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「Dragon's Dogma」の自由度が高いキャラエディットシステムはどうやって実現されたのか 〜Autodesk University Japan 2011セッションリポート
そんなゲーム業界向けのセッションの中から「Dragon's Dogmaゲーム開発事例 キャラクターエディットを活用したゲーム開発効率化」の内容をレポートしたい。
自由度が高いキャラエディットシステムの裏事情
セッションを担当したのは,同タイトルを手がける柳原孝安氏。氏はDragon's Dogmaの概要を簡単に紹介したあと,まずは同タイトルのキャラクターがどのように作られているかを紹介した。
氏によると,Dragon's Dogmaには,NPCを含め400体以上のキャラクターが存在するそうだが,「全部をイチから作るのではなく,同じキャラクターエディットシステムで作っている」(柳原氏)という。そのキャラクターエディットシステムは,MT Framework上に実装されているそうだ。ご存じの方が多いと思うが,MT Frameworkとは,同社オリジナルのゲームエンジンである。
開発に使われているエディットシステムはスライドのようなもの。素体となるキャラクターの各部を変えることで,400以上の異なるキャラクターを作り出しているという。非常に自由度が高い一方で「ゲーム上で問題が起きそうなものについてはストッパーが付いている」(柳原氏)そうで,例えば,ゲーム上問題になるほど極端に太った人は作れないように縛りがかけられている。
柳原氏によると,もともとはプレイヤーが行う主人公のキャラクターエディットにも「このシステムを載せようと考えていた」そうである。だが「コントローラでやるのは大変すぎる」(柳原氏)という理由で,先日公開されたようなデザイナーがあらかじめ作成したモデルを選択する方法が採用されたそうだ。
ちょっと残念な気もするが,たしかにコントローラでの操作は難しいかもしれない。MT Framework上に実装された開発者用のキャラクターエディットシステムでどのようなことができるのか,主だった特徴をスライドで紹介してみよう。
キャラクターの年齢は,顔にバンプマッピングのテクスチャを貼ってシワを入れることで変えているという。なお,裸のキャラクターはいないので年齢で変わるのは顔だけだそうだ |
筋肉のつき方もバンプマッピングで表現。筋肉の彫りを深くしたり,浅くしたりして調節する。体型,筋肉の見え方,体各部のボリュームの調節だけでも,ほとんど無限のバリエーションが作れそうだ |
髪はデザイナーが作成したモデルをかぶせる。もともとは100〜200の髪型デザインがあったが,モデリングがタイヘンだったため,よさそうなものに絞り込んだとのこと。髪は頭の形に自動的にフィットするという |
ヒゲが貼り付けられるほか,ほくろ,刺青,傷などのテクスチャが用意され,さらに女性キャラ向けには口紅,アイラインといった化粧のテクスチャも用意されているという |
このような素体から,非常に高い自由度で破綻のないキャラクターを作成できるエディタを使って,400以上のゲーム中キャラクターやプレイヤー向けキャラクターエディタ(後述)用の素材が作成されているわけである。
なお,MT Framework上のキャラエディットシステムは,もともとはAutodesk SoftImage上で作成され,それをMT Frameworkに落とし込んだもの。SoftImage上のキャラエディットシステムで作成したデータもXMLの形でMT Framework上にインポートできるため,SoftImageを使い慣れたデザイナーの場合は,そちらで編集するといったことも行われているようである。
「キャラクター編集中には関節が250あるが,編集後に170にまで減らされて保存される」という。ボーンの数も削減されてデータが軽量化される仕組みだ。このような内部処理がゲーム機上で行われるというのは少々興味深い。
キャラクターのアニメーション制作も効率化
これは標準的な顔のキャラクターがしゃべっているアニメーション。まったく同じアニメーションデータが異なる顔のキャラクターにも使えるそうだ |
例えば,このようなキャラクターの顔の動きも,同一のアニメーションをもとに自動生成されるという |
セリフを喋る顔の動きは,役者の顔の動きをキャプチャして,それをキャラクターの顔の動きにかぶせるフェイシャルキャプチャという技術が使われている。まず,役者に普通の顔や口を大きく開けた顔といった,いくつかの基本パターンを演じてもらって,それをキャプチャ。そのデータをキャラクターの顔のフィットさせれば,以降はフェイシャルキャプチャのデータでしゃべっているアニメーションが自動的に作成されるようなシステムを作っているようだ。
まず役者に普通の顔を作ってもらい,キャラクターにフィットさせる |
「表情筋の移動量は役者によって違う」(柳原氏)ので,口を大きく開けた顔などいくつかの極端な表情を作ってもらい,それをキャラクターにフィットさせると,あとは役者のフェイシャルキャプチャのデータから顔のアニメーションが作成できるという |
このように,1つのフェイシャルキャプチャのデータから,複数のキャラクターのアニメーションを作成することで開発効率があげられているわけだが,全身のアニメーションもまた,さまざまな工夫で共通のデータが使えるようになっていると柳原氏は説明していた。例えば,キャラクターの身長や腕の長さ,脚の長さが違っていても同じアニメーションのデータが使えるという。
標準体型からの差分を係数として出し,リアルタイムに乗じることで同じデータから,異なるキャラクターが自然にアニメーションするようになっているそうだ |
男女の動きの違いも,同じアニメーションデータから生成できる仕組みが作られているという。動きの男らしさ,女らしさはの違いを表現するのは簡単ではないそうで,柳原氏はさまざまな映画を見てイメージを掴んだそうである。 |
ちなみに,この記事でも触れられているが,Dragon's Dogmaの主人公は,プレイヤーが自由に編集できるため,身長などが異なるキャラクターが一緒にプレイすることになる。その際に,カメラ位置が自動で変わるようになっていることが特徴だが,「どの骨に合わせてスケールを調節するか,MT Frameworkでリアルタイムに計算している」という。ただ,この機能のデバッグは非常に大変だそうで,「いまだにやっている」と開発中の苦労話も飛び出していた。
というわけで,Dragon's Dogmaでは素体(男性1体,女性1体の計2体だそうだ)から,多数のキャラクターが創り出され,また共通のアニメーションデータから異なるキャラクターの動きはもちろん,男女の違いまでが創り出されているわけである。
柳原氏は最後にDrago's Dogmaの新しいトレイラーを紹介。今回解説されたように,共通のモデリングデータやモーションで作られていることを感じさせない映像をご確認いただきたい。これだけの独自技術を盛り込んで制作されるアクションRPG,Drago's Dogmaは2012年初頭に発売予定となっている。早く完成品の姿を目にしたいものである。
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Dragon's Dogma
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Dragon’s Dogma
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(C)CAPCOM CO., LTD. 2012 ALL RIGHTS RESERVED
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