連載
【山本一郎】リトアニアから愛を込めて。「アーセナル オブ デモクラシー」で,悲哀の小国を何とかしてみようと思ったら,こうなった
山本一郎 / ブロガーにしてゲーマー。その正体は,コンテンツ業界で今日も暗躍(?)する投資家
山本一郎:茹で蛙たちの最後の晩餐 |
個人的に私がハマッた旧作良作を徹底的に遊び倒すこの不定期連載,今回は年末年始に再び熱中した,「ハーツオブアイアン」の派生作品,「Arsenal of Democracy」(以下,AoD)のリプレイをお届けしたい! ちなみに,私がプレイしたのは英語版+小国MOD(枢軸,連合,共産でも野良国家との戦いでは講和外交に薄い確率ながら応じてくれたりするが,ボーナスICとかはない)だが,英語のできないお前らでも「アーセナル オブ デモクラシー【完全日本語版】」も出ているから安心だ。
何を隠そう,私自身もリトアニアで20数回プレイしてきたものの,結局なんだかんだで毎回滅亡している。ソ連軍に蹂躙されたり,よかれと思ってドイツと同盟したらドイツごとアメリカに叩き潰されたりと,いろいろ苦しい。もう,どうしたらいいのか分からないぐらい辛い。そういう意味からも,紹介しがいのある国といっていいだろう。
まあ,どう考えても,世界がリトアニアの旗の下に統一されるという状況は想像できないのだが,頭を使い,運に賭け,権謀術数の限りを尽くせば,滅亡くらいは阻止できるはずだ。いや,できないはずがない。というわけで,マキャベリズムの極みともいえる今回のリプレイ,さっそく始めてみよう。
プロローグ:リトアニアとは?
中世にはリトアニア大公国として,近世の始まりにはポーランドとの同君連合によって繁栄を極めた名門の古豪国家,リトアニア。しかし,1795年のポーランド分割で領土の大半をロシア帝国に組み込まれて以降,リトアニアの苦難の歴史は始まる。
第一次世界大戦でドイツ帝国に占領され,その後,ロシア革命を機にリトアニアは再独立を果たす。しかし,1939年ドイツのポーランド侵攻によって第二次世界大戦が始まると,リトアニアはソビエト連邦に兵士拉致の言いがかりをつけられ,大規模な戦闘をすることなくソ連の要求を受け入れて併合されてしまう。
その後,スターリン政権下で過酷なシベリア追放政策が実施され,公式には10万人以上のリトアニア人がシベリアへ追放されたという。ちょ,シベリアに追放されたってことは旦那ぁ…… ドイツとロシアという二大国に挟まれてその身を翻弄され続けてきたこの小国は,かつての栄華を失い,ソ連に組み込まれて多くの犠牲者を出してきたのだ。リトアニアの再独立は1990年,ほんの20年ちょっと前のことである。
……と,日本人には今一つピンとこない「自由と独立をかけた戦い」だが,リトアニアなどヨーロッパの小国では日常茶飯事だ。立ち上がらなければ生き残れない。しかし,国家もろとも四散する危険を伴う。たくさんの犠牲を払って独立することに,どれだけの意味があるのか。いや,理屈を超えた価値があるのだ。ああ,リトアニアをどうにかしたい。せめて,ゲームの中だけでもどうにかしたい。
「小国の悲哀」と一言で片付けるのは簡単だ。だが,だからこそ,輝ける歴史を築くための戦いに価値はあるのだ。
第一章:で,そのリトアニアなのだが……
初動の戦力は,首都にいる歩兵3個師団と砲兵旅団が1個,そして輸送船が1隻。ゴミレベルである。強大なソ連軍に立ち向かうのに不足とかいうレベルじゃねーぞ,これ! しかしリトアニアにとっては大事な戦力だ。「そのとき」のために頑張ってもらえる体制を作っておきたい。
外交面では,ぶっちゃけ各国に見はなされている。というか国力が小さすぎて見向きもされないというのが正直なところ。小国はつらいよ。貿易で有利にトレードしてくれるのは同じ境遇のバルト国家とフィンランドぐらい。おや,いずこも仲良くソ連に踏み潰される運命の方々ではないですか。誰か助けて。
さあ,戦略を考えよう。ある程度の国力があるなら,いろいろと変わる状況の中で修正をしていけばよいのだが,リトアニアの場合はひとつ間違うと取り返しがつかないことばかりなので,最初にしっかりした人生プランを考えておくべきだ。
ということで,頭を絞った結果,今回のリトアニアの戦略は以下のごとく。
短期目標:首都に要塞を築いて,こもる。
全体戦略:民主国家へ舵を切り,アメリカと貿易を進めて同盟に漕ぎ着け,アメリカの世界征服に賭ける。
簡単に言って「コバンザメ政策」。っていうか,どっかの極東の島国みたいな方針で目頭が熱くなる。しかし,これ以外にリトアニアが勝利できる可能性はない……と思う。
しかし,なぜアメリカか? それを知るにはリトアニアの歴史を思い出す必要がある。そう,リトアニアこそ,中世欧州の貿易を独占したハンザ同盟の主要国であり,元祖貿易立国だったのだ。リトアニアとアメリカという,新旧貿易立国ががっちり手を結ぶことによって,過去から現在へとつながる自由と交易の旗がひるがえるのである。何がコメコンだ。何がワルシャワ条約機構だ。だいたい,単独でソ連に勝とうなんて,そりゃ無理ってもんですよ大将。チャールズ・ブロンソンがリトアニア移民の2世だったりなど,いろんな絡みがアメリカとはあるし,いいじゃないですか。
と,一分の隙もない理論を展開して,おそらく読者に納得してもらったところで,ゲームスタート!
第二章:リトアニアに真の友人など,いない
ゲーム開始後,民主主義に政策の舵を大きく切り,さっそく輸送船を貿易船に変更,空いた貿易キャパシティをアメリカとの貿易に充当して関係改善に着手する。なけなしの物資3.0ユニットをアメリカに輸出しちゃったりして,「いやー,知らないとは思うんですけど,こちらも民主的政体で自由貿易だったんですよ。ここは一つよろしくお願い申し上げます」という下世話かつヒューマンな外交に打って出る。
当然,同盟国はいないので青写真など誰も譲ってくれないし,買おうにもそんな金はない。なにしろ,資金はどんどん貯めざるを得ないからだ。
なぜ,資金を貯めるのか? それは,アメリカに同盟を申し入れるには結構なお金がどうしても必要だ。関係改善は貿易で行うとしても,同盟を結ぶ最後の詰めはどうしても金,金,金なんだよ。お金さえあれば,ソ連に立ち向かえる状況が作れるのだ。きっと。
貿易で身を立て,手に入れたお金で身を守る。そのため,100円でも惜しんで,1%でも生き残れる確率を高めたい。ちょこまかと貿易を行い,少しでも有利な取引を行えるようにするのだ。それがリトアニアの生きる道なのだ。きっとそうなのだ。
さて,ようやく応用建築の研究が終わったと思ったら,ソ連との不可侵条約が期限切れを迎えた。ああ,避け得ざる戦争はもう目の前だ。対空火砲を生産し,要塞の建築を進める。たった一つの研究ミスが命取りになるので,緊張が続く。
そして,ドイツがリトアニア領メーメル割譲を求めてきた。ああ,貴重な工業力1なのに……。だが,当然ながらドイツと戦争できる状況にはない。涙を呑んで,メーメルをドイツにくれてやる。もっと力があればなあ。調子に乗るドイツの姿が目に浮かび,真珠の涙が一粒。小国の悲哀,ここに極まれり。
涙を拭いて,陸戦ドクトリンの開発へ向かおう。たぶん,1939年はこの開発一つで終わってしまうはずだ。そしてこの年,ドイツ軍がポーランドへ侵攻。第二次世界大戦が勃発した。1940年になれば,きっとこの地も戦火に包まれるに違いない。果たして,このリトアニアで生き残ることはできるのだろうか。
史実どおりドイツがポーランド侵攻。友邦がボコボコにされていくさまを,リトアニアはじっと見守るほかはない |
1939年9月19日,ドイツがポーランドを併合。少し早くない? もうちょっと頑張ってくれないかなあ…… |
第三章:首都にこもりながら援軍を待つ
想定どおり,いままで頑張って関係を改善してきたアメリカ,かの強大で強力で偉大な自由の国アメリカとの同盟を成立させることだけが,リトアニアが生き残る道となった。当初の戦略目標を実現させるのだ。現在,アメリカとの友好度はマックスの+200,ただし稼ぎに稼いだはずの現金は,たったの255ドル。一回にかかる同盟交渉の費用は120ドルである。何も言うまい。
意を決して,再びアメリカとの同盟交渉を行って……今度は成功! やりぃ! 栄えあるリトアニアは,ついにアメリカとの同盟に成功し,連合国とはまた別の,自由貿易同盟の形成に成功したのだ。これぞまさに現代のハンザ同盟。アメリカとリトアニアじゃ全然釣り合わないけど,北欧東欧の交易拠点として民間貿易会社がリトアニアの港からノーフォークへガンガン貿易船を繰り出している姿を脳内で妄想して補完。もちろん,戦争を怖れていろんな人も亡命して,あれやこれやと思っていたら,おや? よく考えるとリトアニア唯一の港,メーメルはドイツに割譲しちゃってもうないじゃん! リトアニア,完全に内陸国じゃん! どうやって貿易してたの! ねえ!
そして二回目のチャレンジ。今度はアメリカとの同盟が成功! やったぞ母ちゃん! 私はやった! |
あっという間にパリが陥落して,フランスではヴィシー政権が成立。はええ。今回の欧州,展開がはええよ |
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