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GeForce GTX 700
  • NVIDIA
  • 発表日:2013/05/23
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ASUS独自のデュアルGTX 760カード,その価値は? 「MARS760-4GD5」を高解像度環境で試す
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印刷2013/12/07 00:00

レビュー

ASUS独自のデュアルGTX 760カード,その価値は?

R.O.G. MARS760-4GD5

Text by 宮崎真一


MARS760-4GD5
メーカー:ASUSTeK Computer
問い合わせ先:テックウインド(販売代理店) [email protected]
メーカー想定売価:7万円台前半(※2013年12月7日現在)
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 ASUSTeK Computer(以下,ASUS)のゲーマー向け製品ブランド「R.O.G.」(Republic of Gamers)は,かねてより,同社独自設計のデュアルGPUカードを,「ARES」もしくは「MARS」として,定期的に投入してきている。
 ARESはAMD,MARSはNVIDIAのGPUを用い,その時点で考えられる最高の性能を追求する……というのがそのコンセプトだったのだが,2013年に登場した新モデル「MARS760-4GD5」は,その名のとおり,「GeForce GTX 760」(以下,GTX 760を2基搭載する製品となっている。つまり,これまでのARESやMARSとは毛色が少々異なる製品なのだ。

 GTX 760のデュアルGPUカードということで,330mm長の長さで3スロット占有という驚愕のサイズで話題を集めたデュアル「GeForce GTX 580」カード「MARS II/2DIS/3GD5」や,「Radeon HD 7970 GHz Edition」を2基搭載し,8ピン×3という補助電源構成を採用した「ARES2-6GD5」という従来製品ほどのインパクトは,MARS760-4DG5にはない。その意味ではR.O.G.のデュアルGPUカードは新世代を迎えたとも言えるが,果たしてこれは買いなのか否か。性能検証を通じて検討してみたい。


サイズはGTX 690より若干長い程度

R.O.G.シリーズらしく豪勢な基板設計


 GTX 760がどんなGPUだったかはGTX 760のレビュー記事を参照してもらうとして,さっそく,MARS760-4GD5を見ていこう。

MARS760-4GD5。カードは背面側も金属板で覆われている
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カード長は実測約282mm。クーラーは,カードの後方にはみ出さないタイプだ
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 気になるカード長は実測約282mm(※突起部除く)。これは,Kepler世代のNVIDIA公式デュアルGPUカードである「GeForce GTX 690」(以下,GTX 690)の同279mmよりもほんのわずかに長い計算だ。最近のハイエンドGPU搭載リファレンスカードと比べると,「GeForce GTX 780 Ti」が同266.7mm,「Radeon R9 290X」が同278mmだったので,やはりMARS760-4GD5のほうが少し長いことになる。

GPUクーラーは側面の一部が盛り上がっている
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 搭載されるGPUクーラーは,ASUS独自の「DirectCU II」。2スロット&デュアルファン仕様という,ハイエンドクラスのGPUを搭載するグラフィックスカードでは,比較的よく見られるタイプのものだ。従来のARESやMARSからは考えられないくらい小型だが,カードの側面で一部が約10mmほど盛り上がっており,内蔵のLEDによって「MARS」ロゴが赤く明滅するというあたりは,従来製品の特徴を引き継いだ部分といえるかもしれない。
 ちなみにこの明滅,周期はかなり長かった。

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 気になる公称最大消費電力は340W。補助電源コネクタは8ピン×2なので,PCI Express x16スロットも含めると375Wの供給が可能だ。

 GPUクーラーの取り外しはメーカー保証外の行為であり,外した時点で保証は受けられなくなる。付け加えると,MARS760-4GD5の場合,クーラーを留めるビスの1つに「これ剥がれたり傷ついたりした個体は保証対象外」というシールが貼られていることも断ったうえで,今回は評価のため,特別にクーラーを外してみよう。

背面の金属板を外したところ。金属板は,基本的には基板の補強用という理解でいいだろう。「ヒートシンクを固定するビスの台座経由で放熱を担っている」という可能性はゼロではないが……
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 さて,背面側のビスを全部外すと,MARS760-4GD5は,基板と背面の補強板,そしてDirectCU IIクーラーの3枚に下ろせるようになる。
 まずはDirectCU IIクーラーからだが,搭載される90mm角相当のファンは,クーラーの内部に埃が付着するのを防ぐ「防塵ファン」とのこと。しかも,GTX 760のリファレンスクーラーと比べて6倍ものエアフローを実現するという。
 ヒートシンクはGPUごとに1基ずつ用意され,「銅(Cu)が直接(Direct)触れる」というクーラーの名称どおり,ヒートパイプがGPUのダイに接触するような構造になっているのも分かる。ASUSによれば,DirectCU構造の採用によって,ヒートシンクの冷却性能は,GTX 690のそれと比べて25%向上しているとのことだ。

DirectCU IIクーラーを基板から取り外したところ(左)と,DirectCU IIクーラーを分解したところ(右)。右の写真で見える小さな基板は,MARSロゴを光らせるためのLEDが載ったものだ。要は,この基板を内蔵するために,カードの側面が盛り上がっているわけである。なお,ヒートパイプはヒートシンクあたり4本用意されており,なかなか豪華だ
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MARS760-4GD5の基板
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 基板は,GPUとグラフィックスメモリチップが電源部を挟むという,デュアルGPUカードでよくあるデザインが採用されている。
 電源部はGPUごとに5+1フェーズを採用。リアルタイムで変化する消費電力に応じて電流を正確に供給すべく,ASUS独自のデジタルVRMコントローラ「Digi+ VRM」がGPUごとに1基ずつ搭載されているのも目を引く。

2基のGPUに挟まれた電源部。コンデンサは,125℃の熱耐性と1万時間の製品寿命を誇るニチコンの「GTシリーズ」が採用されている
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 ちなみに電源周りの部品は,独自素材を用いて高密度で製造したチョークコイル「Super Alloy Choke」と,長寿命化を実現したコンデンサ「Super Alloy Capacitor」,そして対応電圧の拡大を果たしたMOSFET「Super Alloy MOS」からなる「Super Alloy Power」仕様になっているとも,ASUSは謳っている。確認したところMOSFETはInternational Rectifier製の「IR3550」だったので,電源部は1フェーズあたり60Aまでの電流を流せる計算だ。

 なお,電源部の傍らにあるヒートスプレッダ付きチップは,PLX TechnologyのPCI Express Gen.3対応スイッチ「PEX 8747」だ。2基のGPUは,GTX 690のリファレンスカードでも採用されるこのスイッチチップ経由でPCI Express x16インタフェースとつながっている。

カード背面にはPOSCAPがずらりと並ぶ
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 電源部の基板裏面には,「POSCAP」(導電性高分子タンタル固体電解コンデンサ)が搭載される点にも注目しておきたい。ASUSによれば,POSCAPの搭載により,消費電力が低い場面におけるノイズの低減と,通常動作時における信頼性の向上,そしてオーバークロック耐性の向上を実現できているとのことだ。

 そんな豪華な電源周りを持つこともあって,MARS760-4GD5の動作クロックは,ベース1006MHz,ブースト1072MHzと,リファレンスクロック比で順に約2.6%,約3.8%引き上げられている。一方,メモリクロックは6008MHz相当(実クロック1502MHz)で,これはリファレンスから変わっていない。

クロックアップ設定がなされたGTX 760(左)と,リファレンス相当と述べて差し支えないグラフィックスメモリ。メモリチップはSK Hynix製のGDDR5「H5GQ2H24AFR-R0C」(6Gbps品)だった
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 そんなMARS760-4GD5のスペックを,GTX 760やGTX 780 Ti,「GeForce GTX TITAN」(以下,GTX TITAN),GTX 690,そしてR9 290Xと比較したものが表1となる。

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現行のハイエンドグラフィックスカードと比較

解像度3240×1920ドットでのテストも実施


 テストのセットアップに入ろう。今回MARS760-4GD5の比較対象として用意したのは上の表1で名を挙げたGPUもしくはデュアルGPUカードだ。R9 290Xは,2つ用意された動作モードのうち,より高い性能が期待できる「Uber Mode」のみを利用することとし,以下「R9 290X Uber」と表記する。
 また,2枚のカードによる2-way SLI構成を比較対象としたGTX 760は以下「GTX 760 SLI」と表記するが,用意した2枚のカード,Palit Microsystems製の「NE5X760H1024-1042J」とASUS製「GTX760-DC2OC-2GD5」は,いずれもメーカーレベルで動作クロックが引き上げられたクロックアップモデルとなるため,EVGAのオーバークロックツールである「PrecisionX」(Version 4.2.1)を用いて,リファレンスレベルにまで動作クロックを下げている。プライマリとしたのはNE5X760H1024-1042Jのほうだ。

NVIDIAコントロールパネルの「システム情報」を開いたところ
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 MARS760-4GD5をはじめとするGeForceシリーズのテストに用いたグラフィックスドライバは,テスト開始時点の最新バージョンとなる「GeForce 331.93 Driver Beta」を利用。一方,R9 290X Uberでも同様に「Catalyst 13.11 Beta9.4」を用いている。テスト開始後,北米時間2013年12月3日に「Catalyst 13.11 Beta9.5」が登場したが,リリースノートの記載内容から,性能面に影響を及ぼすものではないと判断し,13.11 Beta9.4のままとした次第である。

 そのほかテスト環境は表2を参考にしてほしい。CPUの自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」は,テスト状況によって効果に違いが生じる可能性を排除すべく,UEFI(BIOS)から無効化している。

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 テスト方法は,基本的に4Gamerのベンチマークレギュレーション14.0準拠。ただし,15世代を先取りする形で「Far Cry 3」「SimCity」「F1 2012」を外し,代わりに「Battlefield 4」(以下,BF4),「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」(以下,新生FFXIVベンチ キャラ編),「GRID 2」のテストを追加した。

 BF4では,キャンペーンモードから「SHANGHAI」ステージを選択。同ステージの冒頭,ホテルへ車で移動するシーンにおける1分間の平均フレームレートを取得することとし,解像度ごとに2回実行して,その平均をスコアとして採用する。
 テスト時のグラフィックス設定は,「ビデオ」の「グラフィックのクオリティー」を「最高」とした状態を「高負荷設定」と決定。そこからアンチエイリアシング関連の二項目だけ「オフ」になるよう設定したものを「標準設定」としている。

 続いて新生FFXIVベンチ キャラ編では,「グラフィック設定プリセット」から「標準品質(デスクトップPC)」と「最高品質」を選択。プリセットおよび解像度ごとに2回ずつテストを実行し,平均をスコアとして採用する。GRID 2では「ULTRA」プリセットを選択のうえで,レギュレーションで規定する標準設定と最高設定を選び,こちらも設定・解像度ごとに2回ずつ実行し,その平均をスコアとすることにした。

MARS760-4GD5の外部出力インタフェースはDual-Link DVI-D×1,Dual-Link DVI-I×2,Mini DisplayPort×1。標準でDVIによる3画面出力をサポートする
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 テスト時の解像度だが,今回は少々変則的となる。まず,解像度は1920×1080ドットと2560×1600ドットに加え,「費用面で現実的な,4K解像度に近い設定」として,1920×1080ドット解像度の液晶ディスプレイを3枚縦置きし,3画面化した3240×1920ドット(アスペクト比27:16)という解像度も用意してみた。
 テスト対象がすべてウルトラハイエンドクラスということもあり,1920×1080ドットと2560×1600ドットでは高負荷設定(およびそれに準じた設定,以下同)でのみテストを行い,3240×1920ドットでは標準設定と高負荷設定のテストを行う,といった具合だ。

 ただし,「3DMark」(Version 1.1.0)と「BioShock Infinite」は,3240×1920ドットがサポートされていなかったため,本解像度におけるテストは省略する。


GTX 780 Tiと同程度のスコアを示す一方で

不釣合いなメモリバス帯域幅がネックとなる場面も


 以下,グラフ中に限り,MARS760-4GD5を「MARS760」と記載することと,グラフの並びは表1に準じる一方,グラフ画像をクリックすると,より負荷の高いテスト条件におけるスコア基準で並び替えたものを表示するようにしてあることをお断りしつつ,順にテスト結果を見ていこう。

 グラフ1は3DMarkの結果となるが,MARS760-4GD5のスコアはGTX 760 SLIとほとんど同じである。「Fire Strike」でGTX TITANとほぼ互角,GTX 780 Ti比で約95%というスコアに留まるところが,より描画負荷の高い「Extreme」プリセットでGTX TITAN比で約104%」のスコアを示し,GTX 780 Tiに並んできたというのは,負荷の高い状況に強いマルチGPU構成らしい結果といえそうだ。

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 続いてグラフ2,3はBF4のテスト結果だが,ここで面白いのは,2560×1600ドット以下と3240×1920ドットで,MARS760-4GD5の立ち位置が変わっていること。2560×1600ドットまではGTX 780 Tiを上回るスコアを示すMARS760-4GD5が,3240×1920ドットでは標準設定でGTX 780 Tiに並ばれ,高負荷設定では逆転を許しているのである。
 この理由だが,おそらくは,GK104コアを採用するGTX 760のメモリインタフェースが256bitに留まっており,GPUあたりのメモリバス帯域幅が192.13GB/sと,ハイエンドクラスのグラフィックスカードにしてはかなり低いためだろう。GTX 690もそうだが,MARS760-4GD5は,GPU性能の割にメモリバス帯域幅が低く,それが,超高解像度環境においてスコアを伸ばしきれない原因になっているのだと思われる。

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 「Crysis 3」のテスト結果をまとめたグラフ4だと,グラフィックスメモリよりもGPU負荷のほうが高いためか,全体的にMARS760-4GD5のスコアは良好だ。1920×1080ドットではGTX 780 Tiに対して約16%,2560×1600ドットでも約13%高いスコアというのは,なかなか景気がいい。
 一方,3820×1920ドットでは高負荷設定時に2-way SLI構成のスコアが軒並みスコアを落としてしまった。これはドライバの問題によるものと考えられる。

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 グラフ6は,BioShock Infiniteのテスト結果だ。BioShock Infiniteはグラフィックスメモリ負荷が比較的低いタイトルということもあって,MARS760-4GD5はGTX 780 Tiよりも安定的に高いスコアを示した。GTX 760 SLIより若干高いスコアが出ているのは,メーカーレベルでなされたクロックアップの効果と思われる。

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 公式の高解像度テクスチャパックを導入することで,グラフィックスメモリ負荷を高めてある一方,現行世代のハイエンドGPUからすると十分に“軽い”タイトルといえる「The Elder Scrolls V: Skyrim」(以下,Skyrim)。その結果がグラフ7,8だ。
 高負荷設定の1920×1080ドットではCPUボトルネックが確認されたため,それ以外を見ていくと,MARS760-4GD5のスコアはGTX 780 Tiと互角か,一歩届かないところに落ち着いた。おそらくここでもBF4と同様に,メモリ周りのスペックが足を引っ張っている,といったところか。

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 グラフ9,10は新生FFXIVベンチ キャラ編の結果である。BioShock Infiniteと同じく,新生FFXIVも今回用意したタイトルのなかでは負荷が低いほうだが,ここでMARS760-4GD5は,2560×1600ドットまででGTX 780 Tiのスコアを上回る一方,3240×1920ドットでは逆転を許した。超高解像度ではグラフィックスメモリ周りの弱点が露呈したということなのだろう。
 ただ,そのスコアは3240×1920ドットの最高品質で6879。スクウェア・エニックスが示す指標では,スコア7000以上で最高指標の「非常に快適」となるが,それに迫る数字となっている。

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 4〜5桁数字ではよく分からないという人のために,新生FFXIVベンチ キャラ編における平均フレームレートもグラフ9’,10’として示しておくので,参考にしてほしい。平均フレームレートだと,3240×1920ドットでもMARS760-4GD5のほうがGTX 780 Tiより高いスコアを示しているので,いくつかメモリヘビーなところでMARS760-4GD5はフレームレートを落とし,それが総合スコアに響いている可能性はありそうだ。

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 「GRID 2」のテスト結果がグラフ11,12で,Skyrimと同じく,高負荷設定の1920×1080ドットでCPUボトルネックによるスコアの頭打ちが出ている。ただそれを除くと,MARS760-4GD5のスコアは,GTX 780 Tiとおおむね同じ程度と見ていいのではなかろうか。
 すべてのテスト条件でGTX 760 SLIより高いスコアを示しているのも興味深いが,もちろんこれはクロックアップ効果によるものであろう。

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消費電力はかなり高め

GPUクーラーは相当に優秀


 前述のとおり,MARS760-4GD5の公称最大消費電力は340Wだ。TDPと比較するのもナンセンスな話ではあるのだが,GTX 690のTDPは300Wなので,消費電力はGTX 690と同等以上という可能性も考えられる。
 では,実際のところはどうなのか。ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力で比較してみよう。

 テストにあたってはゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。

 その結果がグラフ13で,端的に述べて,MARS760-4GD5の消費電力は非常に高い。アプリケーション実行時で,GTX 690より50〜68W,GTX 780 Tiより76〜102W高く,最初は何か計測方法を間違えたのかと思ったほどだ。スイッチチップがGTX 690と変わっていない以上,豪勢な基板デザインとメーカーレベルのクロックアップ(と動作電圧引き上げ)が消費電力の増大を招いたと理解するほかないだろう。アイドル時の消費電力がGTX 690と同程度なのは救いと言えるだろうか。

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 3DMarkの30分間連続ループ実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,TechPowerUp製のGPU情報表示ツール「GPU-Z」(Version 0.7.4)からGPU温度を計測した結果がグラフ14だ。

 テスト時の室温は24℃。システムはPCケースに組み込まず,いわゆるバラック状態で机の上に置いている。その意味でテスト条件は揃っている一方,GPUクーラーが異なり,カードごとに温度の計測方法も異なるため,横並びの比較にあまり意味はない。この点は注意してほしいが,MARS760-4GD5のGPU温度は高負荷時にも70℃台前半,アイドル時には30℃未満であり,冷却能力は高いと述べてよさそうだ。GPUごとに4本,計8本のヒートパイプが,効率よく熱を運べているのかもしれない。

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 なお,筆者の主観であることを断ったうえで付け加えると,その動作音はかなり静かだった。もちろん,それなりに動作音はするのだが,少なくとも,NVIDIAがその静音性の高さを謳っているGTX 780 Tiのリファレンスクーラーより動作音は低い印象である。


トータルバランスは正直なところ微妙ながら

品質からすればまずまずか


製品ボックス
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 ASUSによれば,MARS760-4GD5は,国内において7万円台前半の価格で12月中旬に発売予定とのこと。GTX 780 Ti搭載グラフィックスカードの実勢価格が7万8万3000円程度(※2013年12月7日現在)なので,後者の平均価格帯とだいたい同じくらいで登場するイメージでよさそうである。

 GTX 690を大きく超える消費電力や,グラフィックスメモリ負荷が高い場面でボトルネックとなるメモリバス帯域幅など,カードとしてのトータルバランスは,お世辞にもよいとは言いがたい。「マルチGPUの協調動作は高負荷に強い」というのが一般論であるものの,MARS760-4GD5の場合,それが100%当てはまるわけではないというのは,大きなマイナスポイントとなりそうだ。

製品ボックスには不思議な金属プレートが付属していた。これは,マグネット式でPCケースに貼って飾りにできると同時に,グラフィックスカードをマザーボードから抜くときにPCI Expressスロット側のストッパーを押す工具(?)としても使えるものだそうだ
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 ただその一方で,コストのかかっている基板設計や,性能の高いGPUクーラーが魅力的なのもまた確かである。万人向けとは決してないものの,ハイエンドクラスのグラフィックスカードを年末のタイミングで購入するにあたって,カード全体の品質にこだわりたい,人とは違う製品を使ってみたいという人の心をくすぐる製品には仕上がっているといえるだろう。

※2013年12月20日追記
 ASUSから,国内発売に関する詳細が明らかになった。それによると,27日にメーカー想定売価8万3000円前後で販売が始まるとのことだ。さすがにこの価格だと「ASUSファン向けアイテム」になってしまうと思われる。

ASUSのMARS760-4GD5製品情報ページ(英語)

ASUS日本語公式Webサイト

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