメンバーも多かったですし，中には80年代から東京弦楽合奏団さん（※NHK交響楽団の選抜メンバーで構成）が展開した「組曲『ドラゴンクエスト』」シリーズのCDを聴いて育ったような者もいましたから，ネガティブな意見や拒否反応はありませんでした。


4Gamer：
　ゲーム音楽に触れながら育った方々が演奏家になっている時代なんですね。「ドラゴンクエスト」のコンサートは，普段とは異なる観客が多いのでしょうか。

星野氏：
　そうですね。年齢層的にも40代の方がメインです。2世代で来られたり，オーケストラのコンサート自体が初めてという方も少なくないようですね。私も1976年生まれで「ドラゴンクエスト」をプレイしてきた世代なのですが，同年代の方が多くいらっしゃっている印象です。

4Gamer：
　ゲーム音楽を演奏すると，観客の平均年齢が20歳若返るというのもすごいですね。

星野氏：
　そうですね。それにゲーム音楽のコンサートは，観客の皆さんが非常に礼儀正しいのも印象的です。演奏を静かに聴いてくださいますし，演奏が終わると皆さんのお気持ちが伝わってくるかのような温かい拍手をいただけるんです。
　こういう形でオーケストラに触れていただいたことをきっかけに，オーケストラの良さを感じてほしいですね。そして気軽にまた足を運んでいただければと。

4Gamer：
　ところで，東京シティ・フィルさんが「ドラゴンクエスト」シリーズのコンサートを行うにあたって，シリーズのどの作品をいつ演奏するかの基準はあるのでしょうか？

星野氏：
　我々が主催したケースでは「ドラゴンクエストIII」から順に進めていきました。一方，コンサートホールを運営される財団さんからお声がけいただいたときなどは，次につなげていくために人気の作品を選ぶようなこともしています。
　また，2019年度には，「東京シティ・フィルのドラゴンクエスト・全シリーズ演奏会」ということで，「ドラゴンクエスト」から「ドラゴンクエストXI」までのチクルス（特定の作曲家の作品を，何度かのコンサートで続けて演奏する）を仕掛けました。
　
4Gamer：
　その企画の意図はどこにあったのでしょう？

星野氏：
　東京シティ・フィルをより多くの方に知っていただき，ゲーム音楽以外の定期演奏会にも来ていただけるようなファンを開拓していきたいという思いからです。
　幸い，シリーズの全公演に来ていただけた方も大勢いらっしゃいましたし，ほかの定期演奏会にも来てくださる方が増えました。

4Gamer：
　取り組みの成果が出たわけですね。ちなみにこの企画について，すぎやま先生の反応はいかがでしたか？

星野氏：
　「作品のリリース順にコンサートをしたいんです」と相談したところ，「ほかの楽団はそんなことをやらないのに，よく思いついたね」と快く許可をいただけました。新型コロナウイルスの影響もあって中断を余儀なくされはしましたが，2022年4月にようやく「XI」の公演をすることができました。

4Gamer：
　さて，2020年からは大晦日に「ドラゴンクエスト」シリーズのジルベスターコンサート（大晦日の夜に始め，年越しをするコンサート）を開催されていますが，ここでのタイトル選びの基準はどこにあるのでしょう？

星野氏：
　実は我々にとって初めてのジルベスターコンサートが，2020年の大晦日に行った「交響組曲『ドラゴンクエストX』目覚めし五つの種族」だったんです。
　初の試みということもあって，現役のオンラインゲームであれば，アクティブな方が反応してくださるだろうという狙いで選びました。発表をしてすぐ，たいへん大きな反響をいただいたのですが，コロナ禍で無観客の有料配信に切り替えることになってしまって。

4Gamer：
　確かにそういう時期でしたね……。

星野氏：
　そして昨年は，有観客のジルベスターコンサートにあらためてトライするということで，タイトルとしての知名度が高く，根強いファンの方も多く，さらに原点回帰の意味を込めて我々が初めて「ドラゴンクエスト」のコンサートを行った「III」を選びました。
　今年が「V」なのも，同様にタイトルとしての知名度の高さやファンの多さを念頭に置いています。安定して集客できるようになればば，今後はもう少し冒険したタイトルのジルベスターコンサートも考えたいですね。

4Gamer：
　今年も前売り券は完売とのことで，来年以降の期待が高まります。

星野氏：
　おかげさまで次につなげられそうです。有料のライブ配信もありますので，会場に来られない方にも楽しんでいただきたいです。


4Gamer：
　さて，2023年1月7日には弊社主催の「十三機兵防衛圏オーケストラコンサート」で演奏をしていただきます。この機会に初めてオーケストラのコンサートを生で聴くという方もいらっしゃると思いますので，オーケストラの魅力を簡単に教えてください。

星野氏：
　今はオンラインやデジタルも発達していますが，我々がやっているのは一人一人が楽器を持って出した音を束ねるという，ある意味アナログな演奏です。たまにはこうしたアナログな音楽を，人生の潤いとしていただければと思います。
　そして「オーケストラって面白いな」と思っていただけたら，ぜひクラシックの曲も聴いてほしいですね。クラシックの中でもいろいろなジャンルがありますし，一つハマれるものを見つけられれば，そこから楽しくなりますので。
　まずはどういうものなのか体験するために，慣れ親しんだゲーム音楽のコンサートにご来場いただければと思います。

4Gamer：
　ありがとうございました。

「十三機兵防衛圏オーケストラコンサート」

日時：2023年1月7日（土）
　・14：00開場 / 15：00開演（昼公演）※予定
　・18：00開場 / 19：00開演（夜公演）※予定
会場：かつしかシンフォニーヒルズ・モーツァルトホール
　　　〒124-0012 東京都葛飾区立石六丁目33番1号
　　　※ 京成線青砥駅下車徒歩5分
　　　https://www.k-mil.gr.jp
指揮：志村健一
演奏：東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
ゲストボーカル：伊藤フウ
ゲストMC：崎元 仁 / 工藤吉三 / 金田充弘
MC：磯村知美

席種＆チケット料金：
　・限定アクリルプレート付き指定席：1万3000円（税込）※完売
　・限定キャンバスアート付き指定席：1万3000円（税込）※完売
　・指定席：8800円（税込）
前売り券一般発売：
　・ローソンチケット　https://l-tike.com/13sarconcert/
　・チケットぴあ　https://w.pia.jp/t/13sarconcert/
　・イープラス　https://eplus.jp/13sar0107/
　　※お申込み方法及び注意事項は受付画面よりご確認ください。

お問合せ： @-Information https://supportform.jp/a-information
主催・企画・制作：Aetas株式会社
譜面監修：有限会社ベイシスケイプ
協力： 株式会社アトラス

「十三機兵防衛圏オーケストラコンサート」一般発売
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