久しぶりに姿を見せた三日月宗近に，刀剣男士たちは何を想うのか。「ミュージカル『刀剣乱舞』 〜陸奥一蓮〜」ゲネプロレポート

　DMM GAMES /ニトロプラスが手がける「刀剣乱舞ONLINE」（PC / iOS / Android）を原案としたミュージカルの最新作，「ミュージカル『刀剣乱舞』 〜陸奥一蓮（みちのおく ひとつはちす）〜 」の東京公演が，2024年3月10日に幕を開けた。


　本稿では，本番前日に行われた会見と，関係者・メディア向けゲネプロ公演の模様をお伝えしよう。なお，記事中盤以降のレポートでは物語や演出に関する記載が含まれているので，これから観劇を予定している人は注意してほしい。

ミュージカル『刀剣乱舞』
〜陸奥一蓮（みちのおく ひとつはちす）〜

■期間
【東京公演】2024年3月10日〜3月24日
場所：TOKYO DOME CITY HALL
【大阪公演】2024年3月30日〜4月14日
場所：箕面市立文化芸能劇場 大ホール
【東京凱旋公演】2024年4月26日〜5月6日
場所：TOKYO DOME CITY HALL

■出演（敬称略）
三日月宗近 役：黒羽麻璃央
加州清光 役：佐藤流司
蜂須賀虎徹 役：高橋健介
鶴丸国永 役：岡宮来夢
水心子正秀 役：小西成弥
大包平 役：松島勇之介
山姥切国広 役：加藤大悟

阿弖流為 役：山本 亨
母禮 役：細見大輔
坂上田村麻呂 役：三上市朗

【アンサンブル】
村中一輝 大野涼太 鴻巣正季 佐藤一輝
花見卓也 佐藤誠一 島本 隆 滝山翔太
白濱孝次 塚田知紀 寒川祥吾 千葉恵佑 兵藤結也
千大 佑 大平祐輝 河島樹来 熊本敬介 嶌田リョウ
金谷春来 紺崎真紀 平島由章 末髙伊織 田中蘭丸
森本拓也 曽根恋之介 谷本 開 原田 岳
後藤成貴（Wキャスト） 加藤 岳（Wキャスト）

■STAFF
原案：「刀剣乱舞ONLINE」より (DMM GAMES/NITRO PLUS)
演出：茅野イサム
脚本・作詞：浅井さやか
音楽監督：YOSHIZUMI
振付・ステージング：TETSUHARU，桜木涼介

会見には，演出の茅野イサム氏も登場
「これがミュージカル『刀剣乱舞』だ」

　ゲネプロ前，刀剣男士を演じるキャストと演出の茅野イサム氏が会見を行い，作品への意気込みを語ってくれた。

黒羽麻璃央さん（三日月宗近 役）：
　僕自身久々の出陣ですので，稽古の段階から茅野さんに磨かれて，ようやく初日を迎えられることをうれしく思います。きっと審神者の皆さんと同じくらい僕も，ドキドキソワソワしながら初日を迎えます。緊張感も楽しみながら，頑張りたいと思います。

佐藤流司さん（加州清光 役）：
　稽古の日数でいうとほぼ丸2か月という長い時間，カンパニー一同切磋琢磨してまいりました。皆様に最高の作品をお届けできるよう，最後まで諦めず邁進してまいりますので，どうぞよろしくお願い申し上げます。

高橋健介さん（蜂須賀虎徹 役）：
　皆でたくさん話し合って，悩んで，苦しんで。いっぱいご飯を食べて，たくさん笑って，本当に濃密な2か月でした。ワクワクが止まらず，とくに今まで「ミュージカル『刀剣乱舞』」を応援してくださった皆様には大満足の内容となっていると思いますので，ぜひ観ていただけたらうれしいです。よろしくお願いします。

岡宮来夢さん（鶴丸国永 役）：
　俳優生活を始めて約5年間，鶴丸国永と一緒に歩んできました。その5年間，ミュージカル本公演や双騎出陣など，いろいろな物語を紡がせていただきました。今回また新たな物語を創り上げられることに感謝しています。本当に緊張でいっぱいですが，皆で「すごいものを見せるぞ」という気持ちで稽古してきたので，頑張っていきたいと思います。よろしくお願いします。

小西成弥さん（水心子正秀 役）：
　僕は3年前に「東京心覚」（「ミュージカル『刀剣乱舞』 ―東京心覚―」）という作品で，この「ミュージカル『刀剣乱舞』」に参加させていただきました。今回また「陸奥一蓮」に参加させていただけることで，稽古場から本当に熱量があって，初日を迎えるのを本当に楽しみにしていました。ついに皆様に，お届けできます。よろしくお願いいたします。

松島勇之介さん（大包平 役）：
　約2か月間，すべてはこれから始まる本番のために，何度も悩んで何度も壁にぶつかりながら，走り抜けてきました。ここからは一公演もあますことなく，皆様に届けられるよう精一杯務めますので，最後まで応援のほどよろしくお願いいたします。

加藤大悟さん（山姥切国広 役）：
　稽古が始まってから今日まで，いろいろなことがありましたが，とてもかっこいい先輩方の背中を見せていただき，自分自身としても少しは成長できたかなと思います。 その姿を皆様に見せられるよう精進していきますので，ぜひ応援のほどよろしくお願いいたします。

演出 茅野イサム氏：
　見どころを語ろうにも多すぎて絞れないのですが，まずは我が本丸の刀剣男士です。彼らの動く様，生き様を早くお見せしたくて，うずうずしています。また，「ミュージカル『刀剣乱舞』」はこれまで新しいことに挑戦してきましたが，今回は王道中の王道「これがミュージカル『刀剣乱舞』だ」と自信を持ってお見せできる作品になっています。決定版ですね。

　そして，稽古をしているなかで，この9年間は伊達ではなかったということを強く実感しました。刀剣男士のキャストだけでなく，僕が劇団員と呼んでいるアンサンブルたちの力，そしてずっと僕らを支えてくれているスタッフのみなさんの力。それがこの9年間で蓄積され，全部がガチっとはまった作品になったと手ごたえを感じています。早く皆様に，ご覧いただきたいです。

平安初期の陸奥国で，
刀剣男士たちを待っていた出会い

　審神者の命によって，鶴丸国永（演：岡宮来夢）を隊長に，加州清光（演：佐藤流司），蜂須賀虎徹（演：高橋健介），水心子正秀（演：小西成弥），大包平（演：松島勇之介），山姥切国広（演：加藤大悟）の部隊が，平安時代初期の東北地方 陸奥国（むつのくに）へ向かうことになる。

　刀剣男士たちが向かう時代の陸奥国では，阿弖流為（あてるい／演：山本 亨）， 母禮（もれ／演：細見大輔）を中心とした蝦夷（えみし）と，征夷大将軍である坂上田村麻呂（演：三上市朗）が率いる朝廷軍との争いが起こっていた。


　筆者は旧・陸奥国の出身で，学生時代に阿弖流為や蝦夷について学ぶ機会が多かったため，「阿弖流為たちが注目されるのか……」と感慨深い気持ちになった。今まで「刀ミュ」の刀剣男士たちが出撃してきた戦国や幕末と比較すると資料が少ない時代のため，どんな時代だったのかピンとこない人もいると思うが，出陣前に山姥切国広が蔵にある資料に目を通す形で，戦いの概要を教えてくれるので安心して物語に飛び込んでほしい。


　時間遡行軍の狙いは，阿弖流為と坂上田村麻呂のどちらかと考えた刀剣男士たちは，二手に分かれて彼らの動向を見守る。自分たちの生まれ育った土地を守ろうとする蝦夷，土地を切り開くことで発展してきた朝廷軍，刀剣男士たちの目を通して「どちらの考えも間違っているわけではない」という歴史の難しさが伝わってきた。

　そんな蝦夷と朝廷軍の戦いに時間遡行軍が介入し，坂上田村麻呂が狙われる。戦闘は大人数による殺陣だけでなく，刀剣男士それぞれの見せ場となるようなシーンもあり，見ごたえ抜群だった。


　刀剣男士たちが時間遡行軍と戦うなかで，ある理由から本丸を離れている三日月宗近（演：黒羽麻璃央）が姿を現す。しかし，鶴丸国永の判断で，形勢を整えるために，一度本丸に戻ることになり……。


　本丸に戻った刀剣男士たちは，鍛錬をしたり，調べものをしたりと，それぞれができることに向き合う。刀剣男士同士のコミカルな掛け合いもあり，重厚でシリアスな物語のなかで，ホッと一息つけるようなひと幕となっていた。


　準備を整えて刀剣男士たちは再出陣することになるが，三日月宗近を気にかける鶴丸国永が自由に動けるように，山姥切国広が代わりの隊長となった。山姥切国広から鶴丸国永を見守るように言われた水心子正秀は，部隊を離れて行動する。そして狙い通りに三日月宗近と再会した鶴丸国永は，気持ちをぶつけるように刃を交えるのだった。刀剣男士同士の本気の殺陣は迫力があり，動きの美しさに見とれてしまう。


　一方で刀剣男士たちは，坂上田村麻呂とその捕虜となった阿弖流為，母禮の護衛として同行する。それぞれの意志を持つ3人はとてもカッコよく，彼らの言葉や生き様は，刀剣男士たちも感じるところがあったようだ。そして彼らは，歴史が流れ通りに進むように，最後まで見届けることになる。


　また，刀剣男士たちや阿弖流為との会話を通して，三日月宗近の想いの一端にも触れられた。筆者個人としては，三日月宗近の行動に共感できてしまうというのも，歴史の切なさだなと思った。一方で，本丸で待つ審神者や鶴丸国永たちの気持ちも理解できて……。いろいろなことに想いを馳せられる，しっとりとした物語になっている。

　そして，第2部は煌びやかなライブパフォーマンスになっているので，こちらも楽しみにしてほしい。


　本公演の模様は，動画配信サービスDMM TVにて一部公演がライブ配信される。現在チケットが好評販売中なので，ぜひチェックしよう。さらに2024年5月6日の大千穐楽の模様は，全国の映画館でライブビューイングが行われる。チケットのプレリクエスト先行（抽選）は，ローソンチケットにて2024年3月25日〜4月14日に実施予定だ。上映する映画館などの詳細は，公式サイトを確認してほしい。

「ミュージカル『刀剣乱舞』 〜陸奥一蓮〜 」公式サイト