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ダウンロード販売開始記念,「ザ・シムズ サバイバルストーリー」のレビュー掲載
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印刷2008/07/02 14:05

レビュー

絶海の孤島で繰り広げられるシムズ的大冒険

ザ・シムズ サバイバルストーリー

Text by 松本隆一

»  「ザ・シムズ2」から飛び出したストーリーシリーズも,「ザ・シムズ サバイバルストーリー」で3作目。今回は,事故によって絶海の孤島に流れ着いたシム人による,生存を懸けた息詰まるサバイバルが描かれたアクション超大作……にはなっておらず,相変わらずほのぼのムードが漂う一本のようだ。そんなサバイバルストーリーを,普段の生活がそのままサバイバルという松本がレビューした。


ドキドキワクワクのサバイバルライフを始めよう


ザ・シムズ2をベースに作られたストーリーシリーズ。その第3弾は,離れ小島を舞台にした「ザ・シムズ サバイバルストーリー」である。主人公の運命やいかに?
画像集#001のサムネイル/ダウンロード販売開始記念,「ザ・シムズ サバイバルストーリー」のレビュー掲載
 「ロビンソン・クルーソー」「十五少年漂流記」,そして「蝿の王」など,ひょんなことから絶海の孤島に流れ着くというシチュエーションには何かしら人の心に訴えるものがあるが,よく考えたら蝿の王は違うかもしれない。まあ,退屈な日常から逃避する感覚というか,そんなの。
 「ザ・シムズ2」からスピンオフしたザ・シムズ ストーリーシリーズの第3弾は,うっそうとしたジャングルが広がる絶海の孤島,フェリシティ島を舞台にした恋あり冒険ありオランウータンありのサバイバル巨編「ザ・シムズ サバイバルストーリー」である。絶海の孤島にシム人が流されたら何が起きるのか? 彼(もしくは彼女)は無事,文明に戻れるのだろうか? というお話だ。もちろんやっているのがシム人なので,一筋縄じゃいかないのである。

 ファンならご存じだと思うが,このストーリーシリーズとは,ザ・シムズ2のゲームシステムやグラフィックスを使いつつ,あらかじめ用意された物語を追いかけながらゲームを進めていくという内容。要所要所で果たすべき「目標」が表示され,それらを順次クリアしながらお話の展開を楽しむという,人生シミュレーションにアドベンチャー要素を盛り込んだものなのだ。「なんでもできる」シムズ2だが,それだけに「次に何をしていいか分からない」という人も多い。そんなシムズビギナーでも無理なく楽しめるようにデザインされたのが,このストーリーシリーズだ。

燃え上がる炎。おそらくシムズ史上最も危険なシーンを経て,絶海の孤島へ。そこで待っているのは,文明から隔離された厳しい生活だ。でも,ちょっと楽しそう。オランウータンもいるし
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 日本で発売されたのはちょっと前のことだが,「こちら」でもお伝えしたように,EA STOREでのダウンロード販売が開始され,以前に比べてグッと入手しやすくなったので,ゲームの概略などについてここにレビューしてみようという魂胆なのである。けして,記事を書いたことをすっかり忘れて掲載のタイミングを逃し,どうしようかなと思っていたら都合よくダウンロード販売が開始されたというわけではないので,変な勘ぐりはぜひ止めていただきたい。

 さて,これまで,「ザ・シムズ ライフストーリー」「ザ・シムズ ペットストーリー」の二本がリリースされ,シム人達による山あり谷ありの人生模様やペットとの心温まる交流が描かれてきたこのシリーズ。今回も従来作同様,男女二人の主人公によるストーリーモードと,文明を遠く離れた場所で思う存分孤島ライフを満喫するフリーモードが用意されている。

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フリーモードでは,いつものようにプレイヤーの衣装が選べる。選べはするのだが,どれも漂着者らしくボロボロ。さあ,どのボロを着せてあげよう
 島に流れ着くのはジェシカ・ナイト(女性)とデビッド・ベネット(男性)のご両人だ。デビッドは理想のパートナーを探すために,またジェシカは旅行雑誌のライターとして,豪華ヨット「ソロモン・クイーン号」のクルージングに参加したところ,理由はよく分からないが船は大破沈没。からくも生き残った主人公が最寄りの島に漂着するシーンから物語が始まる。

 前2作は,まずは最初の主人公のストーリーからスタートし,ある程度物語が進んだところで,もう一人の物語がアンロックされるという寸法だったが,今回は最初っからジェシカとデビッド,どちらを選んで始めてもかまわない。なぜか? 実を言うと今回,ストーリーモードの物語は一つしかなく,それを好きなほうのキャラクターで楽しむというシステムになっているからである。ジェシカとデビッド,細かい部分,例えば恋愛相手の性別などは違ってくるが,どちらを選んでもメインストーリーの展開は一緒なのだ。

ジャングルだってやることは同じ だってシムズだもの


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「咳をしても一人」だったはずが,島には住民が住んでいた。何をして暮らしているのか知らないが,けっこう文明的だったりしてビックリだ
 さて,まずは主人公が島に流れ着いたと思っていただきたい。照りつける太陽。目に痛い緑のジャングル。身一つでビーチに打ち上げられ,助かった安堵感と文明から隔絶された不安感……とはいえ彼(もしくは彼女)はシム人である。途方に暮れるいとまもあらばこそ,さっそく,どうやって生き残り,どうやってここから脱出するかを前向きに思案するのである。最初にやるのは,流れ着いた島を「フェリシティ島」と名付けることだが,理由としては「なんとなく悪いことが起きそうもない名前」だからだ。さすがシム人である。
 生きていくために道具類を確保しなくてはならないが,これまたシムズ。「ナタが必要ね」とフキダシが出たとたん,カメラは浜辺に(なぜか)転がっているナタに飛んでいくので,よっぽど注意力散漫なプレイヤー以外,ゲームに詰まるなどということはまずあり得ないような気がするのだが,世の中って結構広いので自信はない。

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 さて,島の暮らしはどんな感じなのか? 普通のシム人であれば,朝仕事に出かけ(たまに夜勤もある),終わったら帰ってきて,冷蔵庫を開いて食事を作り,トイレで用を足し,シャワーを浴びてベッドで寝る。家具や電気器具などの必要なものは「購入モード」のリストを開いて買い,室内に置く。たまには電話をかけて友達の声も聞きたいという感じだが,なにしろここは文明から遠く離れた離れ小島。トイレもシャワーもない。仕事だってあるわけない。お店がないのだから購入モードなんてあるわけない……と思いきや,ちゃんとあるのである。うーむ,油断もスキもないとはこのことだ。
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一度訪問した場所は地図に表示され,次からはポータルを使った瞬間移動が可能になる
 購入モードは「物々交換モード」(いったい誰とだ?)になり,仕事としては葉っぱなどを集める「収集家」,いろいろなものが作れる「工芸家」,そしてジャングルならではの「ハンター」といった意表をついたものが3種類存在し,物々交換できるアイテムの中には携帯電話まである。適当な時間がくれば仕事に出かけ,収入の代わりに食料品や資材などを持って帰ってくる。それらを物々交換し(それにしても誰とだ?),ゴミを入れる穴だの,雨露をしのぐテントだのを手に入れ,暮らし向きを向上させていくわけである。
 要するに,やっていることはザ・シムズ2とそんなに違いはないのだ。サバイバル生活で問題になるのは食糧不足と想像されるが,海でサカナを採ったり,池で釣りをしたり,木になっているヤシの実やバナナをもいで食べたりと,割と大丈夫。さすがに空腹が続くと餓死してしまうが,それはザ・シムズ2本編でも一緒だ。
 携帯電話はホラ貝のような形をしており,通話前にブオーッと鳴らしてから使用に供する。通話原理はなんとなく分かるような分からないような気がするが,ともかくこれを使って知り合いとの会話を楽しんだり招待したりすることによって「社交」のパラメータを上げられる。
 さすがにタクシーは呼べないけど,その代わり,各マップに備えられた「ポータル」をくぐることで移動が可能になっている。ポータルは,それを使用するだけでなくマップを開いて目的地への瞬間移動も可能。目的地は最低一度は訪れて地図上に記載されている必要があるものの,マップは(カットシーン以外)好きなときに開けるので,移動に関していえばザ・シムズ2よりも楽になった印象だ。ハイテクである。孤島なのに。

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 まあそんな感じで,本作の離れ小島ライフはアメリカのアニメ「The Flintstones」(邦題 原始家族フリントストーン)に似ている。The Flintstonesも,石器時代の割には石の車に乗って会社に出かけたり,石のクラブでゴルフをしたり,マンモスの鼻がシャワーだったりと,アメリカンアニメの基本みたいな雰囲気で,このサバイバルもそれを踏襲しているのだ。けして,やせこけて目をギラギラさせた主人公が,襲ってくる猛獣を倒したり,飢えと渇きと絶望のあまり断崖から身を躍らせたりする世界ではないのだ。だってシムズだし。なんちゅうか,ヤシの葉で覆われたシャワーを浴び,ホラ貝電話で友達とおしゃべりするのは楽しそう。

文明とはなにか? そして人の幸福とはなんだろう


ゲームが進むにつれて,いろいろな住居に移り住める。こんな家で本当に暮らしてみたい
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 だが,主人公の望郷の念は強く激しい。彼(もしくは彼女)は,なんとかして懐かしの我が家に帰るため,イカダ作りを始めるのである。クイーン・ソロモン号がどこらへんをクルーズしていたのかよく分からないし,例えば「南太平洋の小島を巡る7泊の旅」なんて場合,イカダでどうにかできるとはあまり思えないのだが,やはりそこは人間(シム人だが),無為に日々を過ごすことはできないのだ。いかに細くとも,希望は希望なのである。ただし,おぼれる者がつかんだワラはしょせんワラという箴言もある。なかった?

 というわけで,イカダの材料を求めて島をさまよううち,なりゆきでオランウータンと知り合いになる。シムズ史上初の類人猿ペットの登場だ。おそらくElectronic Artsの「オランウータン制作チーム」のメンバーが実物や多数の資料を基に制作したのであろう,世界中,どこに出しても恥ずかしくないオランウータンぶり。……って,犬猫と違ってあんまり普段見かけることがないので,どの程度リアルなのかは実際よく分からないが,まあ見ていて飽きない。人獣,手と手を取り合ってのサバイバル生活が続くのである。ロビンソン・クルーソーとフライデーってところだが,オランウータンも仕事を持っているので,さらに食料品や資材を集めるのが楽になる。犬猫じゃ,こうはいかないだろう。
 その後,クイーン・ソロモン号の生き残りが出現したり,島の住民に出会ったりと次々にいろいろなことが起きていくが,このあたりのことはプレイしてのお楽しみとしておこう。そのほうが私も楽だし。
 さすがはシムズで,ゲームは全体に悠長なペースで進む。「ああ,これは一大事!」という緊迫したシーンでもお腹がすいたらご飯を作り,眠くなったら寝るという,とぼけたムードがいい。中には「友達を4人作る」といったいささか面倒なミッション(?)もあるが,本編のような「寿命」はないので,ストーリーに追われることなくあちこち寄り道してサバイバルライフを楽しめる。それぞれのマップはかなり細かく作り込まれており,廃墟となった神殿や朽ち果てた飛行場など,年季の入ったシムズプレイヤーでもかなり新鮮な気持ちになれる場所が多い。ただ,高低差の激しい場所ではカメラが追随できないこともあり,スクリーンショットがちょっと撮影しづらかった。まあ,普通にプレイしている分にはそんなに困ることではないだろう。

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 物語が進むにつれ,プレイヤーは「文明とはなんだろう」「人の幸福とはなんだろう」という疑問を持つはずだ。技術の発展は確かにさまざまな人間の希望を叶えてくれたが,それによって失ったものも数多くあるのではないかという雰囲気がしてくる。むろん,そうしたテーマが直接語られることはないにせよ,なんとなくそんな問いを発したくなるストーリー展開が,いつもながらさすがである。
 打ち寄せる波や緑深いジャングル。そして愛すべき素朴な人々。日常を遠く離れた島で主人公は,そしてプレイヤーは何を見つけるのだろうか? 相変わらずいい味を出しているシム人達と,離れ小島の一風変わったライフスタイルをぜひ楽しんでほしい。

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