テストレポート
「サムライ&ドラゴンズ」はPS Vitaに向けた,基本プレイ無料のネットワーク専用ゲーム。そのクローズドβテストに潜入してきた
本作は,iOS版が全世界で200万ダウンロードを達成した「Kingdom Conquest」(iOS / Android)という,ある意味“保証付き”の作品で採用されたシステムをベースとし,PS Vita向けに新たな世界設定,刷新されたプレイ感覚を引っ提げて登場する,ネットワーク専用タイトルである。
「サムライ&ドラゴンズ」公式サイト
そんなS&Dで,2月16日から2月29日までクローズドβテストが実施された。本稿ではそのプレイレポートをお届けしたいと思う。
ちなみに,“サムライ&ドラゴンズ”とのタイトル名から稲妻に打たれたように梶原一騎さん原作のスポ根野球漫画「侍ジャイアンツ」を連想した人はいるだろうし,筆者も連想したのだが,実は! ……とくに接点が見当たらなかった。
なお,いうまでもなく本稿の内容はあくまでもCBT段階のものであり,ゲーム内のパラメータなどのもろもろは,正式サービスにおいて大きく変更される可能性がある。その点はご了承を。
リアルタイムアクションを楽しめる「Travian」型ゲーム
和洋折衷の思い切った(?)世界設定も独特
本作は,プレイヤーの拠点となる城を中心に,自らの街を発展させつつ領土を拡大していく「シミュレーションパート」と,ダンジョンに潜ってモンスターと直接戦う「アクションパート」の2パートで構成されている。
シミュレーションパートは,施設を建てる,ほかの土地を攻めるなどの命令を出しておき,一定時間が経過するとその結果がゲームに反映されるという「Travian」型のゲームシステムがベースになっている。そのため,常にゲームに張り付いている必要はなく,命令を出し終えたらPS Vitaをしまっても構わないし,ほかのゲームを起動して遊んでも構わない。1日10分程度のプレイでも,十分にだいご味を味わうことができるのだ。
拠点での内政画面。城を中心に施設を建設し,それらのレベルを上げていく |
フィールドマップ。すぐ近くにほかのプレイヤー達の拠点もある |
一方のアクションパートは,プレイヤーがキャラクターをリアルタイムで操作して,ダンジョンに巣くうモンスターを討伐していくというもの。一人でダンジョンに挑んでもいいし,ほかのプレイヤーと協力して最大4人で攻略することも可能だ。
アクションパートでダンジョンをクリアすると,シミュレーションパートで“ほかの土地への攻撃”に使用可能な「魔獣カード」が得られる。これがプレイヤーの“軍”のユニットになるというわけである。
アクションパートは,アクションそのものを楽しめるのはもちろんのこと,シミュレーションパートにおけるプレイヤー組織の強化にも必要になるという仕組みなのだ。
さて,上記のカードリスト(これはもちろん一部だが)を見れば,ゴブリンやゴーレムといったファンタジー世界の住人に混じって,武田信玄や足利義輝といった日本の戦国武将などがいることに気付くだろう。
そう,本作は,東洋・西洋のモチーフが“ごった煮”となった,和洋折衷の世界設定となっているのだ。
物語の舞台は,異世界が混在する世界「ガイア=エンド」。ここは東洋と西洋が混ざり合い,モンスターが闊歩する異形の地だ。プレイヤーは,ほかのプレイヤーと協力しながら,「塔」と呼ばれるダンジョンを攻略したり,時にはライバルとしてバトルを繰り広げ,世界の「覇者」を目指すことになる。
本作における最大の目的は,舞台となる大陸に散在する「デブリズタワー」を占拠することだ。本作は約3か月を1シーズンとしたシーズン制が採られる予定で,シーズンの終了時に最も多くのデブリズタワーを所有するプレイヤー,あるいは同盟が勝者となる。
仮にすべてのデブリズタワーの占拠を維持し続けた同盟があれば,その同盟の主である「盟主」は,覇者として特別な報酬を手にすることができる。そのほか,ゲーム中に一定のアワードを達成したプレイヤーにも報酬が与えられ,その報酬を引き継げば,次のシーズンを有利な状態で進めることも可能だ。
また本作は対人戦・協力プレイをメインに据えた作品で,専用サーバーにWi-Fiや3G回線経由でアクセスしてプレイする形となっている。「こちら」に掲載した開発陣へのインタビュー動画によれば,1ワールドにつき10万人のプレイヤーがひしめくことになるという。
スマートフォンなどでは一般的な方式だが,コンシューマゲーマーなら「アドホックパーティを使うの? じゃあPS Vitaを閉じたらゲームは止まっちゃう?」といった疑問を感じる人もいるだろうが,処理はすべてサーバー側で行われている(時間は進んでいく)ので,前述したとおり,問題はないの。
キャラクター成長要素を備えたアクションパート
操作難度は低めだが,手腕一つで効率はかなり変わる
前述のとおり本作の目的は「デブリズタワーの占拠」であり,主戦場となるのは拠点の設備投資や軍事行動などを行うためのシミュレーションパートだろう。しかし,その軍事行動のためには,アクションパートを積極的にこなして,魔獣カードをガンガン入手していく必要がある。
プレイヤーがアクションパートで操作するキャラクターは,ゲームの最初期に,あらかじめ用意された5つの職業(剣士,魔法使い,僧侶,侍,忍者)から選ぶ。特徴はそれぞれ,以下のとおり。
ちなみにキャラクターイラストを手がけるのは,「エアマスター」や「ハチワンダイバー」で知られる漫画家・柴田ヨクサルさんだ。
剣士 |
魔法使い |
僧侶 |
侍 |
忍者 |
なおアクションパートでのダンジョンへの挑戦は,出撃回数が限られている。正式サービスでは時間経過と特定の条件を満たすことでポイントが補充される予定だが,ポイントはある程度溜められるため,ポイントが補充され次第出撃してもいいし,ポイントを溜めてから続けてダンジョンに挑んでもいい。この辺りは,プレイヤーの生活時間やプレイスタイルに合わせられる仕組みだ。
さて,アクションパートは,ダンジョンセレクト画面で行きたいダンジョンを選び,ルームの一覧からほかプレイヤーの作ったルームに参加するか,自らルームを作成して仲間を募るといった手順で進める。
今回のCBTの参加定員は2万人。それでも,明け方を除けばルームは常にズラッと並んでいて,仲間が見つからないということはなかった。正式サービスではさらに盛況となるのは間違いない |
筆者が立てたルームにもすぐに4人の仲間が集まってくれた。人を誘う,誘われるといったコミュニケーションが介在しないので,パーティを組む時の心理的なハードルはかなり低い |
ダンジョンでの操作は基本的に,PS Vitaのスティックやボタンを使用する。あらかじめ用意された「ありがとう」や「お疲れさま!」などのチャットマクロを使うときだけ,PS Vitaのタッチパネルに触れるといった感じだ。
操作そのものは,使用するボタンが少ないこともあり,はっきりいって「簡単」である。慣れなければうまく操作できないことなど,ほとんどない。
ただし,敵の動き,キャラのスキル効果などを把握しないとうまく立ち回れないため,適正レベルのダンジョンに4人で挑戦しても,自分の体力だけがあれよあれよと減って力尽きるなんてことはザラに起こる。
今回のCBTでは,テスターに対してあらかじめ(正式サービス時には有料ポイントとなる)「CP」が一定量配布されており,このCPを使えばそのまま体力最大で復活できた。しかし,同じことを正式サービスでと考えると,そうそう無駄遣いできるものでもないはず。
ちなみに,CBT時点のバランスでは,ある程度上位のダンジョンに挑む場合には,味方を回復できる僧侶が必須の存在だった(まあ大抵のRPGではパーティプレイに回復役が必須となるものだが)。ルームでは「○○(職業名)を募集中」といったメッセージが設定できたりもするので,こういった機能をうまく利用つつ,基本的には4人(最大人数)でダンジョンに挑むのが定石だ。
一人のキャラがスキルで吹っ飛ばしたモンスターに,ほかのキャラが空中で追い打ちのコンボ,といった連携も可能。ただし,仲間同士,任意のメッセージでやりとりすることはできないので,あうんの呼吸が重要になる。その分,連携がハマればかなり爽快だ |
ダンジョンをクリアすれば,経験値と,ダンジョンに応じた「クリアボーナスパック」というカードパックが得られる。カードパックはくじのようなもので,これを引くとアクションパートで使えるキャラの装備品,または魔獣カードを入手することができる。
ありきたりなものから非常にレアなものまで,さまざまなレアリティ(希少度)が設定されており,プレイヤーがドキドキする瞬間の一つとなってる。
ちなみにパックには,各ダンジョンのクリアで引けるもの,有料通貨であるCPや専用のチケットを消費して引けるものなどがあり,それぞれ飛び出すアイテム・魔獣カードのラインナップが異なっている。
それでは,キャラクターの育成システムにも触れておこう。
キャラクターはダンジョン攻略によって一定の経験値を得ることでレベルアップする。レベルアップすれば,よりランクの高い装備品を使えるようになるほか,スキルが強化されたり,挑戦できるダンジョンが増えたりする。レベル15では「転職」も可能になり,前述した5つの職業を渡り歩くことができた。それぞれの職業レベルを上げると,侍なら魔獣の攻撃力に,剣士なら魔獣の防御力に,といった形で,職業に応じたボーナスが付くことも確認できた。正式サービス開始時には,より上位の職業にも転職できるようになるらしいとのこと。
なお武器は,ダンジョン攻略の報酬などで得られる「ジェム」を消費して「強化」することも可能だ。
内政・外交の両輪で進めるシミュレーションパート
魔獣ユニットによる軍の編成,魔獣強化は没入度抜群
アクションパートはリアルタイムならではの緊張感を持ってプレイできるが,シミュレーションパートではじっくりと頭を使い,戦略を組み立てるという楽しさがある。
シミュレーションパートは,大きく分けて内政と外交に分かれており,内政では城を中心とした拠点や,奪取した土地に生産施設や軍事施設などの建設を,外交では同盟の締結や軍事行動などを行う。
プレイヤーが所有する土地に建設できる施設は,資源(石,木,鉄,糧)の生産施設,それらの貯蔵施設,徴兵や兵の強化に使用する軍事施設など,さまざまな種類が存在する。それらを領地のマスに配置していき,建設後は,それぞれの効率や効果をさらに高めるために,レベルアップしていくことになる。
例えば,木材を生産する伐採所をレベルアップすれば,1時間あたりの生産量が増える,武具工房のレベルを上げれば武器強化の上限回数が上がる,魔獣を研究するための「ラボ」で各種族の研究レベルを上げれば,対応した魔獣達のパラメータにボーナスが付く,といった具合だ。
施設の建設やレベルアップには一定の時間が必要となり,高レベルでは数時間を要するものも出てくる。それでなくとも,そもそも建設するためには資源がいるわけだから,施設を連続して作っていくことはできない。
つまり,プレイヤーができることはある程度システム側で制限されており,これこそが「1日10分程度のプレイでも楽しめる」(≒コアプレイヤーとカジュアルプレイヤーで差が比較的でにくい)というTravian型ゲームの特徴なのだ。
資源の供給が安定してきたら,徐々に軍事行動に移っていく。具体的には,魔獣カードを徴兵(カードはそれぞれに“兵士数”が設定されている)し,強化し,そのカードでユニットの編成し,ほかの土地への出撃を行うという流れだ。
出撃可能な土地は,領主のいない空き地や,ほかのプレイヤーの領土や拠点,本作の目的であるタワーなどだ。
このように,基本的にはすべて非同期で物事が進んでいくため,やはり常に張り付いてプレイする必要はないと考えていいだろう。
さて,くどいようだが,本作の目的はデブリズタワーを占拠することである。のんびりと畑を耕すように領土を拡大する,ひたすらダンジョンに潜ってアクションパートのキャラを強化する……といった遊びももちろん許容されるが,目的はあくまでもタワーの占拠なのだ。
その点を中心に考えると,重要なのは「魔獣カードを中心とした軍を強く,多くする」ことと,「いつ,誰と,どこを攻めるかの戦略を練る」ことの,2点といえるだろう。
後者は,どのプレイヤーと同盟を組むか,そしてどの領地をどういう手順で攻めていくかという形で考えていく。同盟は自らが盟主となって強大なものに作り上げてもいいし,ランキングなどを見て,強そうな同盟に加入するのもいいだろう。
軍隊を作る具体的な方法も見ておこう。
本作において領地を獲得するための行軍は「ユニット」という単位で行う。ユニットとは,カード最大3枚を組み合わせたセットだ(施設「行軍訓練所」を建てるまでは最大2枚までの編成に限られる)。
敵ユニットとのカードバトルはターン制で行われ,セットしたお互いのカード同士が交互に攻撃やスキルなどで戦うことになる。戦闘結果はログとして残るので,プレイヤーはそれを見て「敵拠点には魔獣○○がセットされているから,攻撃力の強い○○とスキルをもったこのカードの組み合わせにしよう」などと考えつつ,ユニットを編成するわけだ。
バトルの鍵を握る魔獣の育成方法は,大きく分けて2つある。一つは,カードバトルによって得られる経験値によってレベルアップし,レベルアップで得たポイントによって攻撃力や知力といったステータスを伸ばす方法。もう一つはカードの「合成」を使う方法だ。
魔獣カードには基本的なステータスと共に「スキル」が設定されており,前述のとおりカードバトルではスキルに応じたタイミングで特定の効果が発動する。スキルは「3ターンの間,射程内の味方の攻撃力を増加させる」「戦闘開始時,味方全員に防御力増加効果を一定確率で付与する」などといった内容だ。
こういったスキルの効果を高めたり,魔獣カードに新たなスキルを与えるのが「合成」である。スキルの修得は,特定のカードに対して,ほかの種類のカードを追加する形で,後者のベーススキルを前者のスキルに追加することができる(代わりに後者のカードは消滅してしまう)。これによって,オリジナルのスキルを持ったカードを作り上げられるわけだ。
さらに,そうやって覚えさせたスキルは,同一名,同一レアリティのカードを追加することでレベルアップさせることができる。何を覚えさせるのか,何のレベルを優先して上げていくのか,限られたカード資産で成長戦略を練っていくのも大きなポイントになる。
スマートフォンやブラウザ向けゲームに近いプレイフィール
ハードルの低さも相まって,ヒットを予感させる一本
本作はネットワーク専用ゲームであり,基本的にはWi-Fiか3Gでのインターネット接続が必須となる。アクションパートは3G回線だと少しもたつくので,同パートは自宅や職場(!?)のWi-Fiで,シミュレーションパートは外出中に3G回線で……といった遊び方をするプレイヤーが多くなるだろう。
プレイにある程度慣れてくれば,シミュレーションパートでの命令出しはすぐに終えられるようになるので,ちょっとした空き時間でのプレイも可能だ。
圧倒的なインパクトこそないが,有料ポイントを使いこなせば戦いを有利に進められるのは間違いない。最小の投資で最大の効果をあげるような方法を模索するのも,また一つの要素だと考えて遊びたいところである。
そしてこれは筆者の体感でしかないが,有料ポイントの使用が有利なことに変わりないとはいえ,シミュレーションパートにおける戦闘は“数で圧倒できる”バランスになっていると感じられた。
「個人ランキング上位に名を連ねて終了時報酬を獲得したい」といった希望もあると思うが,やはり本作のキモは「いかにタワーの占拠を達成するか」という点。そのために,盟主として同盟を束ねる,あるいは同盟に属して勢力拡大に貢献することに心血を注ぐことで,面白さも強さも手に入る仕組みになっているのが,本作のポイントだと思うのだ。
スクリーンショットを見れば分かるとおりコンテンツそのものは全体的にリッチな作りではなく,ゲームシステムという縦のボリュームは比較的楽に把握できる規模だが,対プレイヤーという“横”の要素によって無限の広がりが与えられている点こそが,本作の魅力だろう。
これに加え,隙間時間を有効に使える仕様である点,同期的なコミュニケーションをとらずともほかのプレイヤーとの対戦・コラボレーションが可能な点,スマートフォンやブラウザゲームなどで磨かれてきた要素がかなり強力である。
そんな本作が,PS Vitaという携帯型コンシューマゲーム機のプレイヤーに,どういった形で受け止められるのかも,興味深い点である。
なお本作は,冒頭でお伝えしたとおり,3月29日から無料で配信される予定。本稿でS&Dに興味を持った人は,まずはそこで実際に本作を体験してみてほしい。
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