テストレポート
順当な性能向上。MSI製のIntel P45マザー「P45 Platinum」を試す
PCI Express 2.0に対応し,ICH10とセットになるP45
P45 Platinumは省電力を指向
一方,FSBクロックが1333MHzまでのサポートになることと,メモリコントローラがDDR2,DDR3両対応で,DDR2 SDRAMはPC2-6400 DIMM,DDR3 SDRAMはPC3-10600までのサポートになることは,P35と同じだ。
組み合わせられるサウスブリッジは「ICH10」「ICH10R」。ICH9世代から「1」上がっているが,Serial ATAやUSBのポート数にICH9から変化はない。開発コードネーム「Danbury Technology」と呼ばれる,ハードウェアレベルでのHDD暗号化機能が追加されているようだが,ゲーマーからすると,まあ,あまり関係はないのではなかろうか。
機能面では,CPU規定のFSBクロックに関係なくユーザーが任意にクロック種別を設定できる「OC Jumper」を用意するのがユニークなところだが,それ以上にMSIが強くアピールしているのが,「DrMOS」や「Green Power」といった省電力を指向する新機能群である。これらについては後述したい。
というわけで,今回はこのP45 Platinumを使って,P45チップセットのポテンシャルを探るわけだが,比較対象としてはASUSTeK Computer(以下,ASUS)製のP35マザーボード「P5K Premium/WiFi-AP」を用意。「ATI Radeon HD 3850」搭載グラフィックスカードのシングルカード構成時と2-way CrossFireX構成時で,ゲームにおけるスコアの違いをチェックする。
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このほかテスト環境は表のとおりで,テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション5.2準拠となる。ただし,テストスケジュールの都合により,「Unreal Tournament 3」と「Half-Life 2: Episode Two」のテストを省略している点は,あらかじめお断りしておきたい。
なお以下,グラフ中は2-way CrossFireXを[CF]と表記する。
CrossFireX構成時はP45が圧倒的優位
シングルカードでも優勢
さて,まずグラフ1,2は「3DMark06 Build 1.1.0」(以下,3DMark06)のテスト結果である。シングルカード構成時は,PCI Express 2.0接続のメリットが出た,とまでは断言できないものの,わずかではあるがすべての条件でP45がP35よりも高いスコアを出している。
さらに,圧巻は2-way CrossFireX構成時だ。16レーン+4レーンという,バランスの取れていないP35に対して,8レーン×2となるP45のメリットは明らかだ。
同様のことは,FPS「Crysis」でも見て取れる(グラフ3,4)。「標準設定」は,3DMark06の結果を踏襲したものになっているといっていいだろう。
しかし,「高負荷設定」だと,2-way CrossFireXのパフォーマンスが今一つ出ない。シングルカード構成時よりスコアが下がっているP35と比べれば“マシ”だが……。
TPS「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」(以下,ロスト プラネット)から,実際のゲームシーンに近いSnowにおける平均フレームレートまとめたものがグラフ5,6。ロスト プラネットでも,標準設定ではシングルカードでわずかにP45が優位,2-way CrossFireX構成時は圧倒というスコアになっている。
問題は高負荷設定で,P45における2-way CrossFireX構成のスコアがシングルカード構成時のスコアを下回っているのはいただけない。P45だけでなくP35のスコアも悪いので、ATI Catalyst 8.4の問題と考えるのが妥当だろう。
最後にRTS「Company of Heroes」の結果をグラフ7,8に示すが,Company of Heroesでは,高負荷設定においても2-way CrossFireXのスコアはP45がP35を圧倒。P45のPCI Expressレーン仕様が十分なメリットをもたらしている。
最も2-way CrossFireXのスコアが伸びたCompany of Heroesで,解像度ごとにシングルカード構成と比べて何%のパフォーマンス向上を示したかをまとめたのがグラフ9。あくまでベストケースのデータであることに注意は必要だが,P45の登場により,Intelプラットフォームのミドルレンジ向けチップセットでも,2-way CrossFireXのパフォーマンスを期待できるようになった点について,憶えておいて損はなさそうだ。
消費電力の低減に効果を発揮すると謳われる
DrMOSとGreen Powerの実力は?
一言で説明するなら,DrMOSは,電力の高効率化機能である。MSI本社のEric Chang(エリック・チャン)副社長は「DrMOSでは,従来のマザーボードで利用されていたMOSFETやドライバICをワンパッケージに統合することで,MOSFETのオン/オフ切り替えをよりシームレスに行うことを可能にし,かつリーク電流を減少させる」と,DrMOSのメリットをアピールする。
実際のところはどうだろうか。まずはGreen Powerを無効化した状態で,OSの起動後30分間放置した時点を「アイドル時」,3DMark06を30分間リピート実行し,最も消費電力の高かった時点を「高負荷時」とし,各時点におけるシステム全体の消費電力をまとめたのがグラフ10だ。
もちろんP45 PlatinumとP5K Premium/WiFi-APでは搭載するオンボードデバイスが異なる。そのため,100%横並びの比較にはなっておらず,今回の結果をもってDrMOSの有効性を断じることはできない。この点は注意してほしいが,高負荷時の消費電力を比較したとき,P45 PlatinumのそれがP5K Premium/WiFi-APを下回るのは確かである。
続いて,P45 PlatinumでGreen Powerの有効/無効を切り替え,同様のテストを行った結果をグラフ11に示す。Chang氏が強調するほど明確なメリットは感じられないスコアで,誤差とも取れる範囲だが,わずかに下がり気味な傾向は見て取れる。このあたりは,量産品であらためてテストする必要があるかもしれない。
価格次第だがパフォーマンスでは及第点
P35を置き換えるチップセットとして期待できる
現時点ではマザーボードの登場タイミングと価格が分からないので,これ以上の言及は行えないが,少なくとも,近いと思われる正式発表を待つだけの価値はありそうである。
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