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「マクラーレンP1」のトップ開発ドライバーが「Forza Motorsport 5」をプレイ。難関コース ニュルブルクリンクに挑んだ感想は?
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「Forza Motorsport 5」公式サイト
4Gamer.net「Xbox One」特設ページ
説明会では,最初に登壇した日本マイクロソフトのインタラクティブ・エンターテインメント・ビジネス Xboxプロダクト・マーケティンググループ プロダクトマーケティングマネージャーである南雲 聡氏からForza 5の基本情報が紹介された。
Forza 5は,Xbox Oneの卓越したグラフィックスパワーとネットワーク技術を駆使した新世代のレーシングゲームで,リアルさを極限まで追求することを信条として開発されたという。また,プラットフォームがXbox 360から新世代機Xbox Oneに移ることを機会に,グラフィックスエンジンと車両物理シミュレーションを一新させているとのことだ。
グラフィックスの描画解像度は1080pを達成するとともに,フレームレートは60fpsを維持。さらに業界初のクラウドフィードバック型AIシステムを採用しており,クラウド側に集約されたプレイヤーのドライビング特性のデータからAIプレイヤーを構成,ライバルプレイヤーとして登場させる仕組みが導入されている。
カーラインナップはクラシックカーの名車から一般的なロードゴーイングカー,そして最新スーパーカーまでが揃い,まさに「バーチャル世界で運転できる自動車の百科事典」を体現しているタイトルと言えるだろう。
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筆者から技術的な部分を補足させてもらうと,Forza 5のグラフィックスエンジンは「エネルギー保存の法則」に則った「物理ベースレンダリング」を採用している。ライティングシステムは「Image Based Lighting」(IBL)で,コース各所で事前取得した無数のキューブマップを全方位光源として用いる仕組みを実装。このキューブマップ群を事前に異なるボケ具合にしたバリエーションを用意しておき,シェーディング/ライティングする素材の粗さ(Roughness)に応じて,それらを適宜選択するアルゴリズムとなっている。
ちなみに,Forza 5では物理ベースレンダリングにおいて,鏡面反射計算にBlinn-Phong法,拡散反射計算にはLambert法を採用していることが明かされている。こうしたIBLベースの物理ベースレンダリングは,Xbox OneやPlayStation 4世代のゲームグラフィックスでは標準的な立ち位置を確立しつつあり,Forza 5はローンチタイトルでありながらしっかりとトレンドを押さえてきた格好だ。
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車両物理シミュレーションも従来のものから世代を一新させており,CAE(Computer Aided Engineering)用途や業務用の航空機,車両のシミュレーション開発を手がけている米Calspan社との共同開発で,300km/hオーバーの超高速域の挙動も正確に再現することが可能となったという。すなわち,Forza 5ではグラフィックスの見た目だけではなく,スーパーカーの“乗り味”まで再現しているというわけだ。
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Goodwin氏から見た
Forza 5のニュルブルクリンク北コースとP1の出来映え
そんなForza 5のイメージカーに選ばれたのが,英マクラーレンのスーパーカー「マクラーレンP1」である。
現在,マクラーレンのエンジニア達は日本国内で開催されるレースイベントのために来日しており,今回の説明会には同社のトップ開発ドライバーであるChris Goodwin(クリス・グッドウィン)氏が特別ゲストとして招待されていた。
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Goodwin氏によれば,マクラーレン社では15年前より,独自開発のシミュレータを用いて車両開発を行っているそうだ。そのシミュレータには世界各地のコースデータが搭載されており,新規開発車両のさまざまなセッティングを模索したり,想定スペックを決定したりするための事前テストに用いられている。そのドライブ体験は実車とほぼ同じで,ベテランドライバーのGoodwin氏ですらシミュレータであることを忘れてしまうほどだという。
さて,Forza 5ではドイツの名門コース「ニュルブルクリンク北コース」(Nordschleife,ノルドシュライフェ)が,無料の追加コンテツとして提供される。
ニュルブルクリンク北コースは,世界の自動車メーカーが新規開発車両を鍛え上げるのに活用している全長22.8kmにも及ぶロングコース。その周回タイムは,自動車のベンチマークタイムとしてしばしば用いられることで有名だ。
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日本を代表するスポーツカー,ホンダNSXは当時(1990年)の日本車最速レベルである7分56秒を記録。昨年は日産GT-R NISMOが7分8秒を達成して話題になった。業界では周回タイムが7分台に入れば「かなりの高性能車」と評価されるのだが,昨年,なんとマクラーレンP1が6分台のタイムをたたき出したというニュースが報道されている。そのとき,P1を操縦していたのが,今回登壇したGoodwin氏なのである。
ちなみに,マクラーレンP1の公式タイムは現時点では非公開となっている。これは,ライバルとなる同クラスのスーパーカー「ラ・フェラーリ」「ポルシェ918」などの競合を避けるため,と言われている。
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同コースの全開テスト走行をしたのは,今からちょうど1年前のことだそうで,ロングストレートでのトップスピードは350km/hに到達したという。Goodwin氏は,Forza 5のコースについて,日向や日陰の感じも実際のコースとそっくりで,高低差や路面のバンプ感もかなり正確だ,と驚いていた。
それでは,Forza 5とマクラーレンのシミュレータを比較すると,どこがどう違うのだろうか。この点についてGoodwin氏に質問をぶつけてみたところ,以下の回答が返ってきた。
「我々のシミュレータは乗り込んだ車体が実際に動き,疑似的なG(慣性力)が再現される。当然だがForza 5にはそういった要素がないので,そこが相違点の1つとして挙げられる。ただ,正直に言って,グラフィックスの見映えはForza 5のほうが断然いい(笑)」
Forza 5のグラフィックスについて,Goodwin氏は相当高く評価しているようで「ボディ全体の曲面の感じも実車どおりに再現されている。ライト周り,ライトの内部ディテールも完璧だ」と絶賛していた。
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さて,Forza 5に登場するマクラーレンP1の再現にあたっては,マクラーレンはどのようなデータを供与したのだろうか。この点には「どのような状況下でどのような四輪グリップを発揮するのか……といったデータを提供した」とのことで,さすがに同社のシミュレーションエンジンの技術を供与するといったことはなかったようだ。
なお,今回の説明会では,実際にGoodwin氏がForza 5のニュルブルクリンク北コースでマクラーレンP1を操縦するデモプレイが行われた。その様子を収めたムービーを以下に掲載しよう。
デモプレイを終えたGoodwin氏は,以下のコメントを残している。
「Forza 5は,我々のシミュレータの挙動と違う部分が確かにあるとは思う。ただ,ライン取りや局面ごとに選択するギアは同じだった。我々のようなプロのテストドライバーは,シミュレータと実車の違いを経験で吸収して走る能力が身についているが,Forza 5はその能力の範囲内で運転することができたので,よくまとまっていると言えるでしょう」
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Goodwin氏がマクラーレンP1を解説
Goodwin氏によるプレゼンテーションの最後は,Forza 5のイメージカーである「マクラーレンP1」についての解説が行われた。
マクラーレンP1は,マクラーレンMP4-12Cの上位モデルとなる製品で,スーパーカー然としていながらも実はハイブリッドカーだ。3.8LのV8ツインターボエンジンとモーターを組み合わせており,ガソリンエンジンと電気モーターの総出力は900馬力オーバーとなっている。マクラーレンP1は,ハイブリッドシステムを燃費向上の用途ではなく,走行性能向上とパワー獲得のために応用した車種なのだ。
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余談だが,スーパーカーの世界ではこうしたハイブリッドカーの波がやってきており,先ほど少しだけ触れたフェラーリやポルシェのトップエンドモデル「ラ・フェラーリ」や「ポルシェ918」もハイブリッドカーだ。さらに言えば,ホンダが来年に発売予定の次世代NSXもハイブリッドカーである。なお,マクラーレンP1とラ・フェラーリは後輪駆動だが,ポルシェ918と次世代NSXは前輪モーター駆動,後輪ガソリンエンジン&モーター駆動の四輪駆動車になる。
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P1に採用されている先進技術のうち,最もホットなトピックになっているのはサスペンションシステムだ。これのもとになっているのは,マクラーレンMP4-12Cに採用された「Proactive Chassis Control」と呼ばれるシステムで,四輪を支えているそれぞれのサスペンションダンパー内のオイルラインを相互に連結させ,走行状態に応じてリアルタイムに反応することで,各輪の衝撃減衰力を積極的にコントロールする仕組みになっている。
上位モデルのP1には,このシステムをさらに進化させた「Race-active Chassis Control」が採用されているのだ。
Goodwin氏が「P1はマクラーレンの精神が生かされ,最新で最高の技術を投入した製品である」と誇るのもうなづける。
MP4-12Cでは車体を支える部材として,一般車のサスペンションのようにコイルスプリング(バネ)を採用していたが,P1の「Race-active Chassis Control」ではバネを無くし,密閉したタンクに封入した気体でバネの役割をさせるシステムに改良されている。ちなみに,こうした「気体バネ」のシステムはハイドロニューマチック(Hydropneumatic)と呼ばれている。
なお,マクラーレンP1は約1億円の価格で発売されたが,「残念ながら生産予定台数の375台はすでに完売してしまった」(Goodwin氏)とのこと。下位モデルにあたるマクラーレンMP4-12Cは「650S」としてマイナーチェンジし,日本でも正規ディーラーで発売されている。こちらはカタログモデル量産車なので完売の心配はなく,価格は約3300万円からとなっている。
おわりに
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なお,今回のデモで使われていたステアリングコントローラはMad Catz製の「Force Feedback Racing Wheel for Xbox One」だった。Xbox Oneでは,Xbox 360用のステアリングコントローラは対応していないとのことなので,Forza 5を本格的に楽しみたい人はご注意を。
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- ライター:西川善司
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