レビュー
「XCOM: Enemy Unknown」のゲーム性を大幅にアップする拡張パック
XCOM: Enemy Within
エイリアンの地球侵略に立ち向かう国際秘密機関「XCOM」(Extraterrestrial Combat Unit)の活躍を描く,2K Gamesの大人気ターンベースストラテジー「XCOM: Enemy Unknown」(PC/PlayStation 3/Xbox 360)。プレイヤーはXCOMの司令官となり,部隊を指揮して地球に押し寄せるエイリアンに立ち向かったり,XCOMの基地を運営し,エイリアンの技術をパクったり,いろんなことを言ってくる各国の対応に頭を悩ませたりしていく,そんなゲームだ。
詳しくは,2012年10月25日に掲載したレビューを参照してほしいが,2012年の発売以来,欧米メディアの評価も非常に高い。
「XCOM: Enemy Unknown」公式サイト(要年齢認証)
このたび,そんな「XCOM: Enemy Unknown」の拡張パック第一弾「XCOM: Enemy Within」が登場した。開発は本編を手がけたFiraxis Gamesが行っており,新たなストーリー,追加マップ,追加ユニット,新しい基地施設といった要素が追加される。
ゲームを始めるとストーリー展開はこれまでと同じで,マップも同じみたいだったので,本当に拡張パックをプレイしているのかちょっと不安になったが,よく見るとマップにはちゃんと新しい要素が入っていたし,新たな展開もプレイヤーを待ち受けていた。
約1年の開発期間を経てリリースされた拡張パックだけに,ボリュームはかなりもの。本編を遊んだことのある人も,これまでとは違うプレイを楽しめるはずだ。
というわけで,さっそく,拡張パックで追加された要素を見ていこう。拡張パックなので,本編「XCOM: Enemy Unknown」を持っていないと遊べないが(ただし,PlayStation 3/Xbox 360版はスタンドアロンで起動可能),これを機会に本編+拡張パックを手に入れてしまうのも手かもしれない。
戦いを重ねることで,兵士達をパワーアップできる。いったん死ぬと二度と復活できないので,大切に育ててきた兵士が死んだときの落胆は大きい |
基地運営パートでは,使える施設が増えたこともあって,資金や建設日数などをより細かく考える必要が出てきた |
地球を脅かす新たなエイリアンが登場
地球にはない物質を回収して利用しよう
ゲームの序盤は見慣れたエイリアン達が登場するが,バランス調整されている印象で,遮蔽物の背後から攻撃してくるし,攻めるときは攻め,退くときは退く。正直,こんなに強かったっけ? という感じで,ザコキャラ相手でも油断しているとサクッと殺されるから泣けてくる。
中盤以降になると新種族のエイリアンが出現するほか,なにやらロボット系のエイリアンなども出てくるようになる。ヤツらは攻撃力が高いし,こちらが与えられるダメージは少ないし,これまでとは違った戦術,兵士の強化が必要だ。戦術面のテクニックが,さらに重要になるわけだ。
拡張パックでは,新たなエイリアンテクノロジーが追加されたことによって,登場するアイテムのバリエーションが増えた。
本編同様,今回もエイリアンを捕獲して尋問や解剖をしたり,戦闘でUFOをなるべく破壊しないようにしたりすることなどでエイリアンのテクノロジーが手に入る。それを使うことで新たな武器や防具,装備などが開発できるのだが,その種類が大きく増えたため,新アイテムを使った新たな戦法,戦術などを考えていくことがさらに面白くなったのだ。
また,墜落したUFOの調査ミッションなどで“メルド”というエイリアンの星に存在する物質が出てくることがある。これを使うことで肉体改造や新たな武器が生産できるという重要な物質だが,ある程度の時間(ターン)が経過すると自然消滅してしまうので,メルドのあるマップでは可能なかぎり回収しておこう。
メルドはマップのどこに存在するか分からないので,兵士を移動させて見つけ出すことになるが,メルドに近づくと,それがどの方向にあるのか,あと何ターンで消滅するかが表示されるので分かりやすい。メルドが登場するマップでは,あえて新米兵士を連れて行き,メルド回収要員としてひたすら走らせる……なんていう気の毒な使い方をしてしまう筆者のような人も少なくないかもしれない。メルドはそれほど,必ず回収しておきたい物質なのだ。
新たな研究施設を建設して
ロボット兵器や肉体改造で兵士を強化しよう
新しい施設としては,サイバネティック研究施設と遺伝子研究施設が建設できるようになった。
サイバネティック研究施設は,MEC(メカニカル外骨格サイバースーツ)およびMECに装着する火炎放射器などの武器の生産,そしてMECを装着する兵士の強化を行う施設だ。MECとは特別な戦闘能力を持つアーマースーツで,通常の兵士が装着することはできず,サイバネティック研究施設で強化されたMEC兵士だけが装着できる。
なにしろ,MEC兵士は攻撃力,防御力,機動力など,通常の兵士とは比べものにならないほど強力なので,チームに数体参加させれば,かなり安心してミッションを進められる。できるだけ早い段階で導入したいユニットだ。
遺伝子研究施設では,通常の兵士の脳,目,胸,肌,脚について各2種類の肉体改造が可能で,例えば,目ならばミスショット後に照準+10%のボーナスが得られる超反応瞳孔と,高所から攻撃すれば照準+5%ボーナスおよびクリティカルヒット+5%ボーナスが得られる奥行き知覚が用意されている。手術という形がとられており,手術中は戦闘に参加できないところが何気にリアルだ。
さらに,体力がゼロになっても死亡せず,2ターン以内に治療すれば大丈夫な予備心臓,カメレオンのように遮蔽物に合わせて肌の色を変えられる擬態スキンなど,思わずすべての兵士に採用したくなる肉体改造が用意されている。生き残ってきた古参兵に肉体改造を施すと,かなり強くなるのでオススメだ。
なお,サイバネティック研究施設と遺伝子研究施設では,資金のほかに前述のメルドを使用することになるので,メルドをちゃんと回収できていないと兵士強化に影響が出てしまう。新米兵士を回収要員に,という筆者の選択にも納得してもらえるに違いないが,個人的には,筆者のような司令官の下で働くのは絶対にイヤだ。
また,ミッションの結果によって,市街戦記章,防衛勲章といったメダルを獲得でき,このメダルにも,例えば「味方が死亡してもパニックを起こさない」「体力回復を受けたときの効果を2倍にする」といった特殊効果がある。
と,こんな感じで育てていく兵士なのだが,司令官が指揮でミスすると,いとも簡単に死んでしまうので,本気でヘコんだりする。
XCOMの邪魔をするのはエイリアンだけじゃない
敵対する組織“EXALT”が登場!
さて,以下に紹介するのがこの拡張パックの目玉ではないかと思うが,今回はなんとエイリアンだけでなく,XCOMに敵対する組織「EXALT」が登場する。
EXALTが何の略称なのかは,ゲームでも語られないのでさっぱり不明だが,ともあれ,エイリアンに対して,ある種の間違った同情心を抱いているということしか分からない。しかも泡沫組織かと思いきや,エイリアンのテクノロジーを利用した兵器で武装しており,これがなんとも強力で痛いのなんの。エイリアン以上に手強いのだ。
EXALTは世界各国に活動拠点となる支部を持っており,ときにXCOMのコンピュータをハッキングして研究データを破損させ,研究の速度を遅らせたりもしてくるというアクティブさ。そこで,各国にあるEXALTの支部を見つけ出して攻撃するわけで,そんな「タクティカルミッション」が拡張パックに用意されているという寸法だ。
タクティカルミッションはエイリアン相手の通常ミッションとは異なり,まずはEXALTの基地に「シークレットエージェント」を送り込んでスパイ行動させ,準備ができたらEXALTの支部に乗り込むというダンドリになっている。
シークレットエージェントはピストルのみを所持しており,現地に乗り込んだメンバーとは別行動。「EXALT通信ハッキング」というスキルを持っており,EXALTの通信網をハッキングすることで,一時的にEXALTの武器を使用不能にできる。
シークレットエージェントと部隊の両方を操作し,シークレットエージェントを脱出させつつ,次から次へと沸いてくるEXALTの連中をやっつけ,EXALTの基地の壊滅を目指すわけで,司令官はかなり忙しい。
やみくもに突進すると猛烈な数のEXALTに襲われる。MEC兵士でさえ瞬殺されるという強力ぶりなので,行動は慎重に |
サイバー攻撃によって研究が遅れてしまうことも。ただし,攻撃を受けるとEXALTの支部の場所が判明する |
一段と高まったゲーム性とリプレイ性で
繰り返し楽しめる一本に
「XCOM: Enemy Unknown」が大きな人気を獲得した理由の一つは,リプレイ性の高さだ。プレイのたびにマップが変化するので,たとえ一度エンディングまでクリアしても,二周めが同じような展開になることは少ない。
今回の拡張パックでは,収録マップ数が本編の1.5倍になっており,さらにタクティカルミッションなどが追加されたことで,バリエーションに富んだプレイが楽しめる。
本作には「イージー」「ノーマル」「クラシック」「インポッシブル」の4段階の難度が用意されているが,慣れてきたらクラシック以上でプレイするのがオススメだ。エイリアンとEXALTの動きが非常に人間くさくなって猛烈に強くなるため,ワンミスが命取り。小さな手違いで部隊が壊滅,などということも起きるので,緊張感が非常に高い。
上級プレイヤーともなると,難度インポッシブルのアイアンマンモードでプレイするらしい。アイアンマンモードとは,オートセーブのみのモードで,兵士が死んだので直前のセーブ地点からやり直そうということができなくなる。そのため,司令官の判断一つでは簡単にミッション失敗になってしまう緊張感がたまらん! ので,マゾゲーファンには見逃せないはずだ。
武器を持たずに肉弾戦を挑んでくるエイリアンは,銃弾を浴びせ続けても平気で突進してくるので怖い。MEC兵士と殴り合わせるのがいいだろう |
ミッションは成功したものの,瀕死状態の兵士達。司令官としては落第だ。可能な限り多くの兵士を育てておかないと緊急ミッションに対応できない |
ほかにも上級プレイヤー向けのオプションとして,武器のダメージ量にばらつきの出る「ダブルルーレット」,新兵の初期能力値がランダムになる「十人十色」など,リプレイ性を高めるオプションが満載なので,何度もプレイして,いずれもインポッシブルモードのアイアンマンモードでクリアするくらい極めよう。
今回の拡張パック「XCOM: Enemy Within」により,本編「XCOM: Enemy Unknown」の遊びの幅が広がるのは間違いなく,多数の新要素もうまく機能しているという印象だ。
個人的には,もう少しぶっ飛んだ武器や,ロボット同士が殴り合うような戦いが増えるとよかった気がするが,海外では拡張パックの評価も本編同様に高い。ターンベースのストラテジーゲームが好きな人ならば,試してみよう。
「XCOM: Enemy Unknown」公式サイト
- 関連タイトル:
XCOM: Enemy Unknown
- 関連タイトル:
XCOM: Enemy Unknown
- 関連タイトル:
XCOM: Enemy Unknown
- この記事のURL:
キーワード