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ジャンクハンター吉田のゲームシネシネ団:最終回「成り上がれ,『ゴッドファーザー』に(10)」
映画「ゴッドファーザー」を題材としたシネマゲームとして,現時点で最新の「ゴッドファーザーII」(原題 The Godfather II。PC/Xbox 360/PLAYSTATION 3)。前回は,本作の開発を担当したElectronic Arts Redwood Shores(現 Visceral Games)にまつわるエピソードを紹介したが,今回はゲームの内容に踏み込んでいこう。
舞台となるのは,ニューヨーク,フロリダ,キューバの3か所だが,全体的にマップエリアが狭くなった感が強く,移動可能な場所も少ない。正直なところ若干の物足りなさも感じたが,一方で,どこに何があるかを把握しやすくなったため,遊びやすくもなっている。
また,前作は究極のカツアゲ系ゲームだったが,本作は陣取りゲーム化されており,ニューヨーク以外へ勢力を拡大していくという,ある意味でマフィアらしい仕事を楽しめる仕様となっている。そういう意味では,続編とはいうもののゲームの様相はもはや別物と言っても差し支えないだろう。
また,格闘アクションにも変更が加えられており,走りながら左腕と右腕でラリアット(おそらく本当は,走り殴りフックなんだろうが,どうしてもラリアットに見える)ができるようになったことで,アクションゲームが苦手な人へのハードルも下がったように思う。
また,本作の特徴として,部下という名の手下を常時コントロールできるようになったことにより,ゲームそのものがイージーになっているのも特徴といえるだろう。
とはいえ,敵のアジトへ手下を引き連れて“カチコミ”に行く部分は,前作よりもかなりハード。このあたりは,前作のファンをもうならせてくれるはずだ。
国内版と海外版(アジア版)における変更点は,前作同様今回もあったのだが,残念なことにXbox 360版にも各種表現への規制が加えられていた。前作がZ指定だったのに対し,今回はD指定だったということもあるのだろうが……。まあ,基本的にゲーム性はそのまんまではある。
ただ,頼み事以外では一般人を攻撃できなくなっているほか,とある政治家が売春婦とのSMプレイ後に殺人を犯したシーン(実際にはその政治家は犯人というわけではなく,罪を着せられた)で血の海になったベッドが,赤ではなく黒くなっているあたりはとくに残念。
また,ストリッパーや売春婦の表現が,海外版ではショーツ1枚でオッパイ丸出し状態だったのに,国内版ではセクシーなスリーインワンの下着姿になっているのも,ゲームの本編とは一切関係ないながらも,残念と言えば残念か。もっとも,前作の売春婦が地味なロングスカート姿にされたことと比べれば,精一杯がんばった結果と思えなくもない。
こういった表現への規制について,開発スタッフがどんなことを思ったのか,機会があったら聞いてみたいものではある。
ちなみに,このゲームは映画版の「ゴッドファーザーPart II」のストーリーを踏襲し,映画同様の叙情的なエンディングが用意されているものの,その内容は少々異なっている。
まず目に付くのは,映画でロバート・デ・ニーロ氏が演じていた,若かりし頃のヴィト・コルレオーネに関するパートは一切登場しない点。
デ・ニーロ氏といえば以前,ゲームに対して肖像権の使用を許諾しなかったため,α版まで出来上がっていた「タクシードライバー」が発売中止になってしまったこともあった。ゴッドファーザーIIも,ひょっとしたらそういう理由で,映画で描かれていたパートがカットされたのかもしれない。
これは余談だが,マイケル・マン監督がGearbox Softwareと協力してプリプロダクションを進めているゲーム版「ヒート」は,アル・パチーノ氏の肖像権が獲得できなかったため,ゲーム化そのものが中止になったという話を聞いたことがある。ヴァル・キルマー氏とトム・サイズモア氏の肖像権使用許諾は得ているらしいのだが,その後どうなったのだろう?
なお,アル・パチーノ氏といえば,「スカーフェイス」のゲーム版に肖像権の独占使用許諾をしているため,前作同様ゴッドファーザーIIにも,アル・パチーノ氏は登場しない。
だが,トム・ヘイゲン役のロバート・デュヴァル氏は前作に引き続き本人の肖像だけでなく,声でも出演。フレド役のジョン・カザール氏(1978年に骨髄ガンで他界)は,遺族が肖像権の使用を許諾したため,マイケル・コルレオーネのダメ兄貴役としてゲームに登場している。
前作はマーロン・ブランド氏の遺作となったこともあり,一般メディアも注目したため,大きな話題を呼んだが,本作はそれと比べると地味め。開発費的にもパワーダウンしていたようだ。
しかし,ゴッドファーザーの世界観はしっかりと保たれているし,ただ必死にカツアゲするだけのゲームでもなく,戦略性が備わっている。筆者にとって,映画への思い入れを差し引いても,前作共々お気に入りの作品だ。
同社は1987年にマルチプラットフォームでゲーム化された「Top Gun」を皮切りに,自社で抱える多くの映画コンテンツを,発展期に差し掛かっていた若かりしゲーム産業へ相次いで投入。“映画×ゲーム”を意識したメディアミックス展開の代表的かつ,先駆的なプレイヤーとなり,大きなアドバンテージを得た。
ちなみに,Top Gun以前にも“世界初のMovie Licenced Video Game”として1970年代に「Star Trek」のアーケードゲームを登場させており,Star Trekのフランチャイズ化は現在に至るまで続いている。
1994年に全米最大手のメディアカンパニー,VIACOM(Video and Audio COMunications)がParamount Picturesを買収してから,こうしたメディアミックスはさらに加速。ハリウッドの映画産業では,Warner Bros.と競い合うような形で,シネマゲーム市場を開拓してきたのだ。
その後,ロサンゼルスのメルローズに,Thomas Lesinski氏を社長とするParamount Digital Entertainmentが設立され,映画コンテンツのデジタル化がさらに推進されるようになった。
とくに,米国の通信事業者EarthLinkと提携し,2002年に「StarTrek.net DSL」のサービスを開始したり,レンタルチェーン最大手のBlockbusterと組んで「jackass 2.5」をDVD発売前にネットで期間限定無料配信したりと,コンテンツ流通の方法に関しても,さまざまなトライをしてきている。最近でも,スウェーデンのIPTV配信会社Accedo Broadbandと提携し,セットトップボックス向けゲームの配信を予定しているそうだ。
また近頃では,iPhone向けにもシネマゲームを率先してリリースしており(残念ながら日本国内では購入できない),過去のタイトルから新作まで幅広いコンテンツを投入している。
「ザ・シューター 極大射程」や「サタデー・ナイト・フィーバー」,「スクール・オブ・ロック」などは評価も高く,「アイアンマン」や「スタートレック」のようにゲームに向いているコンテンツもしっかりフォローされているほか,「デイズ・オブ・サンダー」のような過去作もリリースされている。
もちろんコンシューマゲーム機用のタイトルも豊富で,最近でも「スタートレック」や「ウォリアーズ」のゲームをXbox Live Arcadeでダウンロード販売しており,今後はPLAYSTATION 3やPCでの展開も予定されているとのことだ。
ちなみにParamount Digital Entertainmentは今春,日本法人のパラマウント デジタル エンタテインメント ジャパンを設立し,ソースネクストとの業務提携契約も結んだ。ここでは,PC向けに映画コンテンツを題材とした英語教育ソフトを筆頭に,日本オリジナルのソフトもリリースしていくそうである。海外のみならず,日本でのパラマウントの動きから,目が離せなくなりそうだ。
さて,この連載始まって以来最長の10回を割いて,ゴッドファーザーのシネマゲームを取り上げてきたが,実は今回がこの連載の最終回でもある。なんせ,本腰を入れて取り組まねばならない社長業ってのがあるもので。
2008年6月21日にスタートして以来,1年と1か月の間,ご愛読いただきありがとうございました。今後もシネマゲーム関連のタイムリーな話題があるときには,不定期で寄稿させていだたく予定。その日まで,ごきげんよう!
■ドブ漬けゲームスープレックス(52)
PLAYSTATION 3 / Xbox 360
「WWE レジェンズ・オブ・レッスルマニア」(THQジャパン)
世界最大のプロレス団体,WWE(World Wrestling Entertainment)のゲームといえば,1988年にRareが開発し,Acclaimが発売したNES用ゲーム「WWF WrestleMania」が思い出される。あれから21年の時を経て,WWEで1年に1度だけ行われるビッグイベント「レッスルマニア」の歴史を振り返りまくれる作品が登場!
懐かしのスーパースター達が勢揃いしていて,中年ゲーマーでありプロレスファンでもある筆者にとって,プレイ用,保存用,観賞用の3本は買ってしまいたいほどの勢いだ。
ハルク・ホーガンの入場曲「リアルアメリカン」を聞くだけでもゾクゾクしてくるのだが,ゲーム内で見事に再現されているアンドレ・ザ・ジャイアントの規格外の大きさは,本気で鳥肌モノ。さらにゲーム自体も,クラシカルなレスリング・スタイルが再現されており,ついつい古き良き時代に思いをはせてしまう。
最近のWWEしか知らない人にとっては,フィニッシュの演出や,コーナーおよびエプロンでの攻防などがない点などが気になるかもしれない。が,1980年代のアメリカン・プロレスはこういうもの。そしてそんなものがなくても,一つ一つの技に説得力を感じさせる何かがあったのだ。
だからこそ,このゲームでアンドレからドリル・ア・ホール・パイルドライバーを食らった日には,なぜだか分からないけれどもずっしりとした痛みを感じてしまうのである。
本作を含めWWEのゲームは,PlayStation時代以降,ユークスが開発を担当しているのだが,ちょくちょく操作方法や仕様が変更されるため,最初のうちはちょっぴり迷いがち。本作でもそうだった。それだけに,マニュアルの簡素さはちょっぴり残念だった。
しかし,慣れてきてから「レッスルマニア ツアーモード」を始めたら,操作とかそんな細かいことはどうでもいい! という気分に。
なんせ,当時の試合映像を鑑賞したあとで,それと同じ展開を目指して試合を進められるのだ。こんな中年プロレスファン泣かせのゲーム,これまでにあっただろうか?
同世代のプロレスファンを集めて,一緒にプレイしたら盛り上がるだろうな〜。
「WWE レジェンズ・オブ・レッスルマニア」公式サイト
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