レビュー
ストーリー展開とマルチプレイの充実に注目。思いのほか遊びやすい本格アクションRPG
Fable III
本稿では,ムービーを交えつつFable IIIの魅力をお伝えしていくが,本題に入る前に,まずは過去作品と本作の簡単な導入ストーリーを説明しておこう。ゲームを楽しむために必須となる情報ではないものの,“英雄”や“王”の存在がキーワードとなるシリーズなので,そこだけでも押さえておくと,新規プレイヤーでもゲームを理解しやすいはずだ。
ある村が山賊の襲撃にあい壊滅した。主人公である少年は父を殺され,姉とも離ればなれになり,自らも命を奪われそうになるが,偶然通りがかった英雄に救われる。その後主人公は,英雄の所属する英雄ギルドでの教育を経て,青年へと成長。生き別れた姉を探す冒険の旅に出る……というのが,初代「Fable」の導入ストーリーだ。
続く「Fable II」の舞台となるのは,Fableの時代から数百年後のアルビオン大陸。英雄の血を引いているという理由から,理不尽にも姉を殺されてしまった弟が主人公だ。主人公は,不幸な境遇にくじけることなく英雄としての能力を開花させ,ほかの英雄達とも力を合わせつつ,姉の敵を討つために旅に出る。ちなみにこの主人公は,のちに国王としてアルビオンを統治した。
そして本作,Fable IIIの冒険の舞台は,IIから50年後のアルビオン大陸。亡くなった国王(Fable IIの主人公)に代わり,主人公の兄が国を治めている。主人公は,暴君として振る舞う兄王と対立し,クーデターを起こすことを決意。追っ手を振り切り味方を集めるため,アルビオン大陸とその周辺を駆け巡ることになる。
ちなみにFable IIでもFable IIIでも,プレイヤーは主人公の性別を選択することができるのだが,IIのセーブデータが残っていると,IIIでの“先代の王”の性別が,それに応じたものになる。筆者の場合は,IIを女性主人公でプレイしていたので,執事の台詞などが「母上様の統治の頃は……」といった具合に変更されていた(前作データがない場合,先代の王は男性)。
えらく細かい部分ではあるが,こういったところにもファンへのサービスが行き届いており,シリーズを遊んだ人なら特別な想いがこみ上げてくるかもしれない。もちろん,ゲームを攻略するうえで,過去作品の知識などは要求されないので,新規プレイヤーも問題なくストーリーに没頭できる。
「Fable III」公式サイト
システムの進化とその方向性
では何が特殊なのか。それは,ユーザーインタフェースが限界までシェイプアップされている点だ。
「こちら」の記事でも触れているが,Fable IIIの開発責任者であるピーター・モリニューは,機械的な操作や“ゲームゲームした”ウィンドウ表示などにより,ゲーム世界への没入が阻害されることを嫌っている。そのゲーム哲学は,Fableシリーズだけでなく,「Black & White」シリーズや「The Movies」などにも反映されているが,本作においてもそれは当てはまる。
そのほか,相手に与えたダメージも数値で表示されないし,森に生息する獣がお金を落とし,それを拾うような仕様も存在しない。武器やコスチュームを変更したり,ステータスを確認したりする際にも,世界設定に深く絡んでいる“聖なる間”へ移動することになる。新たな魔法や各種スキルを覚えたい場合には,聖なる間から(あるいはイベント進行上自動的に)“統治の道”へ飛ぶ必要があるという徹底っぷりだ。
目の前に存在する映像と耳に届く音声が,剣と魔法の世界そのものであり,それ以外のものは世界への没頭を妨げるというポリシーを徹底する一方で,「倒した敵はお金を落とすなどのRPGのお約束は,プレイヤーも理解しているだろうから問題ない」という,作り手の安易な決めつけを排除した結果が,Fable IIIというゲームの大部分に現れているように思える。
とはいえ,ゲームそのものの難度は決して高いわけではない。一度行ったことのある街などには,聖なる間を経由すれば一瞬で移動できるし,受けているクエストの目的地までの道のりが光のラインで表示されるので,道に迷うことはほとんどない。敵との戦闘に関しても,飛び道具や魔法が事実上使い放題なので,有利な状況で戦い続けることも比較的簡単だ。
戦闘システムは,従来作と同様アクション性の高いものになっており,剣やハンマーによる近接攻撃,ライフルや短銃による遠隔攻撃,そして魔法攻撃の三つを使い分けながら敵と戦う。敵と遭遇したら,接近される前に銃や魔法でダメージを与えたり,数を減らしたりしつつ,近づいてきヤツを近接攻撃で仕留めるのが基本だ。
ちなみに,銃や魔法は事実上使い放題なのだが,銃にはリロードのスキが,魔法には威力(効果範囲)をアップさせるためのタメが必要となる。加えて,近接/遠隔攻撃も,タメることで強力な一撃を繰り出すことが可能だ。それらをうまく使い分けつつ,自分にあったスタイルで敵と戦っていきたい。
敵を倒せば経験値に相当するポイントが得られるのだが,これは,クエストをクリアしたり,街の人々とふれ合ったりすることでも入手できる。というか,そのほうが効率が良い。前述したように,敵を倒してもお金が落ちるわけでもないし,経験値稼ぎのための戦闘というのも,ほぼする必要がない(近接攻撃/遠隔攻撃/魔法の熟練度は稼ぐ必要があるかも)。本作における戦闘は,降りかかる火の粉を払うための選択肢の一つ,もしくは純粋な腕試しとして存在しているわけだ。
ちなみにお金に関しては,宝箱から拾う,アルバイトをして稼ぐ,クエストの報酬として得る,不動産収入で賄う……といった具合に,現実的な選択肢が用意されている。敵との戦闘で,経験値/お金稼ぎが完結するたぐいのRPGしかプレイしたことのない人にとっては,かなり新鮮なゲーム体験が味わえるはずだ。
アクションとリアクションが生み出す自由度
Fable IIIというRPGの特徴を語るうえで,NPCとのコミュニケーション部分の紹介を欠かすわけにはいかない。アルビオンにはさまざまな職業のNPCが存在し,それぞれに与えられた役割に則って“生活”している。そして主人公は,ゲームの進行に応じて拡張可能となるさまざまなアクションを通じて,それらのNPCと交流できるのだ。
主人公とNPCとの関係性は,ゲームのさまざまな面に影響を与える。例えばNPCと仲良くなると,買い物のときに優遇してくれるかもしれないし,個人的なお願いごとをされるかもしれない。関係が深まれば,デートや結婚,ベッドイン,子作りまで可能である(ちなみに,本作には同性愛者のNPCも登場する)。
本作の大きな目的は,多くの味方を得て革命を成功させ,アルビオンに繁栄をもたらすことだ。NPCとの交流の結果や,ゲームの随所で迫られるさまざまな決断は,多かれ少なかれ,その後のストーリー展開に影響を及ぼす。ここをあまり意識しすぎてしまうと,作業的なゲームプレイに結びつくこともあるのだが,本作を遊ぶなら,ぜひ楽しんでもらいたい要素の一つだ。
進化した部分と,進化すべきだった部分
しかし今作では,ほかのプレイヤーのゲーム世界にどっぷりと入り込み,その世界に介入することが可能になっている。視点変更や移動にもほとんど制限がなく,まさにMORPGのような感覚で遊ぶことができるのだ。プレイヤーキャラクター同士の店舗の共同経営や結婚,出産まで可能になっている。もちろん,悪いことをしようと思えば,二人がかりで街の人々を虐殺することだってできる。この部分は,シリーズにおける正当進化と断言できる要素だ。
一方で,ややバグが多い点が(過去作同様)残念なところだ。とあるNPCが一切喋らなくなってしまったり,聖なる間からの瞬間移動に不具合が発生したり,フリーズしてしまったりといった症状を,筆者およびフレンドの多くが経験してしまっている(コミュニティサイトなどを見る限り,多くのプレイヤーが大小さまざまなバグに悩まされているようだ)。
ただし,これらの問題に対しては,現在,開発元が修正パッチを開発しているとのこと。この件に関してマイクロソフトに確認したところ,現時点で具体的なアップデート日時をアナウンスすることはではできないが,プレイヤーから寄せられた不具合情報はすべて関係部署/開発チームと共有しており,今後のアップデートを通じて順次改善していくとのことだ。プレイヤーは,マイクロソフトおよびLionhead Studiosの正式なアナウンスに注目しておこう。
シリーズならではの自由度と,より重厚になった物語性
国王生活の楽しさと辛さをたっぷりと味わおう
前作と比較した場合,ストーリー部分(というか主人公の役割)が重くなっていることもあってか,シリーズならではの“自由度”の部分は目立たなくなっている。NPCとのコミュニケーション要素に関しても,対象NPCの周囲にいるNPCにまでアクションの効果が発生したFable IIのほうが,「Fableらしい」という意見もあるかもしれない。
しかし,「あの約束を破ったら,その後の展開はどうなったのだろう」「善人プレイには飽きたから次は悪人プレイだ」といった具合に,プレイヤーを周回プレイに誘う魅力をしっかりと備えているのは,さすがピーター・モリニュー作品といったところだろう。
ともあれ,遊び方は若干変わったものの,長時間じっくりと楽しめる作品であることに変わりはない。シリーズファンも,本作で初めてFableシリーズに触れるという人も,ときに楽しく,ときに悲しい国王生活を,ぜひ味わってみてほしい。
「Fable III」公式サイト
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