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[gamescom]Sony Computer Entertainment Europeのミニトークイベントで,吉田修平氏やゲーム開発者達が「心の中のインディーズ魂」を語る
今回集まった開発者は,過去30年にわたってゲーム開発を続け,現在は京都でキュー・ゲームスを率いて「The Tomorrow Children」を開発中のDylan Cuthbert(ディラン・カスバート)氏,Ubisoft Entertainment初期からのメンバーであり,本イベントで発表されたばかりの「WiLD」を手掛けるMichel Ancel(ミシェル・アンセル)氏,「Tearaway 〜はがれた世界の大冒険〜」を開発したMedia MoleculeのRex Crowle(レックス・クロウル)氏,そして「DRIVECLUB」のゲームディレクターとして活躍するEvolution StudiosのPaul Rustchynsky(ポール・ルストチンスキ)氏というメンバーだ。
トークのテーマとなったのは,「現状のゲーム市場における,インディゲームの隆盛の影響」である。
まず,「今の時代のゲーマーとは,どんなタイプの人たちなのか」という質問について語り始めたのがカスバート氏だ。昨今のゲーマーは,ゲームの作り手から与えられた「ゲーム本来の遊び方」ではなく,「自分自身の遊び方」で楽しめる自己表現の場を求める傾向が強いのだという。それゆえに,サンドボックス型のゲームが大きなスポットライトを浴びているのだそうだ。
この意見には,吉田氏やルストチンスキ氏も同意し,サンドボックス型のゲームでは,PlayStation 4のに実装されるような,YouTubeなどのソーシャルメディアでの配信機能が,そのゲームを評価したり,購買を考慮したりするのに,大きな役割を持つだろうと述べていた。
キュー・ゲームス Dylan Cuthbert氏 |
Sony Computer Entertainment Worldwide Studios 吉田修平氏 |
こうした自分なりの楽しみ方という,ある意味身勝手な要求は,プレイヤーがゲーム世界に介入してさまざまなアイテムやオブジェクトを作り出していく,UGC(ユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツ)というコンセプトが,もはや珍しいものではなくなった昨今の状況を踏まえたものだ。アンセル氏は「ゲーマーは,もうそのゲームをどうやって遊ぶのか,手とり足とり解説してもらうことさえ拒んでいるのかもしれない」とし,「The Sims」シリーズや「Minecraft」のようなゲームのエンディングさえないような作品群が大きな脚光を浴びているのだと話す。これに続けて,先のYouTube配信やSHARE機能を用いるゲーマー層が増えていることに,吉田氏も「プレイヤー自身がコンテンツの一部と化しつつある」と表現していたのは興味深かった。
吉田氏は,「今回で,このイベントに参加するのは最後になるかもしれない」「(前回,時差ボケで居眠りをしていたという指摘から)バレないようにします」など,自虐的なジョークで会場を沸かせていたが,ソーシャルメディアの影響力を身をもって感じている様子。というのも,9歳になる娘の要望で,今年の夏は九州に家族旅行したそうだが,九州を選んだ理由は,娘が九州に在住する同年齢のYouTuberにハマっているからなのだそうだ。
また,クロウル氏も,ソーシャルメディアによる既存のゲームにはなかった発信力に対して,「Twitchでポケモンのライブストリーミングを行っている人達のプレイを見ていると,古いコンテンツでも新しく感じる魅力がある」と述べる。カスバート氏も続けて,「開発者が予想していたゲームとはまったく別のものになってしまう」としつつ,それがゲーム産業にポジティブに働いていることを強調していた。
Media Molecule Rex Crowle氏 |
Evolution Studios Paul Rustchynsky氏 |
こうしたことに関して,「インディーズといっても,何十億もの予算を自由に使えるメーカーもあって,その定義は非常に曖昧になりつつある。どんな立場であれ,みんな心の中のインディ魂(独立心)が復活しているのを感じているのではないか」とカスバート氏は話す。クロウル氏も「今回のSCEEのプレゼンテーションを見て,ゲーム世界が非常にカラフルになっているのを感じた。ダークな世界観やバイオレンスに依存するのではなく,開発者たちの発想も自由になっている証拠かもしれない」と語り,ゲーム開発者自身も,ゲーム作りのアプローチが変わってきていることを痛感している様子だった。
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