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  • 発表日:2013/02/19
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「GeForce GTX TITAN X」レビュー。3072基のシェーダプロセッサを集積した999ドルの新型フラグシップは,文句なしに速い
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印刷2015/03/18 04:00

レビュー

3072基のシェーダプロセッサを集積したNVIDIA公式の「猛獣」は,文句なしに高価で速かった

GeForce GTX TITAN X
(GeForce GTX TITAN Xリファレンスカード)


GTX TITAN Xリファレンスカード
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 別途お伝えしているとおり,日本時間2015年3月18日,NVIDIAから,デスクトップPC向けの新たなウルトラハイエンド市場向けGPU「GeForce GTX TITAN X」(以下,GTX TITAN X)が発表になった。

 「GeForce GTX 980」(以下,GTX 980)などと同じ,第2世代Maxwellアーキテクチャに基づき,GeForce GTX 900系の新たなフラグシップとなるGPUは,「カード1枚で4K解像度環境におけるゲームプレイが可能なGPU」と位置づけられている。
 「GeForce GTX TITAN Black」(以下,GTX TITAN Black)以来となるTITANシリーズの新モデルは,初のMaxwell版TITANということにもなるが,果たしてその性能は期待どおり,そしてNVIDIAが予告するとおりのものになっているのだろうか。今回4Gamerでは,NVIDIAのリファレンスカードを入手できたので,カード基板の解説では米田 聡氏の協力を仰ぎつつ,その実力を確認してみたいと思う。

タグライン(キャッチコピー)は「Gaming Beast」(左)。驚いたことに,NVIDIA公式の“猛獣”認定だ。従来のTITANシリーズ比で2倍の性能と2倍の電力効率実現も謳われている。右は,4K解像度で3Dゲームをプレイできるというスライド
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CUDA Core数はGTX 980比50%増となる3072基

TITAN Blackと同じメモリバス帯域幅で25%の効率改善


GTX TITAN X GPU。チップ上の刻印は「GM200-400-A1」だった
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 GTX TITANは,第2世代Maxwellアーキテクチャに基づいて製造される「GM200」コアを採用するGPUだ。GM200は,GTX 980などで採用される「GM204」と同じく,TSMCの28nm HP(High Performance)プロセス技術を用いて製造されるが,総トランジスタ数は80億と,GM204の52億個から約54%増加している。ダイサイズは公開されていないが,デジタルノギスで計測した実測値は24.90×24.75mmだった。デジタルノギスによる測定結果は実際より大きく出ることが多いのだが,それでも,600mm2級のGPUだと言い切ってしまってもいいのではないかと思う。

 GTX TITAN Blackや「GeForce GTX TITAN」(以下,GTX TITAN)で採用されている「GK110」コアだと,トランジスタ数は71億,実測ダイサイズは560〜570mm2程度だったので(関連記事),従来のTITANシリーズGPUと比べても,若干大型化しているようだ。

 なお,Maxwellアーキテクチャにおいて,シェーダプロセッサたる「CUDA Core」は,32基が一塊となって,スケジューラやロード/ストアユニット,それに超越関数ユニットと1つのパーティションを構成する。さらに,そのパーティションが4基が,ジオメトリエンジンたる「PolyMoprh Engine」やL1キャッシュ,8基のテクスチャユニット,容量96KBの共有メモリなどとセットになり,演算ユニット「Maxwell Streaming Multiprocessor」(以下,SMM)となる。
 さらに,SMMは4基1組でラスタライザ「Raster Engine」と組み合わされてミニGPU的な存在の「Graphics Processor Cluster」(以下,GPC)となるわけだが,GM200では,そのGPCが6基用意される。そのため,CUDA Coreの総数は,

  • 32(パーティション)×4(SMM)×4(GPC)×6

3072基となる計算だ。GM204比でGPCが2基増えたGPU,と紹介することも可能だろう。

GTX TITAN X(≒GM200)のブロック図
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合計容量12GBのグラフィックスメモリは384bitインタフェースでGPUと接続される
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 そして,ハイエンド市場向けGPUコアたるGM200で何より重要なのは,メモリインタフェースがGTX TITANなどと同じ384bitになったことだ。
 GM204のメモリインタフェースは256bitと,ハイエンドGPUとしては比較的狭く,それを補うためNVIDIAはメモリ圧縮などによりメモリ転送の効率化を図ったわけだが,それでも超高解像度や高負荷設定においては,メモリ周りが足かせとなる場面が発生していた(関連記事)。それに対し,GTX TITAN Xのメモリインタフェースは384bitで,メモリクロックは7010MHzとなるため,メモリバス帯域幅は336.5GB/sに達しているのだ。これはGTX TITAN Blackと同じスペックで,しかもMaxwellアーキテクチャということで,メモリ転送の効率化による恩恵も受けられる。
 付け加えると,ROP数がGTX TITAN Black比で2倍の96基になっているところも注目したいポイントである。

OC Guru IIから最大ブーストクロックを追った結果
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 第2世代MaxwellベースのGPUということで,動作クロックが高いのも,GTX TITAN Xの特徴となる。ベースクロックは1000MHz,ブーストクロックは1075Hzであり,いずれも1000MHzに達していなかったKepler世代のTITANシリーズとの違いは明らかだろう。
 なお,後述するテスト環境において,GIGA-BYTE TECHNOLOGY製オーバークロックツール「OC Guru II」(Version 1.78)から確認したところ,GTX TITAN Xの最大ブーストクロックは1177MHzだった。
 そのほか,ここまで名を挙げてきたGPUのスペックは表1のとおりだ。

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CUDA SDKのDeviceQueryDrv.exe実行結果
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 ただ,1つだけ,TITANシリーズの新GPUらしくないところが,GTX TITAN Xにはある。それは,倍精度浮動小数点数演算プロセッサ(以下,DP)のフルスピードモードが用意されていないことだ。
 DPフルスピードモードはGTX TITANやGTX TITAN Blackに搭載された動作モードで,有効化すると,数値演算プロセッサ「Tesla」と同等の倍精度浮動小数点演算性能を得ることができる。もちろんNVIDIAによる動作保証はなく,“本物”のTeslaには用意されるメモリエラー検出・修正機能もないのだが,普通にTeslaを買うよりも圧倒的に低コストでTesla並みの性能を手に入れられるというのは,これまで,TITANシリーズの重要な特徴の1つとなっていた。

 GTX TITAN Xは,そんなTITANシリーズのブランド名が冠されているものの,DPフルスピードモードは用意されない。4Gamer読者が気にするようなことではない――ゲームにおいてDPフルスピードモードが必要になることは,少なくともGTX TITAN Xが現役のうちには100%ないと断言できる――が,「GeForceとしても,バーゲン版Teslaとしても使いたい」と考えているなら,この仕様は落とし穴となり得るので,この点は押さえておいてほしいと思う。


「鳴き」対策がなされた

GTX TITAN Xの基板をチェックする


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 というわけで,宮崎氏からバトンを引き継ぎ,ここから筆者(※編注:米田 聡氏)が,GTX TITAN Xリファレンスカードそのものをチェックしてみよう。
 まずリファレンスクーラーだが,全体が黒色になり,彫られた文字が変わったのを除くと,GTX 980や「GeForce GTX 970」(以下,GTX 970)で採用されたGPUクーラーと大差はないようだ。Vapor Chamber(ヴェイパーチャンバー)とシロッコファンを組み合わせたクーラーであると,NVIDIAは4Gamerの質問に対して回答している。

GTX TITAN Xリファレンスカードの外観は「黒いGTX 980リファレンスカード」といった雰囲気。ただし,GTX 980リファレンスカードだと標準で取り付けられていた放熱板はGTX TITAN Xで取り外されている。理由は「SLI構成時のエアフローを考えると,このほうが効率的だから」(NVIDIA)。背面のメモリチップが発する熱はケース内にエアフローがあれば無視できるレベルだそうだ
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カード長は,GTX 980リファレンスカードと同じ実測約268mm(※突起部除く)。外部出力インタフェースはDisplayPort 1.2×3,HDMI 2.0×1,Dual-Link DVI-I×1という構成で,最大4画面(3+1画面)に対応するというのもGTX 980と同じである
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 一方,GTX TITAN XでNVIDIAは,動作音の低減に力を入れたという。ここでいう動作音というのは,ファンのそれではなく,基板上に配置された部品の「鳴き」である。
 GeForce GTX 900シリーズでは,とくにGTX 970カードの一部で,「基板上にある部品の鳴きがうるさい」と多くのユーザーから指摘されていた(GeForce公式掲示板の関連スレッド一覧)から,それを受けての対策ということではなかろうか。

インダクタとキャパシタの改良によって鳴きを押さえたというのがNVIDIAの主張だ
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 ちなみにNVIDIAは,GTX TITAN Xで,鳴きを防止するため,電源部に特殊なキャパシタやパワーインダクタを採用したと主張している。というわけで実際にGPUクーラーを取り外してみたが,基板を見る限り,GTX 980やGTX 970のリファレンスデザインと比べて,GTX TITAN Xで特別な部品が採用された形跡はなかった。

GTX TITAN Xを分解したところ(左)と,基板の電源部(右)。電源部は6+2フェーズのようだ
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R22やR33と印刷されているのがインダクタ。470や330と印刷されている部品がコンデンサ(キャパシタ)だ
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 電源部で「R22」や「R33」と印刷されているのはインダクタ(≒コイル)だが,形状からすると,おそらくは米Bourns(ボーンズ)製のパワーインダクタ(※電源部用インダクタ)だろう。GTX 980とGTX 970のリファレンスカードでも同じ部品が使われているので,GTX TITAN Xだけ特別なパワーインダクタというわけではない。

 右上の写真では,インダクタの下に,合計15個のチップ型コンデンサが並んでいる。メーカーははっきりしないが,おそらくはチップ型の導電性高分子アルミ電解コンデンサ,もしくは導電性高分子ポリマー電解コンデンサだろう。どちらも低ESRが特徴だが,中央に4個並んでいる「470」刻印入りのものが,MSIが以前「Hi-c CAP」と呼んでいた同タイプの導電性高分子ポリマー電解コンデンサで,残りの「330」刻印入りのものが導電性高分子アルミ電解コンデンサではなかろうか。
 ただ,こちらもハイエンドのグラフィックスカードでよく見られる部品であり,GTX TITAN Xにおける特別な仕様とは言いがたい。

6個並んでいるのが導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ
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 また,PCI Express補助電源コネクタの近くにはアルミ缶タイプのコンデンサが6個並んでいるが,これは導電性高分子アルミ固体電解コンデンサ,いわゆる「OSコン」だ。台湾Lelon Electronicsが手がけているOCRZシリーズであり,これまたNVIDIAのリファレンスカードでは定番的に使われているコンデンサだったりする。

電源ドライバICはDriver MOSFET統合型
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 電源のドライバICとして採用されているのは,Fairchild SemiconductorのDriver MOSFET統合型ドライバ「FDMF6820A」だ。これまたポピュラーなものなので,「特別に」採用されるようなものではない。

 というわけで,基板上を眺める限り,「鳴きを防止するために特別な部品を採用した」というNVIDIAの主張を裏付ける“物的証拠”は見当たらないのだが,そもそも電源部の鳴きはなぜ生じるのだろうか?

 電源部には非常に大きな電流が流れ,電流が流れると磁界が発生する。そして,磁界の中の物質では「磁歪」(じわい)という歪みが生じる。つまり,電流が止まったり流れたりするのに応じて磁界が変化し,磁界内にある部品が「磁界の変化に応じて生じる磁歪」によって振動し,振動が音になるのだ。これが鳴きの正体である。たとえば,インダクタの鉄心に使われている強磁性体材が磁歪で音を出したり,インダクタの近所にあるコンデンサなどが音を出したりする。

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 そんな鳴きを防止する定番の方法は大きく2つある。1つは,部品が振動しないよう,しっかり組み付けるというものだ。ただし,ここまで述べてきたとおり,GTX TITAN Xでそのような特別な実装はなされていないように見える。
 そしてもう1つが,電源のスイッチング周波数が可聴域にならないよう設計するというものだ。ただ,これは電源設計の初歩中の初歩であり,NVIDIAがやっていなかったはずはない。

 実のところ,最近のマザーボードやグラフィックスカードなどで電源部が鳴くのは,スイッチング周波数ではなく,処理の負荷に応じて電流が大きく増減することが原因になっている。負荷が高ければ大きな電流が流れ,負荷が低ければ電流量が小さくなる。とくにMaxwell世代のGPUのようにパワーゲートを使って高度な消費電力制御を行っているGPUの場合,電流の変動幅が極めて大きくなるため,磁歪による鳴きを起こしやすい。そして負荷の変動が可聴周波数になると人間にとって耳障りな音となって聞こえるようになるわけだ。

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GTX 980リファレンスカードにおける電源部。チップ型コンデンサの数は8個だということが写真右端から見て取れよう(関連記事
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メモリチップはSK Hynics製の「H5GQ4H24MFR-R2C」。4GbitのGDDR5 SDRAMで7Mbps品(7000MHz相当)である。これが片面12枚,両面で24枚実装され,総容量12GBのグラフィックスメモリを構成している
 これを抑えるのは電源の二次側(出力側)のコンデンサを増やすのが有効で,そういう目であらためて基板を見ると,インダクタとグラフィックスメモリチップの間に置かれるチップ型コンデンサが,GTX 980の8個から,前述のとおり15個に増えたことに意味がありそうな気がしてくる。NVIDIAは,GTX TITAN Xで特別な電源部品を使ったのではなく,実績ある高性能コンデンサの容量を増やすことで,鳴き対策をしてきたのではなかろうか。

 可能性だけの話をするなら,ファームウェアやドライバレベルで,負荷の変動範囲が人間の可聴周波数に被らないよう調整するといったことを行っているかもしれない。ただ,それをあまりやり過ぎると肝心の性能に影響が出るはずなので,個人的には,そこまではやっていないと考えている。


テスト解像度は2560×1600ドットと3840×2160ドット

Bioshock Infiniteに代わりEvovleを使ってみる


 米田氏によるカード解説が済んだところで,テスト環境のセットアップに入ろう。
 今回,GTX TITAN Xの比較対象には,表1でその名を挙げた3製品を用意した。ただし,GTX TITAN Black搭載カードとして用意したGIGA-BYTE TECHNOLOGYの「GV-NTITANBLKGHZ-6GD-B」は,メーカーレベルで動作クロックが引き上げられたクロックアップモデルであり,また,ベースクロックは,リファレンス相当である定格889MHzではなく,901MHzまでしか下げられない。そのため今回は,OC Guru IIから901MHz動作を設定のうえ,リファレンスクロックより12MHzだけ高いことを明示するため,文中では「GTX TITAN Black@901MHz」,グラフ中ではスペースの都合から「TITAN Black@901MHz」と表記することにした。

 テストに用いるグラフィックスドライバは,NVIDIAから,全世界のGTX TITAN Xレビュワー向けに配布された「GeForce 347.84 Driver」で統一。そのほかのテスト環境は表2のとおりとなる。比較対象のRadeonは? と思うかもしれないが,今回は時間の都合と,適切な比較対象がないという理由から省略している。「Radeon R9 290X」あたりとの力関係を知りたい場合は,GTX 980のレビュー記事を参照してもらえれば幸いだ。

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 テスト方法は基本的に4Gamerのベンチマークレギュレーション16.0準拠。テスト解像度は,NVIDIAがGTX TITAN Xのターゲット解像度を4Kに置いていることから,3840×2160ドットと2560×1600ドットを選択した。

 と,ここでいつもなら「3840×2160ドットのテストモードは持たない「BioShock Infinite』は省略した」という注意書きが入るのところなのだが,今回はそんなBioShock Infiniteの代わりに,ベンチマークレギュレーション17世代のテストも兼ねて,4対1の非対称対戦アクションである「Evolve」を加えてみたい。

Evolveにおけるチュートリアルより
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 Evolveのテストにあたっては,チュートリアルを「GOLIATH」でプレイし,プレイ開始後1分間のフレームレートを「Fraps」(Version 3.5.99)で取得することにした。チュートリアルは,移動やジャンプといった基本操作を習得するためのものだが,コースが1本道なうえ,開始後1分間だと移動するオブジェクトは自分のキャラクターのみとなるため,おおむね同じ操作を繰り返しやすい。そのため,テストに適していると判断した次第だ。
 今回は,そんなチュートリアルのフレームレート測定を2回行って,その平均をスコアとして採用する。ただし,Evolveの場合,アンチエイリアシング設定の選択肢が「SMAA 1X」「SMAA 1TX」「FXAA」「TXAA」しか用意されないため,今回は「標準設定」の代わりにグラフィックス品質のプリセット「Middle」を,「高負荷設定」の代わりに同「Very High」を選択した。

グラフィックス設定のプリセットは「GRAPHICS QUALITY」から選択できる
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 なお,CPUの自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」は,テスト状況によってその効果に違いが生じる可能性を排除する目的で,マザーボードのUEFI(≒BIOS)から無効化している。


GTX 980比で40%弱のスコア向上を確認

「4K解像度がプレイアブル」とまずまず言える結果に


 では,順にテスト結果を見ていこう。グラフ1は「3DMark」(Version 1.4.828)の総合スコアをまとめたものだ。
 GTX TITAN XはGTX 980よりも29〜31%高いスコアを示しており,GTX TITAN Black@901MHzに対しては49〜60%程度,GTX TITANに対しては56〜68%程度と,文字どおり圧倒した。

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 実のところ,今回は時間的な都合により,「GK110」を1枚のカード上に2基搭載するカード「GeForce GTX TITAN Z」(以下,GTX TITAN Z)はテスト対象から外していたのだが,GTX TITAN Xのスコアがあまりに高いので,急遽,3DMarkだけスコアを取得してみた。そのスコアは以下のとおりだ。

  • Fire Strike Extreme:7469
  • Fire Strike Ultra:3848

 そう,GTX TITAN Xのスコアは,2560×1440ドット解像度でのテストでGTX TITAN Zとほぼ互角で,4K解像度でのテストとなるFire Strike Ultraでは上回っていたのだ。
 GTX TITAN Zが持つメモリ周りのスペックはGTX TITAN Blackと同じなので,GTX TITAN Xでは,高いGPUコアクロックと,第2世代Maxwellアーキテクチャにおけるメモリ転送効率の最適化によって,GTX TITAN Z並みの性能ポテンシャルを獲得しているという理解でいいのではなかろうか。

 さて,ここからはまた,表2で挙げたGPUを使ってのテストに戻るが,グラフ2,3は「Battlefield 4」(以下,BF4)の結果となる。
 GTX TITAN Xのスコアは,対GTX 980で32〜34%程度,対GTX TITAN Black@901MHzで38〜49%程度,対GTX TITANで50〜62%程度高い。とくに,高負荷設定でGTX 980とGTX TITAN Black@901MHzのスコア差が縮まっていくのに対し,GTX TITAN Xではそうなっていない点にも注目しておきたい。

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 この傾向はグラフ4,5の「Crysis 3」でも変わらない。GTX TITAN XはGTX 980に対して33〜37%程度のスコア差を付け,独走状態にある。
 レギュレーションでは快適にプレイできる平均フレームレートとして40fpsを合格ラインとしているのだが,2560×1600ドットの高負荷設定におけるスコアでGTX TITAN Xが合格ラインを超えてきたのは,なかなか感慨深い。

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 今回初めてテストに使ったEvolveのスコアがグラフ6,7である。
 全体的なスコア傾向は,ここまでとまったく変わっていない。GTX TITAN XはGTX 980に対して36〜38%程度,GTX TITAN Black@901MHzに対して44〜55%程度,GTX TITANに対して59〜71%程度と,大差を付けた。

 なお,あくまでもテストのためにプレイした限りでの印象だと断ったうえで続けると,平均45fpsもあれば,最小フレームレートが30fpsを割り込まず,問題なくプレイできる感じだ。そして,その観点でスコアを見てみると,3840×2160ドットであればMediumプリセットでGTX TITAN Xがそのラインを超えている。グラフィックス設定さえ適切に選択すれば,4K解像度でEvolveをプレイすることも不可能ではないというわけである。

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 続いてグラフ8,9は「Dragon Age: Inquisition」(以下, Inquisition)の結果だ。ここでも全体的な傾向は変わらず。ただ,Inquisitionのテストではグラフィックス設定をかなり高く設定していることもあり,GTX TITAN Xを持ってしても,3840×2160ドット環境におけるスコアは低い。快適にプレイしようと思ったら,グラフィックス設定はかなり引き下げる必要があるだろう。

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 第2世代Maxwellアーキテクチャにおけるメモリ周りの最適化効果がはっきりと出たのが,「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」の公式ベンチマークテスト(以下,新生FFXIVベンチ キャラ編)におけるテスト結果だ(グラフ10,11)。
 GTX 980は,メモリバス帯域幅がネックとなったと見られるスコアの頭打ちが生じ,「最高品質」では2560×1600ドットでGTX TITAN Black@901MHzに並ばれ,3840×2160ドットで逆転を許してしまっている。しかしGTX TITAN Xは最高品質でもGTX TITAN Black@901MHzに32〜33%の差を付けているのである。
 しかもそのスコアは,スクウェア・エニックスが示す指標の最高ランクである「非常に快適」のスコア7000を超えている。グラフ画像をクリックすると,平均フレームレートベースのグラフを表示するようにしてあるが,GTX TITAN Xの平均フレームレートは実に64.1fpsだ。

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 グラフ12,13は「GRID Autosport」の結果となる。GRID Autosportでは,2560×1600ドットでGTX TITAN XがGTX 980とGTX TITAN Black@901MHzからスコア差を詰められているように見えるが,これは描画負荷が十分に低く,相対的なCPUボトルネックによってスコアが上がりにくくなっているためだ。
 実際,負荷が増大する3840×2160ドットだと,GTX TITAN XとGTX 980のスコア差は32〜34%程度となって,ここまでと似た傾向になっている。

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 ……と,ゲームでのテスト結果をまとめたところで,DPフルスピード非対応の実態を確認しておきたい。
 ここでは,PC情報表示&ベンチマークツールである「Sandra 2015x」(Buid 2117)から,GPGPU性能をチェックするためのテスト「GP(GPU/CPU/APU) Processing」を実行してみた。グラフ14〜17がその結果だ。
 「Aggregate Shader Performance」が総合スコアで,その下には「Single Float Shaders」が単精度浮動小数点演算性能,「Double Float Shaders」が倍精度浮動小数点演算性能,そして32bit×4と思われるエミュレーションによって4倍精度浮動小数点演算性能を見る「Quad Float Shaders」の結果をまとめてあるが,ご覧のとおり,単精度浮動小数点演算性能ではGTX TITAN Xが良好なスコアを示す一方,倍精度および4倍精度の浮動小数点演算性能を見るテストでは,GTX TITAN Black@901MHzやGTX TITANに,GTX TITAN Xはまったく歯が立たない。GTX TITAN Xは,名前こそTITANシリーズであるものの,実際にはGeForce GTX 980の上位モデル的な製品であるという理解でいいだろう。

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消費電力はスペックどおり,GTX TITANと同レベル

ファンの動作音は静かだが,入手した個体では鳴きを確認


 TDP(Thermal Design Power)は250Wで,GTX TITAN BlackやGTX TITANと変わらないGTX TITAN Xだが,実際はどうなのか。ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を利用して,システム全体での消費電力を比較してみることにした。テストにあたっては,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値が記録された時点を,タイトルごとの実行時としている。

 その結果がグラフ18で,アイドル時の消費電力は,GTX TITAN Xが若干高めながら,ほぼ横一線と述べていいだろう。
 一方,各アプリケーション実行時だと,GTX TITAN Xのスコアは対GTX TITANで−1〜+8W。こちらも互角である。TDPどおり,GTX TITAN Xの消費電力は,従来のTITANシリーズからほとんど変わっていないという理解でよさそうである。
 GTX 980と比較すると,その消費電力は66〜76W程度高いが,ここはGPUの規模を考えるとやむを得ないか。

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 最後に,「GPU-Z」(Version 0.8.2)を用いて,GPUの温度も確認しておこう。ここでは,温度24℃の室内で,テストシステムをPCケースに組み込まず,いわゆるバラックに置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,GPU-Zから温度を取得することにした。

 基本的に,基板もGPUクーラーも異なる製品同士での比較であり,参考以上にはならない点には注意してほしいが,GTX TITAN Xの温度制御が,従来のNVIDIA製ハイエンドGPU搭載のリファレンスカードと同じ傾向にあるとはいえるだろう。あえていえば高負荷時の温度が若干高めだが,従来どおりの制御がなされていると理解したほうがいいように思われる。

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 気になる動作音だが,筆者の主観であることを断ってから続けると,GTX TITAN XのリファレンスGPUクーラーは,ウルトラハイエンド向けとしてはかなり静かだ。少なくともGTX TITAN Black@901MHzやGTX TITANのGPUクーラーと比べると明らかに静かだと言い切って差し支えない。
 むしろ気になったのは,GTX TITAN Xで対処されたという鳴きのほうだ。たとえばEvolveのゲームデータ読み出し中や,新生FFXIVベンチ キャラ編の標準品質(デスクトップPC)実行時といった,描画負荷の低い局面で鳴きが発生し,しかもファンの動作音よりも耳に付いたのである。

 もちろん,鳴きというものはカードの個体差に拠るところも大きいので,偶然,筆者の手元にある個体が鳴く個体だったということもあるのだが,NVIDIAが「動作音の低減に注力した」と宣言したこのタイミングで鳴きが発生するのはなんとも間が悪い。対策はまだ道半ばということなのだろうか。


今後,TITANは超高価格GeForceの代名詞になる?

ゲーム性能は文句なしにシングルGPU史上最速


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 まとめよう。GTX TITAN Xの絶対性能は圧倒的だ。時間の都合ですべてのテストは行えていないものの,GTX TITAN Zに匹敵するベンチマークのスコアが出ているあたりや,一部のテストでは「シングルGPU構成でも4K解像度でゲームをプレイできる」スコアが出ているあたりは,とにかく強烈である。
 DPフルスピードモードを有効化できないにもかかわらず,TITANシリーズの名を冠してきた判断は解せないものの,ひょっとしたらNVIDIAは今後,トンデモない高価格帯で販売するGeForceは全部,数字型番ではなくTITANシリーズにするつもりなのかもしれない。

 さて,気になる価格だが,NVIDIAは,北米市場における搭載グラフィックスカードのメーカー想定売価を999ドル(税別)としている。単純計算した国内価格は2015年3月18日現在で税別約12万1200円,税込で13万900円だ。日本では1ドル135円くらいの不思議相場が発動して,税込15万円弱くらいになるような気もするが,どちらに転ぼうと,万人に勧められる価格では全然なかったりする。

 GTX TITAN Xは間違いなく史上最速の単体GPUだ。その点に価値を見いだせて,かつ,コストを完全に度外視できるような人のための選択肢ということになるだろう。

NVIDIAのGeForce製品情報ページ

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