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[GDC 2018]映像やAR/VR,さらにリアルタイムレイトレーシングまで! 2018年のUnreal Engineはこうなる
最初に登壇したのは同社CEOのTim Sweeney氏だが,驚いたことに,今年の氏の話はモバイルから始まった。世界には35億台のコンピューティングデバイスが存在し,何十億人ものゲーマーが誕生していると氏は語る。
現在,数多くのモバイルゲームがリリースされているが,最近ではモバイルだからといってカジュアルゲームばかりということはなくなった。昨年発表された「Lineage 2: Revolution」をはじめ,コアなゲームがモバイルでも展開され始めている。Unreal Engine 4を使ったコアなモバイルタイトルとして「Rocket League」「ARK: Survival Evolved」「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS Mobile」,そして「Fortnite」が紹介されていた。
それでもパフォーマンスが足りない場合には,レンダリング解像度をダイナミックに変えるなどしてフレームレートを確保しているという。Fortniteを開発するうえで行われたUnreal Engineのさまざまな拡張は,多くのゲームにとっても重要なものとなる。
同社CTOのKim Liberi氏からは,「Realtime Future」と題して主に映像関連の動向が語られた。
まず紹介されたのは,多くの映像作品を手がけるThe Third Floorの,MRによるスタジオ撮影の様子だ。このスタジオでは,カメラ付きのVRヘッドセットとハンドコントローラを使って,CG世界の中で演技や演出の確認などができる。通常はブルーバックなどで人物の演技を別撮りし,CGの背景と合成するのが最近の流れなのだろうが,このスタジオではCG付きのイメージをあらかじめ確認できるようだ。
また,パキスタンの3rd World StudiosでもUnreal Engine 4による映像制作が行われており,その模様も紹介された。
映画制作にUnreal Engine 4が使われるようになり,それに合わせて映像制作を意識した機能が充実していくという,好循環が生まれているUnreal Engineだが,その一つの象徴といえるのが,ルームスケールのVR体験とVR映像を組み合わせた短編作品「Carne y Arena」のアカデミー賞受賞だろう。数年前にはそんなことはまったく考えられないことだった。
最近では,こうしたCGであることを感じさせないような「デジタルヒューマン」がトピックになることが増えてきた。モーションキャプチャやエモーションを,リアルタイムでCGキャラクターに反映させること自体はそう目新しいものでもないのだが,クオリティがどんどん上がってきているのだ。このHellbladeも,不気味の谷を越えたキャラとして話題になっていたものだ。
前述のとおり,リアルタイムパフォーマンスキャプチャ用のキャラクターとそのソリューションなのだが,非常に高レベルのものに仕上がっていることが分かる。Expo会場のVICONブースでは,アクターが実際にSIRENを動かしているところが実演されていた。
続く3Lateralによるデジタルヒューマンのデモでは,ロンドン出身の俳優Andy Serkis氏が「マクベス」のソネットを表情豊かに朗読していた。さすがはシェイクスピアの国のモーションアクターという圧巻の演技だった。
この表情をクリーチャーにリターゲティングして,同様に詩を朗読させるデモも行われた。
このように,デジタルヒューマンの分野でもUnreal Engineはトップレベルとなっている。単にバーチャルYouTuberの高級版という感じではなく,デジタルヒューマンだけで映画が作れるレベルになっている。近い将来,この分野はゲームとも無関係ではなくなるだろう。
続いての話題はAR/MR系の話だ。
「WINGNUT AR」は,AppleのARkitを使ったもので,テーブルの上などにゲームの情景を表示するものだが,建物を壊したりといった派手なゲームシーンが目の前で広がるという驚きの内容だ。
いろいろと話題のMagic Leapについても紹介されたが,素晴らしいものであり,サポートするということしか情報はなかった。
映像関係の話題が多くなっているが,次はVRの話だ。
ILMxLABのMohen Leo氏が登壇して,今年オープンしたVRアトラクション「Star Wars: Secrets of the Empire」について簡単に紹介した。これは分かりやすく言えば,バックパックPCを背負って移動しながら楽しめるVRアトラクションなのだが,従来のものとは一味違う。どちらかというと,一般的なスター・ウォーズのアトラクションにVRを加えたモノといったほうがいいだろうか。現実空間とVR空間は一致しており,VR空間内で壁に触れると,本当にそこに壁があるといった感じのアトラクションなのだ。
こちらも並のVRゲームとは比べ物にならないクオリティのグラフィックスなのだが,Leo氏はさらにILMxLABが制作しているDirectX Raytracingのレイトレーシングによるデモも紹介していた。もちろん,Unreal Engine 4上でリアルタイムに実行されているものだ。こんなことはILMにしか許されないのではと思うような,ピカピカのストームトルーパー(?)が登場するなど,会場は大いに盛り上がった。
ILMxLABがこうしたデモを行っているということは,将来的にはレイトレーシングを使った,よりリアルなVRアトラクションなども実現するのかもしれない。
続いてNVIDIAのTony Tamasi氏が登壇してリアルタイムレイトレーシングについて解説を行った。図を見る限り,Volta以降のGPUのみをサポートしているようである。
さらにモバイル版「ARK: Survival Evolved」が紹介されたあと,突然,本作のNintendo Switch版の発表が行われた。会場ではSwitchの実機で動いている様子が示されていた。これは世界初公開のものだ。
最後に紹介されたのは,ちょっと意外なものだった。
Unreal Engine 4にはリプレイ機能が用意されているが,これを活用した,Fortniteのコンテンツクリエーションツールのデモは,ゲームのリプレイ動画などをより魅力的に演出できるようなものだったのだ。
そして再度,Tim Sweeney氏が登壇して,Fortniteのクロスプラットフォーム対戦機能について語った。Fortniteは現在(および近い将来で),PC,Mac,PlayStation 4,Xbox One,iOS,Androidをサポートするが,すべてのプラットフォームのプレイヤーと対戦が可能である。ただし,インタフェースなどが異なるとフェアでなくなる可能性があるためか,モバイル版などは初期設定では参加できないようになっている。
かつてRocket LeagueのPS4版がクロスプラットフォーム機能をサポートしなかった際に,最も強くSIEを批判していたうちの一人がSweeney氏なわけだが,自社のFortniteではしっかりとクロスプラットフォーム対戦を勝ち取ったようだ。そして,氏はこのように世界中のゲーマー同士がさまざまな垣根を越えてつながり合うことが,業界の発展につながるとしてイベントを締めくくった。
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