PlayStation 3用アクションアドベンチャー
「Uncharted 2: Among Thieves」(邦題,
アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団)は,言わずと知れたソニー・コンピュータエンタテインメントのヒット作。GDC 2010で開催されたGame Developers Choice AwardsでもGame of the Year賞を受賞しており,ユーザーだけでなく,開発者達にも認められた作品だ。
そもそもどんなゲームなのかといったことは,以前掲載した
「極私的コンシューマゲームセレクション」で確認してほしいが,とにかく圧倒的なスケールで,よくいわれるように「映画の一場面をプレイする」ような感覚が楽しめる。グラフィックス,サウンド,ストーリーなど,すべてが高い次元で融合しているゲームで,GDC 2010でもさまざまなテーマで,七つもの関連レクチャーが行われている。その中から,本作のムービーシーンのメイキングにスポットを当てたレクチャー
「Behind the Scenes:UNCHARTED 2's Unique Cinematic Production Process」の内容をお伝えしよう。
Naughty Dog Creative DirectorのAmy Hennig氏
![画像集#002のサムネイル/[GDC 2010]何でもないシーンにも贅沢なモーションキャプチャーを。やっぱり「Uncharted 2:Among Thieves」には大金がかかっていた](/games/093/G009300/20100312070/TN/002.jpg) |
レクチャーは,ムービーシーンのキモになるストーリー作りに関する説明から始まった。本作のメインキャラクターは,ほぼすべてのシーンがモーションキャプチャーを使って撮影されており,キャラクターのボイスアクターが,センサーだらけの服を着て動き回ったのだという。ゲームのムービーシーンということで,その場のフィーリングでちょっと脚本をいじるというようなことは行われず,すべてが綿密な計画に沿って進められた。映画やドラマであれば,役者の体調が優れないとか,実際にやってみようと思ったアクションが難し過ぎたといった理由で,臨機応変に撮影内容を変えることがある。だが,ゲームならその心配はいらないというわけだ。
以前から本作のムービーシーンが,モーションキャプチャーを駆使して作られていることは明言されていたが,個人的に意外だったのは,「向かい合って座ってしゃべる」といったごくありふれたシーンでさえも,実際に役者が演じて,そのモーションが取り込まれていたという事実だ。てっきり,表現の難しい複雑な動きだけを撮影するのだと思い込んでいたが,違ったようだ。
また,トラックやジープに乗ったり,ほかのキャラクターよりも高い位置にいたりするシーンは,スタジオにセットを作り,それを利用して撮影が行われた。セットといっても見た目は適当で,寸法だけがリアルに再現されているものだ。トラックに乗り込んで運転席に移動する場面などは,妙に人間臭い動きだと思っていたが,その理由が分かってすっきりした。
実際には頭の上で行われていたが,ゲームでは顔の前になった
![画像集#001のサムネイル/[GDC 2010]何でもないシーンにも贅沢なモーションキャプチャーを。やっぱり「Uncharted 2:Among Thieves」には大金がかかっていた](/games/093/G009300/20100312070/TN/001.jpg) |
もちろん,単にありとあらゆるシーンのモーションを取り込んだからといって,ムービーシーンが素晴らしくなるわけではない。取り込んだ映像にCG技術を駆使すれば,ポンとハイクオリティのムービーができるわけもなく,さまざまな工夫がなされている。例えば,同じシーンでも必ず数テイク撮るのだが,部分単位で動きのよかったモーションを利用したり,モーションを取り込んだあとで,より良い動きのモーションにするために,手動で調整を行ったりしたのだそうだ。せっかく取り込んだ動きを調整してしまっては,意味がないのではないかと思うかもしれないが,その場の雰囲気やキャラクターの感情を表現するためには,そういった作業も必要になってくるのだろう。
Naughty Dog Cinematic Animation LeadのJosh Scherr氏
![画像集#003のサムネイル/[GDC 2010]何でもないシーンにも贅沢なモーションキャプチャーを。やっぱり「Uncharted 2:Among Thieves」には大金がかかっていた](/games/093/G009300/20100312070/TN/003.jpg) |
イタリアルネサンス期の彫刻家,ミケランジェロが作ったダビデ像は,実際に人をもとにした型に石膏を入れて作った像よりも,人間らしいとよく言われる。また,映画の効果音なども,そのままの音よりも,人間がイメージしやすい音を作り出して収録されている。実際のものと,人がイメージするものにはどうしてもギャップが生じるので,微妙に手を加えたほうが,より本物っぽくなるのだという。まあ,そんなことは分かっていても実現できない開発会社が多いのだが,本作に関しては,Sony Computer Entertainmentからしっかりとした資金援助がなされていたようだ。
本作がヒットしたことを考えると,次回作が予定されていてもおかしくはない。そうなればさまざまな面で,本作の上を行くものが求められるわけで,さらにお金がかかることをやってくる可能性が高い。
例えば,今回のモーションキャプチャーでは,指先の動きは取り込まれていない。もちろん指先の動きを取り込んだからといって,ゲームが格段に面白くなるわけではないが,世の中に一つくらい,バカらしいくらい徹底的にお金をかけて,こだわりまくって作られたゲームがあってもいいとは思う。次回作の話は噂レベルでしかないのだが,発売されれば当然遊びたいし,状況が許すのであれば,またGDCでメイキングの話などを聞きたいものだ。
モーションキャプチャー収録時に撮影された写真。そのまま表は歩けない専用スーツの着用が必要。なんだかまぶしそうだ
![画像集#004のサムネイル/[GDC 2010]何でもないシーンにも贅沢なモーションキャプチャーを。やっぱり「Uncharted 2:Among Thieves」には大金がかかっていた](/games/093/G009300/20100312070/TN/004.jpg) |
車を運転しているシーン。ゲームの中だと格好よかったが,この姿はちょっと恥ずかしい気もする。ちなみに分かっていると思うが右側がゲームのシーンだ
![画像集#005のサムネイル/[GDC 2010]何でもないシーンにも贅沢なモーションキャプチャーを。やっぱり「Uncharted 2:Among Thieves」には大金がかかっていた](/games/093/G009300/20100312070/TN/005.jpg) |
![画像集#006のサムネイル/[GDC 2010]何でもないシーンにも贅沢なモーションキャプチャーを。やっぱり「Uncharted 2:Among Thieves」には大金がかかっていた](/games/093/G009300/20100312070/TN/006.jpg) |