チルトによる傾斜を確認するためのゲージは,2か月前のCESイベントでの発表時には中央のレティクルにあったようだが,今は上部に配置されている
![画像集#002のサムネイル/[GDC 2010]Epic Gamesが,3GS世代のiPhone/iPod touchに向けたUnreal Engine 3を公開](/games/107/G010710/20100310061/TN/002.jpg) |
激しい競合から,アプリ単価のデフレが進んでいるiPhone向けゲーム市場。今回,GDC 2010で開催された第2回iPhone Gamesサミットの勢いが感じられなかったのは,そういったビジネスの難しさを,ゲーム開発者が実際に感じていたからであろうが,「まだまだビジネスチャンスがある」と考えているのが,Epic Gamesだ。今回,iPhone向けUnreal Engine 3の担当プログラマー,Josh Adams(ジョシュ・アダムス)氏が,
「Bringing UE3 to Apple's iPhone Platform」(アップルのiPhoneプラットフォームにUnreal Engine 3を移植)というセミナーを行い,その現状報告を行なった。
まず,明確にしておきたいのは,このiPhone向けUnreal Engineは,「OpenGL ES 2.0」というAPIを利用したものだ。そのため,3GS世代のiPhoneもしくはiPod touchが必要であり,iPhone 3Gや2G,そして旧式のiPod touchでは作動しないという,かなり面食いなゲームエンジンなのである。Adams氏も,「プログラマーとしての興味がそそられたから」と,まずは実践ありきの胆略的なプロジェクトであったことを認めている。
13年の実績を持つEpic GamesのJosh Adams氏。これまでには,主にUnreal TournamentシリーズのDreamcast,PlayStation 2,PlayStation 3などへの移植を行なってきたという。「iPhoneだってコンソールだ」とAdams氏は語る
![画像集#001のサムネイル/[GDC 2010]Epic Gamesが,3GS世代のiPhone/iPod touchに向けたUnreal Engine 3を公開](/games/107/G010710/20100310061/TN/001.jpg) |
セミナーでは,Adams氏が「Unreal Tournament 3」(2007年)と思われるゲームを行い,実際にiPhone上で高性能なグラフィックスのゲームが動いている様子を見せた。「と思われるゲーム」としたのは,デモを撮影していたオーバーヘッドカメラの感度が良くなく,ほとんど真っ暗な状態で良く見えなかったからだ。ただ,1月に行われた2010 International CESでは,一部の業界関係者に「Gears of War 2」はもちろんUnreal Tournament 3も動かして見せていたというから,間違いはないだろう。
元々,C++でプログラミングされたUnreal Engineを,iPhoneのOSに移植する作業は実にチャレンジングだったに違いないが,Adams氏は「90%のコードはまだ存在している」と誇らしげに語る。もっとも,オフライン・コンパイラのないiPhoneでは,常に5〜20種のシェーダを利用するUnreal Engine 3.0ゲームを動作させるのは至難の業だ。そのため,複数のシェーダーを自動的に1枚にしてしまうという,「Auto-Flattening」機能というものを新たに搭載し,これに対処している。Specular High-Lighting効果など演算コストの高いものは省かれているということだが,かなりの部分を表現できているのは,デモからも確認できた。
オーバーヘッドカメラを使ったデモ実演は暗すぎてよく見えなかったが,実際にスムーズに作動していたのは確認できた
![画像集#004のサムネイル/[GDC 2010]Epic Gamesが,3GS世代のiPhone/iPod touchに向けたUnreal Engine 3を公開](/games/107/G010710/20100310061/TN/004.jpg) |
また,PC/コンシューマゲーム機のプラットフォームを念頭において制作されたUnreal Engineを,インプット・メソッドのまったく異なるiPhone上に持ってくるのも,非常に難しい作業だったそうだ。現在のところ,画面上の左下に,アナログスティックを模した四つの矢印からなる“バーチャルスティック”を置き,その反対側に銃撃用ボタンを配置することで対処している。武器の変更などの細かい操作までは分からないが,視点の上下変更にはチルトを利用するなどしており,実際にゲームを遊べるくらいには開発が進んでいるようだ。
もっとも現在のところ,Epic Gamesとしては,実際にGears of War 2なりUnreal Tournament 3なりを発売する予定はないらしく,iPhone向けUnreal Engine 3のライセンスも,どういう形で行うのかは詳しく練られていない状況とのこと。安価で販売されるのが一般的なiPhoneゲームのために,ゲームエンジンを高額でライセンスしようと動くゲーム開発者は少ないと想定されているためだろうが,大きな企業向けに,複数利用の可能な一括ライセンスなどのオプションは考えられるだろう。