インタビュー
QTEやエンカウントバトルが採用された異色のマルチプレイアクションの実力やいかに。PSP「LORD of ARCANA」プロデューサー柴 貴正氏にインタビュー
プレイヤーはスレイヤー(殺戮者)となり,各地に潜む魔物を討伐しつつ“世界の秩序の根幹”と言われる“アルカナ”を集めていくことになる。
かなり早い段階から体験版や追加ダウンロードクエストが配信されており,PSPユーザーからの注目を集めている本作。9月30日には,体験版のダウンロード数が100万本を達成したというリリースも配信されており(関連記事),発売後の盛り上がりに関しても期待ができそうだ。
4GamerではLoAの発売に先駆けて,同作のプロデューサーである柴 貴正氏にインタビューをする機会を得た。LoAはいかにして生まれ,どこを目指して開発されたのか。本稿でたっぷりと紹介していこう。
「LORD of ARCANA」公式サイト
柴氏の意外な経歴と,「LORD of ARCANA」開発の経緯
本日はよろしくお願いします。まずは自己紹介を兼ねて,柴さんの経歴について教えてください。
柴氏:
もうこの会社(スクウェア・エニックス)に入って13年目です。一番最初は「ヴァルキリープロファイル」のアシスタントをやっていました。
その後に「チェイスチェイス」というネット上のボードゲームや,「ディプスファンタジア」というオンラインゲームをやりつつ,その裏でPS2の「ドラッグ オン ドラグーン」を作っていましたね。これが大変な問題作で(笑)。
4Gamer:
はい,素晴らしい作品でした(笑)。
柴氏:
ありがとうございます。そしてその後は「少年ヤンガスと不思議のダンジョン」「ロード オブ ヴァーミリオン」(以下,LoV)に関わり,「ロード オブ ヴァーミリオンII」の裏で,今回のLoAも作っていたわけです。
4Gamer:
なるほど。ところで,なぜその時点で,LoAを制作しようということになったのですか?
柴氏:
LoVの世界観を活かして何か作れないかなと,早い段階から考えていたんです。その時に色々と研究した結果が,LoVのような“みんなで遊んで楽しいゲーム”,つまりマルチプレイアクションだったんです。やっぱり,プレイヤーの生の声が聞きやすいゲームって,作りがいがありますし。
なるほど,だからLoVとはまったくジャンルの異なる作品でありながら,共通の世界観を持っているわけですね。
柴氏:
もちろん,まったく新しい世界観を作っても良かったんですけが,LoVの世界観が非常に魅力的なものを持っていると感じていたので。まぁ,素材を流用するとは言っても,デザインが一緒なだけで結局コストはかかっちゃうんですけどね。
4Gamer:
カードゲームとアクションゲームでは,キャラの表現方法だけでなく,動きの部分でも大きく異なりますし。
柴氏:
はい。デザインは同じキャラクターでも,全然違う動きをするわけで,意外と大変だったりするんです。
「プレイヤーの生の声」に関しては,シングル用のゲームだと家でこもってやりがちじゃないですか。その点,PSP向けのマルチプレイアクションならば,実際にプレイしている人を色々な場所で見られるので,開発者にとっては大きなメリットになります。
4Gamer:
ではやはり,対象プレイヤー層は,どちらかというと若い人がメインなのでしょうか。
柴氏:
はい。でも従来のマルチプレイアクションに比べると,映像表現がかなり過激だったりして,見た目の印象は決して子供向けではありません。
あと,これは裏テーマですが,「電車の中でプレイしても恥ずかしくないデザイン」にしようというのがありました。まぁ,大人でも楽しめるゲームにしようということで,LoAの世界観はスクエニらしくきっちりとまとめました。
4Gamer:
わりとダークな印象を受ける世界観ですよね。ちなみに,LoVとはどの程度の繋がりがあるんでしょうか。
柴氏:
時間軸的には,LoVよりも過去になります。ニドとリシアがロード オブ ヴァーミリオン(紅蓮の王)になるよりも前の時代を描いています。LoVをプレイしている方は,LoAのエンディングまでたどり着いたときに「なるほど!」と思うんじゃないでしょうか。
4Gamer:
では,わりと密接に繋がっているんですね。
柴氏:
まあ,そういう意味では深いですね。とはいえ,LoVを全然知らなくても楽しめるので,その点はご安心ください。
他作品にはない本作独自のシステム
マルチプレイアクションの新しい形
マルチプレイアクションとしては,エンカウントバトルが非常に特徴的です。どういう意図があって,本作にエンカウントバトルを採用したのでしょうか。
柴氏:
戦える場所をある程度限定することで,バトルそのものをじっくり楽しんでもらおうと考えたんです。ほかのマルチプレイアクションを見ても,その場の地形を利用したバトルって,あまりないじゃないですか。結局は自分が戦いやすい場所に敵を誘導するほうがラクですから。地形によっては敵が壁にめり込んだりして,結果的にプレイヤーの足を引っ張ることもある。そう考えて,エンカウントバトルに行き着きました。
4Gamer:
エンカウントバトルを採用したことで,一見RPG的な側面も感じとれますね。
柴氏:
ゲームの序盤は成長要素もあるので,RPGっぽさを感じられる方もいるかと思いますが,この成長要素はアクションゲームが得意でない方のための序盤の階段として用意したものですので,中盤以降は完全なアクションゲームという感覚になると思います。とくに後半は相当キツイ難度にしていますので,シングルで厳しいと感じたら,ぜひマルチで遊んでほしいですね。
4Gamer:
シネマティックシーン……いわゆるQTEアクションも導入していますよね。これもやはり,演出面の強化が狙いでしょうか。
柴氏:
はい。たとえば,ヒットポイント1万の敵に対して,そいつの攻撃を避けながらチクチク攻撃して,10ダメージずつ与えていく……というのが従来のマルチプレイアクションですよね。LoAでは,そういった中に何かしら気持ちいい部分を用意したいなと考え,その結果としてシネマティックシーンを盛り込みました。
4Gamer:
シネマティックシーンで敵に与えるダメージは,やっぱり通常よりも相当大きいんですか?
柴氏:
大きいです。しっかりやったほうが有利にバトルを展開できるのは間違いありません。マスターガーディアンに関しては,必ずファイナルシネマティックシーンを決めなければいけませんしね。
4Gamer:
演出面では,大量に血が出たり,肉片が飛び散ったりして,ゴア表現が結構派手ですよね。
柴氏:
ほかのゲームとの差別化を図った結果ですが,もちろんこれも“気持良さ”を狙ってのことです。
4Gamer:
ザコを容赦なく叩き潰す感じは,マルチプレイアクションとしては確かに気持ち良いです。最近は過激な表現に関して,自粛の方向に向かうゲームが多いじゃないですか。そんな中,マルチプレイアクションでそこまでやるというのは,個人的に興味深いところでした。
柴氏:
ええ。体験版でもその一端を味わえますが,製品版にはもっと色々な演出が入っていますよ。会社としては,やはりディフェンスしたい部分もあるとは思いますが,何かしら“尖った作品”を求めているゲームファンも多いと思うんです。LoVはゴア演出に向いた素材だと考えていましたし,ダークな世界観が好きでプレイしている人達も多いので,それに対してちゃんと応えたいなと。まぁ,私の過去の作品を見ていただければ,私自身がその方向性が好きなのは,お分かりいただけるかと思います。
4Gamer:
エンカウントバトルやシネマティックシーンも,マルチプレイアクションとしては珍しいですが,キャラクターの成長システムがレベル制である点も,LoAの大きな特徴ですね。
柴氏:
アクションゲームって,最初からやれることが多すぎると,プレイヤーが混乱してしまうんですよ。それならば,少しずつアクションを開放していくことで,やり方を覚えてもらうのがいいのではないかと考えました。
従来のマルチプレイアクションと比べて,とくに「ここが違う」みたいなアピールポイントってありますか?
柴氏:
やはり,マルチプレイの要素としてQTEアクションを取り入れたところですかね。複数人でプレイすると,シネマティックシーンで順番にボタンを入力していく必要があるんです。そこで誰かが失敗しても,みんなでレスキューボタンを押すことで持ち直すことが可能です。
4Gamer:
それは有り難い。
柴氏:
失敗したらバカヤローとか言われるでしょうけどね(笑)。
4Gamer:
でも,綺麗に繋がったら気持ち良いでしょうねぇ。
柴氏:
はい。戦隊物の必殺技フィニッシュみたいな感じで。
4Gamer:
敵が爆発するような(笑)。
柴氏:
そうですそうです(笑)。ノリとしてはああいう感じですよ。
4Gamer:
LoAには複数の武器種が登場しますが,マルチプレイをするならこれを持って行け! という柴さんオススメ武器はありますか?
柴氏:
難しいですが,やはり銃槍ですかね。飛行中の敵も攻撃できるので,マルチプレイにおいては使い手が一人いると便利です。あとは魔法に特化したプレイスタイルをとることもできる,片手剣や両手剣がお勧めですね。
4Gamer:
なるほど。特定の武器や魔法が効きやすい敵というのもいるんですね。
柴氏:
はい。武器と敵の相性によって部位破壊がしやすかったり,魔法で気絶させたり痺れさせたりできます。
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