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新要素はあっても基本は“あえて”そのままに。PSPへ移植される「ユーディーのアトリエ」について,ガストの田中ディレクターに聞いた
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印刷2010/02/25 10:30

インタビュー

新要素はあっても基本は“あえて”そのままに。PSPへ移植される「ユーディーのアトリエ」について,ガストの田中ディレクターに聞いた

画像集#031のサムネイル/新要素はあっても基本は“あえて”そのままに。PSPへ移植される「ユーディーのアトリエ」について,ガストの田中ディレクターに聞いた

画像集#030のサムネイル/新要素はあっても基本は“あえて”そのままに。PSPへ移植される「ユーディーのアトリエ」について,ガストの田中ディレクターに聞いた
 先月末にお伝えしたとおり,ガストは4月8日(木)にPSP用ソフト「ユーディーのアトリエ〜グラムナートの錬金術士〜囚われの守人」(以下,ユーディー)を発売する。この作品は,2002年6月に発売されたPlayStation 2用ソフト「ユーディーのアトリエ 〜グラムナートの錬金術士〜」を,PSP向けに移植したもの。

 ゲームの詳細は先日掲載したニュースを参照していただくとして,本稿では,ディレクターとしてPSP移植を手がけたガストの田中 学氏へのインタビューをお届けしよう。
 ちなみにこのインタビューは,ゲーム情報誌「ゲーマガ」と合同で行ったもの。1月30日に発売された2010年3月号にも同じインタビューが掲載されているが,こちらはその完全版だ。

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ただの移植ではなく,新キャラクターなどの新要素も



――今回の移植は,いつ頃からスタートしたプロジェクトなんですか?

田中氏:
 2009年の4月頃ですね。私自身,ガストへ転職してきたばかりだったんですが,常務の井上(忠信氏)からいきなりユーディーのアトリエをPSPに移植しようという話が出て,私が担当することになったんです。

――PSPというプラットフォームも,井上さんが選んだんですか? アトリエシリーズは,ニンテンドーDSでもリリースされていますが。

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田中氏:
 ええ,決めたのは井上ですね。
 やはり,かつてPlayStation 2向けにリリースされたものをニンテンドーDSに移植しようとすると,作業量も膨大なものになってしまいます。そういう意味で,PS2に比較的近いプラットフォームであるPSPにしようという判断です。

――PS2からPSPへの移植は,やりやすいものなんですか?

田中氏:
 実際にはいろいろな苦労がありましたね。
 というのもユーディーって,PS2のスペックをフルに使っていたんですよ。そのプログラムを最適化していくのが,まずたいへんでした。
 あとはグラフィックスですね。画面のサイズも縦横比も違うので,ただそのまま移植しただけでは,とても見にくいものになってしまいますから。

――それらをきちんとクリアして,移植できたということですね。

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田中氏:
 ええ。例えばカメラワークだったり,スマクトラ盤,戦闘中のステータス表示なんかは,開発当初からずっといじっていました。
 とくに戦闘中のステータスは,表示しっぱなしだと敵や味方とかぶってしまって見づらいんです。そこをPSP版では,コマンド入力時のみに表示するように変更しています。

――プログラムだけじゃなくて,見た目の最適化も行ったと。移植にあたって追加要素も用意されているようですが,これらはいつ頃考えたんですか?

田中氏:
 当初は,そのままで移植しようという話もあったんです。でもこのご時世,それだけだとさすがに厳しいですから,何かしらの追加要素は用意したいとなったんです。
 実は私自身,移植を任された段階で初めてユーディーを遊んでみたんですね。で,遊び始めて1日や2日の段階で「要素を追加するなら新キャラクターだろうな」と考えたんです。

――新キャラクターを入れるとなると,既存コンテンツとの整合性をとるのが難しいのでは? とも思うんですが。

田中氏:
 やっぱり最初のうちは世界観やシナリオとの矛盾が生じたりしていましたね。でも開発を進めながら徐々に軌道修正して,最終的な形になりました。

――最も苦労したポイントはどこですか?

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田中氏:
 そうですね……。新キャラクターは,ゲームの後半から出てくる仕掛けになったんですが,当初は序盤から出てくるような案もありました。
 ただ技術的な課題があって,登場させるならば新規ダンジョンなり新規の場所なりを用意して,そこにキャラクターを投入するという方法をとらざるを得なかったんです。なので,そこに向けてシナリオの軌道修正をしなければならなかったあたりは,けっこう苦労しましたよ。

――ユーディーといえばマルチエンディングでしたが,エンディングの数は……?

田中氏:
 何らかのお楽しみが増えているかもしれません(笑)。
 PS2版では2周めになるとファクトア神殿の深い階層に潜れるようになるんですが,それと新キャラクターには何か関係があるかもしれません。これのヒントは,あちこちで少しずつ出しているので,ぜひ探してみてください。

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当時の難しさも,あえてそのままに



――ユーディーって,アトリエシリーズの中でもけっこう難しいというか,言ってしまうと面倒くさい部分がありますよね。例えばプレイ時間は無制限だけど依頼の締め切りが厳しかったり,アイテムが腐ったりといったような。このあたりも,そのままですか? 

田中氏:
 あ,そこは変えていません。そういった部分に手を入れたのは,ユーディーに対するプレイヤーからの意見を反映して翌年(2003年)リリースした,「ヴィオラートのアトリエ」からなんです。
 確かに今回,ユーディーを移植するにあたって手を入れたほうがいいのでは? と考えたこともあるんですが,ユーディーはこういった面倒くささや厳しさがあってこその作品だろうということで,あえてそのままにしてあります。

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――あえて,ですか。

田中氏:
 時間を気にしながら街を行き来したり,調合したりといった慌ただしさが,ユーディーの面白さでもあるんですよね。
 プレイ時間が無制限という点についても,そもそもユーディーって無限に遊び続けられるRPGという意味で評価されていた部分がけっこうあるので,それを終わりのあるRPGにする必要はないでしょうし。
 なので,ほぼかつてのまんまのほうがいいだろう,と。

――意図は理解できるんですが,かつてユーディーで遊んだ者としては,あのアイテムが腐るというシステムが,つらかったなぁと(笑)。

田中氏:
 やっぱり,腐るアイテムは腐った時点で諦めて捨てないとだめなんですよね。自分でせっかく作ったアイテムを捨てるのは残念なんですけど,そうしないとコンテナが「壊れたアイテム」であふれかえってしまいますから。

――そう,なんだか捨てたくないんですよ。

田中氏:
 壊れたアイテムを中和剤にすることもできるんですが,マイナスの要素も付加されちゃうんですね。腐りやすいとか,品質低下とか,破壊力低下とか。結果,中和剤を使って融合アイテムを作っていると,効果が低かったり,お店の評価も下がったりしてしまいます。
 だから壊れたアイテムはどんどん捨てて,常に新鮮なものを入手し,新鮮なままで維持しながら依頼をこなしていく……という流れを掴んでいくのも,ゲームだと思うんです。

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――確かにそこは理解できるんですが,難しくないですか?

田中氏:
 まあ全般的に難度は高めですね(笑)。
 ゲームが始まった瞬間から,何をすればいいのか分からなくて,とりあえず調合や採取をしているうちに,徐々に街の情報が得られて物語が転がり始めるといった設計ですので,仕組みを理解するまでにちょっと時間がかかりますし。

――最近の親切なRPGとは真逆ですね(笑)。

田中氏:
 そうですね。エンディングを迎えるために必要なアイテムを調合するにも,自分でレシピを見つける必要がありますし。そういう意味では,ハードルの高いゲームだとは思います。

――PSP移植にあたって,そのあたりのハードルを下げるようなことはしていないんですか? 例えば,難易度を選択できるようにするとか。

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田中氏:
 うーん,せいぜいアイテムが腐るまでの時間が長くなるとか,モンスターが弱くなるとか,そういった調整ぐらいしかできないと思うんですね。
 でも順調に依頼をこなしていけば,その過程でモンスターとの戦闘もありますし,レベルが上がっていきます。このサイクルで,ある程度以上レベルを上げていけば,ゲーム進行に支障を来すほど強いモンスターにぶつかるようなことはないんです。

――とはいえ,相当手こずるモンスターが出てくることもありますよね?

田中氏:
 ただそういう場所って,良い素材が採れたりもするんですよ。だから,良い素材を採るときには少し苦労してほしいなと。
 あまりに順調に進みすぎると,ただ採取に行って調合するだけになってしまいますし,それだとゲームを進めていく面白さに欠けると思うんですよ。

――確かにそうかもしれませんね。緊張感のない作業になってしまいそうです。
 ほかにも,HPとMPのほかにLPという概念がありますよね。あれによって戦闘が複雑になっている印象があります。


田中氏:
 ああ,それを見直そうかということも話には出ました。HPが高くてLPが低い敵が出てきたり,LPで攻撃したところにモンスターからLP攻撃を受けると死んじゃったりっていうのは,確かに複雑ですよね。
 でも,戦闘のバリエーションを増やしたり,調合アイテムを戦闘で使う意義を高めたりするうえで,HP/MP/LPという三つが重要になっているんです。
 これを整理して,例えばHPとMPだけにしてしまうと,戦闘のバリエーションも減りますし,調合アイテムも売る以外に用途がなくなってしまうんではないかと考えて,そのまま残しています。

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通勤通学の途中に,PSPのスリープ機能を活用して遊んでほしい



――ユーディーって,アトリエシリーズを第一作から遊んでいる人にとっては,難しさも含めてきちんと進化したものだとは思うんです。
 ただ,例えばPSPということで初めて触れる人や,PlayStation 3で「ロロナのアトリエ」だけを遊んだ人達にとっては,かなり異色の作品ですよね。そのあたりは,いかがお考えですか?


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田中氏:
 ロロナは,難度を上げずに幅広いプレイヤーに向けて作られたタイトルなんです。だからプレイしやすいですし,よっぽどヘマをしなければバッドエンドに終わることも,ほぼありません。
 一方,ユーディーってアトリエシリーズの第一完成形態の一つであり,看板タイトルでもあるんですよ。アイテム調合あり,戦闘あり,ダンジョンあり,キャラクターごとのイベントもありと,全部を盛り込んでいるんですね。そういう意味で,ほかのRPGとは違うということがすぐに分かってもらえるでしょうし。

――ええ。気に入った人は,きっと一発でトリコになるでしょうね。

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田中氏:
 ロロナは原点回帰をはかった作品ですが,ここ最近は,一般的なRPG路線を指向しているんですね。でも今回のユーディーでは,ロロナで初めてガストやアトリエシリーズを知った人に向けて,「こういうアトリエもあるんですよ」ということを伝えたいんですよ。

――では,初めてユーディーを手に取る人には,どんな風に遊んでほしいと思いますか?

田中氏:
 ユーディーのゲームシステムって,もともと短い時間ずつ,長期にわたって遊べるようなものなんですよね。当時はテレビの前に座って遊んでいただいていたと思いますが,携帯ゲーム機であるPSPに向いているんですよ。
 ぜひ,終わりのないRPGを,通勤通学の途中や忙しくないときにでも,少しずつ遊んでいただければな,と。PSPにはスリープ機能も付いていますから,これを活用すれば,より遊びやすくなると思いますし。

――では発売を楽しみにしています。ありがとうございました。

「ユーディーのアトリエ〜グラムナートの錬金術士〜囚われの守人」公式サイト

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