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  • 発売日:2011/06/09
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極道VS.ゾンビのガンショットバトルだけでなく,確かなドラマ性とやり込み要素にも注目。待ちに待ったシリーズ最新作「龍が如くOF THE END」レビュー
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印刷2011/06/04 00:00

レビュー

“ゾンビ”と“ガンショットバトル”が生み出す,「龍が如く」の新たな魅力に酔いしれろ

龍が如く OF THE END

Text by 稲元徹也


画像集#001のサムネイル/極道VS.ゾンビのガンショットバトルだけでなく,確かなドラマ性とやり込み要素にも注目。待ちに待ったシリーズ最新作「龍が如くOF THE END」レビュー
 セガの看板シリーズの一つである「龍が如く」の最新作,「龍が如く OF THE END」が,6月9日についに発売される。
 2010年9月の東京ゲームショウでのセンセーショナルな発表以降,これまでの4作品(外伝を含めると6作品)とはまるで異なる意外な世界観やゲームデザインが,多くのゲームファンから注目された本作。その後,諸般の事情で発売日(当初は3月17日に発売予定だった)が延期されることとなったのは,みなさんご存じのとおりである。

 そんな紆余曲折を経てついに発売される「龍が如く OF THE END」。4Gamerでは事前に開発ROMをお借りして,一足お先にプレイすることができたので,本稿でたっぷりとレビューすることにしよう。
 ちなみに,本作の体験版は3月3日から配信されており,ゲームの導入部分と1人目(第1部)の主人公・秋山 駿のストーリーの序盤をプレイすることができる。秋山の装備や敵の登場順などが,一部体験版向けに変更されているものの,シナリオの展開などはほぼ同じものだった。

「龍が如く」シリーズではお馴染みの,最強のメンツが揃った。この4人が,神室町に突如現れたゾンビ達と激しい戦いをくり広げていくこととなる
画像集#002のサムネイル/極道VS.ゾンビのガンショットバトルだけでなく,確かなドラマ性とやり込み要素にも注目。待ちに待ったシリーズ最新作「龍が如くOF THE END」レビュー

「龍が如く OF THE END」公式サイト



伝説の男達とゾンビが織りなす,神室町の新たな伝説


画像集#003のサムネイル/極道VS.ゾンビのガンショットバトルだけでなく,確かなドラマ性とやり込み要素にも注目。待ちに待ったシリーズ最新作「龍が如くOF THE END」レビュー
 とにかく誰もが気になっていたであろう,神室町に未曾有の危機が訪れるシーンは,意外にも早く,そして唐突にやってくる。ゲーム冒頭,神室町のとある極道の事務所に,1人のゾンビ(この正体は後に判明する)がカチコミをかけるのだ。本作のつかみである“極道vs.ゾンビ”の構図は序盤早々に提示され,その被害は“感染”という形で神室町全土へと広がっていく。
 実際に遊んでみると,いわゆる“ゾンビパニックもの”の得体の知れない恐怖と,いつもの「龍」シリーズらしい物々しさがいい塩梅に融合されていて,意外にも違和感を感じることもなく,スムースに物語へと没入できた。よくよく考えてみれば極道の世界だって,我々庶民にとってはゾンビと同じぐらい現実味のない世界なわけだし,何より尖った世界観の作品を,これまで何本も手がけてきた名越稔洋総合監督率いる開発チームの最新作である。シリーズものゆえのマンネリ感を打破するにも,これくらいのインパクトが必要になることは,シリーズファンなら納得といったところだろう。

 そんな序盤の物語を追っていくと,実は神室町すべてがゾンビに汚染されているわけではないことが分かる。秋山が初めてゾンビと接触した時点では,劇場前から続く地下街の中に存在している程度だが,そこから抜け出る頃には,劇場前広場一帯にゾンビがあふれ,道路には巨大な隔離壁が築かれてしまっている。物語が進むにつれ,ゾンビが存在する区域は“隔離エリア”として少しずつ広がり,主人公達が自由に移動できる範囲も刻々と変わっていくのである。

最初の主人公は秋山。これまでのシリーズ同様,しっかりとしたチュートリアルが用意されているので,プレイに戸惑うことはないだろう
画像集#004のサムネイル/極道VS.ゾンビのガンショットバトルだけでなく,確かなドラマ性とやり込み要素にも注目。待ちに待ったシリーズ最新作「龍が如くOF THE END」レビュー

 神室町は,隔離エリアと通常エリアが隔離壁で完全に分断されていて,前者にはゾンビ達がはびこり,後者はカタギ(一部そうでない人もいるが)の人々が往来するいつもの神室町である。隔離エリアは物語を進める上で行き来することになるが,その合間に特定の出入口から自由に出入りする“フリー・ルート”が存在している。このフリー・ルートが,これまでの龍が如くシリーズが受け継いできた“寄り道する面白さ”に拍車をかけている。

謎の美女・長谷川と“神室町の盾”なる組織がフリー・ルートの出入口を管理している。ここから入って戦っている間は,物語が進むことはない
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壁の中にも外にも娯楽施設が多数存在する。ゲームセンターでは「ボクセリオス」が遊べ,キャバクラでキャバ嬢たちと楽しいひとときを過ごすこともできる
画像集#007のサムネイル/極道VS.ゾンビのガンショットバトルだけでなく,確かなドラマ性とやり込み要素にも注目。待ちに待ったシリーズ最新作「龍が如くOF THE END」レビュー
 本作ではこれまでのシリーズとは異なり,敵と遭遇するとバトル画面に遷移するエンカウント制ではなく,一般的なTPSのように,移動中は常に攻撃可能な状態でゲームを進行していく。これにより,アクションアドベンチャーの“アクション”の部分がより濃くなったわけだが,前述のフリー・ルートから隔離エリアへと入ると,そのアクション部分であるゾンビとのバトルを存分に楽しみつつ,エリア内外に存在するサブストーリーなども堪能できるのだ。
 メインストーリーはこれまでのシリーズ以上に緊迫感に満ちたものなのだが,そこはそれ。「龍」シリーズのお約束として,進むべき道を進まなければ,ストーリー展開を“保留”しておけるので,フリー・ルートでゾンビを倒しまくってキャラのレベルやプレイヤー自身の腕を上げてもいいし,隔離エリア内にあるゲーセンやキャバクラなどの各種スポットを解放していってもいい。
 筆者個人としては,尋常ではない状況下で展開される,緊張感があるのかないのかよく分からない,ある意味一番「龍」らしいサブストーリーはぜひチェックしてほしいと思う。とくに今回初めて主人公となった真島吾朗(第2部)と郷田龍司(第3部)のシナリオは,ネタバレを避けるため詳しくは語らないが,ファンのツボを突く内容になっていることは保証する。龍司も真島の兄さんも本当に最高だ。

この状況を楽しむ真島と,やけに人情味のある物語が展開する龍司のサブストーリーは必見。主人公となったことで,これまで見ることのできなかった一面も描かれている
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フリー・ルート内には取り残された人々がいる。周辺のゾンビを殲滅すれば彼らを解放でき,以降,そのスポットを自由に使えるようになるのだ
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 ちなみにこれらのサブストーリーは,かなりの量が用意されているらしい。そしてその一部には,グッドエンドとバッドエンドが用意されている。2周目以降にあらためてプレイすることもできるが,感情移入度がかなり違うので,ぜひ最初のプレイで,できるだけ多くのサブストーリーを味わってほしい。


TPSとは少し違う,「龍が如く」ならではのガンショットバトル


派手に血しぶきを上げるゾンビ達。演出面での遠慮はなく,ゾンビゲームのファンも納得の仕様だ
画像集#011のサムネイル/極道VS.ゾンビのガンショットバトルだけでなく,確かなドラマ性とやり込み要素にも注目。待ちに待ったシリーズ最新作「龍が如くOF THE END」レビュー

 従来のシリーズ作品と大きく変わった点は,何と言ってもバトルシーンだろう。“ガンショットバトル”と名付けられたアクションは,これまでのケンカバトルから一転,キャラクターごとに用意された個性的な銃を用いた,中〜遠距離戦闘をメインとしたバトルが繰り広げられる。画面に映し出された後ろ姿の主人公が銃で敵を倒しているため,どうしてもTPSのイメージを抱いてしまいがちだが,実際にプレイしてみると,一般的なTPSとはちょっと違うプレイフィールが確認できるはずだ。

 武器から撃ち出される弾は,敵の方向さえ向いていれば意識して狙わなくてもほぼ当たるように調整されている。加えてキックやショルダータックルをはじめとする格闘技が使用可能だったり,そこらにあるモノを掴んで振り回すことができたりと,“シューティング”よりは“アクション”寄りの味付けといった印象だ。実際,筆者がこれまで遊んだことがあるTPSとは,明らかにプレイフィールが異なっていた。
 なんというか,「龍が如く」シリーズのケンカバトルのプレイ感覚を,そのまま銃撃戦に置き換えて,より爽快感のあるガンショットバトルへと昇華したいうのが,筆者の個人的な感想だ。特定の場所で発動させてゾンビに大ダメージを与える“ヒートスナイプ”のシステムが,その好例だろう。シリーズを象徴する“ヒートアクション”(特定の条件下で発動できる必殺アクション)の演出を継承し,バトルに派手さと気持ちよさという華を添え,「龍が如く」らしさを強調しているのだ。

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スナイプゲージがたまったら,△ボタンで対象物を攻撃し,表示されたボタンを素早く押せば,派手な演出とともに周囲のゾンビに大ダメージを与える
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 もちろん,きちんとヘッドショットが決まれば,通常のゾンビならハンドガン1発でも倒せるし,スナイパーライフルや対物狙撃銃のような,スコープで狙い撃つ武器もいくつか用意されていたりもする。実際に筆者もゲームに慣れてきてからは,能力強化で早いうちに身に付けられる“ヘッドスナップ”(R2ボタンで狙うモードに入ると,自動的に敵の頭部をターゲットしてくれる能力)を使って,ヘッドショットを常に狙うことを意識してプレイしていたし,敵によって装備する武器を変更し,より効率的に戦闘を行うようにしていた。
 こういったTPS的な要素は,ゲームを進めていくことで自然に身に付くようになっている。初めて遊ぶ人には優しく,コアなゲーマーにとっては奥行きのあるゲームデザイン/バランス取りは,さすが「龍が如く」開発チームといったところだろう。

物語の進行上,同行する味方は相棒として一緒に戦ってくれる。また出会ったNPCを相棒として育てる,“相棒をつくろう!”という新システムもある
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4人の主人公を象徴するのは強力な武器


龍司のガトリングアームは4人の中でも圧倒的な火力を誇るが,弾丸の消費量がハンパじゃない。無闇に撃ち続けると弾切れを起こしてしまうだろう
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 ゲームのシステム的な部分にもう少し触れておこう。本作には前作同様,4人の主人公が登場し,4部構成の物語を順番に進めていくことになるのだが,実は今回の主人公達は,それぞれ異なった武器は持っているものの,前作のようにキャラクター性能に大きな差があるわけではない。ゲーム進行の過程で主人公が習得した技や能力,手持ちのアイテムなどは,部が変わる際に次の主人公に受け継がれ,メインの武器だけが主人公によって変わっていくという具合だ。
 そのため,主人公交代時の技/操作の違いに戸惑うことはないが,キャラクターごとの戦い方の違いを楽しみたいと考えていた人は,違和感が残る仕様かもしれない。ここは賛否が分かれるところかもしれないが,シナリオや声優陣の演技などで主人公の個性は十分に堪能できたので,個人的には気にならなかったことをお伝えしておこう。

敵は人型ゾンビのほか,耐久力が高い強敵の“変異種”や,“実験体”と呼ばれる巨大ボス的な存在も登場する。実験体はすでにゾンビではないような……!?
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 そんな主人公4人を象徴するのが,それぞれのメイン武器である。秋山は二丁拳銃,真島はショットガン,龍司は右腕のガトリングアーム,桐生は対物狙撃銃を最終的に装備することとなる。それぞれ性質が異なっており,非常に強力でバトルの爽快感は抜群だ。
 しかし,秋山の二丁拳銃以外は専用の弾丸が必要で,弾がなくなれば撃てなくなるし,多く持ち歩けばインベントリを圧迫するというデメリットもあるため,サブ武器の使用は不可欠となる。このメイン武器とサブ武器のチョイスが,ゲームのプレイバリュー向上に一役買っていて,自分好みの武器を方向キーに割り当てて使い分けたり,それらを強化/改造したりすることが,ゲームの魅力の一つにもなっている。
 ちなみに筆者は,序盤で手に入る大口径自動拳銃を強化しながら,全編を通して愛用していた。通常のハンドガン(全員が装備しているサブ武器)よりも装弾数は少なめだが,貫通力があり弾数制限がなく,撃っていて実に気持ちのいい武器である。前作よりもバトルシーンが増えたことで,武器強化に対するモチベーションも必然的にアップしている。

やり込み的なお楽しみ要素である,武器の改造。資金だけでなく,敵などが落とす改造用のアイテムなどが必要になることもある
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神室町の地下にダンジョンが……!?


マンホールの下に存在する巨大なダンジョン。下層への階段では,探索を途中でやめて引き返すこともできる
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 本作をプレイしていてとくに面白かった要素が,フリー・ルート内に存在する“神室町アンダーグラウンド”だ。これはいわゆるローグライクゲームの仕様で,入るたびに形が変わるというお馴染みのスタイルに則って,ゾンビと戦いながら神室町地下のダンジョン最深部を目指していくというミニゲームである。
 弾丸や乾電池(ダンジョン内を照らす懐中電灯用。時間経過で容量が減っていく)などの探索に必須のアイテムは,最初に持ち込むもの以外は現地調達しなければならないため,フリー・ルートなどと比べると難度はかなり高い。とにかくゾンビが大量に出現するので,アイテム収集や経験値稼ぎにはもってこいの内容となっている。
 それ専用に作られたローグライクゲームと比べると,さすがにシンプルな内容に感じてしまうが,薄暗いダンジョンの中で次々と現れるゾンビを相手に,淡々と戦っていくアクションには,梱包用のプチプチを潰していくような妙な中毒性があり,筆者も本編を忘れてプレイし続けてしまったものだ。

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これがシリーズ有終の美なのか,それとも……!?


かつてのライバルが力を合わせ,強大な敵に挑むという王道のシーンも。もちろん前作を知らなくても,ゲーム自体は十二分に楽しめる内容になっているのでご安心を
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 そのタイトルからも,「これがシリーズ最後の作品!?」という雰囲気がヒシヒシと感じられる本作だが,果たして,「龍が如く」シリーズは今後どうなるのだろうか。名越氏の次回作「Binary Domain」は完全新作であり,本シリーズとの関わりはない。ここでスパッとシリーズを終わらせてしまう潔さも「龍が如く」らしいといえばらしいのだが,ファンとしては,来年の暖かくなる時期には新作を遊びたいという気持ちもあるだろう。幸い昨年は,「クロヒョウ」という“新章”も生まれているので,そういった展開にも期待したいところだ。

レギュラー陣以外のゲストの活躍も,シリーズお馴染みの大きな魅力。今回は,的場浩司さん演じる二階堂哲雄と,栗山千明さん演じる浅木美涼が,非常に気になる存在だった
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 ともあれ本作は,ゲームデザインの思い切ったリニューアルがはかられてはいるものの,「龍が如く」というシリーズの本質は失わず,いわゆる海外産のTPSなどとも異なるゲームデザインにうまく落とし込まれた秀作だ。この6年間,ほぼ毎年新作を送り出し,そのすべてをヒットさせてきた開発陣のノウハウや実績は伊達ではないと,あらためて認識させられた次第である。
 何かと暗い気持ちになりがちな昨今ではあるが,本作の痛快なアクションやぶっ飛んだストーリー展開には,プレイヤーの気分をスカッと切り替えてくれる魅力が確かに秘められている。待ちに待ったという人も,初めてシリーズ作品に触れるという人も,この極上のエンターテイメントをぜひ楽しんでほしい。

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