【山本一郎】「信長の野望・創造 with パワーアップキット」プレイレポート――輝け！ 魂の姉小路家！〜風雲嫁取り篇〜

山本一郎 / アルファブロガーにしてゲーマー。その正体は，コンテンツ業界で今日も暗躍（？）する投資家

山本一郎：茹で蛙たちの最後の晩餐 ブログ：http://kirik.tea-nifty.com/

　山本一郎です。元気ですか？

　厄年を迎えた私も，今年の冬は張り切って生き抜いていこうと思っています。みんなも魂にエナジー溜めて，前を向いて頑張って生きていこうじゃありませんか！

　実はこの連載の輝かしいプレイレポート第一回は，かの戦国シミュレーションゲームの名作「天下統一」の姉小路家が，如何に弱小であったとしても愛と情熱と打算と博打で生き残る戦いはできるのだ，と示した「この記事」でありました。

　あれから5年の歳月を経て，冬枯れの戦国時代シミュレーションゲームに傑作……とまでは言わないけど，佳作が戻ってまいりました。その名も「信長の野望・創造」。えー，まあ頑張った。綺麗にできていますよね。うん。
　で，いろいろ改善されたという「パワーアップキット」（PC / PS4 / PS3）が出たというので，当然試すわけですよ。ええ，姉小路家で。

「信長の野望・創造 with パワーアップキット」公式サイト

今作でも相変わらずな姉小路家に明日はあるのか

　この「信長の野望・創造」における飛騨・姉小路家は，相変わらずとても弱小です。武田，斎藤，長尾（上杉），織田，本願寺という凶悪な大名に囲まれた最悪の立地，山岳地帯ゆえの不毛な土地，ニートに毛が生えた程度の残念な武将と，劣悪な条件はすべて揃っています。おまけに，上級の難度やAIの攻撃性が高いモードでやると，一年を待たずして能登からなぜか畠山家が攻めてきます。「どうせ死ぬなら有名大名に滅ぼされたい」というささやかな願望さえも打ち砕く畠山家は，同盟国である越中・神保家を誘ってやってきます。そして，なぶられるように崩壊するという，しょうもない滅び方を運命付けられているのが「姉小路家」であります。

　運よく生き残っても美濃を制圧した織田に蹂躙されたり，上杉と休戦してしまい攻めるところがなくなった武田家に暇つぶしで蹂躙されたり，神保家を滅ぼしにきた上杉家についでに蹂躙されたり，城は一応4個あるけど一個一個，まぁそれは丹念に潰されて，土下座外交も空しく数年で滅ぶ結論以外にないのがこの「姉小路家」なのです。

私たちを戦国の世界に誘ってくれる，趣のあるタイトルメニュー画面。いやあ，この雰囲気こそが「信長の野望」ですね

　ああ，姉小路家をどうにかしたい。

　初代からの「信長の野望」を愛してきたプレイヤーであれば，誰もが夢見ることでしょう。征夷大将軍の座に就き，幕府を開いたり閉じたりする姉小路家を。歴史シミュレーションのプレイヤーとして，魂にそっと火をつけましょう。弱小大名であろうとも，先を見据え，生き残るためにあらゆる手段を駆使して，数値上はただの民忠誠度で表されるデータの，その奥にある飛騨の人々の笑顔をひとつでも増やすために，安心して暮らせる国づくりをしていくのが使命なんじゃないですか。
　たとえ運命に抗おうとも，この世に生れ落ちたからには世の人のために生きることを義務付けられているのです。できねば，川上にTwitterであおられる（※）……そんな危機感をしっかり抱き，見果てぬ国家建設の夢を抱いて「決定」ボタンをぽちっとな。

※編注：KADOKAWA・DWANGO代表取締役会長の川上量生氏。かねてより「SLG記事を書かないの？」とあおられ……応援されていたそうです

　いやあ……悲惨です。残念ですわ姉小路家。見るたびにため息が出てしまいます。山に囲まれた飛騨に一個ある本城は見どころもなく，部下もこう言っちゃなんだけど這いつくばって生きているのがやっとという状態。同じ山岳大名でも武田信玄みたいに「人は城。人は石垣。人は堀」とか，名言っぽく前向きに言えているうちが華で，姉小路家としては「人が山。人が渓谷。人が崖」という感じの荒涼たる地域に，しがみつくように生きております。

　しかし，大名本人，当主の姉小路良頼（通称「パパ」）は，いたって平凡なおっさんです。休日にゴルフに行って二日後に筋肉痛がきて動けなくなる感じの。唯一，かろうじて武将として中堅ぐらいの能力があるかな？ と思われるのは，良頼パパの長男・姉小路頼綱（通称「CHO☆NAN」）だけです。それでも織田，武田，上杉クラスの武将にはまったく歯が立たないばかりか，畠山，斎藤の宿老クラスにも大苦戦するレベル。っていうか笑ってんじゃねーよ頼綱。しゃきっとせんか，しゃきっと。しかも声がひょうきんな面白ボイスで，深刻な状態にある姉小路家に走るべき緊張感が皆無で困惑を隠せません。真面目にやれ，真面目に。

　本作を買われたら，ぜひ一度この出オチ感を皆さんに味わっていただきたい。そう思うわけであります。

良頼パパで姉小路家は上級に挑む。真正面からやらないと初級でも中級でも普通に伸び悩むのが姉小路家。ならば，やはり上級でなくては。うん	大名家で戦争に出かけていない武将のうち，一番優秀な人が会議を仕切る「評定」の場面。家中で一番優秀なはずなのに，顔と声がだらしなさすぎて緊迫感は皆無の面白大名，嫡男頼綱。田舎侍臭が満喫できるが，お前しかまともなのいないんだぞ
姉小路家が領有する飛騨全景。山，山，そして山。歩くだけで疲れちゃう。生きていくためには日々ハイキング待ったなしの山岳大名姉小路は，ほっそい山道をとぼとぼ歩くしか方法がない。なぜか飛騨に鉄砲鍛冶の国人衆がいる	初期創業メンバーで記念撮影。低い能力だけど明るく元気に頑張っていきます。戦争に必要な「統率」「武勇」で60を超えているのは頼綱だけ。笑ってんじゃねえ！
頼綱の詳細画面。画像が大きくなって，その笑ってるポートレートがさらにプレイヤーの血圧を高くする。しかも「わずかながら不満を抱いてる」とか，何考えてるんだお前は	その頼綱に，いきなり「我が国は貧しく劣っております」とダメ出しを喰らう良頼パパ。何笑ってんだ。イラッ☆とくる。お前なあ，これから戦争なんだよ。内政やってる余裕なんてないんだよ

　悪条件しか揃っていない姉小路家だが，狙うは当然，戦国大名として生き残ること。部下が劣ろうとも，土地が痩せていようとも，このソウル（魂）に炎が宿っている限り，知恵を捻り工夫を凝らして必ず生き残るという熱い誓いこそが，シミュレーションゲーマーの矜持（プライド）ってもんです。

　そのためには，笑ってる馬鹿長男が言うようにのんびり内政をやっていては，迫り来るであろう敵に対抗できません。戦力を確保するために，最低限の兵士を雇える兵舎を急ぎ建設する一方，一刻も早く安全を確保するための方策を練らなければならない。その思案の先にあるのは，そう，加賀本願寺。

　この作品シリーズでは伝統的に，一向一揆を単なるイベントにせず，本願寺自体が飛び地ながら大名として扱われ，ちゃんと思考ルーチンを持っています。戦争を吹っかけることには消極的ながら軍事力はあります。そして，おそらく，姉小路家へ最初に攻め込んでくるのは能登畠山家であり，越中神保家なのです。さらに，ここで互角の戦いをして，仮に追い返せたとしても，次に待っているのは武田家であり斎藤家，織田家。ダメージを負うわけにはいきません。

　本願寺の兵を借り，防衛戦争に勝つだけではなく，逆に攻め込んで神保家の城を攻略することができたなら……「わしは，海辺にある富山城が欲しいんだっ！」。絶望の中で見果てぬ夢を抱きながら，良頼パパはしょぼい国庫から出してきた2千円（※「金（きん）だとイメージしづらいので，分かりやすくしてみました by 山本」）を握りしめ，商人のもとに駆け寄ります。

「この十等級の掛け軸くーださい」

　なぜ宝物が必要なのか。答えはひとつ，姉小路家は諸大名から馬鹿にされているのです。弱小すぎて。つらい。

　本願寺の態度も最初は「普通」に対応してくれるでしょうが，近い将来「蔑視」「軽侮」という見下した態度を取ってくることは間違いありません。そうすると，援軍をもらうための外交で，いくら頑張って金を使っても，本願寺からの信頼を得ることはなかなかできないのです。

商人から質流れみたいなやっすい掛け軸を買い取る良頼パパ。生き残るために必死です

　ということで，買ったばっかりの掛け軸が右から左に本願寺の元へ。なけなしの金をはたいて本願寺に差し出し，信頼を得て援軍を求めるという，「業績不振のメーカーが，手揉みしながら量販店の社長を接待し，お歳暮を贈って善処を求める」現代社会と同じ構図で涙するわけであります。ちくしょう，坊主のくせに。

本願寺の坊主に安物の宝物を送りつけるの図。頼綱から「それほど効果はないでしょう（藁）」と煽られるが無視。うっせーな

モノの良し悪しも判断つかない坊主がぬか喜びする。馬鹿め，それはパチモンだ。バレるまでに信用を得るのが勝負

　本願寺との関係構築に邁進していると，当然金欠に陥るわけであります。なにせ，外交にはカネがかかりますから。この苦しいやり繰りをしながら内政費用を捻出して，少しずつ石高と兵舎を高めて兵隊を増やし，必ず来るであろう不測の事態に備えるわけです。そして外交が功を奏し，援軍を得られるに足る信用40まで到達。おおむね目的を達し，外交収入の上がる信用50をクリアしたところで本願寺との外交を終了します。

　本当は，攻め込まれるよりはこちらから神保家に仕掛けたい。頼む，あと半年待ってくれ。祈るような気持ちで，敵の襲来が来ないことを願っていた10月。事態は一気に急転します。

姉小路家の絶望的な外交画面。織田家や武田家はともかく，地味に朝倉家からも馬鹿にされているのが腹立つ。本願寺との外交一本に絞るが，姉小路家の収入は月180円，外交費用は月600円。貧乏は辛い……	内政に回す金が尽きて，ついに口座残高が32円しかなくなってしまった姉小路家。た，た，助けて
姉小路家の窮乏をよそに，時代は流れていく。隣の織田信長（通称「ノビー」）が上洛のために浅井家に絶世の美女である妹お市を政略結婚に出す。羨ましい。ああ羨ましい	そして斎藤家に織田の軍勢が迫り来る。救援依頼が来るけど満面の笑みでガン無視。というか，何もできない。美濃斎藤家が織田家に滅ぼされれば，凶暴な織田家と我が姉小路家は隣接することになる。もはや時間の猶予は，ない

「は，畠山家が攻め込んできました！」

　急報が良綱パパのもとにやってきます。

「そんな遠くからはるばる……っていうか，どうやってそれを知ったんだ？」

　戦国時代にもインターネットがあって，畠山家が「姉小路に出陣なう」とツイートしたとか，そういう感じでしょうか。

　興醒めする気持ちをぐっと抑えて，やってくるだろうと報告された軍勢を確認すると，なんと畠山家が5000。さらに畠山家の援軍として呼応した神保家3200の合算8000強の兵力が飛騨の山を登ってくるではありませんか。対する姉小路家は頑張って3000。ヤバイ。かなりヤバイ。おのれ，畠山め。

信長の野望の中でも歴戦の泡沫戦国大名である畠山家に，容赦なく攻め込まれる姉小路家。いくらなんでも遠いし，神保領縦断しすぎだろ

畠山家と同盟関係にある神保家も便乗して全力で攻めて来る！ どうやら本気のようだな。よろしい，では姉小路も全力でお相手しよう

　敵の進軍ルートを読むと，どうも最短距離で我がほうの高原諏訪城に向かってくるようです。そこまで分かっているなら，満を持して伏兵とか落石とか火計を……と言いたいところですが，このゲームにそんな技は存在しません。残念。その代わり，「信長の野望・天道」から続くシリーズのテーマである“道”を使って挟撃や包囲ができる。我がほうの抱えるしょぼい武将でも，采配を駆使すれば大戦果を挙げられる。そんな夢を見てみませんか。

　必要なものは，囮です。この場合は，ズバリ高原諏訪城。みんな城を包囲しようとやってくるので，当の高原諏訪城から出撃した江馬忠盛勢と，後方の本城松倉城からの良頼パパの援軍とが，城の少し遠巻きで待機。そうすると，敵は高原諏訪城を弾ける笑顔で包囲しようとするでしょうから，そこを横から出てきた良頼パパと江馬勢で挟撃しますと，あ〜らびっくり大戦果，という次第であります。

　まあ，言うのは簡単なんですけど，被害がないわけではないのと，一歩間違えれば逆に包囲されて大惨事という，玄人技でございます。素人にはおすすめできない。

戦争がおっぱじまり，送られた掛け軸も安物であることに気づいた本願寺が態度を変えてしまった。チッ，ハゲめ気づくのはえーよ

　そんなこんなで，自国の城のこっちと向こうで押したり引いたりしているうちに，飛騨の斜にある帰雲城からCHO☆NAN頼綱率いる400人ぐらいの手勢が，手薄になった神保家の福光城に押し掛けます。その援軍に来るのは何と総勢5500人の本願寺の皆さん。びっくりするほど本願寺。もはやどっちが本体で，どっちが頼まれた人たちなのか分からないわけですが，とりあえず福光城を包囲，あっという間に陥落させてしまいます。さすが本願寺だねありがとう！ さっきはハゲとかいって済まなかったよ！
　どさくさに紛れて福光城を確保した頼綱は，笑ったままでいったん補給し，すぐさま一進一退を繰り返す高原諏訪城の救援に向かいます。背後から現れたCHO☆NAN頼綱の軍勢に退路を絶たれ，畠山軍も神保軍も壊滅。ほうほうの体で散り散りになっていくではありませんか。ざまあみやがれ。意気最高潮に達する姉小路軍。

高原諏訪城攻略に出て，がら空きになった神保家福光城の攻略お手伝いを本願寺にねだる良頼パパ。いまこそ築き上げた信用の使い時！

総力戦となった高原諏訪城の激戦を尻目に，どさくさに紛れて福光城攻略に励むCHO☆NAN頼綱。どう見ても10倍以上の兵力を擁する本願寺におんぶにだっこだが気にしない

そして落城させ大勝利。つーかCHO☆NANへらへらワラってんじゃNE-YO！その後，本願寺は勢いあまって神保のもうひとつの支城も陥落させてました

戦勝へ向けて，包囲戦を仕掛ける頼綱。姉小路本隊がボロボロになっているような気もするが仕様です。ここにいる敵軍はスタッフがおいしくいただきました

「勝ったどー」

　戦争……それは虚しい。戦場に散らばった敵味方の骸の山を見ながら，良頼パパは一人頬を涙で濡らすのでした。どうしたら，この世から戦争をなくせるのだろう。死んでいった兵士の顔を一人ひとり思い浮かべつつ考えあぐねる良頼パパは，ある結論に達したのでした。

「そうだ，全部勝ちゃいいんだ！ そしたら虚しくない。あの富山城もわしのもんじゃ！」

　ひなびた山岳の国よりも，風光明媚で海の幸に恵まれ，良田に囲まれた恵みの里，富山城を何としても奪う。当面は，飛騨よりはるかに豊かな越中・神保家，そして能登・畠山家を狙い，拡大戦略で姉小路家の安全保障を構築する方針です。あと畠山家は絶対に許さない。顔も見たくない。物欲至上主義で激動の戦国時代を生き抜き，領民に報いるのだ。そう良頼パパは心に決めたのでありました。

富山城を確保し勢いに乗る姉小路家，ただし貧乏が止まらない

　巧みな戦術で防衛戦争に勝利したばかりか，長男頼綱の活躍により豊かな福光城を確保した姉小路家。相変わらずの人材難にあえぐなか，長女・姉小路錦，次女・姉小路円が髪結いし武将となりました。前作では，姫が登場すると，能力を見て使えそうなら武将にするか，姫として嫁ぎ先があるまでアイテム状態になるかを最初に選ぶ仕様だったのが，今回のパワーアップキットでは，姫は結婚してもずっと武将で活躍させられるようになりました。縁組をして大名に嫁いでも先方の武将としての役割は持ったままですし，これはと思う部下に娶（めと）らせても引き続き武将として起用できるという優れものです。

　で，長女の錦の能力なんですが……姉小路家の中では良いほうで，政治にいたっては家中で一番能吏だったりして泣けます。どんだけ人材難なんだ姉小路家。その長女の特技が「咆哮」って。家が揺れるほどの大声で叫んじゃったりするエスパーだったりするんでしょうか。「まれに敵を混乱させる」という能書きが，かえって彼女の異能感を引き立たせます。さらに次女の円も特技が「咆哮」でありまして，お前らはドラゴンの一族とか闇の眷族などといった風情の生き物だったりしますか。お父さん，とても心配です。

待望の娘ちゃんが成人した！ 今作のパワーアップキットでは，どんな小大名でも姫が登場するのでちょっぴり助かります	長女・錦。なんですか，その咆哮とかいう特技は……戦場で怪音波でも発してしまうのでありましょうか。怖い
次女・円。お前も咆哮すんのかよ。どういう家庭だこの姉小路家ってのは。叫んだら家屋が発進する勢いだぞ	「その覚悟，受け取った！」とか言っちゃう良頼パパ。大丈夫か。どう考えてもお前の娘たちは化け物じゃねーか

　再び本願寺とも関係を構築し，神保家の最後の城，念願の富山城攻略の準備を急ピッチで進めていたんですが……越後から奴がやってきました。上杉政虎（通称「ヤバいの」）です。やー，上杉強いっすよね。うちらみたいな田舎大名じゃ勝てませんわ。こりゃしばらく富山城は手出しできんなー，のんびり海釣りする日もお預けだなー，と思っておりましたら，富山城に攻め込まれた神保家が援軍で畠山家を呼んだんですよ。
　そしたらですね，上杉家と畠山家が同盟結んでるもんだから，上杉軍は実力で畠山軍を排除できない。富山城の座標に呼ばれた畠山軍がどっかり居座って，上杉軍が富山城を包囲できず攻略できないとかいうバギーな状態になってるじゃないですか。あー，この仕様はパワーアップキットになっても変わってなかったのね。

同盟先の畠山家に通せんぼされ，富山城まで辿り着けず途方に暮れる上杉軍の皆さん。こっちにとっては好都合だけど，上杉ブチ切れでしょうこれは

　そして両軍戦争するでもなく膠着したまま三か月が過ぎ，兵糧の尽きた上杉軍が越後方面へ引き返します。いまがアタックチャーンス。姉小路家が全軍を出して待望の富山城へとラッシュをかけに行きます。絶対に勝ちに行く。額に「山岳魂」という文字をあしらった鉢巻を締めた姉小路軍が，どさくさに紛れて富山城に殺到すると，無駄な抵抗をする神保勢を蹴散らし，二か月半の攻防の末，ついに富山城が陥落。それと同時に神保家は滅亡しました。ちーん。

上杉軍の兵糧が尽きて帰る頃合を見計らって背後から襲い掛かる姉小路軍の勇姿。いつやるの？ いまでしょ！（死語）

念願の富山城ゲットだぜ。長かった……これで本城も2つめ，大名として少しは見られるレベルになりつつある。相変わらず貧乏な田舎侍だけど

弱小大名同士の競り合いでついに滅ぼされる神保家。お疲れ様っしたー

　神保家にはね，恨みはあるよ。でもね，遺恨を残したままで未来を作ることはできないと思うんだ。恨みって連鎖するしさ。ローマ人もそう言ってた。会ったことないけど。みんな一緒に頑張ろうよ。良頼パパはそう判断して，神保家の家臣は大名以下すべて登用し，武将の質はともかく数だけでも充実した戦国ライフを送りたい決意を新たにしました。
　……と，その捕虜の中に神保家の娘・茜がいるじゃないですか。見てみると，能力はともかく特技は「怒号」。お前のとこの娘，超怒ってんのかよ。うちの娘も咆哮だぜ……分かる，分かるよ父親の気持ちが。神保家の隠れた悩みを垣間見た気がして，少しほっとする良頼パパでありました。

姉小路家同様，微妙武将がひしめき合う残念な部下たち。それでも懐の広い姉小路家は全員快く受け入れてしょぼい武将達の楽園を目指す

神保家の娘・茜も武将として登用。特技が「怒号」というのを見て，神保家に対して強い共感と同情を覚える

　ともあれ，豊かな越中・富山城を掌中に入れた姉小路家ですが，そのささやかな繁栄は熱湯の上の薄皮に立っているようなもので，上杉のヤバいのや，武田家が飛騨にやってこようものなら，壊滅待ったなしの状態であることに変わりはありません。
　仮に上杉家と（関係を）結んでも，富山城と目と鼻の先にある魚津城が首元に突きつけられた匕首（あいくち）状態で，武田家にしても援軍を求めたときにはえっさほいさと木曽路の山を越えてやってくるため即応性に欠けます。何より武田家は姉小路家を「軽侮」しています。文字どおり，人間のクズ扱いです。残念すぎる。いったい私たちが何をしたというのだ。
　一方，濃尾平野を見ると，美濃をほぼ確保した織田家が勢力を増しており，例によって徳川家を東の壁，浅井家，北畠家を西の壁として拡大の一途といった状態です。

　待てよ……尾張，美濃を制圧した織田家が，隣接する大名である徳川，浅井，北畠すべてと結んじゃったってことは，攻める先はもう飛騨しかないじゃん！ やめろよ！ 織田家と組まないと姉小路家死んじゃうじゃん！

衝撃の事実に気づいて狼狽を隠せない良頼パパ。しかも，外交関係図を見ると織田家は全力で我ら姉小路家を馬鹿にしています。

　何この状況，超ヤバイ。富山城を落とした祝賀ムードも吹っ飛んで，姉小路家は家を挙げ，全力でノビーとの関係改善，あわよくば同盟や政略結婚を目論見ます。狙って登れない山はない，これが飛騨姉小路家の登山家精神ってもんですよ奥さん！

八方塞りの姉小路家を象徴する外交画面。本願寺には朝倉から2回攻め込まれたときに毎回援軍を出したのが底上げになって，良い関係にはなっているが，いまやそれがどうしたって感じ

　いつもどおりに商人から安物のお宝を買い，せっせと織田信長様に貢いで信頼確保に努め，地道な外交と慎ましやかな資金繰りで織田家との信用醸成に腐心します。五等級とか，もっと高級なちゃんとした茶器とかノビーに贈って歓心買えよという冷たい視線が頼綱から送られますが，一万円もする五等級の家宝を買えるほど金が貯まらないんだ金が。月の収入，400円とかだぞ。納豆とキャベツで食費切り詰めて生き抜くしか方法ないじゃねーか。
　しかも張り切って外交を展開中に，飛騨本城に武田軍が押し寄せてきて，姉小路家一同頑張って追い返すなどのハプニングが発生します。どうも戦争していた上杉家と休戦してしまった武田家が，やることがなくて暇つぶしに攻めて来たものと思われ，心からふざけんなと感じるわけであります。迷惑この上ない。
　それもこれもあって財政も兵力も疲弊の一途を辿りますが，織田家と関係を結ぶことを姉小路家戦略の本筋に据えた良頼パパの決意は揺るぎませんでした。

　織田家との同盟を確実なものにする――そのためには，信用度80で妥協して2年の同盟を結ぶか，歯を食いしばって100まで引き上げて大名当事者のどちらかが亡くなるまで同盟関係の続く，政略結婚ができるところまで粘るか。ここが分かれ道であります。というのも，信用度20を引き上げるのに必要な4か月の間に上杉家や武田家から攻め込まれたら，疲弊した姉小路家は一巻の終わりなのです。内政に突っ込むカネを外交に回しているため，各城施設の建設に必要な1000円が捻出できないというレベルで貧乏なのが姉小路家。かなり本気の文無しです。突き抜けた貧しさ。何この戦国時代なのに格差社会。増税賛成。そのように思うわけであります。

　良頼パパは，妥協しようとしました。次の評定で，織田家との2年の同盟で済ませ，まずは安全を確保して次の局面を切り拓こう。安易だけど，まずは時間を稼いで趨勢を見極めていこう。そう思ったところに，CHO☆NAN頼綱の面白ボイスの評定画面が出ました。

　こいつ……。何笑ってやがる。

　家のため，飛騨に住む人々のために考えを巡らせ悩み抜いてきた良頼パパにとって，いつ見ても不真面目の極みな品のないツラを晒している我が子・頼綱が心配でなりません。お前さあ。頑張って働けばそれなりに能力あるはずなのに，26歳にもなってぶらぶらしやがって。つーかさ，俺っちがもし逝っちゃったら，そのあとをこの田舎侍風情の極まる半笑いの長男が継いで国は保てるのだろうか。住民の安寧は続くものなのか。国を率いるものの自負とは，どんなに領民から罵声を浴びせられようとも，その幸せを願い，最善と信じる治世を行い続けることにあるのではないのか。そう思うと，危機感で良頼パパは夜も眠れません。

　屈辱的な外交も，生き残ることを考えればこそであり，目の前の得失だけで言えば，お金があって，使おうと思えばうまいもんも食えるわけです。なんで使いたい金も切り詰めて，関心を買うためにグッズ購入して織田家にくれてやらなければならないのでしょう。ただでさえ，織田家は豊かです。人材も揃っています。そんな織田家に少しでも姉小路が追いつくためには，国内に投資したほうがいい。そう思うとしても，成長には時間がかかりますし，条件が揃わなければ互角になることさえもできません。生まれながらのデブがジョッキーになりづらいように，人にも国にも向き不向きがあるのです。劣後な国が生き残るには，最低でもこっちに矛が向かない外交こそが，己の身を守る最高の武器になるわけであります。

　土下座――それは甘美な言葉であります。すべてを投げ打って，不退転の覚悟で敢行する土下座って麗しいと思うんですよ。もうね，織田家に助けてくださいと。どうか，慈悲を賜りたいと。広い心で我々を受け入れてほしいと。その厚い胸に顔をうずめて泣きたいと。ホールミータイ，ホールミータイと。
　この姉小路家を挙げて，末永き織田家の一員として末席に加えていただけるような交渉をするしか，国を守る方法はないのだと，住民を幸せにしてやることはできないのだと，そう思ったのです。
　CHO☆NAN頼綱の「資金が足りませんぞ。米を売ったらどうですか（笑）」という無慈悲なあおりサジェスチョンを横目で見つつ，良頼パパは涙を拭いて己が最善のソリューションと信じる織田家との縁組に邁進するのでありました。

　CHO☆NAN頼綱のために，織田家の娘をもらう。良頼パパは今日も織田家に土下座しています。

姉小路家全景。勢力は伸びたがまだまだ安心できる状態ではない。どこから攻め込まれてもいつでも滅ぶ自信がある，それが弱小大名のプライド