アメリカのサンフランシスコで開催されている世界最大のゲーム開発者会議
Game Developers Confrence 2017で,Epic Gamesによるオープニングセッションが2017年3月1日(北米時間)に開催された。本稿ではその模様を紹介しよう。
Epic Games CEOのTim Sweeney氏
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これは,GDCで行われる一連のEpic Gamesスポンサードセッションの幕開けとなる講演で,同社CEOの
Tim Sweeney氏が登壇。Unreal Engineの現状が語られるとともに,GDCで開催されるセッション群の概略を紹介するものとなっていた。
Sweeney氏は,Unreal Engineを使用するデベロッパによる売上が2016年は70億ドル(約7990億円)になったと発表。2015年は記録的な年だったが,2016年はさらにシェアが2倍になったと述べた。
2016年のモバイルを除くゲーム産業全体の規模が303億ドル(約3兆4500億円)といわれているので,Epic Gamesが占めている割合は少なくないことが分かる。
Steamで配信されているゲームでもUnreal Engine 4の割合は上昇しており,2017年になってから,Steamでは10本,モバイルでは2本のUE4タイトルがNo.1になっているという。
Epic Games CTOのKim Libreri氏
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序盤で紹介されたのは,UE4がゲーム以外のさまざまな映像制作現場で使われているという話だった。
CTOの
Kim Libreri氏からは,NASAやマクラーレンでUE4が使われている話や,映像制作系での事例などが紹介された。
その中でもとくに大きく取り上げられていたのが,Imaginarium Studioが制作中の
「Hellblade -Senua's Sacrifice-」と,ILMxLABによる映画
「Rogue One: A Star Wars Story」(邦題:ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー)の事例だ。
Hellbradeでは,パフォーマンスキャプチャを全面的に使用した撮影風景が大きく紹介されていた
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Rogue Oneでは,UE4でのレンダリング映像と,LucasfilmのAdvanced Development Group(ADG)によるレンダラとの比較が紹介された。撮影した写真のピントが甘くて申し訳ないが,左のUE4によるリアルタイムレンダリング版,右のAGD Render版で,ほとんど見分けが付かなかった
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The MillのAlistair Thompson氏
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続いて登壇したのは,革新的な映像を作成している映像スタジオ・The Millの
Alistair Thompson氏だ。氏は,シボレーの人気車種・カマロのCMが,UE4を使って作られているという話を紹介した。
ここで主役になるのは,「The Blackbird」と呼ばれる自動車だ。フレームやホイールが剥き出しの状態で外装はほとんどなく,車体のあちこちにARマーカーが貼られているのが目を引く。なおThe Blackbirdは,ホイールベースや車輪間隔を自在に変更できるとのこと。
察しのいい人ならもう気付いていると思うが,このThe Blackbirdを使えば,UE4でさまざまな自動車にリアルタイムにレンダリングできるというわけだ。
もちろん,タイヤの位置調整やサスペンションといった直接の運転特性に関わる部分など,本物で調整する必要のある部分はある。しかし,The Blackbirdの走行映像さえ撮影すれば,市販車だろうがまだ実物のないコンセプトカーであろうが,すべてUE4上でリアルタイムにレンダリングされ,映像がすぐにできあがる。
コンセプトカーの走行映像でもすぐにできあがる
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会場にはThe Blackbirdが持ち込まれていて,カメラを通すとThe Blackbirdがカマロになっている様子を実際に見ることができた。さらに,スマートフォンを使って車体色を瞬時に変えるというデモも行って見せた。
余談だが,何色にするかという問いかけに,来場者の叫びが皆「イエロー!」と一致していたのはちょっと不思議な現象だった。
ともあれ,会場にある3面のスクリーンには,リアルタイムで車体色が変更された様子が表示されたり,走行映像に映っている自動車の色や車種が瞬時に差し替わったりしていた。レンダリングからエフェクト,合成,編集まで,すべてリアルタイムに処理されているのを証明している。
車種を1968年型カマロSSに差し替えると,走行映像も即座に更新されていた
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さて,ここからようやくゲームの話になるのだが,まずはUE4のNintendo Switch対応について,Nintendo Americaの
Reginald Fils-Aime(レジナルド フィサメ)氏からのビデオレターを紹介。Nintendo Switch用ソフトで,「真・女神転生」シリーズ最新作,「Snake Pass」,「RiME」の3本はUE4で開発されていることを明かした。
Netmarble US CEOのSimon Sim氏
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続いて,Netmarble USのCEOを務める
Simon Sim氏が登壇し,
「Lineage II:REVOLUTION」(
iOS/
Android)を紹介した。
このタイトルは,日本でもお馴染みのMMORPG「
Lineage II」をスマートデバイス向けのMMORPGにしたものだ。
韓国ではすでに正式サービスが始まっていて,以前
「こちら」の記事で取り上げたように,サービス開始から30日間で売上1億7600万ドル(約200億円)を達成している。最初の100万ドルを稼ぐまでにかかった日数は17日間だったとのこと。
また,月間アクセスユーザー数は500万人以上に達しているそうで,これは韓国の人口の約10%に当たる。
会場では,最大200人のキャラクターを画面内に表示可能という本作のプレイ動画も上映され,比較的軽快に動いている様が見て取れた。
将来的には,ビジュアルクオリティとパフォーマンスをさらに上げて,世界展開に打って出るとのこと。アジアと欧米でのサービスが予定されているという。
ちなみに,PCの「Lineage II」はもともと,Unreal Engine 2で開発されたことで知られている。現時点での「Lineage II:REVOLUTION」のビジュアルクオリティは,「Lineage II」とまったく同じとまではいかないようだ。しかし,「Lineage II:REVOLUTION」がUE4で作られていることを踏まえると,そのうち「Lineage II」を超えてしまう可能性すらあるかもしれない。
そのあとは,極めて少人数で壮大なゲームを開発しているSystem Era Softworksの「Astoroneer」や,Gearbox Softwareによるリアルタイムハッチングのシェーダなどの紹介,UE4のVR Editorで海辺に灯台を作成する実演などが行われた。
そして,やや唐突ではあったが,映画
「Fighting Dory」(邦題:ファインディング・ドリー)の映像が上映された。これは,実際のシーンをVRでリアルタイムにレンダリングするデモなのだという。合わせて,UE4でPixarのUniversal Scene Description Formatがサポートされることが明らかにされた。
続いて,Epic GamesのOculus Rift+Touch向けゲーム「Robo Recall」のデモが行われ,このタイミングで無料公開を開始したことを明らかにした。
最後に,Oculus VRのCo-Founder兼PC VR部門のVPでもある,
Brendan Iribe氏が登壇。
すでにお伝えしたように,RiftとTouchの価格をそれぞれ100ドルずつ値下げすると発表。オープニングセッションは盛況のうちに終了となった。