イベント
AMDの次世代モバイル向けAPU「Carrizo」は2015年中頃に登場。CES 2015でのインタビューで新情報が少しだけ明らかに
一方,2015 International CES(以下,CES 2015)に合わせてAMDは,Carrizoを搭載するノートPC試作機を発表しており,Carrizoの開発が順調に進んでいることをアピールしている。そこでCES 2015のAMDブースにて,Carrizoに関する不明点についてインタビューを行った。本稿ではそこで得られた新情報についてまとめてみたい。
インタビューに対応してくれたのは,AMDにてクライアント製品部門担当ディレクターを務めるDavid McAfee氏と,広報担当マネージャーのPeter Amos氏である。なお,インタビュールームではCarrizo搭載ノートPC試作機やCarrizoによる各種デモも披露されていたのだが,残念ながら撮影は許可されなかったため,掲載画像はAMD提供による製品写真とスライドのみとなることをお断りしておく。
単一プラットフォームでCarrizoとCarrizo-Lの両方に対応可能
インタビューでは,まずAmos氏により,Carrizoの概要が説明された。
標準モデルとなるCarrizoと,低消費電力版であるCarrizo-Lの2種類が用意されること。CarrizoはCPUコアに,第3世代「Bulldozer」である「Excavator」(エクスカベーター)を採用し,GPUコアにはDirectX 12/Mantle対応のGCNアーキテクチャを採用すること。そしてHSA 1.0で実現しようとした仕様がすべて盛り込まれた最初のAPUであることなどだ。ただ,これらの情報はすでに既報のもので,とくに目新しい点はない。
一方,新しい情報としては,Carrizo搭載製品の登場時期が「2015年中頃である」(Amos氏)と明言されたことが挙げられる。2014年11月時点では,2015年のいつ頃になるかまでは言及されていなかったので,登場時期が今回ではっきりしたわけだ。
Amos氏が強調したのは,CarrizoとCarrizo-Lは共通のプラットフォーム上で動作するという点だ。Amos氏は,「OEMパートナーはモバイル向け製品開発において,複数のボードデザインやソフトウェアスタックを必要とすることに,不満を抱いている」と述べる。モバイルノートや2-in-1デバイスを作るときに,IntelのCoreプロセッサを採用する場合とAtomプロセッサを採用する場合とでは,似たような製品であってもまったく別々の設計が必要になることに,PCメーカー側が不満を持っているというのだ。
それに対してCarrizoとCarrizo-Lは,共通のボードデザインでどちらも利用できるので,製品開発を効率化できるというのがAmos氏の主張である。
CarrizoがExcavatorコアのCPUとHSA 1.0対応のGPUコアを採用するのに対して,Carrizo-Lは「Puma+」コアのCPUと,HSA 1.0対応ではないGPUコアを組み合わせるという情報が2014年11月の発表時点で明らかにされている。つまり,これらの製品は内部構造こそ異なるものの,パッケージサイズやピン配置がほぼ同じものになるようだ。
またAmos氏は,Carrizo(およびCarrizo-L)が対象とするモバイル機器が非常に幅広い製品にわたるとも述べている。上はTDP 35W程度のAPUを搭載するノートPCから,下は2-in-1デバイスやファンレスのタブレット端末までをカバーできるだけの,幅広いTDPレンジに対応できるのが,Carrizoの強みとのことだ。
では,Carrizoはあくまでモバイルに特化したアーキテクチャで,これをほかのプラットフォーム向けのAPU,たとえばデスクトップPC向けAPUに利用することはありえないのだろうか?
未発表製品に関することをすんなり教えてくれるわけもないのだが,McAfee氏は慎重に言葉を選んだうえで,モバイル向けAPUを流用することも多いディスプレイ一体型PCやスモールフォームファクター(SFF)タイプのデスクトップPCには,Carrizoが採用されることもあるだろうと答えている。
その一方で,「Carrizoではソケットタイプの製品は用意されていないので,伝統的なデスクトップPCには採用されないだろう」(McAfee氏)ということだった。単純にCarrizoを転用したデスクトップPC向けAPUというものは,登場しないようだ。
統合されるサウスブリッジはTrueAudio対応サウンド機能も搭載
GPUコアについては,先述したとおりDirectX 12とMantleに対応するGCNアーキテクチャ世代という情報が繰り返されたのみである。しかし,性能面では既存のAPUである「Kaveri」よりも,さらに高い性能を狙っているようだ。
McAfee氏は,Carrizo搭載試作機の上で動作している「Sid Meier’s Civilization: Beyond Earth」(以下,Beyond Earth)を披露しながら,「ハイエンドグラフィックスを使うゲームには単体GPUが必要になるが,Beyond Earthや『Lego Batman 3: Beyond Gotham』程度のポピュラーなグラフィックスを使うゲームであれば,
なお,GPU部分に搭載されるビデオデコーダ機能についても,少しだけ明らかにされた。McAfee氏の説明によると,Carrizoの内蔵ビデオデコーダは,4K解像度で60fpsのH.265/HEVCコーデックをリアルタイムデコードできるだけの性能を備えるという。
GPUに続いて,統合されるサウスブリッジ機能についても質問してみた。既出の情報ではあるが,Carrizoはチップセットのサウスブリッジに相当する機能もAPUパッケージ内に統合した,1チップのSoC(System-on-a-Chip)になることが明らかにされている。「PCの中核となるコンポーネントが1チップ上に集積されたことによって,ノートPC開発はさらに楽になるだろう」とAmos氏は強調していた。
統合されるサウスブリッジで,どのような機能がサポートされるのかについても確認してみたが,詳細な回答は得られなかった。McAfee氏は,USBやSATAといった一般的なインタフェースに加えて,ハードウェアベースのサウンド処理用DSP「TrueAudioもサポートされると述べていた。TrueAudioはKaveri世代のAPUでも対応しているので,Carrizoがサポートするのは当然といえよう。
Carrizoの詳細が明らかになるのはISSCC 2015
今回明かされたCarrizoに関する新情報はわずかだったが,Carrizoの実像についての詳細な情報が明かされる日は,そう遠くないはずだ。Amos氏によれば,北米時間2015年2月22日から米国サンフランシスコで開催される半導体関連学会「International Solid State Circuits Conference 2015」(以下,ISSCC 2015)にて,Carrizoの詳細が発表される予定であるという。
ISSCC 2015で明らかになるというCarrizoの詳細は,いったいどのようなものであるのか。今から楽しみでならない。
AMD 公式Webサイト
- 関連タイトル:
AMD A-Series(Carrizo)
- この記事のURL: