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[GDC 2023]Unityブースは裸眼立体視機能を搭載したノートPCの展示などで大盛況
今,改めてURPを使ってみよう!?
ブースの入口周りには,Unityを使って開発された最近の人気ゲームを展示した「MADE WITH UNITY SHOW CASE」が展開されていた。実際に,各作品をプレイすることもできるし,運が良ければ,開発者自身と会話もできる。
Unityは,スマートフォン向けの2D系ゲームを開発する際にもよく利用される。最近では,それほど高いスペックの端末でなくても,グラフィックス性能が底上げされていることもあり,Unityの3Dグラフィックスレンダリングパイプラインの基本セットに相当する「URP(Universal Render Pipeline)」を十分に動かせる用になってきた。ドット画的なビジュアルに3Dグラフィックスエフェクトを盛り込んだ,いわば2.5D的なビジュアルを作り込むことも可能なことから,人気を集めるようになっている。
ブースでは,「2DゲームをURPで作る方法」と称した展示コーナーがあり,その筋の専門家に質問できた。
URPベースのグラフィックス表現は,「多くのプラットフォームで互換性が高い」という特徴があることから,「複数のプラットフォームに対してゲームをリリースしたい」と考えているゲーム開発者にも人気が高い。
とはいえ,その時代の最新技術を活用する「HDRP(High Definition Render Pipeline)」と比べれば,URPの表現力は限定的だ。一方,猛者的なUnityユーザーからすれば「URPだって魅力的なビジュアルを作り込むこともできる」という意見もあるわけで,ブースでは「URPを使って魅力的なグラフィックス表現を行うためのコツ」が学べるサンプルが展示され,スタッフに使い方のコツも聞けた。
このコーナーで公開されていたのは,URPベースでゲームを開発する際に便利な新作のサンプルだ。日本の古風な景観をテーマにしたものや,宇宙船同士のドッグファイトをテーマにしたものなどが紹介されていた。
なお,これらのURPのテンプレートは,リリース時期は未定だが,Unity新バージョンリリースのタイミングで使用可能となるという。具体的には,Unity2023.2ベータ版で先行リリースされ,その後バグフィックスを経てUnity2023LTSと,遡ってUnity2022LTSにも搭載される予定となっている。
3Dモデリングしたら裸眼立体視ディスプレイで見映えをチェック!?
ディスプレイ技術好きな筆者の目にとまったのは,Unityブース内にあったオランダの3D立体視技術開発企業のDIMENCOの展示コーナーだ。
このコーナーでは,2020年に公開された「The Heretic」や,2022年に公開された「Enemies」といった,Unityの最新グラフィックス技術デモで使われていたデジタルヒューマン系のキャラクタを,裸眼立体視で観察できる体験が楽しめた。
ここで使われている裸眼立体視ディスプレイ技術を提供しているのが,前述したDIMENCOだ。この技術には「Simulated Reality」(SR)というブランドが与えられており,既にOEMの形で,いくつかのクリエイター向けノートPCやゲーマー向けノートPCに採用事例があるという。
ベースとなっている裸眼立体視技術は,いわゆるレンチキュラーレンズ方式で,これにそのレンズ効果を有効化,無効化するための液晶ベースのSLM(Spatial light modulator)が組み合わされる。無効化した場合は,レンチキュラーレンズがただの透明フィルムのような振る舞いになるため,普通の2Dディスプレイとして機能する。つまり,無効化時に2D表示時の解像度減退はない。
今回,ブースで展示されていたデモ機は,27インチの8K(7680×4320ピクセル)解像度の液晶パネルに,このDIMENCOのSRシステムを組み込んだものとなっていた。
このSRシステムの最大の特徴は,シンプルに裸眼立体視ができるだけでなく、映像パネル上部に付けられた二眼カメラを用いて,ユーザーの左右の目を追跡し,ユーザーの目の位置とディスプレイ表示面面とが織りなす角度を算出して,運動視差に配慮した映像をリアルタイム生成するところにある。なお,パーソナルユースを想定していることもあり,この視線追跡の対象は画面の前にいる単一ユーザーとなっている。
左右の視点からの映像を交互に表示するようなアクティブ3Dメガネ式の3D映像とは違い,左右の目からの視線がレンチキュラーレンズを通して液晶パネルの表示面と,交差するサブピクセルに適合する2視点レンダリングを同時に実践することになるため,GPU負荷はそれなりに高いと思われる。
ここまで読み進めて「あれ?」と思った人もいるかもしれない。そう,このSRシステムは,ソニーが業務用に展開している「空間再現ディスプレイ(SRD:SPAIAL REALITY DISPLAY)」とよく似ているのだ。
担当者に「ソニーのSRDとの違いは?」と聞いてみると,「我々のSR技術の方が圧倒的に低コストだという点かな」と自信を見せていた。
現在,Acerから発売されているDIMENCOのSR技術ベースの単体ディスプレイ製品「SpatialLabs View」の価格は,15.6インチで1000ドル前後。ただし,こちらは解像度が4Kだ。ソニーのSRDシリーズ,15.6インチの「ELF-SR1」は44万円だが,解像度は8Kなので,単純比較は難しい。
ただ,SR技術採用製品は拡大を続けているとのことで,2022年にはクリエイター向けノートPCとして「ConceptD 7 SpatialLabs Edition」が,ゲーミングノートPCとしては「Helios 300 Spatiallabs Edition」が発売されている。
さらに,2023年にはASUSもDIMENCOのSR技術を採用していく方針を発表しており,2023年内にクリエイター向けノートPC製品として「Vivobook Pro 16X 3D OLED」と「ProArt Studiobook 16 3D OLED」が発売予定だ。なるほど,DIMENCOの担当者が自信満々なのは,このあたりの新製品ラッシュが後ろ盾になっているのだろう。
ゲーム開発者や3Dグラフィックス系のクリエイター,産業系の造形デザイナーなどが,3Dモデルを製作してその「見え方チェック」をする場合,ノートPCの画面に一体化された裸眼立体視機能は便利そうである。
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