レビュー
初心者からベテランまで使えて,モバイル以外にMacも対応と,懐の深い製品
AVerMedia AVT-C878
ただ,実際にPS4側の機能でキャプチャしようとすると,ゲーム側でけっこうキャプチャが制限されていたり,また,画質の向上や実況音声の追加などをしようとすると,急に難度が上がってしまったりする。
そういう背景もあって,最近のキャプチャデバイスは,据え置き型ゲーム機にはないお手軽さや,高い画質をウリにする傾向にある。今回取り上げるAVerMedia Technologies(以下,AVerMedia)製のゲーマー向けビデオキャプチャデバイスの新製品「AVT-C878」(Live Gamer Portable 2)も,まさにその方向を向いた製品だ。
※本記事中ではいくつかYouTubeムービーを掲載していますが,これらはすべて,参考のためのものです。未編集のムービーは4Gamerにアップしておいたので,興味のある人はダウンロードのうえ,手元のプレイヤーで再生してみてください。
→未編集ムービーをダウンロード(rar自己解凍方式:分割ファイル1,分割ファイル2,分割ファイル3,分割ファイル4)
単体ではハードウェアエンコーダを使い,PC&Mac接続時はソフトウェアエンコード仕様となるAVT-C878
- AVT-C878(Live Gamer Portable 2):単体録画モードおよびUSB 2.0接続のPCモード両対応。ハードウェアエンコーダ搭載。録画最大1080/60p対応
- GC550(Live Gamer Extreme):USB 3.0接続のPCモード対応。ハードウェアエンコーダ非搭載。録画最大1080/60p対応
- AVT-C875(Live Gamer Portable):単体録画モードおよびUSB 2.0接続の「PCモード」両対応。ハードウェアエンコーダ搭載。録画最大1080/30p対応
いま唐突に出てきた「単体録画モード」と「PCモード」だが,前者はPCと接続せず,単体でキャプチャデバイスとして使う動作モード,後者は,PCと接続し,基本的にはAVerMedia製キャプチャソフトウェア「RECentral 3」と組み合わせて使うための動作モードである。
なお,microSDカードスロットは単体録画モード時に映像データを保存するためのもので,筆者が確認した限りでは,容量64GBのカードまで利用できた。
製品ボックスには本体とマニュアルのほか,HDMIケーブル(Type A−Type A),USB 2.0ケーブル(micro-B−Type-A),4極3.5mmミニピンケーブルとなっており,たとえばPS4と接続するときは,テレビなどのディスプレイデバイスとつながっているHDMIケーブルをAVT-C878側のHDMIパススルー出力と接続し,別途,AVT-C878に付属するHDMIケーブルでPS4のHDMI出力とAVT-C878側のHDMI入力間をつなぐ。そしてPS4のUSBポートとAVT-C878側USBポートを,AVT-C878の付属ケーブルでつなげば,接続周りの下準備は完了である。
さすがはハードウェアエンコーダ搭載モデルといった簡単さである。
一方,PC録画モードを選択した場合だが,AVT-C878自体は,ドライバレスで動作する。しかもWindowsだけでなくmacOSにも対応。ドライバいらずで,またGC550のように「対応するUSBポートを探す」という手間も要らないので,とくに初心者には扱いやすいだろう。好感触だ。
設定を行うのに必要なのは,Windows環境の場合,上でも名前を挙げたRECentral 3,macOSの場合だと「Live Gamer Portable 2 Setup Tool」(以下,LGP2 Setup Tool)で,いずれもAVerMediaのダウンロードページから入手できる。
macOSはさくっとAVT-C878を認識してくれるので,設定自体はそれほど大変ではなく,そもそもWindows環境でRECentral 3以外の録画&配信ツールを使いたい場合も当該ツールの勉強は必要になるので,大差ないといえばそれまでだが,macOSの場合,「買ってすぐ使う」ための録画ソフトがないことは押さえておきたい。
むしろPC録画モードで重要なのは,選択すると,AVT-C878側のハードウェアエンコーダが無効化されることだ。AVT-C878で処理したデータをそのまま受け取る機能があってもいいようには思ったが,ドライバレスで動作するAVT-C878でそれを実現するのは難しいのだろう。
結果として,PC録画モードにおけるPC側のスペックは,以下のとおりとなる。
●デスクトップPC
- CPU:Core i5-3300以上(Core i7-3770以上推奨)
- GPU:GeForce GTX 650もしくはRadeon R7 250X以上
- メインメモリ容量:4GB以上(8GB以上推奨)
●ノートPC
- CPU:Core i7-4710HQ以上
- GPU:GeForce GTX 870M以上
- メインメモリ容量:8GB以上(16GB以上推奨)
PCゲーム用にゲームPCを持っている人であればほぼ全員がクリアしているであろうレベルだが,普段は据え置き型ゲーム機を中心にゲームをプレイしていて,PCはモバイル向けのものしか手元にない,なんて場合だと,PC録画モードで要求する水準を満たせない可能性が高い。
なお今回は,Windows環境とmacOS環境の両方でテストすべく,筆者手持ちの「iMac 5K Late 2015」を用いて,Windowsは「Bootcamp」で利用することにした。スペックは以下のとおりだ。
- CPU:Core i7-6700K
- GPU:Radeon R9 M395X(グラフィックスメモリ容量4GB)
- メインメモリ容量:64GB(PC3-14900 DDR3 SDRAM 16GB
× 4) - グラフィックスドライバ:Radeon 15.11(※Bootcamp時における各種ドライバは,Appleからの配信待ちとなるため,基本的に古い世代のものとなる)
RECentral 3を使ってみる
RECentral 3は,AVerMediaが開発した,同社製キャプチャデバイス専用のアプリケーションで,録画や実況配信を行える。また,設定も豊富に用意されており,単体録画モードが初心者向け,もしくはモバイル環境向けだとすると,PC録画モード+RECentral 3はベテラン向けということになるだろう。
ただ,説明は日本語で,かつ設定も分かりやすいため,取っつきやすいとは思う。
RECentral 3は,プレビュー画面の左と下にインタフェースがあるデザインだ。プレビュー側の表示遅延はカタログスペックで0.18秒。この手のプレビュー画面としては短いほうだが,シビアなタイミングを要求するゲームだと厳しい。ここを見ながらゲームをプレイできるのは,せいぜいコマンド選択式のゲームが限度だろう。
録画/ライブ配信メニューでは,「映像設定」「デバイス音声」「録音設定」をまず選択したうえで,録画するのか配信するのかを選び,詳細な設定を詰めていくことになる。
録音設定の選択肢は「マイク/その他のサウンドデバイス」「PC音声」の2つで,前者はPCと接続したマイクやWebカムの音声を,後者はPC側で動かしているアプリケーションからのサウンドをそれぞれRECentral 3で取得するためのもので,このあたりは,ひとまず触らなくても問題はない。
RECentral 3:録画
というわけで録画周りだが,まず録画品質の選択肢は「最高」「良い」「標準」「カスタム」の4つで,前3者がプリセットである。それぞれの詳細設定は以下のとおりだ。
- 最高:1920×1080p,59.94fps,映像ビットレート30Mbps,音声ビットレート256kbps
- 良い:1280×720p,30fps,映像ビットレート12Mbps,音声ビットレート128kbps
- 標準:848×480p,30fps,映像ビットレート4Mbps,音声ビットレート128kbps
- カスタム:576×360p〜1920×1080p,15〜60fps,映像ビットレート0.3Mbps〜60Mbps,音声ビットレート32kbps〜256kbps
端的に述べて,よほどストレージ容量に制約があるのでもなければ,プリセットは最高を選んでおけば問題ないだろう。カスタムで,映像ビットレートを60Mbpsまで上げること自体はできるが,上げても目立った違いは確認できなかったからだ。もやもやとしたガスがやたらとヌメヌメと動くようなシーンでは違いを体感できることもあるが,その程度である。どちらかといえば,「1280
RECentral 3:配信
録画品質の設定項目は,すぐ上がタブになっているが,そこで右側のタブを選択すると,配信機能を選択できる。
ここでは「ライブ配信プラットフォーム」から,TwitchおよびYouTube Live,ニコニコ生放送,Hitboxを選択でき,選択後はプラットフォームごとに,「一般」タブでアカウント情報,「映像設定」タブで解像度やビットレートを選択可能だ。
なので,解像度と映像および音声ビットレート,フレームレートは,配信先のプラットフォームごとに,ユーザーがそれぞれカスタム設定したほうがいいだろう。
使っていて気になったのは,突然,登録したはずのログイン情報が消えるケースがあること。詳細設定のタブを弄っていたり,RECentral 3を起動し直したりすると生じているので,このあたりにバグがあるのだろう。なんとかしてほしいところだ。
RECentral 3:ファイル管理/シェア,設定
まず,RECentral 3側の設定としては,録画ファイルの保存先や,マイクの有効/無効切り替え,録画などのショートカットキー指定などといったものがある。
AVT-C878本体用の設定としては,本体側にある大きなスイッチを押したときの挙動設定のほか,HDCP検出機能のオンオフ,単体録画モードで使用するプリセットの選択がある。単体録画モードにおける録画画質設定の変更にはRECentral 3の導入が必須なので,この点はくれぐれも注意してほしい。
さらに言うと,単体録画モードで利用できるプリセットは「最高」「良い」「標準」の3つで,呼び名自体は(「カスタム」がないのを除くと)PC録画モードと同じなのだが,プリセットの設定値は以下のとおり異なっている。
- 最高:1920×1080p,60fps,映像ビットレート21.66Mbps,音声リニアPCM
- 良い:1920×1080p,60fps,映像ビットレート16.65Mbps,音声リニアPCM
- 標準:1920×1080p,60fps,映像ビットレート11.62Mbps,音声リニアPCM
以上のように,解像度と音周りは共通で,映像ビットレートのみが異なる設定だ。PC録画モードと同じ呼び名で,設定が異なるというのは,正直,分かりやすくはない。
AVT-C878側の設定に「HDCP検出機能」とあるが,これはファーストインプレッションでも触れたとおり,iOSデバイス向けの項目。機能としては,AVT-C878自体がHDCPの読み込み対応するかどうかというものだ。
デフォルトだと同機能はオンになっており,冒頭で記したようにPS4の設定でHDCPを無効化するだけでいい。またキャプチャはせず,torneやテレビ,あるいはビデオ関連のアプリを使用したい場合は,PS4側のHDCP設定を有効にするだけで使用可能になるため,配線し直す手間がない。とても便利だ。
RECentral 3:シーン
最後に,下段メニューにある「シーン」タブも押さえておきたい。
シーンタブを選んだ状態だと,キャプチャ画面にWebカムや静止画,文字,別の動画,Webブラウザを重ねて表示できるようになる(※Webカムで撮影した映像の背景を削除する機能があるらしいのだが,今回は機能しなかった)。
画像や文字だけでなく,動画とWebサイトも加えられるのはなかなか楽しい。ゲームのプレビュー画面も含めて,それぞれ独立してサイズを変更できるため,録画・配信における自由度は高いと言っていいだろう。
録画および配信中であってもWebサイトはある程度操作可能で,Webページの閲覧程度であれば問題なかったことを付記しておきたい。
録画性能や負荷傾向を見る
使い方を押さえたところで,録画サンプルを使い,品質傾向をチェックしてみよう。ここでは,PS4版「Call of Duty: Infinite Warfare」のキャンペーンモード「高まる驚異」冒頭のシーンを使う。PS4側の出力設定は,「解像度」「RGBレンジ」「Deep Color」ともに「自動」だ。
AVT-C878側では,単体録画モードの最高,良い,標準プリセットと,PC録画モードの最高,良い,標準プリセット,そしてPC録画モードから「1920×1080p,60fps,映像ビットレート60Mbps,音声ビットレート256kbps」という,最も高い設定にしたカスタムの4つで,PS4 Proのシェア機能と比較して,画質面におけるメリットの有無をチェックしたい。
以下,ずらっと並べてみたので,再生してもらえらば幸いだ。
並べてみると,単体録画モードの結果は(ファーストインプレッション記事における結果がそうだったように)PC録画モードにおける結果より,やや明るく,シーンによっては白みがかったような印象も受ける。単体録画モードではPS4側の出力設定を弄ってみたりもしたのだが,効果はなかったので,このあたりはファームウェアのアップデート待ちということになるだろうか。
また,同じ「最高」プリセットでも,よりビットレートの低い単体録画モードでは,煙や雲の演出で映像的に厳しくなったりもしているが,これはmicroSDカードの性能を勘案したビットレート設定がゆえだろう。AVerMediaのQ&Aページを見ると,「Class 10」以上のmicroSDが推奨されているが,いまからAVT-C878用にmicroSDカードを購入する場合は,「UHS-1対応」と記載のあるものを選ぶといいだろう。
いずれにせよ,現時点で純粋に画質優先であれば,PC録画モードの最高を選んでおくのが無難,ということになると思う。
次にスクリーンショットである。RECentral 3は「スナップショット」として,スクリーンショット取得機能を持っているのだが,下に示した結果を見てもらうと分かるように,画質はあまりよろしくない。記念として使うにはのっぺりしすぎているので,メモ用が関の山ではなかろうか。
PC録画モードのCPU負荷は,AMD製GPUのハードウェアエンコードを有効化している状態で,最高プリセット選択時にざっくり50%程度。「良い」「標準」でも誤差範囲で,カスタムで設定を最も高く指定した場合でも55%程度だった。
ソフトウェアエンコードだと60%前後にまで上がったが,致命的ではない,とも言える。
なお,ストレージの転送速度は,10MB/sも出ていれば十分だ。保存先にUSBストレージを選んでも問題ないほどである。
楽に録画したい初心者から拘りつつ楽に配信したいベテランまで使えるAVT-C878
また,単体で使うときだけでなく,PCおよびMacとUSB 2.0接続してお手軽に1080p/60fps録画でき,さらにRECentral 3のシーン機能を使えば,オーバーレイ表示も可能というのは,かなり今風だと言える。単体録画モードの色合いが気になる人はいるだろうが,現時点で懸念材料はそれくらいだ。
「手軽にキレイなゲーム録画映像を残したい。できればあまり難しいことを考えずに」という人から,ハードウェアの互換性をあまり気にすることなく,お気に入りの配信ツールで1080/60p映像を配信したい上級者も,AVT-C878は要チェックの製品である。
AVT-C878をAmazon.co.jpで購入する(Amazonアソシエイト)
AVerMediaのAVT-C878製品情報ページ
- 関連タイトル:
AVerMedia
- この記事のURL: