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「Hearthstone ALL STAR 2016」の決勝トーナメントが台湾で開催。ベスト4まで勝ち進んだ日本代表mattun選手へのインタビューと合わせて紹介
「Hearthstone ALL STAR 2016」は,Blizzard Taiwanが世界中からトッププレイヤーを招いて開催した大会である。2016年に国内外で行われた大会などで好成績を収めている選手16名が選ばれ,12月頭からオンライン上でグループステージとトーナメントが行われていた。それらの激戦を勝ち進んだ4名の選手が,一堂に会してしのぎを削ったのだ。
決勝トーナメントに駒を進めた選手の顔ぶれは以下のとおり。11月に開催されたBlizzCon 2016をはじめ,Hearthstoneのプロシーンで有名な選手が名を連ねており,日本代表のmattun選手が食い込んでいる点にも注目してほしい。
決勝トーナメントにおける試合のレギュレーションは,両選手が5人分のデッキを事前に提出したうえで,試合開始時に相手のヒーロー1人を使用禁止にする。そのうえでBO7,すなわち7戦行って4本を先取した側が勝利となる(※BO7=Best of 7の略)。また一度勝利したヒーローは,次以降の試合では使用できなくなるため,5人のヒーローを含めた総合力が求められる試合形式だ。
折しも,今回の大会はHearthstoneの最新拡張パック「仁義なきガジェッツァン」のリリースと同じタイミングでの開催となった。新カードの追加などで移り変わるトレンドに,どのように対応するかも勝敗を大きく左右していた様子だ。
準決勝の第1試合は,Tom60229選手(台湾)とCydonia選手(カナダ)のマッチ。選択ヒーローは,Tom60229選手がウォリアー/ウォーロック/ローグ/パラディン/シャーマン(BAN),Cydonia選手はウォリアー/ドルイド/シャーマン/ウォーロック/ローグ(BAN)だ。
試合の流れとしては,Cydonia選手が立て続けに3勝を収めるものの,その次に選んだOTKクトゥーンドルイドが大苦戦。同じデッキでTom60229選手に3連敗してしまい,Tom60229選手の見事な追い上げに会場は大いに盛り上がる。
最後の7試合目は接戦となったが,終盤の絶妙なタイミングで「妖獣の激昂」をドローしたCydonia選手が,「なぎ払い」とのコンボでTom60229選手の鯛罪パラディンを一掃。Cydonia選手が決勝戦へと駒を進めた。
続いての準決勝第2試合は,mattun選手(日本)とJasonZhou選手(中国)のマッチ。選択ヒーローは,mattun選手がメイジ/ドルイド/シャーマン/ローグ/ウォーロック(BAN),そしてJasonZhou選手がドルイド/ウォーロック/ローグ/プリースト/シャーマン(BAN)だ。
mattun選手は,ガジェッツァンのリリース後に猛威を振るっている海賊ミラクルローグで挑むものの,JasonZhou選手は十分に対策済みだったようで,結果的にこのデッキで3敗を喫してしまう。途中,mattun選手のランプマリゴスドルイドがJasonZhou選手のドラゴンプリーストを打ち破る展開も見せたものの,そのほかの試合では肝心なところでドローなどの運に見放され,残念ながら1-4のスコアで敗退となった。
決勝戦は,Cydonia選手とJasonZhou選手のカードである。選択ヒーローは,Cydonia選手がウォリアー/ドルイド/シャーマン/ローグ/ウォーロック(BAN),JasonZhou選手はドルイド/ウォーロック/ローグ/プリースト/シャーマン(BAN)だ。
ちなみにこの両選手は,11月に開催されたBlizzCon 2016でも対決しており,そのときはJasonZhou選手が勝利している。
決勝戦では,Cydonia選手が海賊ウォリアーとアグロシャーマンで2勝を収める。その後は,JasonZhou選手がローグミラーを制するなど,一進一退の攻防が続いた。
フルカウントで迎えた7戦目は,OTKクトゥーンドルイド(Cydonia選手)とドラゴンプリースト(JasonZhou選手)のマッチで,JasonZhou選手の「炎の王ラグナロス」がCydonia選手のドルイドを焼き尽くして見事に勝利。「Hearthstone ALL STAR 2016」の栄冠はJasonZhou選手の頭上に輝き,賞金1万ドルを手中にした。
なお,当日の決勝トーナメントの模様はTwitchでも配信されている。こちらでは日本語による実況解説も行われているので,興味のあるひとはぜひチェックしよう。
「Hearthstone ALL STAR 2016」Twitch視聴ページ(mattun選手の準決勝は2時間6分前後から)
大会を主催したBlizzard Taiwanにインタビュー
「Hearthstone ALL STAR 2016」を開催したBlizzard Taiwanの運営担当者に,短い時間ではあるが大会開催の経緯などを聞くことができたので紹介しよう。
4Gamer:
今回,Blizzard Taiwanが「Hearthstone ALL STAR 2016」を開催した経緯について教えてください。
Eddy氏:
4Gamer:
会場内は大変な盛り上がりでしたが,反響をどのように受け止めていますか。
Eddy氏:
非常に満足しています。Hearthstoneにおけるe-Sportsの可能性を再確認し,来年以降に向けてもっと盛り上げていきたいと思いました。実は,2017年にはさらに大きなイベントを台湾で開催する計画があります。今回のイベントは,そのためのウォーミングアップとしても役立ってくれたはずです。
4Gamer:
台湾ではPR活動も積極的に行っていますよね。台湾市内の地下鉄車内などでは,Hearthstoneの広告も頻繁に見かけました。
Eddy氏:
本作を知らない人へのアピールだけでなく,Hearthstoneのコミュニティを盛り上げるためのイベント活動も積極的に行っていますよ。
たとえば,台湾全土を回りながら交流戦「炉端の集い」を行ったり,Hearthstoneを遊んでるときの写真を投稿してもらうキャンペーンなども開催しています。このイベントでは,授業中やスカイダイビング中などにHearthstoneを遊んでいるユニークな写真を,たくさんいただきました(笑)。
4Gamer:
とくに驚いたのは,2016年7月に台中市に建てられたArthasの銅像です。Blizzardがあの規模の銅像を建てるのは,カリフォルニアのThrall,ベルサイユのKerriganに続いて世界で3体目ですよね。
Eddy氏:
今年,Blizzard Entertainmentが25周年を迎えるにあたり,台湾で何か盛り上げられないかと計画していました。
そんな中,弊社のスタッフが日本のアニメフェスを見るために訪日したとき,お台場にある実物大の“ガンダム”を見て感激したんですよ(笑)。そこで,Warcraftシリーズの代表的なヒーローの一人であるArthasに白羽の矢を立てたんです。
4Gamer:
Arthasは,Hearthstoneでは今のところヒーローとして登場していないわけで,そのチョイスも含め,Warcraftシリーズを継続して盛り上げたいという意思を感じました。
Eddy氏:
ええ,その通りです。これから長きにわたって,台中市のランドマークとして親しんでほしいと思っています。
4Gamer:
本日はありがとうございました。
ベスト4の成績を収めたmattun選手へのインタビュー
本大会では,惜しくも準決勝で敗退してしまったmattun選手。しかしながら,国際大会でベスト4という結果を残し,台湾のプレイヤーにその存在感を見せつけたはずだ。続いては,決勝トーナメントの終了直後にmattun選手へ行ったインタビューの模様を紹介しよう。
4Gamer:
準決勝は惜しい結果でしたが,試合を振り返っての感想はいかがですか。
mattun選手:
4Gamer:
とくに印象に残っている局面はありますか。
mattun選手:
2戦目のローグ対ドルイドのとき,JasonZhou選手のドルイドが3ターン目に「ファンドラル・スタッグヘルム」をキャストしてきました。それを見て,放置したらマズいなと思い直ちに処理したのですが,多くのカードを使ってしまったんです。
そのカードの中には「昏倒」も含まれていて,後で繰り出された「戦の古代樹」に対処できなかったりと,キツい展開を強いられてしまいました。
あそこで,もう1ターン待ってから「ファンドラル・スタッグヘルム」を処理する判断もあったと思います。振り返ると第2試合が準決勝全体を通しての分岐点で,その勝敗を分けたシーンだったと思います。
4Gamer:
なるほど。
mattun選手:
ただ,いくつかのミスはあったものの,全体としては普段どおりの実力を出せたので,そういう意味での悔いはありません。対戦相手のJasonZhou選手は,今年の11月に開催されたBlizzCon 2016の大会でも,ベスト4に残ったほどのプレイヤーですから。
4Gamer:
mattun選手:
それは問題なかったですね。フライトの最中も,メモ帳を片手にずっとイメージトレーニングを行っていましたし,ほどよい緊張感を保ちつつ試合に挑めました。
4Gamer:
ただでさえ,こういった国際大会の大一番で普段通りの実力を出すのは難しいことだと思います。mattun選手は,今年は国際大会に何度か参加されていますが,場数を踏んだ経験は実感されていますか。
mattun選手:
それは強く感じますね。最初の頃は緊張で出来なかったことが,自然と出来るようになっていますし,やっぱり慣れって凄いです。それだけに,今回の準決勝ではリラックスして素の実力を出し切って,それでも勝利できなかったのが余計に悔しいのですが(苦笑)。
「仁義なきガジェッツァン」のリリースと同時期の大会開催
移り変わるトレンドを見据えてデッキを調整
4Gamer:
あらためて,mattun選手が準決勝に挑んだときのデッキについて,コンセプトや戦術の解説をお願いします。
mattun選手:
今回のデッキでは対戦相手のシャーマンをBANすることを前提に,各ヒーローのデッキを構築していきました。これは主に2つの理由があります。
まず,現在のトレンドでは,シャーマンがアグロでもミッドレンジでも非常に強力なことです。そしてもう1つは,Zooウォーロックの人気が落ちているなどの理由から,横に広げて(多くのミニオンを並べて)戦うタイプのヒーローが,シャーマンくらいしかいないことです。
つまり,対戦相手のシャーマンをBANすれば,全体除去などの横に広げるタイプへの対策ができるカードをデッキから抜いても,リスクがそれほど大きくないのです。同時に,強力なミニオンなどをデッキに入れる余裕も生まれます。
4Gamer:
今回のデッキリストでは,全体除去系はドルイドの「なぎ払い」しか含まれていないですね。
mattun選手:
4Gamer:
自分もこのデッキを真似てラダーでブイブイ言わせてみようかなと目論んでいたのですが,あくまで今回の大会環境に即した戦術なんですね。
mattun選手:
ええ。横に広げるタイプなどに対しては明らかに相性が悪いので,これらのデッキでラダーに挑戦するのはオススメしません(笑)
4Gamer:
準決勝における各試合のヒーローの当たり方を見る限り,mattun選手の狙いどおりだったのでしょうか。
mattun選手:
そうですね。仮に100回対戦すれば,十分に勝ち越せるマッチメイクでした。しかし今回のJasonZhou選手はプレイだけじゃなく,ドローや運も含め,完璧といっていい試合運びでしたね。
4Gamer:
本大会の予選は12月頭からスタートしており,これはHearthstoneの最新拡張パック「仁義なきガジェッツァン」のリリースと同じタイミングでした。大会中にカードのトレンドなども変化していきましたが,そのことが大会用のデッキ構築にどのような影響を与えましたか。
mattun選手:
影響は大きかったですね。たとえば,大会の開催直後は海賊ミラクルローグがめちゃくちゃ強くて,しかもプレイヤー間にそれほど周知されていなかったんです。でも大会が進むにつれ,次第に対策を練られていきました。
そういったガジェッツァンのトレンドをいち早くキャッチできたことも,準決勝まで勝ち進むことができた大きな要因の一つだったと思います。
4Gamer:
現在のトレンドを見渡すと,世はまさに“大海賊時代”といったところですが,この拡張パックに対する現時点での感想や評価などはいかがですか。
mattun選手:
確かに今は海賊系のデッキが猛威を奮っていますね。でも,ガジェッツァンはほかにも魅力的なカードがたくさんあり,また,ここから面白くしてくれるのがBlizzardという会社だと信じています。今後どのように変化していくのか今から楽しみにしています。
日本人の選手が世界の舞台で戦うために必要な環境を
4Gamer:
mattun選手にとって,今年は国際大会への参加も増えるなど,選手として充実した1年だったと思います。2016年の活動を振り返っていかがですか。
mattun選手:
4Gamer:
国際大会でトップ4まで勝ち進んだ選手にしては,少々意外な言葉にも聞こえますが。
mattun選手:
JasonZhou選手のようなトッププレイヤーと対戦すると痛感するのですが,プレイの繊細さという面で,どうしても適わない部分があります。
でも,たとえば今回の大会はどういった環境になるかとか,この相手と戦うときにどういう戦略で戦うかというのは,自分はほかの人にもアドバイスできるかなと。今回の大会では,日本のトッププレイヤーの人達にアドバイスをお願いしたのですが,それが非常に参考になったというのもあります。
4Gamer:
選手というより,たとえばプロチームにおけるマネージャーやコーチ,アナリストなどにも関心があるわけですね。
mattun選手:
選手個人ががむしゃらにがんばるだけでは,海外の強豪プレイヤーを相手に戦い抜くのは難しいです。どんなにうまいプレイヤーでも,1回や2回の大会で結果を出せるわけではないですし,そういったときに彼らを守る環境も必要です。
国際大会の経験を踏まえたいま,そういった環境の違いを感じますね。
4Gamer:
海外のプロチームなどの環境を目の当たりにすると,本当に驚かされますよね。
mattun選手:
4Gamer:
なるほど。mattun選手は,Hearthstoneが日本語にローカライズされる前の黎明期の頃から,独自に大会を開催されたりしてきました。
mattun選手:
まぁ,あれは単純に自分がHearthstoneが大好きだったからですけど(笑)。個人ではどうにもならない部分も多く,メーカーの協力も不可欠だとは思いますが,来年はもっと盛り上げていきたいですね。
4Gamer:
メーカーの協力という意味では,今年は日本でもBlizzardが独自イベントを何度か開催してくれていて,大きな進歩を感じています。なにしろ「World of Warcraft」「StarCraft II」「Heroes of the Storm」の頃など,市場として長年放置されていましたから。
mattun選手:
ええ。あのBlizzardが日本でイベントを行ってくれるだけでも凄いことですよね。台湾でこれだけ盛り上がっているのを目の当たりにして,Hearthstoneの面白さはやっぱり本物だと思いましたし,日本でも大きく盛り上がってほしいです。今回の遠征に参加して,あらためてそう強く感じましたね。
4Gamer:
来年のHearhstoneは,もっと盛り上がってほしいですね。mattun選手の今後の活躍にも期待しています。
おまけ:台中市にあるArthasの銅像
「Hearthstone: Heroes of Warcraft」公式サイト
「Hearthstone: Heroes of Warcraft」ダウンロードページ
「Hearthstone: Heroes of Warcraft」ダウンロードページ
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(C)2017 BLIZZARD ENTERTAINMENT, INC.
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