思わず飛び出す「やるじゃない（ニコッ」。ストーリー/キャラクターが多数追加され世紀末感がパワーアップした「真・北斗無双」のレビューを掲載

　コーエーテクモゲームスは2012年12月20日，超有名コミック「北斗の拳」を原作とするアクションゲーム「真・北斗無双」（PlayStation 3 / Xbox 360）を発売した（※Wii U版は2013年1月31日発売予定）。


　本作は2010年3月に発売された「北斗無双」（PlayStation 3 / Xbox 360）の最新作。原作ストーリーを体験できるメインモード「伝説編」が大幅に拡充され，「ラオウ編」以後の「天帝編」「修羅の国編」「バット・リン編」が楽しめるのが大きな特徴だ。
　さらに，前作ではNPCとして登場した「ジュウザ」 や 「シュウ」 などもプレイアブルキャラクターとして使用可能。エピソードの追加に伴って「ファルコ」 や 「カイオウ」といった新キャラクターも多数登場するなど，原作ファンにとって非常に魅力的なタイトルとなっている。

　本稿では実際にプレイした感想を交えつつ，ゲームの概要をお伝えしていこう。……お前はもう，読んでいる。

「真・北斗無双」公式サイト

北斗ゲー史上最高レベルの充実っぷり

思わず飛び出す「やるじゃない（ニコッ」

　「北斗の拳」については，ここでクドクドと語る必要もないだろう。全世界での累計発行部数が1億部を超える大ヒットコミックで，「世紀末」と聞けば，日本人の大半が本作の世界観を連想すると言っても過言ではないほどの知名度を持った作品だ。

　かく言う筆者も幼少のころから，徒党を組んで襲い来るモヒカン頭の悪漢達を指先ひとつでダウンさせていくケンシロウの姿に憧れ，北斗神拳の動きを真似たものである。いまでは性格がジャギ様に，そして容姿はハート様に似てしまったが。

この記事を任された際，担当編集に「汚物が汚物を消毒するのか（笑）」と心ない言葉の暴力を受けた。てめえらの血はなに色だーっ！

　まぁ，そんなどうでもいい話はさておき。コーエーテクモゲームスといえばご存じ「真・三國無双」「戦国無双」シリーズなど，“一騎当千”の爽快感を追求したアクションゲームの制作で高い評価を得ているゲームメーカーだ。それが“一撃必殺”の「北斗の拳」と組んだのだから，面白くならないわけがない。事実，前作「北斗無双」は国内・海外あわせて80万本のセールスを記録した。

　そして本作，「真・北斗無双」では冒頭でも語ったとおり，さまざまな追加要素が加わっており，さらに“北斗ゲー”としての完成度が増している。
　もっとも注目すべき点は，やはりメインモードである「伝説編」の拡充だろう。前作未収録エピソードを加え，演出も新しく再構築された「ラオウ編」だけでなく，「天帝編」「修羅の国編」，そして原作の最終エピソードであり，初の映像化となる「バット・リン編」まで網羅している。原作ファンはもちろん，初めて「北斗の拳」の世界観に触れる人でも，クリアするころには顔付きが世紀末救世主になっているであろう大ボリュームだ。

イベントシーンでは漫画のコマ割りを意識した演出が使用されている。水と食料の略奪を……強いられているんだ！！

　ストーリー面の強化に伴って，キャラクターの総数も前作と比べて倍以上に増加。さまざまな流派の拳士達が操作できるようになっており，アクションゲームとしての遊び応えも大きく増している。また，キャラクターごとにスポットを当てたオリジナルストーリーモード，「幻闘編」も充実。前作とは違い，原作をベースにしつつも，伝説編の合間に起きた出来事が描かれている。
　ジャギ＆アミバによる珍道中のような，if色の強いハジケた展開がなくなってしまったのは少々残念だが，本編とより密接に関係したエピソードが楽しめるのは嬉しいところだ。再現度の面では，北斗ゲーとして歴代最高レベルのクオリティだと言っても差し支えないだろう。やるじゃない（ニコッ


　ただ一点……アニメ版のファンからすると，声優陣が一新されているところに違和感を感じてしまうかもしれない。
　しかし本作の原作はあくまで“コミック”であり，アニメ版とはまた別物と考えるべきだろう。ご多分に漏れず筆者もアニメ版の大ファンなのだが，実際に本作をプレイしてみたところ，なかなかどうして……個人的な感想として「これはこれでアリ」というか，違和感のなさに驚いた。とくにジャギ様役である高木 渉さんの演技に関しては，「ジャギ様をやるために生まれてきたんじゃね？」とすら感じてしまったほどだ。……まぁ，単に筆者がジャギ様と高木さんのファンであるという贔屓目も影響していると思われるが。とにかく声優陣に関しても，キャラクターのイメージを壊さない見事なキャスティングになっているので，ぜひとも注目してほしい。

答「コ　ロ　ン　ビ　ア」
（※編注：意味が分からない人は，「コロンビア」「やる夫」で検索してみよう）

進化を遂げた一撃当千の戦闘システム

経絡図で悪魔が微笑む時代を戦い抜け！

　一撃当千の戦闘システムも，本作ではさらに進化。もっとも分かりやすい特徴として，キャラクターのアクションが前作よりも軽快になっており，敵を次々と蹴散らしていく爽快感がアップしている。また，ジャンプが廃止された代わりにダッシュ・回避が導入され，強敵の重い一撃をかい潜りつつカウンターを叩き込む，というような立ち回りが可能となった。


　キャラクターの成長も，プレイスタイルに合わせて各ステータスがリアルタイムにレベルアップする仕様になり，敵を撃破したときに使用した攻撃方法によって，獲得できるステータス経験値が変わる。さらに，レベルアップ時には「一定時間の攻撃力上昇」など，成長したステータスに応じてさまざまなボーナス効果が発動するようになった。

ダメージを受けると衣装がビリビリに破れていくのも見どころ。「さすがCERO Dだぜ！」とバットも納得しそうなマミヤの世紀末Tバックを，さまざまな角度からお楽しみください

　とくに注目すべきは，フィールド上のアイテムボックスや戦闘後の報酬で入手できる「経絡図」の存在。これは装備することにより，ステータスのブーストや特殊技能の習得といった効果が得られる。
　経絡図は最大で5つまで装備可能で，各ステータスアイコンを縦方向に並べると「連結」が発生。連結数に応じてステータスがブーストされ，特殊な技能効果が得られる。うまく全てのステータスで2〜5連結を達成できれば，思わず「力こそが正義！　いい時代になったものだ！」と言いたくなる「究極連結」の完成だ。
　なお，経絡図は最大で21枚ストック可能なのだが，不要な経絡図は女人像に「奉納」することで，ほかの拳士に渡せる。幻闘編で育てたいキャラクターがいるならば，「今日より明日なんじゃ」と考えて経絡図を渡しておくと序盤から強化された状態でプレイできるのでオススメである。

例えば異性に与えるダメージが増加する「妖星の印」などは，ケンシロウが使用するよりもマミヤやリンに渡したほうが高い効果を発揮する

　ちなみに，本作の幻闘編ではオンライン協力・対戦プレイが可能。クエストを2人で協力してクリアする「タッグマッチ」と，最大4vs.4で数々のミッションに挑戦し，クリア時に獲得したポイントの合計値を競う「チームマッチ」があり，成績によっては高性能なボーナス経絡図が獲得できる。……何を迷うことがある奪い取れ！　今は悪魔が微笑む時代なんだ！

この世に生を受けたからには

「真・北斗無双」を手に握れ！！

　全体的に，前作よりも洗練された印象を受ける「真・北斗無双」。とくにキャラクターの動作を軽快にしたのは大正解で，「無双」らしい爽快感が味わえる上質なアクションゲームとなっている。
　前作の重々さを感じるアクションも，“拳で殴っている感”が強く味わえるので個人的に嫌いではなかったが，やはり「無双」であるからには，今作のプレイ感覚が“真”の完成形だろう。


　また，ラオウ編以後のストーリーが追加され，プレイアブルキャラクターが大幅に増えたのも，原作ファンとしては非常に喜ばしい点だ。伝説編をプレイしていると，新たな拳士が登場するたびに「でたー！」と嬉しい気分になる。英雄も悪漢も，「北斗の拳」という作品には人気キャラクターがとにかく多いので，イメージを崩すことなくゲームに落としこむために相当苦心したことだろう。技名ひとつをとっても，強い原作愛とこだわりが感じられるのが好印象だ。

EX衣装のバスタオルマミヤ。これもまた原作愛なり

　“世紀末”を舞台にしている以上，前作同様にフィールドの大半が荒廃した土地なので，ビジュアル的な新鮮味に欠けると感じる人もいるかもしれないが，ちょっと考えれば「北斗の拳だから仕方ない」という結論に至るはず。緑の大地も，きらびやかな大都会も全て滅んでいるんだもの……。見ていて気が滅入るような土埃臭いフィールドも，徹底した原作再現の結果なのである（たぶん）。

　とにかく「北斗の拳」ファンならば，プレイしておかないと生涯に悔いが残るゲームであることには違いない。ラオウのように「我が生涯に一片の悔いなし！！」と叫んで天に帰りたいと願うならば，見逃すべきではないだろう。



　……なに？　金？　どうせ世紀末になりゃケツをふく紙にもなりゃしねぇ！　今のうちに使っちまいなっ！

「真・北斗無双」公式サイト