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[E3 2016]「Deus Ex: Mankind Divided」のディレクターにインタビュー。新たな物語について詳しく聞いた
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印刷2016/06/17 13:35

インタビュー

[E3 2016]「Deus Ex: Mankind Divided」のディレクターにインタビュー。新たな物語について詳しく聞いた

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 E3 2016のサウスホールにある巨大なスクウェア・エニックスブースでは,「FINAL FANTASY XV」を始めとするさまざまなタイトルが展示され,多数の試遊台が並び,たくさんの来場者が詰めかけるという,いつもどおりの光景が繰り広げられていた。
 展示されていたタイトルの一つが,Eidos Montréalスタジオが開発するアクションゲーム「Deus Ex: Mankind Divided」PC / PlayStation 4 / Xbox One)。欧米では2016年8月23日にリリース予定だ。

 北米時間の6月15日,そんな本作の合同インタビューの場がブース内に設けられ,そこでディレクターのPatrick Fortier氏がゲームの内容について語ってくれた。
 発売延期の影響もあってか,2015年に引き続き今年もE3に出展された本作について,時間をかけてどのへんを磨き上げてきたのか,前作に比べてどういう部分がパワーアップされたのかなどを詳しく聞いた。
 日本での発売日は未定だが,グラサンとヒゲのイケメン主人公,アダム・ジェンセンの新たな挑戦が気になる人は,ぜひチェックしてほしい。

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「デウスエクス マンカインド・ディバイデッド」公式サイト



オーグメンテーションされた人と

普通の人の対立が描かれたストーリー


――ゲームについて,あらためて説明してください。

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Patrick Fortier氏(以下,Fortier氏):
 「Deus Ex: Mankind Divided」は,「Deus Ex: Human Revolution」(邦題「デウスエクス」。2011年)の正当な続編として,前作の2年後の世界を舞台としています。前作の最後に「オーグ・インシデント」(Aug Incident)と呼ばれる事件が起きました。これは,オーグメンテーション(機械による人体改造)された人がハッキングされ,普通の人間を傷つけるといった事件ですが,その2年後ということで,オーグメンテーションされた人々と一般の人々の間に,非常に深い溝ができています。そうした社会を背景にした物語を描くことになります。

 前作は,言ってみれば「人類の新たな進化」というオーグメンテーションのポジティブな側面――「オーグ・インシデント」は発生しましたが――を描いていたのですが,今回はオーグメンテーションのより暗い側面に焦点を当てています。

 主人公は引き続きアダム・ジェンセンです。前作では自分の意志とは無関係に人体改造を施されていましたが,その2年後ということもあって,改造されてしまった自分自身を受け入れています。彼は,その改造された体を使って,世界の背後にうごめく陰謀を追う旅に出ることになります。

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――ストーリーの特徴は,どういうところにありますか?

Fortier氏:
 本作ではとくに,「選択によって変わっていく物語」という部分が前作に比べて拡張されています。

――では,主人公は誰と戦って,どういう謎を解き明かしていくんでしょうか。

Fortier氏:
 普通の人間とオーグメンテーションされた人の対立,というのは本作の大きなテーマであり,それをいろいろな角度で描いています。
 ただ,その対立は意図的に作り出されているのではないか? という疑問があるのです。かつてのオーグメンテーションは,あくまで個人の強化だったわけですが,現在は,ある企業が裏からオーグメンテーションを通じて社会を支配しているのではないか。そういったことをゲームの中で描いています。
 また,対立も単純なものではなく,「オーグメンテーションされた人間はテロリストだから一掃してしまえ」という人もいれば,そうでない人もいる。そうした,いろいろな勢力が織りなすドラマを楽しめます。

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――昨年のお話では,ジェンセンが「タスクフォース29」に付くか,あるいは活動家達の組織に付くかでマルチエンディングになっている,ということでしたが,そこに変化はありませんか?

Fortier氏:
 タスクフォース29ともう一つの組織については,ジェンセンがその両方を活用するという形になりますので,どちらかを選ぶと話が変わるというものではありません。
 エンディングについて今の段階で話すことは難しいのですが,一本道のストーリーというわけではありません。選択肢によってプレイヤーはさまざまな体験ができますが,エンディングは,世間あるいは世論がどう変わるか,どういうことを受け入れてくれたのか,という感じになります。
 そして,グッドエンドなのか,あるいはバッドエンドなのかはプレイヤーの判断に委ねられ,どのエンディングにたどり着いたとしても,それが今までの選択の積み重ねであることは必ず理解できるはずです。

――ゲームプレイに関する部分での特徴も教えてください。

Fortier氏:
 オーグメンテーションを受け入れたジェンセンが,より自在に自分の体を使いこなせるようになったので,流動的でダイナミックなゲームプレイが可能となっています。そして戦闘では,平面的な広がりよりも上下の拡張に特化しています。

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――つまり,高低差ということですね。具体的にはどのようなものでしょうか。

Fortier氏:
 例えば「イカロスダッシュ」は瞬間移動の能力で,上に向けて使えば,普通は行けない所にも行けますし,敵を倒すのにも有効です。

――そういえば,前作ではバッテリーの消耗が早いため,オーグメンテーションがあまり活かせない傾向がありましたが,本作ではいかがでしょう。

Fortier氏:
 そういったエネルギー管理のような部分も,本作で進化させるべく,二つのタイプのオーグメンテーションを用意しました。
 一つは,使えば使うほどエネルギーが減るので,マップの途中にあるエネルギーパックを拾わないと再チャージされないもの。これは「タイタンシールド」(一定時間,敵の攻撃を受け付けなくなる)など,比較的強力なものの場合ですね。
 もう一つは,一定時間で自動的にエネルギーが回復するもので,こちらの場合は,いちいちエネルギーパックを拾わなくても,時間が経てばまた使えるようになります。ですので,前作に比べれば,オーグメンテーションを使える頻度は高くなっているでしょう。

 オーグメンテーションを自在に使うジェンセンは魅力的ですが,ゲームバランスも考えなくてはいけません。強力なオーグメンテーションを使いまくればクリアできてしまうのでは,ゲームとして成り立たない。そういうところに気を使いながら,2種類のオーグメンテーションを実装しています。

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――本作には,どんなオーグメンテーションが登場するんでしょうか。

Fortier氏:
 最も特徴的なのは「ガンアーム」ですね。これはジェンセンの左腕に内蔵されているいくつかのオーグメンテーションで,主に「テスラ」「ペプス」「ナノブレード」といった機能があります。

 Deus Ex: Mankind Dividedでは,銃を持ちながら反対の腕のガンアームをとっさに使えるようになりましたので,敵に側面に回り込まれて「やばい!」と思ったときに,「ガンアーム」で対応できます。これによって,先ほど述べたような,より流動的でダイナミックなプレイが可能になっています。

 ちなみに,テスラは衝撃波を打ち出すもので,敵を倒すだけでなく,重くて持ち上げられないものをどかしたり,グレネードを敵に投げ返したりできます。また,ペプスを使うと,敵は銃を落としますので,そのまま倒したり,ステルスに移行したりできます。

 これらの選択は,画面にホイールのようなものが表示されて,自分が使いたいものをすぐに選べるようになっています。戦闘中でも移動中でも,またオーグメンテーションだけでなく,武装も状況に応じて即座に使い分けられることが,ゲームデザインのうえで重要だと考えています。いちいちメニューに戻るようなユーザーインタフェースではダメだ,ということですね。

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シームレスな探索と戦闘を実現

“強くてニューゲーム”にも対応


――前作では,探索と戦闘が割とはっきり分かれていました。本作も同様でしょうか。

Fortier氏:
 いえ。探索や戦闘などのパートをはっきり分けることは,ゲームのメリハリを付けるうえで大切ではありますが,本作ではシームレスにつながっています。これは,使用しているゲームエンジン「Dawn Engine」によって実現したことです。
 この部分は探索で,この部分は戦闘……といった区別はなく,進め方はプレイヤー次第です。例えば一切交戦することなく,ステルスだけで,1人も殺すことなくクリアすることもできます。ただし,かなり難しいと思いますけどね。また,強制的に戦闘に入るボスバトルもなくなりました。

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――なるほど。Fortierさんは,どんな進め方が好きですか。

Fortier氏:
 そうですね,何かにこだわるということはなく,その場に応じた臨機応変なゲームの進め方が好きです。ただ,割と非殺傷系の武器を使って,敵を殺さない傾向はありますね。

 それと,私はゲームディレクターとして,必然的にゲームを何度も繰り返してプレイするんですが,どんな異なるアプローチをとっても,その都度ゲームが応えてくれるのは素晴らしいところだと思っています。例えば「ヘビーリフト」というオーグメンテーションがあるのですが,持ち上げたオブジェクトを盾として使うほかに,積み重ねて足場とすることもできるので,それならジャンプのオーグメンテーションはいらないな,ということが分かります。
 そうしたことを理解するために,いろいろな方法を試すんです。それが仕事なんだから当たり前ですけどね(笑)。

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――2015年のE3にも,本作は出展されていましたが,1年が経って新しくなった部分はどこでしょうか。

Fortier氏:
 昨年は,どちらかといえばゲームメカニズムを紹介したのですが,今年は本作の世界観というものを見てほしいと思っています。例えば,実写を織り交ぜたムービーもその一つですね(関連記事)。
 私の母はゲームに詳しくなく,息子が何をやってるのか,いまいち分かっていなかったのですが,あの映像を見せたらゲームの内容を即座に理解してくれました。

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――発売がクオリティアップのためという理由で延期されていますが,どのへんのクオリティが問題だったのでしょう。

Fortier氏:
 開発チームがゲームをプレイすることで分かってくることがあり,主に進行のペースをブラッシュアップするのに時間が必要だったという感じです。例えば,ここは会話が多すぎるとか,必要な話がなかなか出てこないとか,この部分は飽きてきそうだ,ということです。映画でいう,ポストプロダクションの部分に当たるでしょうか。ただ,延期したおかげで,皆さんにより良いゲームをお届けできることになったと思っています。
 現在はバグのチェックや管理など,開発は最終段階にありますから,発売が遅れることはないと思います。ただ,BGMとサウンドエフェクトは,どうしても最終的な内容が決まったうえでの対応になりますので,今,サウンドチームは必死になっています。

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――リプレイアビリティについては,いかがでしょうか。

Fortier氏:
 一度クリアしたうえでニューゲームを開始すると,ジェンセンはそれまでの装備類をすべて身に着けています。俗に言う“強くてニューゲーム”というやつですね。そうなると,物語的にはちょっと矛盾するところがどうしても出てきたりするのですが,最初に行けなかったところに行けるようになったり,手に入らなかったものが手に入ったりします。リプレイアビリティは高いですね。

――最後に,読者に向けてコメントをお願いします。

Fortier氏:
 ゲームにはさまざまなテーマが描かれていますが,もしかしたら,ゲームを通して自分自身のことについても何か,新しい発見があるかもしれません。クリエイティブに,自分のやりたいようにゲームを楽しんでいただけたらと思っています。

――本日はありがとうございました。

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