インタビュー
「League of Legends」の日本サーバーは「桜の咲くころ」に開設予定。ライアットゲームズのディレクターにインタビュー
本イベントは,オーストラリア・メルボルンで開催されたLeague of Legendsのオールスターイベント「International Wildcard Invitational All-Star」(IWCA)の様子を会場の大画面に映し,日本代表チームの活躍をパブリックビューイングで応援しようというものだ。10:00開場という早い時間からのスタートにも関わらず,会場には多くのプレイヤーが詰めかけ,イベント終了時刻まで人が絶えない状態が続いていた。
会場には,ライアットゲームズのディレクターである齋藤亮介氏も来場しており,日本サーバーの稼動に向けた今後の展望について話を聞くことができた。以下にインタビュー記事として掲載するので,日本サーバーを待望しているプレイヤーはぜひ目を通してもらいたい。
日本サーバーの開設は「桜の咲くころ」を予定
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。まずは齋藤さんが,ライアットゲームズでどういった仕事をしているのかを教えてください。
ライアットゲームズには今年の9月に入社し,ディレクターというポジションで,主にパブリッシング関連の責任者をやっています。ライアットゲームズにはもう1人ディレクターがおり,ローカライズやサポート,システム周りはそちらが担当します。ライアットゲームズは,前社長が今年の始めに退社してしまい,現在はディレクター2人ですべての意思決定をしているという状態になります。
4Gamer:
ライアットゲームズでは,何人ぐらいの人が働いているんですか?
齋藤氏:
15人ぐらいですね。
4Gamer:
LoLというゲームの規模からすると,少ないような気もしますが……。
齋藤氏:
人を採るのが難しいんですよ。大もとのRiot Gamesの方針として,社員はゲーマーであり,LoLのプレイヤーでないとダメという大前提があって,それがネックになっています。専門スキルを持っていて,英語がしゃべれて,LoLをやっているというのが3つの大きな条件なんですが,この3つの条件を満たしている人というのがなかなかいない。専門スキルがあって,英語も喋れるんだけど,LoLどころかゲームもやっていないというパターンの人が一番多いので,その場合は,LoLを最低でもサモナーレベル20くらいまではプレイしてもらうようにお願いするんです。そうすると,レベルをあげてもらっている期間中に,その人が別の会社に採用されてしまったり……。
4Gamer:
たしかに,その3つの条件が揃う人材というのはなかなか居ない気がしますね。齋藤さんは,もともとLoLのプレイヤーだったんですか?
齋藤氏:
2年ぐらい前からプレイしています。私は以前,intelに勤めていたことがあるのですが,自社半導体を使用しているPCの売り上げが伸び悩む中で,ゲーマー向けPCの売り上げは伸びていたんです。顧客の方たちは,ゲーマー向けPCで何を遊んでいるんだろうと興味を持ったのが,LoLに出会ったきっかけですね。
私はコンシューマゲームを遊んできた人間なので,最初は「何なんだこのゲームは」という感じだったんですけど,プレイを続けているうちにいつの間にかにハマっていました。それまでPCゲームをやったことがなかったので,キーボード操作に慣れなかったり,ゲーマー向けマウスを購入しようと思ったら,間違えてMMORPG用のものを買ってしまったりと,苦労や失敗もしましたが,だからこそPCゲームをやったことがない人の気持ちも理解できますので,そういった経験も活かしつつ,サービスを展開していきたいと思っています。
4Gamer:
日本サーバーを計画しているという話自体は数年前からありましたが,最近になって,ようやくFacebookを使っての情報公開が始まりました。これは,社長の退社などで宙に浮いていた計画が,齋藤さんのような人材が揃ってきたことでて再び動き始めた……ということでしょうか。
齋藤氏:
情報公開という意味ではそうですね。ただ,日本サーバーを開設するための準備作業は,ずっと進行していました。実は私が入社したときには,だいたいのローカライズ作業は終わっていたんです。
4Gamer:
となると,一番気になるのは,いったいいつになったら日本サーバーでプレイできるようになるのかということです。今の日本のLoLプレイヤーは,情報公開がないまま,長い間日本サーバーを待っていますし,とくに最近は,北米のサーバーがシカゴに移転したことで,日本からのPingが大きく上がってしまい,普通にプレイするのにも困るという状況ですから……。
齋藤氏:
お待たせしてしまっているのは,本当に申し訳ありません。今,日本サーバーの開設時期についてオフィシャルでお伝えできるのは,「桜の咲くころ」までには稼動させるということです。
4Gamer:
それは2016年の話……でいいんですよね?
齋藤氏:
来年です(笑)。Riot Gamesにはこういった情報を公にしないという“決まり”があって,「もうすぐです」としか言わないのが世界共通なんです。ただ,日本に関しては,プレイヤーの方々が長い間待たれていて,現在のプレイ環境に対するストレスも溜まっているという現状があります。それを本社にかけあいましたので,この場で明言させていただきます。「桜の咲くころ」です。
4Gamer:
期待しています。ローカライズされたものの体験会として,東京ゲームショウ2015で発表されたモニタリングテストが行われたと思いますが,これに関してはどういった反応があったのでしょうか。
齋藤氏:
モニタリングテストは3回実施していて,なかなかいい反応をもらっています。今はそうしたフィードバックを参考にしながら,より良いものを本番で出せるよう努力しているという状態です。
4Gamer:
ローカライズに関して,苦労されている点などはありますか?
齋藤氏:
実は,クライアントに入る日本語の文字数には制限があって,英語をそのままカタカナにして表記することができないというのが一番辛いですね。たとえば「Twisted Fate」というチャンピオン名を「ツイステッド・フェイト」と表記すると文字数が多すぎるので「フェイト」と表記しないと収まらないんです。ですが,「フェイト」という表現には違和感を感じる方も少なくない。そういった制約条件の中で,アイテム名や,用語などをどう表現していくかというのが,一番頭を悩ませるポイントですね。
Facebookで公開して厳しい反応もいただいている「物理吸命」あたりも同様で,「Life Steal」をそのまま「ライフスティール」にはできないという……。
4Gamer:
文字数の問題を解決しようとするならば,本社側の開発にかけあってクライアントのUIの部分から手をつけなければならないですし,そういったことをやっていると,ローカライズに必要な労力,時間がさらに増えてしまいそうですね。
齋藤氏:
そういうことになります。なので,私たちとしては,漢字を使って文字数を減らしつつ,日本語訳としての表現も違和感のないものにするというところに苦心して作業しています。モニタリングテストに参加された方の中からは,一部の表現に関して,漢字が多すぎて読みづらいといった意見も出ているので,これからはそのあたりを直していきたいですね。
あとは,モニタリングテストという限られた時間の中だけでなく,もう少しオープンな場で話をしながら改善していきたいと思っています。今英語版でプレイされている方たちが,日本語版の表現に対して違和感を覚えるのは仕方ない部分もあるんですが,せっかくの日本版なので,みなさんの意見を聞きながら,一緒により良いものを作っていきたいなと。
4Gamer:
プレイヤーからは,なんでもいいからとにかく先にサーバーを立てて,ローカライズはそのあとにやればいいじゃないかという意見も出ていると思うのですが,そちらについてはいかがでしょう。
齋藤氏:
少しでも早く日本サーバーを立ち上げたいというのはやまやまなのですが,中途半端な状態で動かすわけにもいきません。なるべく早くオープンできるよう,作業を進めています。
4Gamer:
正式サービスを前に,βテストなどは予定されているんですか?
齋藤氏:
はい。まずクローズドβテストをやり,そのあとにオープンβテストか,あるいはサービス開始という感じになるかと。
4Gamer:
となると,来年の早い段階で日本語版クローズドβテストが体験できると考えてよいですか?
齋藤氏:
はい。ただ,サーバーを稼動するとなると,日本だけでなく,アメリカにいるテクノロジー関連のスペシャリストの力が必要になるのですが,彼らはクリスマスぐらいからお休みに入ってしまうので,年明けにいきなりというわけにはいかないと思います。とはいえ,こちらも準備は進めていますので,期待していてください。
4Gamer:
分かりました。日本サーバーに関しては,ずっと今後の予定が分からないまま時間だけが経っていたので,もうすぐ遊べるというのが明らかになっただけでも嬉しいです。
ところで,日本サーバーが開設された場合,北米などのアカウントは移行できるんですか?
齋藤氏:
ほかの国のケースと一緒で,一定期間は無料で移行できるという形にしようと思っています。
4Gamer:
サーバー開設の記念スキンの実装はいかがでしょう。
齋藤氏:
個人的にはやりたいのですが,最近は「PROJECT」スキンなど,ストーリー性のあるスキンを実装する傾向にあるので,現段階では何とも言えないですね。
サービス後はプレイヤーとのコミュニケーションを重視
4Gamer:
欧米では,オフィシャルな掲示板でRiot Games社員とプレイヤーがやりとりしていますよね。社員とプレイヤーが同じ目線で会話して,そこでフィードバックを得て,ゲームを変えていくという。あれって欧米のゲーム企業ではよくある光景ですが,日本ではあまり見かけないように思います。そういったことを日本でもやる予定はないのでしょうか。
私はやりたいと思っていますし,やるべきだと思っています。「LoLをプレイしている人間を社員にする」という決まりもあるわけですし。日本の企業は,リスクを重視してあまりやらないのだと思いますが,私としては,ライアットゲームズでそうしたことをとやかくいうつもりは,まったくありません。
4Gamer:
ライアットゲームズと直接対話をできるのであれば,プレイヤーにとってもありがたいんじゃないかと思います。今,自分達の声が届きづらいというのが,フラストレーションの要因の1つにもなっていると思うので。
齋藤氏:
そこはわれわれも歯がゆい思いをしています。公式のフォーラムを用意したくても,公式サイトはサーバーオープンと連動しているので,現時点ではまだ公開できません。また,現状ではFacebookやTwitterといった候補がありますが,いずれも,きちんとコミュニケーションをとるための場としては不十分という印象です。韓国などは,1つのコミュニティサイトにプレイヤーが集中していて,そこを使用したという例があるんですが,日本だとそういうサイトも見当たらないんですよね。
4Gamer:
日本だと,情報発信の場として活発に利用されているのはTwitterという印象ですが。
齋藤氏:
Twitterは情報がすぐ流れてしまうので,Q&Aをうまくまとめておくようなことが難しいんですよね。情報の拡散には向いているのですが。
4Gamer:
公式サイトがオープンするまでは,Facebookでチャンピオン紹介などの情報発信を続けていくことになるんですか?
齋藤氏:
そうなるかと思います。
4Gamer:
Facebookでは,声優さんの発表が行われたムービーの反響はすごく大きかったですよね。海外のプレイヤーからも,すごい数のコメントがついていたりして。
齋藤氏:
予想以上の反響に,私もびっくりしました。日本の声優さんというのはすごい力を持っているというのを,改めて認識させられましたね。
4Gamer:
声優さんって総勢で何人ぐらいの方が起用されているんですか?
齋藤氏:
60人くらいかと。
4Gamer:
では,一人二役くらいでやっていると。
齋藤氏:
そうですね。中には「Bard」のように声を出さないチャンピオンもいるので,そこは単純計算はできませんが(笑)。
4Gamer:
ああいったムービーは,今後も出していくのでしょうか?
齋藤氏:
声優さんに関するものを今後出すかは,まだ決まっていません。次に作ってみたいと思っているのは,「Behind the Pro Scenes」です。日本のLoLのプロの選手のご両親にお話をうかがったり,選手達が普段どんな生活をしているのかを紹介したりといったドキュメンタリーを撮りたいですね。
4Gamer:
欧米や韓国の選手にスポットを当てたムービーがありましたよね。あのドキュメンタリーはすごく面白かったです。あれの日本版を作りたいということですね。
齋藤氏:
それを見れば,これからLoLをはじめるというプレイヤーのご両親でも,ゲームに対する理解を持ってくれたりすると思うんですよ。
4Gamer:
Riot Gamesの作るビデオって,面白いものが多いですよね。日本語字幕があればいいのに,といつも思っているんですが,そういった部分にも今後は期待していいのでしょうか。
齋藤氏:
全部が全部ではないと思いますが,日本語字幕をつけて公開していきたいですね。ビデオのコンテンツにもさまざまなものがあるので,日本のプレイヤーにとって有益なものは,優先的に訳して紹介したいです。
日本のプレイヤーも,最初はサーバーができて,それが運営されることで満足していただけると思うんですけど,次のステップには,そういったムービーなどの新しいサービスを求めてくると思いますので,そこに対応していく必要はあるでしょう。
4Gamer:
声優さんのムービーで海外のファンからの反響が大きかったということですが,「日本製のグッズ」も求めている海外のファンって多いと思うんですよ。2014年のWorld Championshipの会場では,「Ahri」のねんどろいどが販売されていましたが,すごくデキが良かったですよね。ぜひ日本でも販売してほしいのですが,そうしたグッズに関してはどうお考えですか?
齋藤氏:
10月のはじめに各国Riot Gamesの代表が集まる会議があったんですが,そこでは,日本では「クオリティが低い」と言われているような海外のグッズでも,「すごくデキがいいね」なんて言われていたりしたんですよ。そんな状況なので,グッズ販売に関しては,日本でも積極的にすすめていきたいと思ってます。
ただ,グッズなどの販売には,サーバーのローカライズとはまた違う課題があり,販売権利や物流網,クオリティの問題,それからその商品が,Riot Gamesの意図しているゲームの世界観とマッチしているのか,といった確認をしなくてはいけません。そうした作業は,日本サーバーが無事に立ち上がってからでないと,とてもじゃないですが手が回らないので,まずはゲームのほうに最優先で取りかかります。
4Gamer:
それでは最後に,日本サーバーに向けて,日本のLoLプレイヤーに向けたメッセージをお願いします。
齋藤氏:
今,皆さんが直面しているストレスやフラストレーションというのは,我々も重々理解していますので,そこは本当に申し訳ないと思っていますし,一刻も早くサーバーを立ち上げて,みなさんが満足できるような環境作りをしていきたいと思っています。我々としては,皆さんとオープンにコミュニケーションを取っていきたいと思っていますので,お互いに協力して,いいゲームを作っていきましょう。よろしくお願いします。
4Gamer:
ありがとうございました。
「League of Legends」公式サイト
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