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サイバーコネクトツー渡辺氏による「ゲーム業界特別講義」聴講レポート:ゲームクリエイターになる方法を学生向けにシンプルかつストレートに解説
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印刷2011/06/21 00:00

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サイバーコネクトツー渡辺氏による「ゲーム業界特別講義」聴講レポート:ゲームクリエイターになる方法を学生向けにシンプルかつストレートに解説

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 サイバーコネクトツーのゼネラルマネージャー 渡辺雅央氏による学生向けの講演「ゲーム業界特別講義」が,2011年6月19日に東京都・江戸川区の東京コミュニケーションアート専門学校で行われた。

 今回の講演は,同校に在籍する1年生(および体験入学者)を対象にした第1部,就職活動を控える2年生を対象にした第2部に分かれた構成になっていた。前者ではゲームクリエイターを目指すための「心構え,気構え,職業意欲」が,後者ではゲーム業界への就職活動を見据え日々をどのように過ごすべきかという内容が語られた。
 サイバーコネクトツーが定期的に実施している会社説明会同様,厳しい“現実”を提示しつつも,どうしたらゲームクリエイターになれるのかという“答え”を示してくれるという,非常に稀有な体験が得られた場となったので,ゲームクリエイター志望の人は,ぜひ最後まで読み進めてほしい。

サイバーコネクトツー公式サイト

東京コミュニケーションアート専門学校公式サイト


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第1部:“好き”をとことん突き詰めないとゲームクリエイターになれない


サイバーコネクトツー ゼネラルマネージャー 渡辺雅央氏
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 先に書いたように,第1部の聴講対象者は,同校に在籍する1年生,および同日に実施されていた体験入学プログラムの参加者で,総勢100名以上の学生が渡辺氏の講義を聴講した。講義のメインテーマは,ゲームクリエイターになるためにはどう日々を過ごしていけばいいのかという「心構え,気構え,職業意欲」について。第2部でも同様のテーマが取り上げられた部分があったので,その部分もまとめて説明していこう。

 まず渡辺氏は,サイバーコネクトツーの会社概要および自身の経歴を紹介してから,「.hack//Link」(PSP),「NARUTO−ナルト− 疾風伝 ナルティメットストーム2」PS3/Xbox 360),「Solatorobo それからCODAへ」(NDS),「ASURA'S WRATH」PS3/Xbox 360),「NARUTO−ナルト− 疾風伝 ナルティメットインパクト」(PSP)といった,同社が手がけている最新タイトルを紹介。

 続いては,本採用までの選考の流れと採用基準が説明された。渡辺氏によれば,同社では「必要書類提出」「一次面接」「二次面接」「研修」という4つのステップを踏んだのちに本採用という流れになる。さらに渡辺氏は,それぞれの過程における選考の基準などについて,かなり踏み込んで具体的に説明してくれた。

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 選考の最初のステップは「必要書類の提出」だ。サイバーコネクトツーでは,募集をする全職種で,履歴書やアンケートに加え,作品提出を必須としている。
 具体的には,プログラマーならオリジナルのプログラム作品,アーティスト(グラフィックデザイナー)ならポートフォリオや作品データ,ゲームデザイナーならオリジナルの企画書といったところ。これらは,同社公式サイトの採用情報ページに詳しく記載されている。

 提出作品は各業種の現場スタッフが審査を行うが,その審査基準として求められるのは,たとえばアーティストなら「ゲームのパッケージにその人の絵が使われてもおかしくないレベル」といったように,簡単に言えば“即戦力”として通用するものだという(もちろん“新人”ということで審査基準は多少甘めとなるそうだが)。
 同社では,通年採用制を採っていることもあり,選考に漏れたからといってそれっきりではなく,再応募も随時受け付けている。ただし再応募の際は,先に応募したときのクオリティを上回ることが,言うまでもなく求められるわけだが。

 渡辺氏によれば,書類選考の段階に限り,惜しいと感じた“見込みのある”応募者には,アドバイスを返信することもあるそうだ。もちろん,そのようなアドバイスをするのは,優秀な人材に採用基準を満たすレベルまで成長して再挑戦してほしいという意図が込められているのだろう。
 アドバイスを送った人が再挑戦して採用まで至る例はあまりないものの,中には,アドバイスを受けたおかげで別のゲームメーカーに内定が決まった,と報告してくる人もいたとのこと。
 渡辺氏は「皆さんはそんな“過ち”を犯さないでください(笑)」と冗談めかしてコメントしていた。本意ではないにせよ,サイバーコネクトツーの“見る目の確かさ”を顕す逸話といえるのではないだろうか。

 書類審査を通過すると,各職種の現場責任者と渡辺氏によって一次面接が行われる。渡辺氏はここでも,どのような質疑応答が行われるのかを,具体的に説明した。
 それはたとえば,「どんなゲーム機を持っていますか?」「最近どんなゲームで遊びましたか?」「サイバーコネクトツーのゲームで遊んだことのあるタイトルは?」といった質問だ。

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 サイバーコネクトツーでは,「ゲームクリエイターになる人がゲームに興味がないのはNG」と考えているとのこと。例として挙げられた質問も,ぱっと見は一般的なものといえるが,そこには,渡辺氏が述べていた「ゲームが好きで好きでたまらないという人と一緒に仕事をしたい」「好きだからこそ追求できる“高み”があると思っている」という部分を確認する意図があるようだ。
 たとえば,「ジョジョの奇妙な冒険」が好きなら,荒木飛呂彦さんのほかの作品もすべて目をとおしている,大好きなブログがあるとしたら,その人が“お気に入り”にしているブックマーク先も全部チェックするといったように,題材は何でもいいのだが,その人が自分の好きなものを“どれだけ掘り下げているのか”を見ているそうだ。

 一見,この話はゲームクリエイターの仕事とは関係ないもののように思える。しかし渡辺氏によれば,自分の好きなものを掘り下げられる人とそうでない人の違いは,仕事においても現れるとのこと。
 渡辺氏によれば,掘り下げられない人は指示されたことだけしかやらず,仮に問題があったとしても言われるまで動かない。自分で掘り下げられる人は指示されたことをやるだけではなく,問題があったら解決方法を自ら考えて提示するのだという。
 いわば,自分が好きなもの,興味のあることですら能動的に動けない人は,仕事においても能動的に動けるわけがない,といったところだろうか。ましてや「ゲームが好き」なら,好きなことを仕事にしているのだから,言わずもがなその傾向は強くなるということだろう。

 二次面接では,サイバーコネクトツーの代表取締役社長である松山 洋氏と渡辺氏による面接となる。その内容は渡辺氏曰く「雑談のようなもの」ということだが,企業の代表取締役社長が,単なる雑談で時間を割くはずがない。“雑談”の裏では,一次面接と同じように「本物かどうか」の資質が問われているということだ。

 そして,二次面接を通過すると,3〜6か月の間,通過者全員が福岡本社で研修を受けることになる。これは,渡辺氏曰く「サイバーコネクトツーがどのような企業なのか,言葉で伝えるよりも実際に肌で感じてもらったほうが理解できる」ためとのこと。
 研修の内容は職種によってそれぞれ異なるが,プログラマーであれば開発機材を渡されての個人課題,アーティストであれば実際のプロジェクトに参加してオブジェクト制作を行うOJT(On-the-Job Training)といった形で行われる。もちろん,それぞれ上司がついて指導を行うとのこと。そのほか,社会人として身につけるべきマナー教育なども行われる。

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 渡辺氏はここで,サイバーコネクトツーの求める人物像として以下の3つを挙げた。

・ゲームが大好き
・好奇心旺盛
・自立している


 渡辺氏は,ゲーム開発とは「まだ答えのないものを,自分達で試行錯誤しながら前に進んでいくしかないもの」とたとえ,以上の3点を兼ね備えた人と一緒に仕事をしたいと述べる。これらは一朝一夕で身につくものではないため,「こういった人間になるのだ,と日頃から意識して変わっていってほしい」と,選考過程についての話をまとめた。

実際にサイバーコネクトツーに入社した社員の応募作品を例に“答え”を提示


 続いては,実際に選考を通過してサイバーコネクトツーに入社した社員達の「応募作品」が紹介された。
 なお渡辺氏は,会社説明会のUstream放送アーカイブでは,アーティスト/プログラマー/ゲームデザイナーの3職種に関して,サイバーコネクトツーが求めているスキルや人物像などが,実際に入社試験で合格/不合格となる例とともに紹介されているので,参考にしてほしいと述べていた。

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 プログラマーの作品例として紹介されたのは,「MonoLiTH」というゲームプログラムだ。渡辺氏は「ゲームのプログラマーには,ちょっとした遊びを作るセンスも求められる」と述べ,またシェーダや被写界深度の表現など,技術的にも高度なレベルにあると説明。
 つまり,自分がどれだけのことを学んできたのか,それをきちんと作品の形としてアウトプットできるかどうかが評価の分かれ目になるというわけだ。

 続いてのアーティスト(グラフィックデザイナー)について,渡辺氏はポートフォリオ(作品ファイル)が重要で,応募作品では“その人の取扱説明書”となるものを提出してほしいと述べた。
 これはどういうことかというと,自分がサイバーコネクトツーに入社して何をやりたいのかが分かり,そのクオリティを判断できるポートフォリオを作成してほしいということ。

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 合格作品例としてまず紹介されたのは,キャラクターアニメーター 吉田元美氏の応募作品。こちらは,キャラクターの“動き”で埋め尽くされたポートフォリオとなっており,キャラクターモーションをやりたいという意志とそのクオリティがはっきりと伝わる内容であったと,渡辺氏は選考通過のポイントを述べた。
 ほかにも,コンセプトアーティストの武内裕季氏,キャラクターモデラーの澤井富士彦氏,インターフェースデザイナーの笹生 琴氏らの応募作品例を紹介しつつ,渡辺氏は,それぞれどのようなポイントが通過の決め手になったかを説明した。
 また,ゲームでは,新人が担当した部分のクオリティが低かったとしても,それを理由に許されるようなものではないと,プロとして要求されるレベルの厳しさを説く。

 渡辺氏はさらに,こうした合格者達の共通点として,「学校の課題や作品ファイルに必要だから」ではなく,「好きだから,伝えたいから」書(描)いていることを挙げ,「この差に気付いていない人は,残念ながら本物のクリエイターにはなれません」と断言。
 渡辺氏は,サッカーを例に挙げ,「リフティングを10回しろと言われて10回で終わらせるような人では,プロのサッカー選手になれるはずがない。好きで好きでたまらない人達が練習をし競い合って,その中でトップレベルの人だけがプロになれる」と述べ,ゲームについても同様の世界なのだと説明した。

 ここで渡辺氏は,必要なスキルを身に付けるための参考書籍を紹介。“最低限”読んでおくべきものとして,プログラマー志望者向けには「Cの絵本」「シューティングゲームアルゴリズムマニアックス新装版」を,アーティスト志望者には月刊誌「CG WORLD」「ゲームCG教科書 −キャラクター・背景編−」を挙げた。

 なおゲームデザイナー(プランナー)については講義内で触れられず,参考書籍として,業界の第一線で活躍するゲームデザイナーの著書である「桜井政博のゲームについて思うこと」「ゲームデザイン脳」の2冊が紹介されるにとどまった。
 これは渡辺氏によれば,たとえば,どこを探しても“「ASURA'S WRATH」の作り方”を見つけることはできないように,面白いゲームを作る正解というものはなく,ゲームデザイナーには,それを自分で導き出せる資質が求められるためだという。つまり,「企画書を見せてほしい」と他人に頼る時点で“負け”というわけだ。

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 ここで話は変わり,渡辺氏自身がゲーム業界に入るまでの経歴が紹介された。
 中学生時代,サッカーとファミコンとプログラミングに夢中になっていた渡辺少年は,「ゲームプログラマーに絶対なる!」と強い意志を持っていた。高校ではプログラムを学ぶため,情報処理科を選択。先生の知識が自分より低いことを知り愕然としてしまうが,「自分で学ぶしかない」と覚悟を決める。さらには,ゲームプログラミングができるクラスメイトと出会い意気投合したことが,渡辺氏にとって大きな転機となった。
 2人は毎日のように互いの家へ遊びに行き,一緒にプログラミングをすることで切磋琢磨。ちなみに,現在は勤務先こそ異なるものの,その友人もゲーム業界で活躍し,交流も続いているそうだ。
 そして高校3年生の渡辺氏は,実力を試したいと考え,求人募集を行っていた地元・福岡のゲーム会社に電話。作品審査/面接/筆記試験を経て,見事就職が決定したそうだ。
 その会社で5年間ほど働いた頃,渡辺氏は「テイルコンチェルト」というゲームに出会う。「こんなゲームを作れる会社で仕事をしてみたい!」と目を奪われた渡辺氏は,その会社が福岡県にあることを知り,勤め先を辞めてその会社を受け,入社が決定した。その会社こそが,現在のサイバーコネクトツーというわけだ。

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 渡辺氏は自身の経歴を振り返り,ゲームクリエイターになれた理由として「あきらめなかった」「しっかりと勉強した」「本気でゲーム業界を目指す友達がいた」という3点を挙げた。
 渡辺氏は,自分が決して物覚えのいいほうではなく,人の2倍も3倍もプログラムの勉強をし,「自分のセンスのなさにへこむことも多かった」と語っていたが,「そんな毎日が楽しくてしょうがなかった」という。
 ゲームクリエイターになるためには多くの知識や技術を身につけることが必要で,一年の大半を勉強に割り当てなければならない。そうした勉強を,時間を忘れるほど夢中になって続けられれば,「気がついたらゲームクリエイターになっている」と,渡辺氏は力強く述べた。

 渡辺氏は,今もなお勉強を重ねる日々だというが,「知識が増えるのが楽しくてしょうがない」「自分の可能性がまだまだ伸びていく」と語る。また,「ゲームという言葉の意味が広がり定義がどんどん曖昧になっているが,一方では可能性も広がっている」と熱く語る。

 渡辺氏は最後に,学生達に向けて「大事なのは,ゲームを作り多くの人に届け,面白いと言わせたいという気持ちです。これが皆さんの根っこに,間違いなくあると思います。そこを大事にしましょう。そんな情熱を持った人と一緒に仕事ができたらすごく楽しいと思っています」と激励し,第1部の講演を締めくくった。

第2部:多くの学生は準備/努力不足なだけ。自分の長所を間違いなく伝えられれば就職は難しくない


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 ここからは,2年生を対象とした第2部をレポートしよう。東京コミュニケーションアート専門学校は3年制のため,2年生はこれから本格的に就職活動を始めるという段階。全員がスーツ姿で真剣なムードが漂う中での講義となった。

 最初は,第1部と同様にサイバーコネクトツーでの「採用までの流れ」が説明された。大枠こそ第1部と同様だが,「サイバーコネクトツー(およびゲーム業界)に就職するにあたり,どういった“準備”をすればいいのか」という,実践的な部分の説明にウェイトが置かれていた。

画像集#017のサムネイル/サイバーコネクトツー渡辺氏による「ゲーム業界特別講義」聴講レポート:ゲームクリエイターになる方法を学生向けにシンプルかつストレートに解説
 渡辺氏は,ゲーム業界への就職は難しいわけではなく,採用に至らない人の場合は,準備や努力が足りていないだけだと断言。企業によって採用基準は異なるため「サイバーコネクトツーの場合は」と前置きしたうえで,選考において重要なのは「作品を通して自分の長所を“間違いなく”伝えることだ」と述べる。そして,職種別に求められる“長所”を,具体的に説明していった。

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 プログラマーで挙げられたポイントは以下の3点。

・ゲームの面白さを決定づけるプログラム技術を持っている
・新しいシェーダ技術を常に実装している
・物理を活かした作品づくりで人を驚かせることができる


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 渡辺氏は例として,第1部で披露したゲームプログラム作品に加え,GPUを用いて粒子の挙動を計算する物理シミュレーションプログラム作品を紹介。前者はプログラムのセンスと技術が高いレベルで融合していること,後者は高いプログラム技術を駆使し,なおかつ素人目にも「何か凄いことをやっているな」と伝わるものになっているのが評価のポイントだと説明した。
 また渡辺氏は,たとえばジャンプの挙動一つまでゲームデザイナーが細かく指定することはまずなく,どのような挙動かを決めるのはプログラマーだと説明。ゲームデザイナーの言葉や考えといった曖昧なものを,プログラムという厳密なルールの中に落とし込む役割であることから,「ゲームの面白さを決定づけるプログラム技術を持っている」ことが求められると説明した。
 なおサイバーコネクトツーでは,現在30数名ほどのプログラマーが在籍しているが,同社が進めているプロジェクトからすると,数はぜんぜん足りていないそうだ。これまでは中途採用者が多かったが,これからは新卒を積極的に採用していくことを検討しているそうである。

 プログラマー志望者への参考書籍として渡辺氏は,「C++の絵本」「Effective C++原著第3版」「ゲームプログラマになる前に覚えておきたい技術」「シューティングゲーム アルゴリズム マニアックス 新装版」「DirectX9 シェーダプログラミングブック」「GPU Gems 日本語版」の6冊を紹介した。

画像集#020のサムネイル/サイバーコネクトツー渡辺氏による「ゲーム業界特別講義」聴講レポート:ゲームクリエイターになる方法を学生向けにシンプルかつストレートに解説
 アーティストの長所となるのは以下の3点。

・モデリングで世界と勝負できる
・モーションなら誰にも負けない
・イラストで多くの人を魅了できる


 いずれにしても,「自分がどの分野のスペシャリストなのか」を明確にするのが基本である。ただ,自分が「何でもそつなくこなせる」というゼネラリストである場合は,それがちゃんと伝わるような作品集にするように,と渡辺氏は述べていた。
 ここで,第1部同様にアーティストの合格作品例が紹介された。渡辺氏は,「後進の人間が先達を乗り越えていくことでしかゲーム業界は進化していけない」と述べ,そのためサイバーコネクトツーでは「彼らを超える人間が欲しい」ということを強調した。

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 渡辺氏は,ポートフォリオが自分のやりたいこととクオリティを証明する“取扱説明書”であるべきということを第1部同様に述べたが,学校に入学して最初に描いた作品を入れているようではダメだと述べる。
 ポートフォリオを作成する際には,自分のやりたいことと長所をアピールできるだけの十分な作品数があり,その中から取捨選択できるくらいでなければいけない。最初の作品をポートフォリオに入れているようでは,“準備不足”であることを自ら露呈しているようなものだというわけだ。

 アーティスト志望者に向けての参考書籍としては,「CG WORLD」「ゲームCG教科書」「テクスチャ教科書−Texture Imaging」「An Atlas of Anatomy for Artists」「映像の原則」「瞬間連射アクションポーズ」「アニメーターズサバイバルキット」が紹介された。これらの書籍は,同社の現役アーティストらが実際に皆読んでいる,お勧めの書籍とのことだ。

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 ゲームデザイナーの長所として求められるポイントとしては,以下の3点が挙げられた。

・その発想は無かった!面白い!と思えるアイデアを出せる
・気持ち良いと思える操作性とルールの構築ができる
・多くの人に受け入れられる「ネタ」を提供できる


 ゲームデザイナーの場合,この3つすべてが必須といってもいい。渡辺氏は「応募作品は“すべてを持っている”ことが伝わるような作品にしなくてはならない」と述べた。
 ちなみに,ゲームデザイナーに求められる資質は,先述の会社説明会で松山氏が説明をしているので,「こちら」の記事をご覧いただきたい。
 第1部同様,ゲームデザイナーについては合格作品は披露されず,「桜井政博のゲームについて思うこと」「ゲームデザイン脳」に加え,「『ヒットする』のゲームデザイン」「ルールズ・オブ・プレイ(上)ゲームデザインの基礎」の計4冊が参考書籍として紹介された。

 渡辺氏は,職種別の説明のあとに,職種を問わず役に立つ情報源を紹介。
 まずは,ゲーム開発者向けのカンファレンスであるCEDEC(Computer Entertaintment Developers Conference)におけるスライドなど,講演に使われた資料を公開しているサイト「CEDiL」(CEDEC Digital Library)だ。無料のアカウント登録をするだけで400本以上もの資料がすべて無料で閲覧できるので,渡辺氏は「絶対に見てください。身になります」と強く勧めていた。

 続けて,2011年9月6日〜8日にパシフィコ横浜で開催される「CEDEC 2011」にも参加したほうがいいと渡辺氏は述べた。受講料は決して安いものではないが,第一線で活躍するプロのクリエイターが講演するのだから確実に元が取れると,渡辺氏は太鼓判を押す。プロの発表は最高の授業であり,現場の空気を感じてほしいと述べた。

画像集#023のサムネイル/サイバーコネクトツー渡辺氏による「ゲーム業界特別講義」聴講レポート:ゲームクリエイターになる方法を学生向けにシンプルかつストレートに解説
 渡辺氏はまとめとして,多くの学生に共通していることとして「想像力不足」だと指摘。「自分が,会社に入ってどのように活躍するのか」「自分の長所が相手に伝わる作品を,創れているか」「自分が,どうありたいか」――こういったことに関して想像が足りていないのだという。
 さらに渡辺氏は,その原因は「ゲーム会社ではどういう形で仕事をしているかを分かっていない」ためだと続ける。昔ならともかく,現在では先に紹介した「CEDiL」があるし,アメリカで毎年行われるGDC(Game Developers Conference)の講演なども,4GamerのようなWebサイトで日本語でレポートされるなど,学生であってもゲーム開発の現場に関しての情報を集める手段はいろいろとある。渡辺氏は,「しっかりと情報を集めて,ちゃんと想像を働かせる。そして,その想像図をもとに作品やポートフォリオを作れば,自ずと結果も良い方向に働きやすいです」とアドバイスした。

 最後に渡辺氏は,「これからのゲーム業界では絶対に皆さんの力が必要です。世の中にはゲームを遊んでいない人のほうがまだ多いんです。そんな人達に新しい面白さを届けるのは,皆さんの仕事です。そのためには皆さんの能力が必要となりますので,その能力をちゃんと示せるように,今日の話を生かしてもらえたらいいなと思います」と締めくくった。

渡辺氏は講演終了後,多くの学生に囲まれ質問攻めにあっていた。中にはポートフォリオを持参し,一言でもアドバイスをもらおうとする学生の姿も見られた
画像集#024のサムネイル/サイバーコネクトツー渡辺氏による「ゲーム業界特別講義」聴講レポート:ゲームクリエイターになる方法を学生向けにシンプルかつストレートに解説
 今回の講演は,第1部/第2部ともにそれぞれ90分以上にも及んだ。その両方で渡辺氏が強調していたのは,「ゲームクリエイターになるには,本当に好きな人がひたすらに打ち込み続けることしかない」ということだ。
 学生達にとっては,サイバーコネクトツーがクリエイター志望者に求めているレベルは高く,厳しいものに見えたかもしれない。だが,“本物”のゲームクリエイターになりたいのであれば,本講演で示された同社の選考基準は,一つの大きな指針になるはずだ。

 記事内でも触れたが,サイバーコネクトツーでは毎年,福岡/東京/大阪などで,同社への入社を志望する学生や社会人に向けての会社説明会を実施している。
 以前4Gamerでもそのレポート記事をお伝えしたことがあるが,その内容は,「どうすればサイバーコネクトツー(もしくはゲーム会社)に入れるのか」「どうしたらゲームクリエイターになれるか」という疑問に対する“解答”を“実例”とともに披露するという,普通の会社説明会とはひと味も二味も違うものであった。同社の公式サイトでは,2010年9月に東京で行われた会社説明会のUstream放送アーカイブを視聴できるので,興味のある人は,以下URLにアクセスし,視聴してみてほしい。

「CC2Live」(UStreamでの会社説明会録画を視聴可能)


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