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[GDC 2012]最新の「シムシティ」はどのような仕掛けで動いているのか。Maxisがシムシティのゲームエンジン「GlassBox」のレクチャーを実施
ナンバリングやサブタイトルをやめ,1989年にリリースされたオリジナル作品と同じタイトルに戻して発表された今回の「シムシティ」。「GlassBox」は,デベロッパのMaxisがそんな本作のために開発したデータ駆動型のシミュレーションエンジンだ。PCだけではなくマルチプラットフォームを前提としており,インターネットやダウンロードコンテンツといった最近のトレンドにも対応した次世代システムであるという。
壇上に立ったのは,MaxisでCreative Directorを務めるOcean Quigley氏と,System DesignerのAndrew Willmott氏,そしてSenior Software EngineerのDan Moskowitz氏の3人だ。
しかし,SimCity 4から9年の歳月が経ち,ハードウェアの能力が格段に向上した現在,よりダイナミックでグラフィックスレベルの高いものを目指せるようになったというわけだ。少なくともGlassBoxは,道路の端で車が消えていくオリジナル版シムシティとは,だいぶ違うらしい。
GlassBoxの基本は非常にシンプルで,「リソース」(Resources)と「ユニット」(Units),「マップ」(Maps),そして「世界」(Globals)を足して,そこへ「ルール」(Rules)を混ぜ込めば,いっちょ上がりだという。
リソースとしては,シリーズをプレイした人なら知っているように,石油,石炭,穀物,木材,水のほか,お金や電気,労働力,幸福や不幸などがあり,単位は“bin”。つまり瓶で,それぞれに固定された上限があり,一定以上は溜まらない。
ユニットとしては,一般家庭,工場などのほか,人々もユニットに含まれるという。ユニットにはいろいろなリソースを溜めることができ,また,リソースと違って空間的な広さを持っている。ガレージなら車が置ける,家屋なら食物を溜めることができるほか,人が住めるといった,独自の特性を持っている。
いうまでもなくマップとは,ゲームの舞台になる土地のことで,地下に石油,石炭などのリソースが埋蔵されているところもあれば,森もある。埋まっているリソースには限りがあり,場所によって大気の汚染度や地下が異なる。マップは見えないグリッドで区切られており,そのグリッド内の土地の特性は同じだ。つまり,石油と石炭,両方が採れる土地はないということ。ユニットは,マップの上に一定の面積を占めることで,マップにインタラクトすることになる。どういうことかといえば,同じ土地に違う建物を同時に建てることはできないという,当たり前のことっすね。
世界とは,リソースの集合体だ。プレイヤーが現在,お金をこれだけ,電力をこれだけ,石油をこれだけ持っているというリストで,ゲームの進行に関わってくるようだが,ここではあまり気にする必要はないとのことだ。
これらの要素が,ルールによって結びつけられているという寸法なのだ。
ルールは,例えば「お金を10出せば,木材が2,手に入る(単位はbin)」という感じだ。あるいは「工場は,一定の時間でマスタードを瓶詰めする」などといった具合に,それぞれのユニット専用のルールもある。ちなみに,工場は瓶詰めマスタードと同時に大気汚染も生み出し,瓶詰めマスタードも大気汚染も,それぞれ別のユニットに影響を与えるのだ。マップにもルールがあり,こちらは「土地と水と栄養があれば森が育つ」といった感じ。
このようなシンプルなルールを持った,それぞれのユニットが相互に影響を及ぼし合い,結果として思いもよらなかったような状況を生み出す……というのが基本的な考え方らしい。新たなユニットができるたびに,交通量が変わったり,電力消費が増減したりなどの変化が起き,プレイヤーは都度あれやこれやの対応を迫られることになるのだ。筆者には相当複雑に思えるけど,これらは簡単なことらしい。
ゾーンもまたルールを持ち,ユニットを生み出せたり,アップグレードしたり,破壊したりできる。シムシティは,ある土地を住宅地と指定して,電気や水道などを送り込めば,勝手に住宅地ができてくるというゲームシステムだが,それを可能にするのがゾーンだ。
エージェントは,ある場所から別の場所にシグナルを送ったり,交通量を制御したりと,さまざまなことをする。例えば,工場が朝を迎えると,住宅地に見えないエージェントが送り込まれる。それを受けた住宅地の人々は出勤を始めるというわけだ。あるいは,廃屋が火事になった場合,火を出した家から熱波のエージェントが周囲に送られ,それに耐えられない隣家は延焼し,自らも熱波のエージェントを出す。そして,広域が火事になると,今度は警報のエージェントが消防署に送られ,消防車がやってくるという案配らしい。さあ,難しくなってまいりました。そこのあなた,分かりますか? 自慢じゃないが,筆者はだいぶ怪しい。
そう,シリーズを重ねるにつれていろいろなアトラクションが用意され,そのためつい忘れそうになるが,シムシティは“シミュレーションゲーム”なのだ。経済や環境,区画の整理などさまざまなことを試し,その結果を楽しむというのが本来の面白さだろう。最新作は,そんなオリジナルタイトルの持っていた味を,2013年の技術で再現しようというわけだ。
Maxisの3人の話では,このGlassBoxはシムシティだけでなく,そのほかのさまざまなシミュレーションゲームにも対応できるように設計されているという。ちょっと「ホント?」という感じもしないではないが,今のところ使われているのはシムシティだけとのこと。やっぱりね。ともあれ,発売まではまだ,だいぶ時間があるみたいだが,今後の展開に期待したい。
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