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「放課後ライトノベル」第33回は『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる』で両手に花の三角関係はいかがでしょう?
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印刷2011/03/05 10:00

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「放課後ライトノベル」第33回は『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる』で両手に花の三角関係はいかがでしょう?



 超時空シンデレラの愛称で知られるランカ・リーが可愛いことでお馴染みの「マクロスF」。その劇場版完結編,「劇場版 マクロスF 恋離飛翼〜サヨナラノツバサ〜」の上映が先週スタートしたが,皆さんご覧になっただろうか。

 スクリーンで見るランカちゃんは相変わらず可愛かったし,大画面に映し出される豪勢にCGを使って描かれた戦闘シーンも迫力バツグンだった。
 もちろん,マクロスといえば歌の存在を忘れちゃいけない。今回の劇場版では序盤のシェリルのライブから,クライマックスの戦闘シーンまで,菅野よう子氏が作曲した素晴らしい歌に満ち溢れていたが,やはり最大の見どころはランカちゃんの初コンサートシーンだろう。劇場に響き渡るランカちゃんの歌声をぜひ皆さんも堪能していただきたい。

 そして,今回の劇場版で何より忘れちゃいけないのが三角関係の清算だ。テレビ版のラストでは主人公の早乙女アルトが彼を想う二人の女性,シェリルとランカに向かって,
「お前が……お前達が……俺の翼だ!」
と,何だか格好いい言い回しで二股を主張しやがったので,「そうかそうか……折れろ。そしてもげろ」とブラウン管の前でつい口走ってしまったものだが,今回の劇場版ではそんな二股宣言は存在せず,三人の恋愛劇にしっかりとした結末が描かれているので,ランカちゃんの可愛さばかりではなく,そちらのほうにも注目してほしい。

 そういったわけでマクロスFの三角関係が片付いたので,今回の「放課後ライトノベル」は三角関係真っ只中の作品『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる』を紹介しよう。
 発売直後に売れに売れてしまったため,書店や通販サイトから姿を消してしまった本作品だが,編集者のTwitterによれば,最近重版も出回り始めたようなので,買い逃している人は要チェックだ!

画像集#001のサムネイル/「放課後ライトノベル」第33回は『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる』で両手に花の三角関係はいかがでしょう?
『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる』

著者:裕時悠示
イラストレーター:るろお
出版社/レーベル:ソフトバンククリエイティブ/GA文庫
価格:630円(税込)
ISBN:978-4-79-736396-8

→この書籍をAmazon.co.jpで購入する


●「恋愛アンチ」なのに,両手に花?


 高校生の主人公・季堂鋭太(きどうえいた)は大の恋愛アンチ。それもそのはず,小学生時代は両親から二人の熱々な恋バナを嫌というほど聞かされたのに,中学生の頃になるとその両親が散々ケンカした挙句,二人とも別の相手を見つけて,鋭太を放置して離婚してしまったのだ。
 このことが原因で恋愛嫌いになった鋭太は,恋愛などにうつつを抜かさず,医者を目指して勉学に勤しんでいたのだが,まったく女ッ気がないというわけではない。彼の傍には幼なじみの春咲千和(はるさきちわ)の姿があった。

 千和は中学までは剣道に打ち込んでいたのだが,事故にあったことにより剣道を断念しなければならなくなり,新たに打ち込めるものを探していた。そして普段から,鋭太に子供扱いされるのを不服に思っていた千和は,鋭太を見返すために,新たな目標として「モテまくりたいっ!」と宣言する。
 しかし,外見は可愛らしいものの,残念な性格が災いして,結果は空回りばかり。こうして二人はそれなりに和気藹々の生活を送っていたのだが,そこに一人の少女が登場したことでその生活が一変してしまう。

 帰国子女で,銀髪に青い瞳を持つ美少女,夏川真涼(なつかわますず)。高校に入学してから6月までの2か月で告白された回数が50回を超えるというモテまくりの真涼が,教室のド真ん中で鋭太に告白したのだ。

 突然の告白に面食らう鋭太だったが,実はその告白は真涼のフェイクだった。鋭太同様に恋愛アンチであった真涼は,男達からの告白を避けるために,表向きの彼氏として,恋愛に興味のない鋭太を選んだのである。最初は断ろうとした鋭太だったが,真涼に弱みである,中学生時代に書いていた中二病全開のノートを握られてしまっていたので,なし崩し的に仮面カップルとして付き合うことに。しかし,その内情を知らない千和は嫉妬の炎を燃え上がらせる……。


●そいつは邪悪の化身,名は夏川真涼!!


 こうなってくると,修羅場だ。キャットファイトだ。Nice boat. だ。となってしまいそうなのだが,真涼の巧妙な策略によってそのような展開は回避される。
 表向きは理想的な美少女の真涼だが,その内面はかなり腹黒でさらに毒舌家。その真涼は,鋭太に付きまとう千和を遠ざけるために,同好会「自らを演出する乙女の会」(略して「自演乙」)を作り,千和に彼氏を作らせようとするのだが,その作戦がことごとく酷いのだ。

 バンドをやる人間はモテると言って千和に空のギターケースを持たせ(当然,弾けない),ギタリストならとにかく邦楽をけなしまくれと吹き込むし,それが失敗すれば,「何かと戦えばモテる」などと主張し,千和のためと称して適当な前世の設定を捏造する。
 しかも,それらを主張する際に,鋭太の中二病ノートに書かれている,思わず目を背けたくなる痛々しい文章を参照するのでますますタチが悪い。そんなろくでもない真涼のアドバイスを,元々単純な性格の千和は真に受け,盛大な自爆を繰り返すことに。

 ちなみに,この真涼は重度の『ジョジョの奇妙な冒険』マニアであり,作品全体にもジョジョのネタが多数紛れ込んでいる。「好きなアーティストは誰かと聞かれたら,『ジョジョの奇妙な冒険』第4部に出てくるスタンドの名前を言っておけばなんとかなる」なんていう台詞もあるし,巻末にはしっかり「TO BE CONTINUED」という表記まで。しかも,そういう小ネタばかりではなく,ラストのある場面では,ジョジョのあの有名なシーンを大胆にもパロってくるので,そちらにも注目していただきたい。

 もちろん,ジョジョを読んでいなくても十分楽しめるが,やはり事前に知識があったほうがより楽しめるのは確か。ジョジョ第7部である『STEEL BALL RUN』も4月19日発売のウルトラジャンプで最終回を迎えるので,これを機にジョジョを読み始めれば,ちょうどいいタイミングで最終回の感動を味わえるはずだ!

 “JOJOJOJOしい”ヒロインの真涼も作中で「現代に生きる日本人と認めて欲しかったら,まずはジョジョを読破してからにしてください」と言っている。さあ,皆さっそくジョジョを読もう……ってあれ,これ何のコーナーでしたっけ?


●ラブコメに隠されたもう一つのテーマ


 さて,話は戻るが,タイトルとは異なり,修羅場のようでいて,その実態は清く正しいラブコメディという本作。健気な幼なじみに,腹黒美少女,さらに中二病やジョジョネタなど,さまざまな要素が盛り込まれている。章ごとに設けられているおまけページも充実しており,読み応えたっぷりの一冊なのだが,それと同時にこの作品はある重要なテーマにも触れている。それは「恋愛は本当に必要なのか?」というものだ。

 高校生ぐらいになると盛りがついて,彼氏や彼女が欲しくなる年頃だし,誰だって一度はロマンチックな恋愛を夢見たりするはずだ。だが,そもそも恋愛は無理にしようと思ってするべきものなのか。とりあえずでも恋人を作っておいたほうが良いのか。好きとか嫌いとか最初に言い出したのは誰なのかしら。

 当然,これこそが正解だと呼べるようなものはなく,人によって考え方はさまざまだろう。だが,この作品では,決してまっすぐではない三人の関係を通して,この問いに対する答えを描き出そうとしているように思える。

 鋭太の気を引くためにとにかくモテようとする千和。
 モテまくっていながらも「恋愛なんてくだらない」と語る真涼。
 そんな二人に挟まれる鋭太が今後どのような着地点を見せ,どのような答えを出してくれるのか。

 そして,鋭太の苗字が「季堂」で二人のヒロインが「春咲」「夏川」。ということは,やっぱりこのあと「秋」「冬」は出てくるのだろうか。そういった点にも注目しつつ,今後を見守りたい注目の一作だ。
 ちなみに現在,GA文庫公式サイトの「こちら」のページでは,本編の100ページあたりまでが収録されている“試読体験版”が公開されているので,興味を持った人はまずこちらから読んでみるのも良いだろう。

■人生一度くらいは修羅場を見たい人のための,三角関係ライトノベル

『わたしたちの田村くん』(著者:竹宮ゆゆこ,イラスト:ヤス/電撃文庫)
→Amazon.co.jpで購入する
画像集#002のサムネイル/「放課後ライトノベル」第33回は『俺の彼女と幼なじみが修羅場すぎる』で両手に花の三角関係はいかがでしょう?
 たとえどんなにモテたところで,人の体はしょせん一つ! 浮気をする覚悟か,ハーレムを作る甲斐性がない限り,簡単に幸せになんてなれないのだ! ざまあみろ!
 というわけで,今回は三角関係を扱っているライトノベルを紹介しよう。まずは竹宮ゆゆこの『わたしたちの田村くん』(電撃文庫)。不思議系少女,松澤小巻さんと良い感じの関係になった田村くん。その松澤さんが家庭の事情で転校していったあと,今度はツンドラ少女の相馬広香さんと良い仲になるのだが,そんな時に田村くんへ松澤さんから一通のお手紙が。「相馬さんって,誰?」 ……どうあがいても修羅場です。本当にありがとうございました。
 次に紹介するのは斉藤真也の『オトコを見せてよ倉田くん!』(MF文庫J)。年下の幼なじみの猫柳愛衣と,その親友の戌威小夜の秘密を知ってしまい,二人から同時に「殺されるか,結婚するか」という二者択一を付きつけられる。日本の法律が重婚を許していれば良かったんですけどねえ。本当は年上好きなのにねえ。ご愁傷様です。
 そして最後に紹介するのは,先日完結したばかりの長谷敏司の『円環少女』(角川スニーカー文庫)。主人公の武原仁は,二人の女性から好意を持たれているのだが,その相手が小学生と高校生……。一方,武原さん24歳。こうなってくると二股とか関係なく,社会的にも倫理的にも詰んでいる気がする。
 このように,二股はあなたの人生を損なう恐れがありますので,取り扱いには十分注意しましょう。

■■柿崎憲(ライター/超時空穀潰し)■■
『このライトノベルがすごい!』(宝島社)などで活動中のライター。冒頭ではランカちゃんのことばかり書いているが,「実は僕が映画で一番可愛いと思ったのは,女形時代のアルトきゅんなんですよ。あんなに可愛い子が,あのいけ好かないイケメンになるなんて……」と,時の流れの無常さをはかなんでいるとか,いないとか。
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