北米の大手パブリッシャ/デベロッパであるElectronic Arts（以下，EA）は，E3 Summit開催前日に当たる7月14日，ロサンゼルス市内のOrpheum Theaterでプレスカンファレンスを開催し，2008年後半から2009年にかけて発売が予定されているタイトルの紹介を行った。カンファレンスの最後には，「こんなところでお見かけするとは思わなかった」という驚きのゲストも出てきたのでお見逃しなく。
EAが一般の劇場を借り切るという規模の大きなイベントを開催するのは久々のことである。今回，プラットフォームホルダーを除くE3出展メーカーの中で最大メーカーとなったEAではあるが，業界再編成が進んで競争が激化する欧米ゲーム市場において確固とした存在感を示すという意図もあるのだろう。
最初に登場した同社CEO，John Riccitiello氏は「皆さんは今日，すでに別のカンファレンスに出席されてきたと思います。たぶんお疲れでしょうから，我々はちょっと違った感じのカンファレンスにします。だって，ゲームを見にE3に来たんでしょ」と会場を埋めた世界各国のプレスに話しかけた。別のカンファレンスといえば，
「こちら」に紹介したMicrosoftのそれであり，つまり統計数字や図表や未来予測はちょっと脇において，なによりもまずゲームをお見せしますというのである。
Riccitiello氏の挨拶のあと，映画「オーシャンズ12」にひっかけて，“EA 12”と名付けた各ディビジョンのヘッドおよび各ゲームのプロデューサー12人が次々に登壇し，それぞれが作品の紹介をした。とはいえ，PCとはあまり関係ないタイトルもあるので，4Gamer的に注目のタイトルをいくつかピックアップして紹介しよう。これらの作品は，明日から開催されるE3 Summit本番で詳しく説明される予定なので，目を通して明日以降の予習をしておいてほしい。
「SimAnimals」「The Sims 3」
EAのSims Studioを率いるRod Humble氏が紹介したタイトルは，「SimAnimals」と「The Sims 3」。Sim Animalsは，タイトルから即座に分かるようにシムズシリーズの動物版。相手が「食う，寝る，殖やす」ぐらいしか興味のない動物なので，シムズシリーズに比べてかなり直接的な交流が可能になっている。両親と一緒にいる小熊をつまみ上げて遠く離れたところに置き去りにしたり，木を引っこ抜いたり，溺れている動物を助けたりといったことができる。動物が冷蔵庫や車を欲しがったりはしませんからね。現在は，Nintendo DSとWii向けに開発されているが，非公式ながらPC版も予定されているという話だ。
もう一本のThe Sims 3は言うまでもなく人間版シムズシリーズの最新作。カンファレンスではムービーが公開されたが，それを見る限り「家の外をブラブラできる」のはMMORPGみたいでかなり楽しそうだ。発売は2009年なので，まだ半年以上待たなくてはならないのが残念至極。
「Dead Space」
EAの内部スタジオであるRedwood Shoreが開発中のSFホラーアクションが「Dead Space」。スピーカーのGlen Sheofield氏はこれまでライセンスもののタイトルをいくつか手がけているが，オリジナルIPは初挑戦になるとのこと。
宇宙を航行中の超大型宇宙貨物船からの通信が途絶する。「また故障か」と会社はエンジニアのチームをその船に派遣するが，そこは恐るべきエイリアンに襲われて凄惨な状態になっていたというお話だ。
特筆すべきはその著しいゴア表現で，公開されたムービーの中では血みどろでグロテスクな世界が展開されていた。その手のゲームに弱い人は要注意だが，当然ながら（？）アメリカ人を中心とするメディアにはバカ受け。エイリアンの首が飛ぶたびに拍手喝采で，Sheofield氏もかなりの手応えをつかんじゃったのではないだろうか。北米での発売は2008年10月21日が予定されている。
「Mirror's Edge」
スウェーデンのEA DICEが開発中の「Mirror's Edge」は，高い身体能力を持ち，ビルからビルへ飛び移り，さまざまな情報を人々に運ぶ女性を主人公にしたアクションアドベンチャーだ。カンファレンスでは，PLAYSTATION 3版のプレイシーンが紹介されたが，内容そのものはGDC 2008で紹介されたものと変わらず，取材経験のある筆者にとってはやや新鮮味に欠けるものだった。
とはいえ，高速でビルの屋上を駆け抜け，およそ飛び移れそうもないところへ飛び移るのは，見ていて単純に気持ちがいい。一人称視点だがFPSではなく，なんだったら一発の銃弾も放つことなくゲームをクリアできるとのこと。ビルとビルの間にわたされたパイプの上を走り，金網を飛び越し，配管の下をくぐり抜けるという一連のシークエンスが紹介されたが，時差ボケで寝不足の筆者は見ているだけでだんだん3D酔いに……。まあ，それほどリアルだということだ。
「SPORE」
Will Wright御大を“12人の仲間”の一人としてサラッと登場させてしまうところがEAの層の厚さを示しているのかもしれないが，ありとあらゆる機会をとらえて笑いを取らずにはいられないWright氏のこと，今回もプレゼンテーションで，会場を沸かせた。
たとえば，Wright氏らは，7月にSPORE Creature Creatorをリリースしておけば，9月のSPORE本編の発売までにはSporepediaに約10万匹のクリーチャーが登録されており，それを使ってすぐにプレイしてもらえるはずだという戦略を立てたのである。ところが，10万匹のクリーチャーが登録されるまでに要したのはわずかに22時間。一週間もかからず100万匹に到達し，いまや地球上の脊椎動物や無脊椎動物の種類より多いとのことだ。
また，クリーチャーを作れと言っているのに，人型のものを作ったり，中には飛行機や車といった乗り物までつくるプレイヤーがおり，あらためてUCC（User Created Contents)の可能性に感じ入ったとのこと。というわけで，例によってSPORE自体のことはあーんまりよく分からなかったものの，面白い話が聞けたのである。併せて，ゲームの概略を紹介する新しいムービーが公開された。
「Dragon Age: Origin」
BioWareのGreg Zeschuk氏は，2004年のE3で公開されて以来なぜか音沙汰がなくなり，つい先日「2009年に発売予定」とアナウンスされて我々を驚かせた「Dragon Age: Origin」を紹介した。「雰囲気を知ってもらう」ためのティザームービーが紹介されたが，グラフィックスのレベルの高さはなかなかのもの。最近のシングルRPGはこのぐらいじゃないともうダメなんでしょうかね。
「Rage」
カンファレンスの最後の最後，Riccitiello氏が「新たなEAパートナー」として壇上に招いたのが，id SoftwareのJohn Carmack氏だ。これにはかなり驚愕したりびっくりしたり驚いたりしたのだが，id SoftwareといえばパブリッシャはACTIVISION（もうじきActivision Blizzard）と相場が決まっていたのに，彼らの新作「Rage」はEAが発売することになったのだ。意外な展開とはこのことである。
ゲームの詳細については，おなじみのムービーが公開されただけであり，Carmack氏によるとテキサス州ダラスで開催される予定のQuakeCon 2008においてさらに詳しい内容が紹介されるとのこと。Rageはゲームエンジン「id Teck 5」が使用されており，特徴としては表示するポリゴン数に制限がなく，今まで以上に詳細なグラフィックス表示が可能である点が挙げられている。
ゲーム内容は荒廃した未来世界を舞台にしたアクションだが，FPSだけではなくカーレースが大きくフィーチャーされたものになるという情報もある。いずれにせよ，今回のカンファレンスにおける最大のサプライズといえるだろう。追加情報が入り次第お伝えしたい。
スピーカー/タイトル一覧
・Rod Humble氏
The Sims Studio
「Sim Animals」「The Sims 3」
・Glen Sheofield氏
EA Redwood Shores
「Dead Space」
・Patrick Soderlund氏
EA Games European Studios
「Mirro's Edge」
・Will Wright氏
MAXIS
「SPORE」
・Peter Moore氏
EA Sports
「NBA LIVE 09」
・John Pleasants氏
EA Redwood Shores
・Nanea Reeves氏
・Shawn Fanning氏
EA Online Group
・Travis Boatman氏
EA Mobile
「SPORE Origin」
・Greg Zeschuk氏
BioWare
「Dragon Age Origines」
・Gabe Newell氏
Valve
「Left 4 Dead」
・John Carmack氏
id Software
「Rage」
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2008/07/15 17:56
ザ・シムズ3
SimAnimals
Spore（Macintosh）
SimAnimals
