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劇場版の原画や裏話を交えて制作の現場を知ることができた,公開講座「監督とプロデューサーが語る『劇場版 戦国BASARA -The Last Party-』ができるまで」聴講レポートを掲載
この講座は,映画「劇場版 戦国BASARA -The Last Party-」が2011年6月4日に公開されたことを記念し,監督を務めた野村和也氏と,プロデューサーである毎日放送の丸山博雄氏が,同作品の見どころや制作の舞台裏を語るというもの。定員70名の会場は,デジタルハリウッド大学の学生のほか,「戦国BASARA」シリーズファンの一般来場者が集まり,満席となっていた。
「戦国BASARA」シリーズ公式サイト
とはいえ,酒の席での話は,その場で盛り上がっても実現せずに終わってしまうことも多い。そこで丸山氏は,翌日にはProduction I.Gに連絡して企画を進めていいか確認を取り,さっそく「戦国BASARA」の版権を持つカプコンに打診したと話す。
第2期の監督として参加した野村氏は,映画化の話を最初に聞いたとき,スケジュールなどの都合から,自身が劇場版の監督も務めることになるとは考えていなかったそうだ。ただ,劇場版の話は野村氏以外のスタッフも急に聞かされた話であり,現場が混乱する可能性もあったことから,「やるならやってしまえ!」と,勢い(?)で監督を引き受けたと野村氏は裏話を披露した。
劇場版について丸山氏は,ビジネスをあまり意識せず,サブタイトルにあるとおり,パーティーのように,楽しみながら制作を進めたかったと話す。
その発言を受けた野村氏は,当初,登場する武将達が頂点を目指して対決するような単純明快な話を考えていたことを明かした。しかし企画を詰めていくうちに,やはりきちんとしたストーリーが必要であると考え直したのだが,そのとき壁となったのが,ゲームとアニメそれぞれでストーリー展開が異なるという点だった。
このことについて丸山氏は,ゲームでは分岐があるため「これがメイン」という展開がないことに言及し,それを1本のストーリーにまとめ上げる作業は大変だがやりがいを感じたと話していた。
劇場版の制作を進めていく中で,感慨深かったことを聞かれた野村氏は,スクリーンで上映されたことはもちろんだが,これまでの現場ではできなかった,フィルムの色味やパッケージの選択などを経験できたことを挙げていた。
劇場版は全国22館で上映され,観客動員数は18万人という高い成績を収めているとのことだが,その要因はリピーターの多さにあると,丸山氏は分析する。
その証明の一つとなるのが「絶叫Night」なるイベントの開催だ。このイベントは,劇場版の上映中にしゃべったり,叫んだり,歌ったりしてもいいというもの。観客の多くは,最低一度は劇場版を鑑賞して,登場人物達のセリフを覚えてからイベントに臨むのだという。
また,周囲に迷惑をかけなければサイリウムを振るといった“応援”もOKとのこと。お忍びでイベント会場を訪れたという野村氏は,「映画ではなくライブのよう」と,その感想を述べていた。
講義の中盤では,アニメーターの西尾鉄也氏および野村氏自身が描いた原画なども披露された。
アニメーター出身の野村氏は「やれることは何でもやるべき」という持論を持っており,原画や動画,そして素材の貼り付けなど,通常なら監督がやらないようなことであっても,空いた時間さえあれば手がけるようにしているという。
また,劇場版のキャラクターデザイン/総作画監督の大久保 徹氏が手がけたメインビジュアルの原画なども公開され,野村氏は「大久保さんにしか描けない繊細な絵」と評していた。
上のカットの絵コンテ |
野村氏による織田信長の原画 |
劇場版の楽曲は,ゲーム同様,T.M.Revolutionが手がけている。丸山氏曰く,テレビアニメ/劇場版の制作スタッフはもちろん,ゲーム版のプロデューサーであるカプコンの小林裕幸氏も「この人しかいない」という納得の人選であるとのことだ。
その入れ込み具合は,オープニングとエンディングのいずれにもT.M.Revolutionの楽曲を採用したことからもうかがえる。というのも,こうした劇場版の場合は,ビジネス的な理由から,オープニングとエンディングで異なるアーティストの楽曲を起用することが珍しくないからである。
またT.M.Revolutionこと西川貴教さんは,“まるで身体にインストールする”がごとく,シナリオを読み込んでから作詞・作曲するとのこと。その根を詰めた作業過程を知る丸山氏にとって,西川さんに同時に2曲も依頼するのはかなり心苦しかったそうだ。しかし,実際に映像と楽曲が重なったフィルムを観たときには「頼んでよかった」との感想を抱いたと,丸山氏は述べていた。
野村氏も,テンポなどの細かい調整を依頼したことはあっても,基本的には上がってきたそのままの楽曲を使っていると述べ,西川さんの「戦国BASARA」シリーズに対する深い理解を讃えていた。
野村氏は,テレビアニメ/劇場版を「可能な限り前向きな話,希望のある話にしたかった」と述べる。史実やゲームでは報われないエピソードや切ない展開も多いが,野村氏自身はそういった話が苦手ということもあり,見えないところで未来に繋がっていることを感じ取ってほしいとまとめた。
丸山氏は,テレビアニメ/劇場版は頭で考えるのではなく,体感してほしいと述べる。
講義の最後には,丸山氏と野村氏から,デジタルハリウッドでアニメ制作を学ぶ学生に向けてのメッセージが送られた。
丸山氏は,作品が良くなるかどうかは最終的にスタッフ各自が持つ熱量にかかっていると述べた。制作過程では,さまざまな事情で「もうダメだ」と思うポイントが何度か訪れるが,それを乗り越えるために必要となるのが熱量であるとのこと。
野村氏は,自身のアニメーター経験を踏まえ,一つ一つの過程を軽視せず制作に取り組んでほしいと話す。昨今のアニメ制作では,原画ばかりに焦点が当てられ,面倒な作業が多い動画が軽視されがちな状況だが,アニメは最終的に色を付けられて動画として鑑賞されるものであり,どんなに原画が良くても動画がダメだと,そのアニメ全体が荒れてしまうと説明した。
それを踏まえて野村氏は,自身の持論に再び言及して「やれることが多いほうが表現の幅が広がる」とまとめ,学生達に視野を広げるよう示唆した。
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