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ブラウザゲーム激戦の真っ只中に専門ポータル「Webゲー」を展開した真意を,SeedC 代表取締役/プロデューサーに聞く
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印刷2009/08/21 10:30

インタビュー

ブラウザゲーム激戦の真っ只中に専門ポータル「Webゲー」を展開した真意を,SeedC 代表取締役/プロデューサーに聞く

画像集#026のサムネイル/ブラウザゲーム激戦の真っ只中に専門ポータル「Webゲー」を展開した真意を,SeedC 代表取締役/プロデューサーに聞く
 今,日本のオンラインゲーム市場では「Travian」や「ドラゴンクルセイド」を筆頭に,ブラウザゲームが注目されつつある。今年4月には,ベクターのブラウザゲーム専門ポータル「ブラゲタイム」が登場し,7月28日にSeedCでもブラウザゲーム専門ポータル「Webゲー」のサービスが開始されている(関連記事)。

 実のところ,ブラウザゲームはかなり歴史が古く,北米のMMORPGランキングでは「Runescape」が長らく上位に君臨しているし,日本でも「The Treasure of GENUM」や,インディーズの「SOLDOut」「箱庭諸島」といったタイトルが存在してきた。

 そんな中で,なぜ今改めてブラウザゲームなのか,実際の当事者がどのように考えているのかということは,気になる部分である。そこで今回,4Gamerでは「Webゲー」をスタートさせたばかりの,SeedC 代表取締役 崔 正浩氏,およびオンラインゲーム事業部 WEBゲームプロデューサー 山田 義貴氏の両名に,ビジネス的な側面やプレイヤーの反応はどうなのかなどを聞いてみた。

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ヨーロッパのタイトルを中心に半年で20本ものタイトルを投入する「Webゲー」


SeedC 代表取締役
崔 正浩
画像集#007のサムネイル/ブラウザゲーム激戦の真っ只中に専門ポータル「Webゲー」を展開した真意を,SeedC 代表取締役/プロデューサーに聞く
4Gamer:
 本日は,よろしくお願いします。7月28日に,Webゲーのサービスを開始しましたが,(8月6日インタビュー収録までの)反響などはいかがですか?

崔 正浩氏(以下,崔氏):
 実のところ弊社としては,まだプレオープンという位置付けなのです。したがって広告などを一切展開していないのですが,その割にはみなさんからの関心が非常に高く,また実際に多くのプレイヤーに遊んでいただけています。

4Gamer:
 出だしは好調そうですね。では,SeedCとしての正式なオープンというものは,いつ頃を考えているのでしょうか?

崔氏:
 10月になります。ブラウザゲームの運営は,弊社でも初めての試みですので,現在はLievoのコンテンツとして運営し,8〜9月は起こりうる問題の解決に費やします。そして,10月には完全に独立したポータルサイトとして展開し,見た目も変わる予定です。

4Gamer:
 起こりうる問題というと?

崔氏:
 順を追ってお話ししますと,今回は,ヨーロッパのコンテンツを中心に展開しています。2010年3月までに2週間に1本ずつ,計20本近くのタイトルを投入する予定です。多くはドイツの作品で,あとはハンガリーやブルガリアなどです。
 これまで弊社は,タイトルを探すときは韓国や中国を中心にやり取りしてきました。そのため,正直なところ,ヨーロッパの企業がどういった交渉をしてくるか把握できていない点が多いのです。そこで,もし何かあったときのために2か月の余裕を持たせることにしたのです。

4Gamer:
 なるほど,いわゆるビジネスマターの違いですね。

崔氏:
 はい。なお10月には,弊社が日本での完全独占販売権を持つタイトルをリリースします。それに正式オープンを合わせるという側面もあります。

画像集#014のサムネイル/ブラウザゲーム激戦の真っ只中に専門ポータル「Webゲー」を展開した真意を,SeedC 代表取締役/プロデューサーに聞く
選択できる民族は9種類,スキルの概念が存在し,政略結婚などの外交要素もある「Khan Wars」
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ブラウザゲームポータルの構想には1年半前から取り組んでいたSeedC。きっかけは酒の席!?


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4Gamer:
 そもそも,Webゲーではブラウザゲームをどう定義づけているんですか?

崔氏:
 いろいろ考えているところです。ダウンロードが必要なもの,あるいはFlashゲームなどを含めるのかどうかとか。今のところWebゲーでは,ブラウザだけで遊べるブラウザゲーム,そしてダウンロードが必要な,サイズは小さいけれど奥の深いゲームを扱うことにしています。

4Gamer:
 先ほど20タイトル以上の準備をしていると話していましたが,どういったジャンルのものがあるのでしょうか。

崔氏:
 育成モノやストラテジー,FPS,MMORPG……もちろん,放置しておけるタイプのゲームもあります。そういったように,多様なジャンルのものを集めたブラウザゲームのポータルを目指しています。

4Gamer:
 それだけのジャンルがあれば,多くのプレイヤーの嗜好に訴求できますね。それにしても,2週間に1本というのは,かなりハイペースですね。

崔氏:
 先手を取りたいんです。……まあ,実際のところは,もう先手を取られている状態ですが(笑)。

4Gamer:
 ここであえてお聞きしておきたいのですが,“先手を取られている”とお話されたとおり,今,日本のパブリッシャ各社はブラウザゲームに注目していますし,実際にユーザーから評価されているタイトルも出てきています。いわば激戦区状態ともいえるこのタイミングで,なぜ,ブラウザゲームに参入しようと考えたのですか?

崔氏:
 実はベクターの梶並社長と親しくさせていただいていますが,以前二人で酒を飲んでいて,「これからはブラウザゲームの時代だ!」と盛り上がっていたんです。そんな経緯もありまして,ベクターさん同様に,弊社も2008年の年明けからブラウザゲームに関しては,ずっと水面下で活動していたんです。

4Gamer:
 なるほど,つまり流行っているからと,昨日今日参入を決めたというわけでなく,かなり以前から着手していたわけですね。

崔氏:
 はい。社内では,私を含めてかなり本格的に取り組んでいました。弊社の事情で,Webゲーのプレオープンは2009年7月になってしまいましたが,この1年半はヨーロッパや中国のデベロッパと交渉を重ねてきました。なので,お話ししている20本に関しては,非常にクオリティの高い形でみなさんに提供できます。

4Gamer:
 スタートは遅れたけれども,時間をかけているぶん土台がしっかりしている,と。

崔氏:
 そうです。ローカライズも50%以上終わっていますし,ユーザーの反応を見ながらどういった順番で投入するかということもできるでしょう。
 ……8年前は,オンラインゲームとは何かも分からないまま事業を始めたのですが,Webゲーはしっかりとした準備のもとで展開できています。

4Gamer:
 ちなみに,企業としてブラウザゲームのどこに魅力を感じたのですか?

画像集#003のサムネイル/ブラウザゲーム激戦の真っ只中に専門ポータル「Webゲー」を展開した真意を,SeedC 代表取締役/プロデューサーに聞く
崔氏:
 Webゲーのキャッチフレーズに掲げているとおり,“簡単手軽!”という点に尽きます。私はブラウザゲームによって,オンラインゲーム市場を広げられると考えています。今まではPCのスペックが低い,ネット回線が弱い,時間がないといったことからオンラインゲームを敬遠していた人も,ブラウザゲームなら誰でも遊ぶことができます。
 また,現在の日本のオンラインゲーム市場は,全体売上の9割以上を18〜32歳のユーザーに頼っているという,おかしな状況になっています。しかし,ブラウザゲームによって,オンラインゲームを遊ぶハードルを下げ,そのレンジを広げることができれば,オンラインゲームとの相互間の活性化が望めるでしょう。
 ユーザーから見れば簡単手軽にゲームが遊べる,企業から見れば新しい市場を開拓できるというわけです。

4Gamer:
 プレイヤーにとっても企業にとってもメリットがあると,お考えなわけですね。

崔氏:
 ええ。また企業から見ると,通常のオンラインゲームより少ない回線とサーバーで同時接続者数3000人が実現できます。実質,通常のオンラインゲームの10分の1程度の費用で済みますので,できた余裕でイベントを開催するなど,プレイヤーに還元できると考えています。

画像集#022のサムネイル/ブラウザゲーム激戦の真っ只中に専門ポータル「Webゲー」を展開した真意を,SeedC 代表取締役/プロデューサーに聞く
善と悪に分かれた二つの勢力に所属し,プレイヤーキャラクターを成長させながら,ほかのプレイヤーと対戦してランキング上位を目指す,SFがテーマの「FREEDOM RESIST」
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携帯機に対するブラウザゲームの強みは,ユーザーと運営が協力して内容を作り上げていく点


4Gamer:
 それでは少し視点を変えましょう。日本では簡単で手軽なゲームといえば,すでにニンテンドーDSに代表される携帯ゲーム機用のタイトルが普及しています。そんな中で,なぜ,あえてPCで遊ぶブラウザゲームなのでしょうか? そして,実際にブラウザゲームのプレイヤー人口は増えつつあります。これはどのような理由があると考えられますか。

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崔氏:
 会社を立ち上げた2002年にも,日経をはじめとする経済関連の記者から同様の質問を受けたことがあります。「日本にはコンシューマゲームの大きな市場があるのに,なぜオンラインゲームを展開するのか? なぜ成功すると思えるのか?」と。
 今,まさにブラウザゲームと携帯ゲーム機の関係が,同様の状況になっているといえます。PCやゲーム機の普及率などいくつかポイントはありますが,一番大きなものとして,オンラインゲームとは“ユーザーと運営が作り上げていくもの”という点が挙げられます。
 クリアしたらそこで終わりというものではなく,プレイヤーの意見を受けて次々にカスタマイズできる。そもそもの規模はコンシューマゲームより小さいかもしれませんが,オンラインゲームは自分達の手で育てていける。その違いが,人口の増加につながっていると私は考えています。もちろん,ブラウザゲームも同様です。

4Gamer:
 では,今の日本でブラウザゲームを選ぶプレイヤーは,具体的にどのような傾向を持っているのでしょう?

崔氏:
 Webゲーに関していうならば,まだプレオープンして10日ですから分析は難しいですね。マーケティング的には既存のオンラインゲームプレイヤーが半分,先ほど挙げたハードルのせいで手を出せなかったプレイヤーが半分と考えています。後者は市場を広げる新規ユーザーというわけです。
 具体的な数字は私も知らないのですが,他社さんの話を聞いた限りでは,ブラウザゲームで広告を出すと,普通のオンラインゲームで広告を出した場合よりもかなり多くの人が集まるそうです。その数字は明らかに既存のオンラインゲームユーザーの範疇を超えているとのことですし,体感ベースではありますが弊社のWebゲーでもそういった傾向は感じ取れます。

4Gamer:
 つまりブラウザゲームだから遊ぶという,これまでとは違う新規プレイヤーが生まれつつあることが,すでに手応えとして感じられているわけですね。ですが,そういった新規プレイヤーは,ゲームを,深く入れ込む必要のない娯楽の一つとして捉えているかもしれません。
 例えば流行の漫画やテレビ番組,あるいはスポーツと同列に。そういった場合,「学校や職場で流行っているから,オレもやってみるか」というような流れで,入っていく人も多いと思います。こうした流れと,ブラウザゲームは果たして相性がいいのでしょうか?

オンラインゲーム事業部
WEBゲームプロデューサー
山田 義貴
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山田義貴氏(以下,山田氏):
 Webゲーというポータルは,トランプのような存在になると思うんですよ。誰でも持っているPCでいろんなゲームを遊ぶことができて,あるゲームにはあまり興味がない人にも,別のゲームを紹介して「やってみない?」と勧めることができます。そういう意味では,学校や職場など既存のコミュニティにおける流行との相性は悪くないはずです。


4Gamer:
 なるほど。トランプのカードが,ネットに繋がったPCに代わったといった感じですか。

山田氏:
 ええ。新規ユーザー開拓という点で,まったく問題ないと言えます。

崔氏:
 これまでのオンラインゲームは,始めるまでに手間が掛かるという欠点があります。弊社の「WarRock」だと,誰かに「やってみない?」と誘われても,まず巨大なデータをダウンロードしなければなりません。やろうと思った瞬間に始めることができないんです。ところがブラウザゲームなら,目の前にPCがあって,インターネットに接続されてあれば,そのハードルはほとんどありません。そういう意味では,広がりやすいですね。
 ……ハードルといえば,料金もそうです。オンラインゲームだと,プレイヤーによっては,多ければ1か月に数万円分を使う方もいますが,ブラウザゲームは……言ってみれば“薄利多売”がデザインの基本なのです。つまり,一人当たり,月数百円から多くても1000円くらいがターゲットになり,その代わり,多くのユーザー獲得を目指す必要があります。

画像集#028のサムネイル/ブラウザゲーム激戦の真っ只中に専門ポータル「Webゲー」を展開した真意を,SeedC 代表取締役/プロデューサーに聞く
「KNIGHT FIGHT」は,「FREEDOM RESIT」と同じシステムのゲームだが,ファンタジーがテーマになっている
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ボードゲームを軸に発展したヨーロッパ圏と,3Dグラフィックスに特化した東アジアの“クロスオーバー”


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4Gamer:
 先ほど話が出ましたが,市場には競合他社がひしめきつつある状態です。その中で,どのように差別化を図っていきますか?

崔氏:
 最大の差別化となるのは,2010年3月までに出揃う20本のタイトルですね。また,集中的に資本を投下して,量だけでなく質を高め,露出も増やします。世界的に有名なタイトルもありますので,かなりの差別化になると考えています。普通に考えると,半年で20本リリースというのは相当な無茶ですが,それが可能になるだけのタネを蒔いてきたと自信を持って言えます。

4Gamer:
 なるほど。

崔氏:
 あとはそれに伴う露出ですね。同じジャンルである程度の水準に達したゲームなら,どのポータルのゲームも大きな差を生み出しにくいですから,「面白いゲームがWebゲーに集まっている」という印象を,どこまで作れるかが鍵になります。

4Gamer:
 当然ですが,ほかとは違ったゲームも必要になると。差し支えなければ,サービス予定のタイトルを教えてください。

崔氏:
 まず,独InnoGamesの「Trival Wars」です。部族間で戦争をするもので,これは世界的にヒットしており,東アジアでは韓国でも成功しています。これを9月半ばにリリースします。
 また,詳しいタイトルは今いえないのですが,独BIGPOINTから5本を予定しています。BIGPOINTは,世界でもトップクラスのブラウザゲームパブリッシャです。

4Gamer:
 確かに実績のあるタイトルばかりですね。

崔氏:
 そのほか,弊社でも開発ラインを二つ持っています。日本と韓国で1本ずつ開発していて,そのうち1本は年末のリリースを予定しています。まだあまり詳しくお話できないのですが,今までにないジャンルです。

4Gamer:
 パブリッシングだけではなく独自の開発も行っていくわけですね。今までにない……というのは,どのようなものなのでしょうか。

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山田氏:
 育成モノに大富豪の要素を足したような……。自分で作っていて,どう説明すべきか迷いますね。近いうちに詳しくお話できると思います。

4Gamer:
 分かりました。楽しみにしています。

崔氏:
 ブラウザゲームは,半年に1本のペースで開発できますから,2ラインで年間4本できる計算です。Webゲーでリリースするだけでなく,ヨーロッパへの展開も考慮に入れています。

4Gamer:
 なるほど,輸出も考えているのですね。では,ブラウザゲームは,ヨーロッパを中心に世界的に流行していますけれども,ビジネス的にどのような状況になっているのでしょうか。

崔氏:
 ブラウザゲームは,ドイツを中心に,ヨーロッパ,アメリカで完全にビジネスとして成立しています。それこそBIGPOINTは年間100億円近い売上を出しています。これは日本のトップクラスのオンラインゲームパブリッシャ並みですね。
 またヨーロッパにおけるオンラインゲームの起点は,伝統的なボードゲームをオンライン化することでした。そのため,ブラウザゲームが発展したんです。その一方で,日本/中国/韓国といった東アジアでは,まったく別の形でオンラインゲームが発展しました。
 そして,それぞれが成長・発展していった結果として頭打ちになっていたのですが,今,ヨーロッパと東アジアでクロスオーバーして新しい流れが生まれているのです。ヨーロッパのブラウザゲームがこうして日本や韓国にも展開するようになった一方で,ヨーロッパには韓国NHNや韓国NEXONなどのオンラインゲームが進出しているんですよ。お互いに,これまでなかったものに飛びついている状態なのです。

4Gamer:
 なるほど。個々の事例としては4Gamerでもニュースとして取り上げたりしますが,こうやって関連付けて考えると,また違った見解が生まれますね。

崔氏:
 「Travian」の成功を受けて,どの国でもブラウザゲームが盛り上がっていますし,日本でもそうなると確信を持っていますよ。まあ企業のトップは,常に確信を持っていて当たり前の存在ですけれども(笑)。

4Gamer:
 代表取締役が「ブラウザゲーム……どうなんだろう?」とかいってたら,社員は戸惑いますね(笑)。

崔氏:
 まったくそのとおりです(笑)。韓国NCsoftも,あれだけヒットタイトルを抱えて,世界的に見ても儲かっているのに,ブラウザゲームのサービスを始めました。そして,Webゲーを立ち上げてからは,弊社にもいろんな会社から問い合わせが来るようになりましたよ。



自国で成功した手法を変えようとしないのはヨーロッパもアジアも同じ!?


4Gamer:
 それでは,そのほかのWebゲーの展開について教えてください。

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山田氏:
 はい。まずは,すでにLievoでサービスしている3タイトルのブラウザゲームのうち,「FREEDOM RESIST」が8月中に正式サービスを開始します。それに合わせたアップデートを行うのですが,内容に関しては追って発表します。

崔氏:
 そういえば「KNIGHT FIGHT」は,今まで日本にあまりなかったゲームで面白いんですよ。実は私がローカライズを手がけているんですが,作業しながら凄くハマってしまいました。山田もハマっています。

山田氏:
 メインとなるPvPが面白いんです。操作としてはキャラクターのステータスをいじって,武器を装備させたりするだけです。あとは1〜12時間の間で任意の時間を設定すると,不特定多数の相手と勝手に対戦し,時間が経過するとその結果を見ることができます。
 これだけだと面白くないように思えるかもしれませんが,勝ち方にも負け方にもロジックがありますので,それを紐解いてステータスを調整したり武器を変えたりするわけです。毎日それを積み重ねて,勝率を上げるためにプレイヤーごとの戦略や育成方法を構築していくんです。無数のプレイヤーがいてそれぞれ相性がありますから,どれが正解というのもないので,日々続けていくわけです。それに伴って装備できるものも増えていきますので,また異なる戦略や育成方針が生まれるんですよ。

4Gamer:
 まさにボードゲームをオンライン化したイメージですね。

山田氏:
 そうですね。“大人のゲーム”という感じです。ただ,面白さを伝えるのが難しいので,苦心しているところです。

4Gamer:
 3本目の「Khan Wars」はどうでしょう? 何か予定はありますか?

山田氏:
 もともと半年ごとに大きなアップデートをやる予定のタイトルなのですが,次回は「日本民族」の実装が決定しました。

崔氏:
 これは弊社が打診したわけではなく,カルチャライズの一環として開発・運営のXS Softwareから提案があったんですよ。
 そういえばXS Softwareは,最初はブルガリアの自社にサーバーを置いて運営したいと主張していたんです。当然,弊社ではラグなどが発生してゲームにならないと伝えたのですが,一度やってみてから考える,と。もちろん日本プレイヤーのみなさんの反応は弊社の予想どおりでした。それを見て,サービス開始直後にXS Softwareから日本にサーバーを設置することを打診してきました。その間,わずか3日でした。

4Gamer:
 それは素早い決定ですね。

崔氏:
 ええ,問題が発覚したときの対応は早いですね。XS Softwareでは,それまで自社以外にサーバーを置いた経験がなかったそうで,どういう問題が起きるのかを予測,イメージできていなかったらしいんですよ。内容は違いますが,InnoGamesもBIGPOINTも「日本はこうなんだ」と説明しても,最初は自分達がやって来た方法を変えようとしない部分があります。
 まあ,これはヨーロッパに限らない話です。2002年からこれまでに,韓国のデベロッパに対して「日本では露骨なPKは受けない」と,何度説明してもなかなか理解してもらえなかったことを思い出します。

4Gamer:
 うーん,日本の大手ゲームメーカーが海外に進出したときにも,似たような話がありました。日本で売れた手法をそのまま他国に持ち込み,あまり上手くいかなかったということは少なくありません。

崔氏:
 誰しも成功した方法を変えようとは思い至りませんからね。他社さんも,ヨーロッパのデベロッパと交渉するときは苦労する,もしくはされていると思いますよ。

4Gamer:
 文化の違いなどもあり,やはりいろいろと大変ですね。それでは,Webゲーの中長期的な展開を教えてください。

崔氏:
 そうですね,Webゲーをブラウザゲームの情報源として,何らかの役割を果たせるようにならないかと考えています。

4Gamer:
 情報源ですか。それは,ブラウザゲームの紹介といった感じでしょうか。

崔氏:
 ええ。日本にもブラウザゲームが浸透してきたとはいえ,まだ情報源の大半は英語です。そこでもっと分かりやすい形で紹介していけたらと考えています。

4Gamer:
 Webゲーでサービスを行うだけではなく,海外でサービス中のブラウザゲームなどを広く知ってもらうものということでしょうか。なるほど,本来的な意味でのポータルサイトを目指すわけですね。

崔氏:
 そうです。

4Gamer:
 分かりました。では最後に,4Gamerの読者に向けたメッセージをお願いします。

山田氏:
 見たり聞いただけでは分かり辛いですが,実際にプレイすれば面白いので,まずはプレイしてみてください。ブラウザゲームが個人の生活に組み込まれて,日課的にやっていただけるようになるのが理想です。サボテンを育てるように,思い出したときに水をあげるような感じでプレイしてほしいです。

崔氏:
 私のいいたいことは「簡単手軽!」に集約されます。今まで体験したことのない面白さを,ぜひ簡単に,手軽に味わってください。

4Gamer:
 本日は,ありがとうございました。

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 インタビューを読んでもらえば分かるとおり,今回は,SeedCの取り組みだけに留まらず,最近のブラウザゲームにまつわる話をいろいろ聞かせてもらった。崔氏の応答からは,ヨーロッパのブラウザゲーム事情に精通しているだけでなく,日本でどう展開すれば成功するのかまで熟慮している様子がうかがえ,なかなか興味深い内容になったのではないだろうか。

 また日本でブラウザゲームを展開するにあたり,崔氏はどこかに“萌え”の要素を入れられないかと提案したそうだが,それは山田氏をはじめとする社員に却下されたという。山田氏曰く,無理にそういった要素を持ち込もうとすると中途半端になり,純粋なゲームファンからも,“萌え”好きな人からもそっぽを向かれるだろう,とのことだった。2010年3月までに展開するゲームに関して,山田氏はまずゲームそのものが好きな人に訴求し,それが多くの人に広がっていくことを意識しているのである。

 ならば,SeedCの自社ラインでは,最初から“萌え”要素を盛り込んで開発できるのでは? と聞いてみたところ「もしやるんだったら,そっちですよね」という答えが返ってきた。何はともあれ,SeedCはWebゲーの展開に関していろいろと面白いことを考えているようなので,今後の発表に期待したい。

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