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[IDF]上級副社長がAtomの戦略を語る。「Lincroft」搭載の携帯ゲーム機も登場
Intelは,現在急速に性能が高まりつつある携帯電話やタブレット型端末,組み込み機器といった「スマートデバイス」市場においてもイニシアチブを握るべく,x86ソフトウェア資産を武器に,Atomプラットフォームにおけるエコシステムの拡大を図るという。
Atom向けのHavok開発ツールの
無償提供を発表
Intelのソフトウェアとサービス事業を統括するRenee J. James上級副社長(Senior Vice President, General Manager, Soft ware and Services Group ,Intel) |
「Intelとしては,飛躍的な拡大を見せるスマート・デバイスに最高のユーザー体験を組み込むことこそ最重要課題だととらえている」とアピールした。
続いて,最高のユーザー体験のために重要となるのが,
- パフォーマンス
- ビジュアルコンピューティング
- デバイスの接続性
の3つのポイントである,と紹介した。
Intelは,これらの要素を備えたデバイスをデバイスメーカーが開発できるように,3つのポイントに関連した技術を持つ企業を買収し,その技術を基にプラットフォームとソフトウェアを互いに最適化。シリコンベンダーとしてのIntelが持つ,最先端プロセスによる半導体製造技術と組み合わせることで,より「スマート」なデバイスをユーザーのもとに届けようとしている,という。
Intelは,3つのポイントの技術を持った企業を買収し,それらの技術をプラットフォームやソフトウェアに実装していくという |
James氏はその一例として,6月に買収を発表した組み込みOS開発会社であるWind Riverの技術を用いて,マルチコアによるネットワーク処理の高速化を実現した事例を紹介した。
IntelはWind Riverの技術を使い,マルチコアCPUにおけるネットワーク性能向上を実現したとアピール |
基本的な動作原理としては,OSの処理を1コアに割り当て,残りのCPUコアにパケット処理を効率的に割り当てるもののようだ |
Atomプラットフォーム向けのHavok開発ツールのデモは,Havokのエンジニアリング担当副社長Andrew Bond氏の手によって行われた |
これによりデベロッパは,現在登場しているAtomベースの携帯端末に加え,今後続々と登場するであろうAtomベースのタブレット端末やスマートフォンでも,物理演算機能を活かした優れたビジュアルのゲームが開発できるとアピールした。
新型Atom「Lincroft」のウェハを公開
採用機として「携帯ゲーム端末」も登場
Lincroftのウエハーを手にするDouglas L. Davis副社長(Vice President, General Manager, Embedded and Communications Group, Intel) |
さらにOak Trailを採用した「携帯ゲーム端末」として,韓国の携帯情報機器メーカーであるOcosmosが開発したWindows 7ベースの5インチタブレット端末を披露した。これはIntelが,Atomプラットフォームを新たな市場にも積極的に展開していく姿勢をうかがわせるものだろう。
Lincroftは,CPUコアにメモリコントローラやGPUコアを統合しており,さらにCPUコア部の改良などによって大幅に消費電力を低減。GPUコア部でも3Dグラフィックスやビデオ機能が強化されるという。搭載製品は,2011年に市場投入される予定だ。
Intel AppUpやOS間移植サポートなど
デベロッパへのサポートを強調
こうした動きによりスマートデバイス市場へ取り組むIntelだが,同社には強力な援軍が存在する。それが,790万人を超えるx86ソフトウェアのデベロッパだ。
そこでIntelは,スマートデバイス市場に切り込んでいくにあたって,これらのデベロッパが開発した膨大なソフトウェアをAtomプラットフォームにおいても販売しやすい環境を作る戦略を採ろうとしている。
その一端となるのが,9月に公開した「Intel AppUp」である。これは,Atomプラットフォーム向けのソフトウェアを集めたオンラインストアだ。Intel AppUpは現在アメリカ向けサイトのみが公開となっているが,2011年には主要各国で順次公開していく意向である。
さらにJames氏は,Intel AppUpに参加するパートナーとして,セガとコナミが含まれることを表明した。実はIDF 2010の会期に合わせて,Intel AppUpの実店舗がSan Francisco内のショッピングアーケードにオープンしている。店舗内ではIntel AppUpで販売されるタイトルを来店者が自由に操作できるが,その中には早くもセガのゲームがあった。
Intel AppUpの実店舗は,IDFメイン会場であるMoscone West向かいのアーケードにある |
Intel AppUpで公開されているセガのゲーム。現在はGenesis版の移植タイトルが中心のようだ |
「Goals」のMeeGo版(左)とWindows XP版(右)。同時にデモし,移植度の高さもアピールした |
その実例として,Game Creators Limitedが制作したWindows XPベースのサッカーゲーム「Goals」を,1週間程度でMeeGoに移植できたと紹介した。
Goalsは,AppUp対応タイトルの開発コンテスト「Intel Atom Developer Challenge」で,「Best of Games」賞と「Most Innovative Application」賞を受賞したゲームだ。
これを受けてJames氏は,「Intelのデベロッパネットワークを利用すれば,これまでWindows用タイトルしか作ってこなかったデベロッパでも,携帯電話やタブレット端末向けのアプリケーション市場に参入できるチャンスを得られる」とアピールした。
さらに進化する
Atomプラットフォーム
今回の講演では,Atomプラットフォーム自体についても紹介された。Atomプラットフォームの特徴の一つとして,PC向け製品とは異なり,単一のアーキテクチャでさまざまなジャンルの製品をカバーできるという点がある。Intelは,そうした長所を活かすべく,Atomプラットフォームのバリエーションを増やしてきた。そうした結果Atomプラットフォームは,ネットブック向けから組み込み機器向けまでと,多くのバリエーションを有する。
単一のアーキテクチャで,さまざまな分野の製品をサポートできるAtomプラットフォーム |
今回は,さらに新たなジャンルに向けたプラットフォームが発表された。それが「タブレット端末向け」と位置づけられたOak Trailだ。
製品化に向けた取り組みも進んでおり,Oak Trailを搭載したタブレット端末の開発パートナーは,すでにAcerやDell,HP,ASUSTeK Computer,Samsung,MSI,東芝など,多数が公開されている。さらに前掲のOcosmosのように,小型ゲーム端末の発売を考えているベンダーも何社かあると噂されている。
Ork Trailの紹介は,「For Tablets」(タブレット端末向け)として行われた |
Oak Trailプラットフォームの採用を表明する主要ベンダー。大手メーカーも多い |
さらに会場では,Dell Computerが,タブレット端末としても利用可能なコンバーチブル型ネットブックを公開。2010年内の米国市場投入を発表した。このモデルは,デュアルコア版のネットブック向けCPU「Atom N550」を搭載している。
Intelは,今後も最新の製造プロセスルールを採用することでパフォーマンス向上を図るなど,Atomプラットフォームを強化していく意向も打ち出した。
今回公開されたCPUのロードマップでは,現行の45nmプロセスを採用する「Bonnell」コア(開発コードネーム)の後継として,2011年に32nmプロセスの「Saltwell」コア(開発コードネーム)を投入。さらにその次の22nmプロセス世代では,アーキテクチャレベルで手が加えられる見通しだと発表した。
公開されたAtomのCPUロードマップ。次世代となる「Saltwell」コアは2011年中の登場予定と発表された |
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Atom
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