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[SPIEL’14]「カタン」「アンドールの伝説」,そして「街コロ」――老舗ボードゲームメーカーKOSMOSが語るヒットの秘訣とは
KOSMOSといえば,歴史的な傑作ボードゲーム「カタンの開拓者たち」の発売元として知られ,いわゆるドイツゲームの歴史を切り開いたと言って過言ではない出版社だ。近年でも2012年に発売された「アンドールの伝説」が翌年のドイツ年間ゲーム大賞に選ばれたほか,各国のゲーム賞を受賞するなど,高い評価を受けている。
ほかにもアブストラクトゲーム(オセロや五目並べのように,具体的なテーマを持たない抽象的なゲーム)の「7Steps」,日本発の都市開発ゲーム「MACHIKORO」(邦題:街コロ)などが新作としてラインナップされていて,若い女性から家族連れまで,幅広い年齢層のボードゲーマー達が会場で楽しそうに遊んでいたのが印象的だった。
また休日のため多くの観客が訪れる18日には,「カタンの開拓者たち」のデザイナーであるKlaus Teuber(クラウス・トイバー)氏も会場を訪れ,サイン会などでファンとの交流を楽しんでいた。
ドイツゲームの黎明期から現在まで,多くの人に愛されるタイトルを生み出し続けているKOSMOS。その秘密はどこにあるのか。同社で編集部門のプロダクトマネージャーを務めるWolfgang Lüdtke氏に話を聞いてみた。
KOSMOS公式サイト(ドイツ語)
家族が楽しい時間を過ごせるボードゲームを――KOSMOS プロダクトマネージャー・Wolfgang Lüdtke氏インタビュー
4Gamer:
2014年6月に発売されたばかりの新作「Die Siedler von Catan - Das Alte Ägypt」について聞かせてください。古代エジプトを舞台にしたカタンとのことですが,どんなゲームなのでしょうか。
ゲームの基本はカタンと共通です。プレイヤーはファラオになってエジプトを開拓し,ピラミッドやスフィンクスを建設していくことになる。違うのは古代エジプトを再現するための特別なルールやタイル,コマが用意されていることですね。例えばナイル河のタイルとか。
4Gamer:
なるほど。このような歴史をテーマにしたカタンは,今後シリーズ化されていくのでしょうか。
Wolfgang氏:
いくつかのアイデアは持っていますが,それはやはり今作の結果次第です。ゲームを作るのには,非常にお金がかかりますから(笑)。でも多くのプレイヤーからの支持があるなら,今後もさまざまなものを作っていきたいと考えています。
4Gamer:
それは楽しみです。アイデアというのは,例えばどんなものがあるのでしょうか。例えば,宇宙カタンとか……。
Wolfgang氏:
それはもうありますよ。「Die Sternenfahrer von Catan」(邦題:カタンの開拓 宇宙編)ですね。5〜6人用の拡張セットもありますし,2人対戦用のカードゲーム版も作りました。
4Gamer:
ああ,そうでした(笑)。今後もそうしたダイナミックなものを期待して良いのでしょうか。
Wolfgang氏:
……我々としては,まず基本セットを大事にしたいと考えています。もしかすると,あなたは「ローマ帝国の危機」(2006年に発売されたローマ版カタン)のようなもの,あるいは石器時代が舞台のカタンを遊びたいと思うかもしれない。でも,それは土台となる「カタンの開拓者たち」あってのものなんです。……残念ながら,今はこれぐらいしかお答えできません(笑)。
4Gamer:
分かりました。ではもう一方の目玉タイトル「Die Legenden von Andor: Die Reise in den Norden」についてはいかがでしょう。どんなゲームなのですか?
Wolfgang氏:
「アンドールの伝説」の拡張セットにはすでに「星の盾」が出ていますが,これはストーリーを拡張するものでした。今回の「Die Reise in den Norden」では,プレイヤー達は北の国の危機を救うため,海を越えて冒険に旅立つことになります。そのため,基本セットのマップと接続できる新たなマップやゲームボード,トークンなどが追加されます。
ストーリーではなく,世界そのものが広がる訳ですね。
Wolfgang氏:
ええ。我々としては,次に南の国での冒険を扱う拡張セットも計画しています。将来的には3枚のマップを接続して,アンドールを中心とした広大なマップで冒険が楽しめるわけです。
4Gamer:
巨大なマップ! それはワクワクします。南での冒険はいつ頃になりそうですか?
Wolfgang氏:
2年ほど時間をください。2016年以降の発売になる予定です。
4Gamer:
楽しみにしています。ところで高い評価を得ることになった「アンドールの伝説」ですが,その理由はどこにあったとお考えですか。
Wolfgang氏:
物語ですね。多くの人は物語を紡ぐことに大きな喜びを抱きます。我々はアンドールにファンタジー世界を求めたのです。
4Gamer:
「アンドール」が出たとき,私はとても驚きました。KOSMOSの代名詞というべきカタンは非常に洗練されたボードゲームですが,物語性は薄いタイトルでした。一方で,RPG風の協力型ゲームである「アンドール」は,そうした洗練さよりも終わりのない物語性を重視しているように思える。にもかかわらず,ルールはとてもシンプルです。
Wolfgang氏:
それは我々としても誇るべき点だと思っています。アンドールはファンタジーゲームであると同時に,ファミリーゲームであるのです。ルールは最初の4ページだけで,次のページを開けばもう冒険が始まる。“ゲーマーズゲーム”(ヘビーゲーマー向けの複雑なゲーム)であれば分厚いルールブックでも良いのでしょうが,我々が目指しているのは家族みんなで遊べる“みんなのためのゲーム”なんですよ。
「街コロ」が「MACHIKORO」になるまで
もう一つ,KOSMOSから発売されることが決まった「MACHIKORO」について聞かせてください。同作は日本のゲームデザイナーであるグランディングの菅沼正夫氏がデザインした「街コロ」の翻訳版ですが,KOSMOSはなぜこのタイトルを選ばれたのでしょうか。
Wolfgang氏:
ポテンシャルを感じたからです。昨年このゲームと出会った時,そこに「カタン」と同じような可能性を見出しました。ダイスを振り,建物カードを買って街を大きくしていくゲームですが,ただそれだけで楽しいんです。これは素晴らしいことです。
4Gamer:
ああ,確かに(笑)。
Wolfgang氏:
さらに素晴らしいのはインストラクションです。誰もがすぐにゲームを覚えられてゲームを楽しめる。例えば「ドミニオン」のようなゲーマーズゲームの場合,ルールはすぐに覚えられても,ゲームに対しての素養の差が,すぐにプレイヤーの間に格差を生んでしまいます。しかし,ダイスを使う「MACHIKORO」は,皆同じ地点からのスタートで,ゲームを平等に楽しむことができます。
4Gamer:
おっしゃるとおりです。ですが,運の要素が強すぎるという評判を耳にすることもあります。
Wolfgang氏:
確かにコアなゲーマー,例えばアメリカ市場に多い経験豊かなベテランの中には,このゲームを「ふふん」と鼻で笑う人もいるでしょう。でも家族で遊ぶような層からは,良い反応を得られています。何より,私が遊んで楽しいんです。愛していると言っても過言ではありません(笑)。
4Gamer:
ああ,それは本当に素晴らしい。「街コロ」は良いパブリッシャを見つけましたね。では,日本のほかのタイトルはいかがですか。「MACHIKORO」に続いて,日本のボードゲームを手がける予定はあるでしょうか。
Wolfgang氏:
具体的なタイトルを挙げることはできませんが,この日曜にはJapon BrandのTAK(健部伸明氏)と会う予定です。彼が紹介してくれるタイトルは,どれも日本独自のユニークなアイデアがたくさん詰まっていて,いつも夢を見ているような気持ちになるんですよ。カナイセイジさんの「ラブレター」もそう。ペガサスから発売されることになったけど,我々はあのゲームが大好きなんですよ。まさにラブ・ラブレターだね(笑)。
4Gamer:
カナイさんに伝えておきます(笑)。最後に,KOSMOSのゲーム制作における秘訣――ポリシーを改めてお聞かせ願えますか。
Wolfgang氏:
我々は,家族が楽しい時間を過ごせることが最も重要だと考えています。だから,常にみんなが楽しめるゲームを作りたい。それがKOSMOSのゲームなんですよ。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
KOSMOS公式サイト(ドイツ語)
- 関連タイトル:
アンドールの伝説 完全日本語版
- 関連タイトル:
アンドールの伝説 拡張 星の盾 完全日本語版
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