インタビュー
「黒い砂漠(仮)」開発者直撃インタビュー。オープンワールドとして設計されたアクション性の高いMMORPGとは
まずは,調印式で公開されたムービーを入手したので,インタビュー本編の前に本作の雰囲気を感じ取っておいてほしい。
PearlAbyss CEO キム・デイル氏 |
ゲームオン代表取締役社長 イ・サンヨプ氏 |
本日はよろしくお願いします。
今回の調印式で黒い砂漠が正式発表となりました。まずは,両社の意気込みを聞かせてください。
キム・デイル氏(以下,キム氏):
弊社では今回が初めての発表会となるのですが,非常に重い責任感と共に,もっと良いゲームに作り上げていこうという意気込みを感じています。これからが本当の始まりだなと思っています。
4Gamer:
現在の開発進行度はどれぐらいなんでしょうか?
キム氏:
いま65%ぐらいです。メインコンテンツについては,ほとんどでき上がっている状態ですね。
4Gamer:
ではゲームオンさんにお聞きしたいのですが,なぜ黒い砂漠を日本でサービスしようと思われたのでしょうか?
イ・サンヨプ氏(以下,イ氏):
まず一つはキムさんですね。キムさんは韓国でも有名な開発者の一人で,当社でサービス中の「C9 (Continent of the Ninth)」を初期から作っていた方なんです。彼のオンラインゲームに対する理解,そして制作するゲームの完成度については非常に信頼を置いています。最近のMMORPGには目立った大作がありませんし,いろいろなタイトルを見てきましたが,キムさんの制作する黒い砂漠ならばプレイヤーさんにも楽しさを提供できると確信したんです。
4Gamer:
C9はアクションを前面に出しているゲームですが,黒い砂漠は,アクションとMMORPGのどちらがメインになるのでしょうか?
キム氏:
基本的にはアクション要素がある“大型MMORPG”です。あくまでもMMORPGですが,アクション性が加わることでゲームのスケールがもっと大きくなる,みたいな感じで受け取っていただければと思います。
4Gamer:
では,黒い砂漠のMMORPGらしい要素というのを教えてください。
キム氏:
ギルドやパーティ,レイドボス戦や攻城戦などですね。ムービーの後半に出てきた巨大なモンスターがレイドボスです。
イ氏:
そのほかにも,一般的なMMORPGに入っている要素は,すべて入っていると思います。それ以外の特徴となると,アクション的な要素を活かした派手な戦闘と,多彩なキャラクターを中心にしたエンドコンテンツである攻城戦だと思います。
4Gamer:
黒い砂漠でプレイヤーにもっとも注目してもらいたいところはどこでしょうか?
キム氏:
プレイヤーに大きな世界を感じてほしいですね。そこでモンスターを狩ったり,攻城戦を楽しんだり,商売をしたりと,自分がその世界の一部であることを感じていただければと思います。
私も最初に彼に会ったとき,同じ質問をしたんですよ(笑)。私が見たところでは,黒い砂漠には三つの大きな特徴があると思います。一つめは派手なアクションのできるRPGゲームであること。二つめは多彩なキャラクターです。調印式では5種類のキャラクターを発表したんですが,それぞれに男女がいますので合わせると10種類になります。そして三つめがモバイル的な連動要素ですね。
私も「天上碑」以来今まで,いろいろなゲームをやってきましたが,黒い砂漠はプレイヤーさんに,本当に多角的な楽しさを提供できるゲームだと思います。
また,サービス開始は来年になるんですが,現段階で契約する理由は,日本向けに特徴的な要素を入れていくためです。
4Gamer:
すると,ゲームオンも開発に協力していくことになるんでしょうか?
イ氏:
ローカライズとは,すでにあるものを単純に翻訳して提供することではなく,その国のプレイヤーさんの趣味嗜好に合わせて調整していくことです。その意味では開発に協力する体制になるんじゃないかなと思います。
黒い砂漠の基本システムを確認
アクション重視の戦闘システムに期待
ここからは,ゲームそのものやシステム周りについてお聞きします。まず,クラス構成について詳しく教えてください。
キム氏:
5つのクラスがあります。ナイトは剣と盾を持った近距離ファイターで,体力があり,基本的なことは何でもできるタイプです。エルフは弓を持った遠距離職業です。ソーサラーは,グローブのようなものを装備し,魔法を使って状態異常を起こす攻撃ができます。イメージ的には黒魔術師ですね。両手に斧を持ったジャイアントは,身体が大きく,攻撃に特化したキャラクターです。テイマーはムービーにもありましたが,動物と一緒に戦う職業です。
イ氏:
先ほども申し上げたように,キャラクターはムービーに出ていたものだけではなくて,例えば男女のキャラクターがあります。また,レベルがある程度上がると転職可能になるとのことです。
4Gamer:
なるほど。ムービーではキャラクターが馬や象に乗っている姿が映っていましたが,そのほかにどんな乗り物があるんですか?
キム氏:
具体的なところでは,タイトルに「砂漠」とあるように,砂漠のフィールドで乗るラクダを考えています。砂漠でラクダといると,長い列をなした商団というイメージがありますが,そういうこともできればいいですね。そのほかに空想上や伝説上の動物などを作ろうかなと思ってます。
4Gamer:
シルクロードみたいなイメージでしょうか。面白そうですね。ところで,テイマーの連れている動物ですが,あれに乗ることはできないんですか?
キム氏:
そこはちょっと決まっていません。
4Gamer:
分かりました。では戦闘システムについて教えてください。
キム氏:
基本的にはTPS系のアクションで,近距離型と遠距離型の攻撃が混ざったスタイルです。
接近して剣を振り回すだけだったり,一定距離を置いたままキャスティングだけを行うような戦闘ではなく,全クラスにわたって,それぞれのコンセプトに合わせた近距離と遠距離攻撃を組み合わせることができるようにしています。
例えば,ソーサラーの場合,近距離は右手のエンチャントアームで対応し,スキルで敵を押し退けたら,左手の魔方陣を使って遠距離攻撃をするといった具合です。
ファイターの場合なら,近距離の敵を盾で押し退けて距離を取ったあと,剣気で圧したり,飛びかかって剣を一閃したりするなど,さまざまな攻撃を組み合わせることができます。
4Gamer:
操作法はどんな感じですか。
キム氏:
数字キーで操作できるアクションの派手なスキルとは別に,コマンド操作によるアクションを取り入れる予定です。
戦士の場合,盾防御,掴み落とし,蹴り倒し,体当たり,移動攻撃,転んで回避など,戦士クラスの特性を踏まえたリアルなアクション攻撃と防御が,基本スキルとして持たされています。これらの組み合わせによって,さまざまな戦闘が可能になります。ちょっと難しそうに感じられるかもしれませんが,強烈かつ難しそうなアクションでも,いつの間にかできるようになっている,という操作感を目指しています。ビジュアル表現も「工夫して,経験的にしっくりくる打撃感を実現したいと思います。
探検を繰り返すことで深みが広がるオープンワールド仕様のマップ
4Gamer:
ところで,先ほどのムービーを見た感じですと,オープンワールドのゲームであるような印象を受けました。なにか影響を受けたゲームはありますか?
基本的にオープンワールドだと思っていただいて結構です。すべての地形は,プレイヤーがそこに行けることを踏まえたうえで設計してます。オープンワールドのゲームを作ろうと思ったのは,Rockstar Gamesが作った「Grand Theft Auto」の影響が大きいですね。
黒い砂漠では,建物や土地,鉱山などは,インスタンス空間ではなく,そのほとんどが,休憩,消費,生産のためのハウジング空間になっています。こういったものが絵柄や背景でしかなかった既存のタイトルとは違って,街,城,都市の主はほかならぬプレイヤーであり,すなわちプレイヤーの活動舞台であるという意味でもあります。プレイに多様性を与えてくれる探検要素もしっかりと作り込んでいます。
NPCを雇って生産や交易ができるというポイントも, 既存のMMORPGとはちょっと違う特徴であると思います。
4Gamer:
交易というのはどういうものですか。
キム氏:
黒い砂漠では,地域ごとに固有の産物や副産物が設定されています。特産アイテムは,該当の地域でのみ生産されたり,または,ほかの地域の同種のアイテムより高い価値を持つという具合です。これらは,直接的な消費や生産に使われることになります。
交易は,現実での交易と同じように,需要,供給,レアリティなどを踏まえて,売買で利益を上げることができる要素です。例えば,ベリアという街の特産である,ベリア産トウモロコシや特定の鉱物を,セレンディアという街に持って行き,高い値段で売って利益を得る,などの形です。
「黒い砂漠」では,このような交易を,雇用したNPCを使って反復させることができます。もし,プレイヤーが農場や鉱山などを所有しているのであれば,NPCを雇うことにより,畑から収穫や採鉱を行い,それを馬車に積んで特定の地域に持ち込んで販売するという過程全体を繰り返して行うことができるんです。その間にプレイヤーは,狩りをしたりゲーム以外の現実での行動を行うことができます。
一方,まだ財力の備わってないプレイヤーの場合には,直接自分の足で走り回らなければなりません。
4Gamer:
交易というのは,プレイヤー間の取引ですか? NPCとの取引ですか?
キム氏:
プレイヤー間の取引ですね。
4Gamer:
分かりました。では,探検要素についても教えてください。
キム氏:
プレイヤーがマップ内で滞在や活動をしていると,そのマップの探検ポイントが蓄積され,ほかのプレイヤーとは違うコンテンツを利用できるようになります。探検ポイントは,特定の不動産を所有できる機会を得たり,雇用したNPCが馬車で特定の地域に到達できるように,道の上に設定されたノードを覚えたりするうえで必要となってきます。
また,探検の程度によって,マップ内にインスタンスダンジョンが追加されたり,以前は発見できなかった鉱物が現れたりする場合もあります。特定の狩場にバフを設定することも可能です。
4Gamer:
発表会ではNPCごとに好感度があるということだったのですが,どのようにして上げていくのでしょうか?
キム氏:
該当のNPCとの会話中に出てくる選択肢や,NPCから依頼されるクエストなどが代表的な方法ですね。該当のNPCと友好的な別のNPCとの好感度を高めるのも一つの方法となります。
4Gamer:
NPCの好感度を上げると,プレイヤーにどのようなメリットがありますか?
キム氏:
一定の好感度まで上げないと発生しないクエストが用意されています。好感度を上げることで,プレイヤーはアイテム,経験値,ゴールドのような一般的なもの以外に,特別なダンジョンへ入るための鍵や,特定の探検ノードを獲得することができます。
攻撃側と守備側の戦術合戦が熱い攻城戦
大砲やはしご,バリケードなどのアイテムが勝利を分ける
4Gamer:
次に本作のポイントの一つである攻城戦について教えてください。攻城戦の目標は何でしょうか?
キム氏:
攻城戦で勝利するとその地域を支配することができます。地域ごとの産物の値段や税金を上げられるなど,利権を取り合うために攻城戦を行うことになります。
4Gamer:
ゲームのマップをいくつかの地域に分割していて,それぞれの地域を取り合う感じになるのですか?
キム氏:
そうですね。そんな感じで地域を取り合うことになります。
4Gamer:
バックストーリーを見ると,大きな国が二つあり,プレイヤー達はそれに対して独立戦争を仕掛けるという感じになってますが,それぞれの国から地域を奪っていくという形になるのでしょうか。あるいは,プレイヤーはどちらかの国に所属して相手の国に攻め入るのでしょうか?
キム氏:
二つの国は腐敗しきっていて,プレイヤーやNPC達は「これ以上耐えられない」と自分達の国を作るために決起したんです。そこで彼らは,双方の国から地域を削り取っていくわけです。その二つの国は滅びゆく国といった感じですね。
4Gamer:
なるほど。攻城戦は戦術的な要素がアピールポイントだとのことでしたが,どのようなことができるのか教えてください。
キム氏:
構想中の部分もありますが,従来のMMORPGの攻城戦のように,城門付近で押したり引いたりするだけではなくて,大砲で攻撃したり,正門以外の門を攻めることができたり,はしごなどで城壁から内部に侵入して陽動したりと,さまざまな行動を取ることができます。大砲は移動速度は遅いものの,好きな場所に移動して攻撃をすることが可能です。
守備側は戦術に合わせて,城門の開閉を自由なタイミングで行うことができます。また,大砲を防ぐための防御幕などを張ったりと,いろいろなコンテンツを活用することで,戦略的な攻城戦が行えるように制作しております。
また,戦闘不能になった回数によってプレイヤーの復活に必要な時間が増えていきますので,部隊編成においてもそれらを踏まえておかねばなりません。
4Gamer:
大砲で壁が壊れたりはしないんですか。
キム氏:
ある程度ダメージは受けますが,大砲で壁が崩れてしまったら戦術が成り立たなくなってしまうので,そこは加減を調整しています。
4Gamer:
そうですか。その大砲などは,攻城戦に合わせて自分達で作るものなのでしょうか?
キム氏:
そうですね,大砲やその弾は生産する必要があります。攻城戦の準備段階では,それらを適切なポイントに運ぶ必要もあります。
4Gamer:
するとゲーム内で大砲やはしごなど,いろいろなものが作れるということですか?
キム氏:
大砲やはしごだけではなく,攻め入ってくる敵を足止めするバリケードなども作れますよ。バリケードを使って,敵の進軍を誘導するなんてことも可能です。
4Gamer:
そうすると,生産専用の職業もいるのでしょうか?
キム氏:
専用の職業はいませんが,キャラクターは4種類の生産スキルを選択できます。キャラクターのサブスキルとして,革や木,石などを扱って生産を行えるわけです。
4Gamer:
C9でも5種類の生産システムがありますが,それと似たような感じなのでしょうか?
キム氏:
いえ,C9とはまったく違う形になると思いますよ。
イ氏:
システムそのものでいえばまったく違うんですが,キャラクターごとにサブスキルとして生産スキルを選択するというあたりは,イメージ的にC9に近いかもしれません。
独自エンジンで美麗なグラフィックスを実現
ただしプレイに必要なスペックは割と高め?
4Gamer:
独自にグラフィックスエンジンを開発したとのことですが,サポートしている機能や,とくにここが凄いという部分がありましたら教えてください。
基本的には,既存のエンジンにあるアルゴリズムや機能と同じようなものはほとんど搭載されています。GI(グローバルイルミネーション)とかSSAO(スクリーンスペースアンビエントオクルージョン)といったものですね。今回開発したエンジンの特徴としては,Long Term AO(ロングタームアンビエントオクルージョン)といいまして,光の光源があるじゃないですか。それが事前に作っておいたモノを映すのではなくて,リアルタイムで動いて,その時間帯に合わせて光源が変わっていくという仕組みを作っています。建物の中の光の加減などがすごく強烈に,特徴的に,区別しやすく見えます。
4Gamer:
それはつまり,GIでゲーム内の時間経過による昼や夜を再現しているということですか?
キム氏:
そうです。
4Gamer:
なるほど。しかし,プレイするのに必要な環境が上がってしまいませんか?
キム氏:
いまは最適化に力を入れているところでして,最低限動くスペックとしてはGeForceでいうと,8800のエントリークラスのGPUを考えています。CPUはデュアルコアで,メインメモリ容量は2GB以上を想定しています。ここ数年,グラフィックスカードは,さほど発展をしてきたわけではないという点も踏まえて最適化を進めていくつもりです。
4Gamer:
それでも結構要求スペックが高めですね。ムービーで動いていた攻城戦では,どれぐらいの環境だったのでしょうか?
イ氏:
あれは最適な環境を用意したテスト的な意味もあるので,あまり参考にはなりませんね。動作環境については,日本や世界的な環境を見て,それに対して最適化を目指していくことになると思います。
4Gamer:
来年の今頃,どんなグラフィックスカードが出ているか分かりませんし(笑)。
ちなみに攻城戦は最大で何人ぐらいで対戦できるのでしょうか?
キム氏:
いまはまだ上限を決めていないので,これもテストをしながら調整していきたいと思います。先ほどのムービーの攻城戦では,400人対400人です。
4Gamer:
そんなにいたんですか。驚きです。
それではちょっと早い気もしますが,黒い砂漠のサービス形態,例えば基本無料でアイテム課金なのか月額課金なのか。その辺りはどうお考えでしょうか?
それはさすがに早いですね(笑)。正解はないと思いますが,プレイヤーさんや制作状況を見て,決めていこうと考えています。
4Gamer:
では,最後に黒い砂漠に期待している日本のプレイヤーに向けてコメントをお願いします。
キム氏:
黒い砂漠は,会社を立ち上げて初めてのタイトルです。プレイヤーの方々にもいろいろなご意見をいただけたらと思いますし,それを取り入れて,よりよ良いゲームを作れるように力を入れていきますので,これからもどうかよろしくお願いします。
イ氏:
最近は軽めのゲームがはやっていて,大作と呼ばれるオンラインゲームは数少なくなってしまいました。黒い砂漠という多彩なコンテンツを持った大作を当社でサービスできるということは,我々にとっても,日本のMMORPGファンにとっても喜ばしいことだと思います。これまでの経験を生かして黒い砂漠を楽しんでいただけるような環境を作っていきたいと思いますのでご期待ください。
4Gamer:
本日はどうもありがとうございました。
調印式でもゲーム概要についての説明があったが,今回のインタビューではそれよりも一歩踏み込んだ話を聞くことができた。さすがにまだ開発中ということで,多少見えづらいところもあったが,ゲームの仕様はこれから徐々に明かされていくことだろう。
オープンワールドのRPGはオフライン版のMMORPGと言われることもあるが,黒い砂漠は,まごうことなきオンラインMMORPGだ。これに,C9のような高いアクション性が加わることでどんなゲームになるのか,いまから楽しみでならない。
また,大砲で壁が壊せないのは残念だが,多彩な攻城兵器を使った攻城戦がどういった形で進んでいくのかも興味深い。参加条件は未定とのことだが,総勢800人(以上?)の攻城戦ともなると,まさに戦争という言葉がふさわしい。それだけのキャラクターを滑らかに動かすにはどんなスペックのPCを組めばいいのか,いまから気がかりではある。サービス開始は来年下期とまだまだ先ではあるが,今後に注目したいMMORPGタイトルの一つだ。
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