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Kickstarterから生まれた,ポーランド発のSFタイルゲーム「Galaxy of Trian」レビュー。美麗なアートワークに彩られた宇宙版カルカソンヌ
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印刷2015/03/03 00:00

レビュー

美麗なアートワークに彩られた,ポーランド発のSFタイルゲーム

Galaxy of Trian

Text by 朱鷺田祐介

「Galaxy of Trian」のパッケージ。価格は44.99ユーロで,プレイ人数は2〜4人。1プレイあたりのプレイ時間は45〜60分とのこと
画像集 No.002のサムネイル画像 / Kickstarterから生まれた,ポーランド発のSFタイルゲーム「Galaxy of Trian」レビュー。美麗なアートワークに彩られた宇宙版カルカソンヌ
 ドイツのエッセンにて,2014年10月16日から19日の期間に開催されたボードゲームの祭典「Internationale Spieltage SPIEL’14」。老舗のボードゲームメーカーがこぞって新作タイトルを発表するこのイベントだが,その中に混じってオリジナルタイトルを発表するインディーズメーカーも少なくない。筆者が会場で偶然遭遇した新作ゲーム「Galaxy of Trian」もその一つだ。

 美麗なアートワークのパッケージが目を惹くこのゲームは,ポーランドのCreative Makerというデベロッパが手がけたSFタイルゲームだ。Kickstarterでのクラウドファンディングによって資金調達を行ったという彼らの作品は,未来の銀河の覇権を巡って4つのエイリアン種族が戦うという内容で,事前の宣伝をほとんど行わなかったにも関わらず,エッセンに持ち込まれた500箱を完売したという。フルカラーのタイルとルールブックに100個以上のクリスタルマーカー,そして専用のタイルラックが付属し,非常に豪勢な中身のこのタイトル。現状では日本から入手するのは難しいものの,ちょっと興味深いタイトルだったので紹介したい。


「Galaxy of Trian」公式サイト



宇宙版カルカソンヌ? 美麗なアートが光るSFタイルゲーム


 「Galaxy of Trian」は,銀河の宙域を表す三角形タイルを並べながら遊ぶ,陣取りゲームだ。プレイヤーは自分のターンがまわってくる度に,専用ラックに納められた三角形のタイルを一つ選び,すでに置かれているタイルとつながるように配置していく。その結果として,惑星系やガス星雲,外宇宙のエリアが「閉じる」形になればその宙域を支配したことになり,勝利点が得られるという仕組みだ。またゲーム終了時には,自分が支配している宙域の広さに応じて勝利点が加算されて,最終的に勝利点が最も多いプレイヤーの勝ちとなる。

本作のプレイ風景。三角形のタイルを専用ラックから引き,宇宙を作りながらその支配権を争う
画像集 No.003のサムネイル画像 / Kickstarterから生まれた,ポーランド発のSFタイルゲーム「Galaxy of Trian」レビュー。美麗なアートワークに彩られた宇宙版カルカソンヌ

 ただし,銀河の覇権を握るのは,そう簡単なことではない。
 プレイヤーは自分のターンでタイルを置くほかに,一つのアクションを取ることができ,これによってさまざな駆け引きが生まれる。例えば支配域に宇宙ステーションなどの建造物を建てれば,その宙域から得られるポイントをより多く得られ,これによって大逆転を狙うことが可能だ。ただし建物を建てるためには,ガス星雲から得られるミネラル――これ自体も得点となる――が必要になるので,まずはミネラルを集めるところから始めなくてはならない。また惑星に密偵を送り込めば,その宙域の支配権をより強固なものにできるが,逆にほったらかしているとほかのプレイヤーに支配領域を乗っ取られてしまう。
 そのほかにも,いくつかのタイルには古代種族Trianが残した遺物――好きなタイルへ密偵が移動できるテレポーター,採掘を加速するエクストラクター,周辺への侵入を禁じるエクスミッターなどがあって,これらをうまく利用するのも重要だ。

画像集 No.005のサムネイル画像 / Kickstarterから生まれた,ポーランド発のSFタイルゲーム「Galaxy of Trian」レビュー。美麗なアートワークに彩られた宇宙版カルカソンヌ
専用ラックに収められたタイルは2列あるので,どちらを取っても構わない。またタイルの裏表には別の宙域が描かれていて,盤上のタイルにつながりさえすれば,どちらの面を使用しても良い
画像集 No.006のサムネイル画像 / Kickstarterから生まれた,ポーランド発のSFタイルゲーム「Galaxy of Trian」レビュー。美麗なアートワークに彩られた宇宙版カルカソンヌ
閉じたガス星雲からは,ミネラルが採取できる。色とりどりのクリスタルマーカーで示されているのが,発生したミネラルだ

 ここまで説明すれば多くの人は気づくのではないかと思うが,ゲームデザイン的な意味での本作は,傑作ボードゲーム「カルカソンヌ」の系譜に連なるタイトルと考えられる。得点計算の方式がやや複雑なのが難点だが,ゲーム中に発生する勝利ポイントと,ゲーム終了時の清算で得られる得点を睨みながら,限られた数のトークンをやりくりしていくあたり,実際にプレイではかなりの「らしさ」を感じられるのではないだろうか。同作の経験者であれば,ルールを把握するのも簡単で,初見でも1プレイあたり1時間ほどで楽しめるのが嬉しいところ。

こんな風にタイルを並べながら,支配宙域を広げて行く。タイルの上に載っているトークンは,密偵やリサーチステーションだ
画像集 No.004のサムネイル画像 / Kickstarterから生まれた,ポーランド発のSFタイルゲーム「Galaxy of Trian」レビュー。美麗なアートワークに彩られた宇宙版カルカソンヌ

 なお同梱されている拡張ルールの「Beginning of Conquest」を用いると,宇宙戦艦であるCorvetteと宇宙採掘艦Rogueがゲームに投入され,銀河の覇権争いはより混迷を極めたものとなる。前者は宙域を軍事的に支配しようとするもので,大規模な艦隊戦が発生することもある。後者はミネラルの採取能力を備えていて,ほかのプレイヤーの支配下にあるガス星雲からもミネラルが採取できてしまう。
 いずれも足を引っ張り合う要素といえ,これらを導入するとプレイ時間がやや延びてしまうため,まずは基本ルールに慣れてから遊びたいところだ。

画像集 No.007のサムネイル画像 / Kickstarterから生まれた,ポーランド発のSFタイルゲーム「Galaxy of Trian」レビュー。美麗なアートワークに彩られた宇宙版カルカソンヌ


Kickstarterが加速するボードゲーム開発


 というわけで,実際に遊んでみても非常に楽しいゲームである本作だが,なんといっても目を惹くのは,その豪華なコンポーネント(内容物)だろう。まず奇妙な宇宙人が描かれたボックスアートはかなりキャッチーだし,その中にはカラフルなタイルやトークンがギッシリと詰まっている。ルールブックもフルカラーで,英語・ドイツ語・フランス語・ポーランド語版が同梱されている。
 このような豪華なパッケージとなった背景には,冒頭でも少し触れたKickstarterの存在がある。開発を手がけたCreative Makerは,本作のために誕生した会社とのことで,クラウドファンディングでの当初の目標額は1万9500ドルだったそうだ。しかし,美麗なアートワークや公開されたゲームルールの完成度が話題を呼んだのか,最終的に集まった額は13万395ドル。想定の6倍を超える大成功となって,その余剰分がコンポーネントに反映されることとなった。

デザイナーチームの3人,左からSeweryn Piotrowski 氏,Sebastian Oliwa氏,Grzegorz Kalarus氏だ
画像集 No.001のサムネイル画像 / Kickstarterから生まれた,ポーランド発のSFタイルゲーム「Galaxy of Trian」レビュー。美麗なアートワークに彩られた宇宙版カルカソンヌ

 本作の成功はその最たるものだが,SPIEL’14ではこうしたクラウドファンディングの援助を受けスタートしたタイトルを,少なからず目にすることになった。別途記事を掲載した「Cthulhu Wars」「Golem Arcana」もそんなタイトルの一つである。

「Golem Arcana」
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 Kickstarterを利用した,こういった形でのボードゲームが開発が流行の兆しを見せているのには,いくつかの理由が考えられる。
 まず一つは海外のコアプレイヤー達の年齢層が上がり,収入面でそれなりに安定した人が増えていること。そうしたプレイヤー達が,半ばクリエーターへの支援として,あるいは昔遊んだゲームへのノスタルジーを込め,お布施としてポケットマネーを投じているのだ。これはボードゲームだけでなくデジタルゲームにも言えることだが,クラウドファンディングをベースとしたゲームタイトルが増えてきている大きな理由だろう。

 もう一つはWeb上でのプレゼンテーションのしやすさだ。ボードゲームは物理的なゲームのモックアップや,実際のプレイ動画を掲載するだけでも,プレイヤーの期待感を煽ることができる。美しいイラストが書かれたカードや精巧に作られたミニチュアは,デジタルゲームの場合とは違い,単なる特典アイテムに止まらない価値がある。
 実際にSPIEL’14の会場を見渡してみると,豪華なコンポーネントを広げてゲームに興じている卓がそこかしこにあって,皆楽しそうに遊んでいた。豪華だからといって面白いゲームとは限らないのだが,物欲が刺激されるのは間違いない。日本でプレイするのは,住宅事情的に大変だろうなあと思いつつ,筆者も幾つか買ってしまったくらいである。

豪華なコンポーネントのミニチュアゲームを遊ぶには,それだけ広いスペースが必要だ。最少のコンポーネントによる洗練されたゲームデザイン「ミニマリズム」を目指す日本とは,こうしたところにも違いがあらわれている
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SPIEL’14に出展されていたゲーム専用テーブル。蓋を閉めればゲームの状態を“セーブ”できるのがウリで,お値段は1万3500ユーロ(約180万円)。広げてあるのは「Cthulhu Wars」だが,この大きさではさすがに蓋が閉まらなそうだ
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 いずれにせよ,クラウドファンディングによるボードゲーム開発は,海外において大きな潮流となりつつある。「Galaxy of Trian」についても,今のところ日本語版の話は聞かれなかったが,ラブコールを続けていれば可能性はあるはずだ。筆者としても,このタイトルで最初の成功を掴んだクリエーター達が,どこまで駆け上がっていくのか見てみたい気持ちもある。SFマインドを刺激するこの一作,最初に述べたとおり,現状日本で手に入れるのはいささか困難ではあるものの,プレイする機会があれば,ぜひ試してみてほしい一作だ。

公式サイトによれば,種族ごとの特殊能力が使えるようになる拡張セットのリリースも検討されているという
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「Galaxy of Trian」公式サイト

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