レビュー
「ファーミング シミュレーター 2011 〜 ミルクや作物を生産しよう! ぼくらの農場生活 〜日本語版」レビュー。農業と酪農を体験しよう
牛を飼ってミルクを生産する「酪農」もできるようになった
ファーミング シミュレーター 2011
〜ミルクや作物を生産しよう! ぼくらの農場生活〜 日本語版
農業だけでなく酪農にまで手を広げられる
農場経営シミュレーション最新作が登場
ドイツで爆発的人気を誇り世界的にも好セールスを記録した,土と太陽の暮らしを満喫できる農場マネージメントシミュレーション「Farming Simulator 2009」の日本語版が,2009年にズーから発売されている。「ファーミング シミュレーター 2009 〜大地へ挑もう! ぼくらの農業生活〜 日本語版」がそれだ。
その続編となる「ファーミング シミュレーター 2011 〜ミルクや作物を生産しよう! ぼくらの農場生活〜 日本語版」(原題:Farming Simulator 2011)が,2011年3月4日に同じくズーから発売となった。
発売から少々時間が経過してしまったが,2011年6月24日に発売された「デモリッション カンパニー ゴールド エディション 日本語版」と同じ開発会社のシリーズということで,今回はこちらを紹介したい。
本作の英語版である「Farming Simulator 2011」は,すでに週刊連載「海外ゲーム四天王」でも紹介しているので,ご存じの人もいるかと思う。ズーから発売された日本語版はタイトルからも分かるとおり,ゲーム中のテキストなどすべてが日本語化されているので,英語がトホホな人でも安心してプレイできる。もともと,あまり言語の壁は関係ないゲームだが,ちょっとした説明でも日本語ならば嬉しい。日本語バンザイ!
作物を育てて出荷して,大量の農業機械,農機具を所有する大農場主を目指そう。シビアなゲームバランスでは全然なく,筆者は今まで一度も破産したことがない |
大量の牛を購入してミルクを生産しよう。餌がないとミルクが採れないので,農作業と酪農作業を並行する必要がある |
プレイヤーは若き農場主となり,トラクターやコンバインなどのさまざまな農業機械や農具を使って,畑を耕して種を撒き,肥料を与えてトウモロコシや大麦,小麦などを育てていく。
そして収穫の日を迎えたら得られた農作物を売って資金を稼ぎ,より高性能な農業機械や農具を購入して経営規模を拡大していき,大農場主を目指していくのだ。
こんな具合に,やることは前作と何ら変わっておらず,実際のところ基本的なゲームシステムは前作と同じだ。今回はタイトルに“ミルクや作物”とあるように,農作業のほかに酪農ができるようになったという,いわゆる前作のボリュームアップ版という位置付けになる。
日本語版なのでゲーム中のテキストはすべて日本語で表示される。ただしマルチプレイモードのチャットでは,残念ながら日本語が使えない |
時間帯や天候の変化は再現されているが,休んだり眠ったりといった概念はないため,24時間働き続けられる。朝焼けや夕焼けに照らされる風景の美しさは必見 |
内容的には前作と変わらない部分も多いので,前作をプレイしていない人は,まず前作のレビュー記事から読んでもらうのがいいだろう。また,週刊連載「海外ゲーム四天王」にて本作の英語版を紹介しているが,興味のある人はそちらもチェックしてみてほしい。まぁ,これから似たような話をしていくので,このまま読み進めてもオッケーだ。
「ファーミング シミュレーター 2011 日本語版」公式サイト
雇用者を使ってたくさんの農業機械を走らせる
大農場主の気分を味わおう
ゲームモードは前作と同じく,名もなき広大な島を舞台に大農場主を目指して農作業に勤しむ「キャリア」モードのほか,農業機械や農機具を使ったミニゲームに挑戦する「ミッション」モードが用意されている。また本作では新たに,世界中にいる大農場主と共に最大4人でオンライン農作業を楽しめる「マルチプレイヤー」モードが追加された。
前作をプレイしている人もいない人も,ミニゲーム形式で課題に挑戦しながら農業機械,農具の使い方や農作業の仕方を学べる「ミッション」モードからプレイするのがオススメ。
基本的な操作を学ぶものから,トラクターですべてのマーカーを通過してゴールする……といった農業とはかけ離れたようなものまで,全15ミッションが用意されており,遊びながらゲームの流れや特徴を覚えられるのが嬉しいところだ。
農業機械を運転するときは,運転席視点が臨場感あってオススメ。雇用者が作業中の農業機械でも運転席視点を楽しめる |
醸造所は大麦,小麦のみ出荷できるので,麦は醸造所の周辺で作れば,刈り獲ったあとすぐに出荷できる。どこで何を作るかも農作業のポイントだ |
ちなみにミッションモードは前作同様,クリアタイムにより「ゴールド」「シルバー」「カッパー」のメダルが獲得できる。だがゴールドを獲るのは困難なミッションも多数用意されており,筆者のように何度挑戦してもゴールドを揃えられない人は多そうだ。農業の腕に自信がある人は,全ゴールド目指して頑張ってほしい。
本作の舞台は前作とは異なる,広さ4平方km以上の名も無き孤島で,サイロや給油所などのある農場(プレイヤーの拠点)のほか,放牧場,製粉所,醸造所,港,農業機械販売店などの施設,さらには住宅地,水車小屋,教会,製材所,生け垣の迷路などが点在している。
道路を走行している一般車も多く,島民か観光客かは分からないものの多数の人が歩いており,前作よりも人の気配が感じられるというのは意外と新鮮だ。
雇用者のコンバインと併走して刈り取った作物を回収する。“4”キーを押せばコンバインのスピードに自動で合わせてくれるので便利だ |
前作にはなかった新たな農業機械や農機具が登場する。前後に農機具を取り付けて効率よく農作業をこなしていこう |
収録されている農業機械や農具は,前作に比べて大幅に増加。ドイツファール,リザード,クローネ,ポッティンガーなどの大手農業機械製造業者の協力により,トラクター,フロントローダー,コンバイン,トレーラー,すき,種まき機,噴霧器,ベイラー,耕耘機,ワゴン,テッダー,スリラータンカー,肥料散布機,フォレージ収穫機などが,ゲーム内で精巧に再現されている。
残念ながら農業機械や農具の実物に詳しいわけではないので,実際どこまで実物のディテールが細かく再現されているのかは正直分からないが,あたかも本物のように再現されたトラクターの巨大なタイヤのトレッド,コンバインとは思えない曲線を使ったボディ形状,耕耘機の複雑なフレーム構造などを外部視点で眺めているのが,筆者は好きだ。
チュートリアルも兼ねたミッションモードは,農作業の合間の息抜きにプレイしてもいいかもしれない。全ゴールドを目指して悪戦苦闘してほしい |
島民なのか観光客なのかは不明だが人々がウロウロするようになった。とはいえ,何もコミュニケーションが取れないのが残念なところだ |
農業機械や農具は資金さえあれば自由に購入し,自分で操作できるが,前作同様「雇用者」を雇うこともできる。雇用者が複数いれば多くの農作業を同時進行可能で,コンバインで刈り取ったり,トラクターで耕したり,種を蒔いたりといったことは,基本的に雇用者に任せることになるだろう。
プレイヤーはトラクターにトレーラーを繋げて,許容量がいっぱいになったコンバインから作物を移し替えたりなど,雇用者に任せられない作業に専念する必要があるのだ。
農作業よりも手間のかかる「酪農」
それだけ得られる報酬も大きい
本作の目玉要素である「酪農」についてだが,これは簡単にいうと牛(乳牛)を飼育して,牛からミルクを生産し,出荷するというものだ。身近にある牛乳,ヨーグルト,チーズなどは酪農のお陰で我々が口にできるのだ。酪農最高!
肝心の牛はなぜか農業機械販売店で売られており,購入した牛はドナドナを歌う間もなく即座に放牧場へと送られる。ただ牛を買っただけではミルクは採れず,牧草か細断したトウモロコシを餌として与えることで,初めてミルクが採れるようになる。ちなみに搾乳は自動的に行われ,プレイヤー自ら乳搾りできないのは残念なところだ。
トラクターに草刈り機とロータリーヘッダーを取り付ければ,牧草を刈り取ってすぐに乾燥させられるので一石二鳥。あとはフォレージワゴンで回収だ |
フォレージワゴンは乾燥した牧草の上を走り回るだけで吸い上げてくれる。回収したら放牧場にある飼葉桶に入れておけば,勝手に牛達が食べる |
なお,牧草とトウモロコシは通常の農作業と同じように種を蒔いて育てるのだが,収穫するにはどちらも専用の農機具が必要になる。
牧草を刈り取るには“草刈り機”と,刈り取った牧草を乾燥させる“ロータリーヘッダー”,牧草を回収する“牧草用フォレージワゴン”が必要だ。トラクターの前に草刈り機,後ろにロータリーヘッダーを装着して走り回ると,刈り取りと乾燥が並行してできて手っ取り早い。ただし,あまり速度を上げると刈り取りに失敗するので,速度1でのんびりやるのがベストだ。乾燥させた牧草(色が変わる)をフォレージワゴンで回収して,放牧場の飼葉桶に運べばいい。
フォレージ収穫機は自分で運転して収穫しなければならない。トレーラーがいっぱいになったらトラクターでバンカーサイロまで運ぶと良い |
酪農ではトラクターにトレーラーを装着してバック駐車を多用する。しかし,トレーラーがあらぬ方向に曲がってしまうなど,思い通りに操作できず苦労する |
いっぽうのトウモロコシは,通常のコンバインやヘッダーではなく,専用の“クローネ・ビックX1000 フォレージ収穫機”と“クローネ・イージー・コレクト1053コーンヘッダー”で,細断したトウモロコシを作る必要がある。
フォレージ収穫機の前にコーンヘッダーを装着し,後ろにトレーラーを装着してトウモロコシを収穫したら,放牧場のバンカーサイロに降ろせば完了だ。
草刈り機を装着したトラクターとフォレージ収穫機は,どちらも雇用者には任せられず,プレイヤーが作業を行わなくてはならないため手間がかかる。しかし牧草も細断したトウモロコシも,一旦用意してしまえば無くなるまでに時間がかかるので,たまに農作業を一時中断して牛の餌作りをがっつりやっておくといいだろう。もちろん,牛の数が増えれば増えるほど餌の消費も増える点には注意が必要だ。
毎日,夕方にミルクを回収するためタンクローリーがやってくる。PDAで,生産されたミルクの量や餌の残量などが分かるので定期的にチェックしよう |
液肥をスラリータンカーで散布できる。とはいえ,肥料を撒かずとも作物はぐんぐん育つので,一度も液肥を撒いたことがないのは内緒だ |
生産されたミルクは自動的に貯蔵タンクに蓄積される。毎日,夕方に乳製品取扱所からタンクローリーがやってきて勝手に運んでいってくれるので,プレイヤーはお任せモードで大丈夫だ。餌を用意するのに手間はかかるが,毎日出荷した時点でまとまった金額が入ってくるので,やり方次第では農作業よりも手っ取り早く稼げるかもしれない。
また,放牧場にあるタンクに牛から得られる液肥が貯蔵されており,スラリータンカーに移して田んぼに有機肥料として撒いたり,肥料の山からフロントローダーを使って肥料散布機に肥料を載せ替え,田んぼに撒いたりなんてこともできる。実は肥料などを撒かなくても作物は育つのだが,リアルな農作業を楽しみたいならば手間暇をかけて肥料撒きもやっておくといいだろう。
世界の農場主達と共同農場を運営しよう
マルチプレイヤーモードについても触れておこう。このモードはインターネットやLANを通じて,すでに作成されているゲームに参加したり,自分でゲームを作成して4人までのプレイヤーと一緒に農作業を行ったりできるモードだ。ちなみに公式サイトやマニュアルでは最大4人となっているが,実際は最大10人まで設定可能なようだ。
接続サーバーは「International」(国際),「Deutschland A」(ドイツ A),「Deutschland B」(ドイツ B),「Continental Europe」(ヨーロッパ大陸)の4つが用意されている。ゲームに参加する場合はサーバーを選択して,リストの中から参加したいゲームを選択するだけだ。
とはいえ,パスワードがかかっていないのに参加を拒否されるなど,回線状況のせいか,うまくゲームに接続できないことも多い。サーバーに接続するという仕様上,快適にプレイできるかどうかは参加メンバーの回線速度に左右されるようだ。
前作ではパッチによって農業機械やマップなどのMODを導入できるようになっていたが,本作では標準でMODを利用可能だ。ちなみに,マルチプレイヤーモードでは,参加しようとしているゲームがMODを利用している場合,自分もそのMODを導入していなければ参加できない。
未導入のMODが必要な場合,「必要なMOD/DLCがインストールされていません」という注意書きが表示されて分かるようになっている。「MOD」ボタンを押すことでリストが表示され,その中にあるMOD/DLCのダウンロードボタンを押せば,ブラウザが起動してMODのダウンロードサイトが表示される仕組みだ。
なお,日本語マニュアルで触れられているのはここまでで,MODの導入方法などには一切触れられておらず,どうやってMODを適用させればいいのかは分からない。前作同様にMODの導入方法などを,公式サイトのほうで早急に公開してほしいところだ。
マルチプレイでは,ゲームを作成した人が大農場主で,参加プレイヤーが雇用者ということになる。他人の農場に入って勝手に農業機械を乗り回して農作業をして……というイメージを抱いていたが,外国人プレイヤーを見ていると,チャットで「〜のあたりの大麦を刈り取ってきて」「干草ロールを回収してきて」「牛の餌を用意して」といった具合に大農場主が指示を出して作業をしている光景も見受けられ,本当に農場のお手伝いをしているような気分を味わえそうだ。
筆者は何度かマルチプレイヤーモードを試しているが,いまだに日本人プレイヤーには遭遇できていない。日本人の大農場主の方々,わいわいと一緒に農作業を楽しんでみませんか?
マルチプレイヤーモードで注意したいのは,ゲームを作成した人のキャリアモードのセーブデータを使用することになる点だ。農業機械や農機具はゲームを作成した人が所有するものを利用するので,ゲームに参加した人が勝手に農業機械などを購入することはできない(売却は設定により可能)。
単純作業の繰り返しだが
ついついプレイしてしまう農業の魅力
農作業に加えて酪農までできるようになった本作。はっきり言って,やっていることは前作から何ら変わらず,ゲーム自体は相変わらず地味すぎるほど地味だ。農作業の一部始終を徹底的にシミュレートしたものではなく,農作業の一環を農業機械を乗り回して体験してみようという方向性の強い作品で,子供でも楽しめるハードルの低さとなっている。
確かに単調な作業の繰り返しなので,人を選ぶゲームだとは思うが,個人的には非常に好きなシリーズだ。前作も呆れるほどプレイしたし,本作でも毎日せっせと農作業を続けている。いくつもの田んぼのまわりに異なる農具を取り付けた農業機械を置いておき,作業に合わせて動かしていく。こうした地道な作業を繰り返すことで資金を貯め,どんどん農業機械を増やして,大量の作物を出荷する大農場主を目指すのは地味に楽しいのだ。
マルチプレイによる,見知らぬ誰かとの共同農作業もやってみると意外と楽しいので,前作をプレイしている人はもちろんのこと,まだ農業は未体験という人も,本作で一風変わった体験をしてみてはいかがだろうか?
「ファーミング シミュレーター 2011 日本語版」公式サイト
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ファーミング シミュレーター 2011 〜ミルクや作物を生産しよう! ぼくらの農場生活〜 日本語版
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