男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ：第618回「アイテム生産の面白さを抽出して煮詰めた『砂の国の宮廷鍛冶屋』」

著者近影

　注目を集めるのって難しい。注目に値すること（他人がやらないようなこと）をしていても，実際に注目されるかどうかはまた別問題。売れる売れないの話って，実はめちゃくちゃ難しい話なのよね。
　私は現状，売れていないプロレスラーではあるんだけども，プロレスの世界ではキャリアを重ねてしまって認知だけはされているという，そんなポジションにおります。こういう立場だから言えることではあるんだけど，売れる人ってすごいよねって話をしたいんです。でも，売れていない人も生きているって話でもあります。
　商売的な話だけをすると，基準が数字なんで売れたもの，利益を上げたものが一番価値がある。ただ，商売っ気を抜きに考えると，数字をどうとらえるかによって価値の順位が変わってくるのよね。社会貢献度で求めるのか，やり甲斐で求めるのか，狙った層の人に幸福をもたらすことこそが目的なのか。
　でも，どんな状況でもやはり商売は商売だから，数値を抜いては考えてはいけない。個人に焦点を当てても同じよね。売れている人は無条件ですごい。けど，世の中には売れていない人達も多い。じゃあ，売れている人に比べて価値が無いのかと言えば，そういうものでもない。
　確かにね，それこそ商売としては売れている人が正義ですよ。より大切に扱われるのは売れている人よ。売れている人のほうが数値を持っているわけだから，そういう利害でのお付き合いである以上は仕方がない。ある意味では非常にフェアよね。

　でも，人生単位で考えたとき，売れている売れていないはただの結果の一つなのですよ。どう売れたいか。どう売りたいか。どこに対して売りたいか。そもそも何を売りたいか。ここが重要になってくると私は考えているの。
　売れるためには方法を選んでられないってのも分かる。ただ，「自分の人生を充実させる」ことが第一目標である場合，何屋さんになって何をどう売るかという方法にこだわるのは，何ら恥ずべきものではないと思う。もちろんお金という数字は企業にとっても個人にとっても重要なものなので，自分のこだわりとどう折り合いをつけるかも，こだわりと同じくらい大切だけどね。
　そして，人生におけるこだわりを自分が意識していたら，他人を誹謗中傷するなんて，とてもじゃないけどできないんじゃないかとも思うのよ。ま，これは私のただの推測であるうえに，誹謗中傷なんて，その自覚なくやってしまうことのほうが多いんでしょうけど。もちろん私も含めて。
　おっと話がずれたわ。まとめると，国民的○○って言えるくらい売れたものはすごい。こだわって作られるものもすごいって話。

　で，今週紹介するのは「砂の国の宮廷鍛冶屋」（PC / PlayStation 4 / Nintendo Switch / Xbox Series X / Xbox Series S / Xbox One / iOS / Android）。ライドオンジャパンが開発し，KEMCOがパブリッシャをしている作品ね。
　最近とくに思うんだけど，KEMCOさんってすごいのよ。何がって，コンスタントに作品をリリースしているのが。この連載でもいくつかのタイトルを紹介させてもらってきたんだけども，時が経つほどすごいなって思いが増してくるわ。以前は数時間でクリアできるようなRPGを多く出しているなって印象だったんだけど，こだわりがそれだけじゃないことに気付いて。
　全タイトル，コンセプトが違うのよね。世界観が似ているケースはあるけど，ゲイムの“楽しませ方”がタイトルごとに違う。もちろんKEMCOがパブリッシャを務めた作品すべてをプレイしているわけじゃないから一概には言えないんだけど。きっとそういう狙いは持っているんじゃないかなと。
　砂の国の宮廷鍛冶屋に関しては，私はアトリエ系が好きで，冒険で素材を集めて新しい武器やアイテムを生産するって要素があるから気になってプレイしたわけで。まあ，言ってしまえばアイテム生産部分がこのゲイムの面白さではあるんだけどね。ただ，この「アイテムの生産」が，KEMCOから発売されている作品の多数で見られる“コンパクトであること”と見事に融合しているので，プレイ感覚に違いが生まれているの。
　要は，テンポが良いのよ。目的を達成したらこれができる，これができたら次はあれができる，あれができたら次は……のテンポがとても良い。戦闘も高速かつオート（もちろん通常スピードも選べます）でできるし，ひと言で言えば「話が早い」のよね。ゲイムをプレイしている感はしっかりありつつ話が早いっていう，現代社会にフィットした作品じゃないかしら。


　このゲイムはアイテム生産の面白さを抽出して煮詰めたタイトルだけど，KEMCOから出ている多くの作品には「コンパクト」という武器がある。もちろん，どのゲイムメーカーのどんなゲイムにも，その作品ならではのコンセプトがあると思う。でも，KEMCOに関しては「コンパクト」を，明らかに武器として選んでいるなという印象よね。もちろん，「レイジングループ」（PC / PlayStation 4 / Nintendo Switch / PlayStation Vita / iOS / Android）とかのじっくり遊ばせる作品もあるからあくまでトータルの印象として。
　まとめますと，砂の国の宮廷鍛冶屋は難しく考えてプレイする必要はなく，ゲイムを遊んだ気にさせてくれて，かつ値段もリーズナブルなのでオススメですよ。


　KEMCOが発売している作品が売れているのか売れていないのかは，正直私には分からない。どれくらい注目されているのかも。ただ，私の価値観で言うとKEMCOは「我々はこういう作品を売っている」というメッセージが作中から強く伝わってきて，純粋にすごいと思っているわ。内容には関係ないけど，広島県出身の私からしてみると，広島県に拠点を構えているっていう点も応援ポイント。
　最新ゲイム機のスペックをフルに使うようなゲイムも面白い。けど，スマホだったりで気軽に遊べるようなゲイムもまた面白い。ゲイムを作っている人は，数値と戦いながらチームや自分のこだわりを詰め込んで作ってくれているわ。
　現実問題，注目されているゲイムはやはり選びやすいという面はあるけどね。でも私としては，注目度がそれほどでもなかろうと，せっかく職人がこだわって作ってくれたゲイムをなるべく探し当てられればいいなあと思っておる次第です。そして連載をヤらせてもらってる以上は，ここでなるべくお伝えできれば。

　ところで，この緊急事態宣言が延長されたタイミングでPlayStation 5本体が当たったってわざわざ私に連絡してくる人がここ数日何人かいるけども，当たっていない人の気持ちを考えたらとてもじゃないけどできないよね，そういうこと！　そんな人の人格を疑うわぁ。……という誹謗中傷？　を交えつつ，新たにPS5本体の2月分抽選に応募した週末でございました。それではまた来週。

今週のハマりゲイム
PlayStation 4：「eFootball ウイニングイレブン 2021 SEASON UPDATE」
Nintendo Switch：「ダービースタリオン」「eBASEBALLパワフルプロ野球2020」「砂の国の宮廷鍛冶屋」
iOS：「龍が如く ONLINE」
iOS：「ハンドレッドソウル」
iOS：「ウイニングイレブン カードコレクション」

■■男色ディーノ（プロレスラー）■■ 今週末は試合がないという男色ディーノ選手。そこでじっくり積みゲイを消化しながら，2月14日に開催される神奈川・カルッツかわさき大会「KAWASAKI STRONG 2021」に向けて，英気を養うとのこと。なお，このタイミングで「何を遊べばいいのかいまいち分からなくなってきた」そうなので，読者の皆様からのオススメをぜひ，Twitterなどで直接伝えてみてください。