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印刷2010/09/13 15:41

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海外ゲーム四天王 / 第59回:「Amnesia: The Dark Descent」

海外ゲーム四天王 〜戦うおじさん〜
第59回:今週の物忘れ:「Amnesia: The Dark Descent」
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 「物理エンジンをフィーチャーした,一人称視点のホラーアドベンチャー」を作り続けるスウェーデンのゲームデベロッパ,Frictional Gamesの,ファン待望の完全新作「Amnesia: The Dark Descent」で背筋を凍り付かせてもらおうというのが,今週の「海外ゲーム四天王」だ。わー,怖い。
 典型的な,ここはどこ? 私は誰? テーマの作品で,暗いところが苦手で武器さえ持っていない主人公が,やたらと暗くて凶暴なクリーチャーが徘徊する謎の城を探索するという,まさに踏んだり蹴ったりの一本。ちなみにAmnesiaとは……えーと,なんだっけ。そうそう「記憶喪失」「健忘症」という意味。
 そんな本作を,えーと,誰だっけ。ああ,そうそう,「人生そのものがホラーアドベンチャー」と語るライターの朝倉哲也氏が紹介する。

記憶を失った主人公が,暗くて不気味なお城を探索 暗いところは苦手だわ,武器はないわで,前途多難だわ

 

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 人気のない,荒れ果てた城の一室で目を覚ましたDaniel。ここはどこで,自分はなぜこんなところにいるのか? すべてが謎のまま,城からの脱出を目指して探索を続けるDanielだが,その城には恐ろしい秘密が隠されていた……というのが今週の「海外ゲーム四天王」がお贈りするホラーサスペンスアドベンチャー,「Amnesia: The Dark Descent」(以下,Amnesia)だ。

 本作を開発したFrictional Gamesは,スウェーデンに本拠を置くデベロッパ。制作第一弾の「Penumbra」は,当初は独自に開発したゲームエンジン“HPL Engine”の技術デモとして2006年に無料でリリースされたが,2007年に「Penumbra: Overture」として正式に発売された。じわじわと迫る恐怖感の演出はホラーゲームファンの心をわしづかみにし,その後「Penumbra: Black Plague」「Penumbra: Requiem」が続けて発売され,独自のホラーワールドを築き上げた。ファンの評価の高いデベロッパである。
 そんなFrictional Gamesの新たなIPとして開発されたAmnesiaは,プレイヤーが一人で城の中を自由に探索し,襲い来るクリーチャーをかわしながら謎を解き明かすという内容で,Penumbraシリーズと同様,アドベンチャーゲームとしては珍しい一人称視点の採用と,物理エンジンをフィーチャーしたパズルが特徴になっている。

 

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 W/A/S/Dキーで移動,SpaceキーでジャンプなどFPSライクな操作に加えて,画面中央のポイントが,動かせるオブジェクトの上などでは手の形に変化するというゲームシステムが採用されている。手に取れるオブジェクトなどは,掴んで動かすだけでなく,角度をグリグリと変えて眺めたり,放り投げたり,引きずって動かせるほか,机の引き出しや扉などは,マウスでドラッグすることで開閉するというように,物理エンジンによるダイナミックな操作が可能なのだ。

 

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 ゲームは,Danielが城の一室で目を覚ますところから始まる。真夜中のようだが,窓からは月明かりがさし込み,かろうじて周囲の状況は見分けがつくといった状況だ。自分がなぜここにいるのか,ここはどこなのかはまったく知らされないまま,床につけられた血痕らしきものを追って,城の中の探索をスタートすることとなる。
 探索を続けていくうちに見つけ出した細切れのさまざまな情報により,どうやら自らが特殊な薬品を飲んで記憶を消したことや,この城の地下聖堂にいる人物を殺さねばならないことなどが分かってくる。
 このあたりは,ホラーアドベンチャーゲームではオーソドックスともいえる設定だが,本作らしいのは主人公がヒーローではなく,むしろいろいろなウィークポイントを持った普通の人間だということ。城に閉じ込められているという異常な状況から,Danielは恐怖に対してとても敏感で,とくに暗闇を恐れている。そのため,暗い場所での探索を長い間続けていると,彼の正気が次第に失われてしまうのだ。正気が失われるにつれて画面が震えだし,やがてゆがみ,まともに歩けないような状態となる。そして,最後には狂気に捕らわれてゲームオーバーとなるのだ。

 

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 これを防ぐには,明るい場所に出るしかない。明るい場所にしばらくいると次第に正気を取り戻し,やがて正常になる。とはいえ,城の中は暗い場所ばかりで,月明かりのさし込むような窓も少ない。したがって,オイルランプを使うか,城内のそこかしこにあるろうそくやたいまつに火をつけながら移動するということになるわけだが,手に入るオイルランプの燃料や,火をつける火種が限られているところがミソだ。

 ろうそくやたいまつを持っての移動はできないため,たとえ火をつけて明るくしても,その周囲しか効果が及ばない。また火種も,一回使い切りのものが,たまに見つかる程度なので,やたらめったに火をつけるわけにはいかない。オイルランプは持って歩けるが,補充するためのオイルが少ないうえ,消費が激しく,火をつけっぱなしにはできない。という感じで,いつどこで明かりをつけるかの判断がとても重要になるのだ。
 これはとても面白いシステムで,暗闇の恐怖感を巧みに演出しているといえる。

 

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 ホラーものには付きもののクリーチャーも,当然ながら登場する。上記のようにDanielは普通の人だし武器などもないので,クリーチャーと出会ったら,物陰に隠れてやり過ごすか,一目散に逃げるしかない。クリーチャーはかなり強く,数回の打撃を受けるだけでゲームオーバー。体力を回復するアイテムもあるにはあるのだが,これまたほとんど手に入らないため,結局はクリーチャーを見かけた途端に逃げ回ることになる。

 

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 やがて,ゲーム中に見つかる手記などから,Danielが「オーブ」と呼ばれる古代のレリックを探してアフリカの砂漠やプロシアの森林などを旅していたこと,原因不明の悪夢にうなされる日々が続いていたこと,Alexanderという謎の人物がカギを握っていることなどが少しずつ判明し,物語は佳境へ向かっていくこととなる。

 

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 格別に美麗なグラフィックスではないし,凝ったストーリーというほどでもないが,暗闇の中を恐る恐る探索するという恐怖の演出が非常に優れている。背後で扉が開いてハッとしたり,いきなり過去の記憶がフラッシュバックしたりなど,あの手この手で恐怖を煽る腕前は,さすがにホラーゲーム一筋のFrictional Gamesだ。Penumbraシリーズに比べてパズルの難度は低めで,また操作方法やユーザーインタフェースなどもシンプルになったため,ビギナーでも十分楽しめるはずだ。興味のある人は,まずは「こちら」に掲載したデモ版をプレイして,恐怖の一端を味わってみよう。

 

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  • 関連タイトル:

    Amnesia: The Dark Descent

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    Amnesia: The Dark Descent

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