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[CEDEC 2010]サッカーの本場で,日本産サッカーゲームが勝つために。ウイニングイレブンシリーズの開発者が語った秘策
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印刷2010/09/01 22:07

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[CEDEC 2010]サッカーの本場で,日本産サッカーゲームが勝つために。ウイニングイレブンシリーズの開発者が語った秘策

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 「CEDEC 2010」2日目の9月1日,コナミデジタルエンタテインメントの寺田敏之氏による「海外のお客様の満足度を最大化するための取り組みとは?〜ウイニングイレブンシリーズにおけるアプローチ〜」と題されたセッションが行われた。

 セッションにおいて寺田氏はまず,自身が10年以上の年月,制作に携わっている「ウイニングイレブン」シリーズのアウトラインを説明した。
 ウイニングイレブンシリーズは,すでに10年以上にわたってシリーズが続いているKONAMIのサッカーゲームだ。日本のみならず世界中で発売されており,とくにヨーロッパでは高い評価を得ている作品でもある。ヨーロッパでは「Pro Evolution Soccer(通称,PES)」というシリーズタイトルで発売されている。

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 ウイイレシリーズが始まったのは1995年。このころは1993年に開幕したJリーグが国内で盛り上がっていた時期であり,ウイイレもこのJリーグをフィーチャーしたタイトルとなっていた。
 しかしご存じのとおり,日本人のサッカーへの関心は,その後,ワールドカップなどの国際大会や,ヨーロッパのクラブリーグなどへと広がっていった。なのでウイイレシリーズもそれに従って,メインとして扱う対象を,そちらへとシフトさせていくことになる。

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 国際大会をメインに扱うようになれば,世界の各地域での売れ方にも変化が現れる。とくにヨーロッパでは反応が良かったそうだ。
 それまでは,日本版,英語圏バージョン,ヨーロッパ各地域版という順で開発を進めていたが,2002年頃からはメインのターゲットをヨーロッパ市場にシフト。発売時期もそれに合わせて年末に変更し,現在では,PES(=ウイイレ)の売り上げの多くは,ヨーロッパ市場からのものになっているとのことだ。

 海外展開を始めた当初,ウイイレは日本,北米,欧州の三地域で販売されていたが,それが徐々に拡大していき,現在では,東南アジア,東欧,南米,中東,オセアニア,アフリカ,南アジアなどでも販売が行われている。
 言語に関しては,初めは日本語のほか,主要5言語(英語,フランス語,ドイツ語,スペイン語,イタリア語)対応となっていたが,現在では17言語に対応しているという。シリーズを重ねていく過程で「UKの英語とアメリカの英語は違う」「普通のスペイン語と,メキシコで使われているスペイン語ではこれもまた違う」といったことに気づき,いまでは同じ言語でも販売地域によって内容が異なっているとのことである。

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日本とヨーロッパでは“サッカー”に対する感覚がまるで違う


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 PESが日本以外の地域で売られ始めた当初は,ゲームから感じ取れる「日本ならではの姿勢」の様なものが評価され,「丁寧でよくできたゲーム」という評判が挙がっていたという。そういった日本的な細やかさは,現在のPESにも引き継がれているそうだ。

 そのように評価され,海外でも受け入れられたPESだったが,その後は“アウェーの洗礼”といえるような失敗をしたり,酷評を受けたりもしたという。

 まず戸惑った点は,PESは当初「ゲームとしての面白さ」や「プレイして感じられる爽快感」を重視して開発していたが,欧米ではそれよりも「リアリティ」をより強く求められることについてだった。そして,その差はどこから来るのかと思い,本場のユーザーの意見を聞いていくうちに,寺田氏は,「ヨーロッパではサッカーは“ただのスポーツ”ではない」ということを実感したのだそうだ。
 サッカーのことで言い争いをして本気のケンカに(ときには事件にまで)発展するほど,ヨーロッパでは生活にサッカーが根付いている。そういう感覚に気付くことが,その地域で受け入れられるゲームを作るには重要なことだったとのことだ。

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 たとえば,初期のPESではフィールド上に審判がいなかった。また選手用のベンチはあるものの,そこに人が描画されてはいなかった。これは処理を軽くするためにあえてやっていたことだった。しかし,ヨーロッパではこの点に多くの批判が寄せられたそうだ。それは,自分たちにとって当たり前の風景がきちんと再現されていないことに対する不満であり,それだけヨーロッパでは,サッカーを見るという行為が普通のことなのだ。

 音楽やデザインの部分でも,文化や風土の違いを理解することは重要だと,寺田氏は続けた。当初,日本の感覚で「ゲームに適している」と思い実装していた音楽は,ヨーロッパでは「子供っぽすぎる」と評された。現在はインストゥルメンタル曲ではなく,プロのアーティストに依頼した,歌入りの曲を使っている。
 UIのデザインなども“文化”であるサッカーにふさわしいものを,注意深く用意する必要がある。一度,「スペイン→闘牛→牛」という連想で,スペイン関連のデザインに牛を配したら,大きく批判されたことがあるそうだ。

 また,ライセンスの部分も,力を入れて取り組まなくてはいけない部分だという。なぜなら,リアリティが求められるヨーロッパでは,“それっぽい”ものは,とても嫌われる傾向にあるからだ。日本ではそれっぽい選手名や,それっぽい応援音楽は,普通に受け入れられるが,ヨーロッパではとても嫌われて,「そんなものならいらないので外せ」という反応が返って来るそうだ。なので本物を使うことになる。そしてライセンスが重要になるというわけだ。

 ゲーム中のセリフやテキストについては,当初は日本語を各言語に翻訳していたが,やはりそれではうまくいかなかった。プロの翻訳者に依頼した場合,いわゆる「きれいな」言葉になってしまうので,ある程度のラフさが必要な”実況”には向かないそうだ。とくにPESはこの実況がウリのタイトルなので,この部分は非常に重要である。結局現在では,日本語の制作ラインと,それ以外の言語の制作ラインはまったく別になっているとのこと。むしろ特殊なのは日本語であることが分かり,こういう体制になったとのことだ。




 これらの失敗から多くの教訓を得てきたという寺田氏は,セッションの最後に,自身が世界で学んだこととして,以下の言葉を示した。

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  • 日本のサッカーは
  • 日本人の特徴を活かしたうえで
  • 海外の良さを取り入れ
  • 独自のスタイルを築くべきである

 偶然か必然か,これはサッカー日本代表チームが,しばしば言われていることと同じだ。
 海外の文化を踏まえずに日本人のセンスだけで作ってはだめ,逆に,海外のやり方をそのまま流用するだけでもだめ,そのことを,寺田氏はGDCなど海外のカンファレンスに参加することで感じたそうだ。

 失敗と,そこから得たものを踏まえた上で「当たり前のところに戻ってきた」と寺田氏は語る。実際にその国の人から声を聞き,それに応えていくこと。現在のPESのヨーロッパにおける確かな存在感は,そのような,ある意味当たり前の(だが実践するとなると難しい)努力の上に,築き上げられたものなのだ。
  • 関連タイトル:

    Pro Evolution Soccer 2011

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    ワールドサッカー ウイニングイレブン 2011

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