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男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第179回「自分との戦い」
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印刷2012/05/10 11:00

連載

男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第179回「自分との戦い」

画像集#001のサムネイル/男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第179回「自分との戦い」

著者近影
画像集#002のサムネイル/男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第179回「自分との戦い」
 戦いとは何か。

 私には,まだ分からないわ。我々プロレスラーという職業は,リング上で殴って蹴られて投げて極められて,日々戦ってる――そういうイメージがあるでしょうから,意外に思う人もいるかもしれない。
 そのイメージは,まあ間違ってはないんだけど,我々の戦いはあくまで肉体的,視覚的,あるいは商業的なものに過ぎないわけ。つまりプロレスラーが知っている戦いなんて,世の中にある戦いの一部でしかないのよ。しかも特殊な。
 だから私は,まだ戦いのなんたるかが全然分からない。そもそも私,プロレスラーだけじゃなく,生きとし生けるものは全て戦っていると思っているしね。会社や学校でも,ライバルはいっぱいいるでしょ。同期,上司,先生,先輩,後輩,ほかの組織の人,クライアント,フリーズするPCなどなど,数え始めたらキリが無いわ。それだけ世の中には,戦う相手が多いってことね。
 でも! 世の中には他人との戦いだけが存在してるわけじゃない。「己の敵は己自身」とはよく言ったもので,生きている限り,どうしても自分と戦わなければならない局面がある。そしてそれは,けっこう多い。
 そう。最終的に,いえ,一番最初に勝たなければならないのは,自分自身なのよ。眠いのに起きなきゃいけない。これも自分との戦いね。もっと寝ていたい自分と,起きなきゃいけない自分との。
 要は,自分の設定したルールに自分自身が勝てるかどうかってこと。しかも,自分の設定したルールは自分にしか分からない。つまり,判定も自分。勝つこともあれば,負けることもあるでしょう。他人に負けるのなら敗因はいくつか見つかるでしょう。けど,自分に負ける理由は「自分が弱いから」以外にない
 だから,自分にはなるべく負けたくないのよ。他人に負けること以上に,自分に対する負け癖は絶対につけちゃいけないと思うの。自分に負けることに慣れてしまったら,悔しさすら感じなくなっちゃう。で,悔しさを感じなくなったら,人生何をヤっても楽しくないから。だから,自分には負けたくない。なるべく負けない。

 ところで私,最近スマートフォンのゲイムにハマっているのね。理由は忙しかったから。スマホのゲイムってコンパクトな作りのものが多いから,空き時間についつい触っちゃうの。ちょっと前までは携帯ゲイム機が空き時間を埋める役目を果たしていたんだけど,ここにきてスマートフォンがちょっとした空き時間を人類から盗みおった。これはきっと私だけじゃないはずよ。
 ゲイム機は「さあ今からゲイムをヤるぞ!」っていうスイッチの入れ替えをしなきゃいけなかったのが,スマートフォンだと生活の延長でゲイムを遊べちゃう。このアドバンテージはでかいわ。
 思うに,スマートフォン用ゲイムが躍進しているの理由って,一つ一つのゲイムが安いとか,基本プレイ料金が無料だとか,そういったお金の面だけじゃないんでしょう。
 それこそ,お金だったら持っている人とそうでない人に分かれるけど,時間はそういうわけじゃない。誰にとっても一日24時間しかないわけで,その時間を何に充てるかで,その日が決まるわけ。当たり前の話だけど。
 で,以前はこの24時間の中に「ゲイムで遊ぶ時間」を,ある程度まとめて確保する必要があったと思うの。ところが,携帯ゲイム機の登場によって移動時間なんかにゲイムで遊べるようになった。さらに,自分がプレイしていない時間にも,ゲイム内で何かが起きるようなオンラインゲイムまで出てきた。そしてスマートフォンは,さらにそんな流れを加速させつつ,仕事の合間の時間にちょちょいとゲイムに触れられるようにしてしまった。
 忙しいと趣味の時間が削られてしまうから,「ゲイムで遊ぶ時間」が無くなってしまう。でも,仕事や移動にかかる時間を削ることは出来ない。したがって,仕事や移動と同時進行でスマートフォンのゲイムをプレイする。結果,スマートフォンでしかゲイムをしなくなる。そらぁ,この分野の調子がいいのも分かるわ。
 これって,どうやって人からお金をとるかではなく,まずはどうやって人から時間をとるかっていう発想が根っこにあるような気がするのね。で,時間をとっていくと,そこにお金がついてくる……と。そう考えてみたら,非常に納得できたわ。

画像集#003のサムネイル/男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第179回「自分との戦い」
 というのもですね,このゴールデンウィーク中は実際に上記の感じでずっとスマートフォンでゲイムしてたのよ。ホラ,プロレスラーって,他人様がお休みの時期に忙しくなる職種だから。家にも帰れないくらいね。だから,ついついプレイしちゃってたのね。具体的には,「戦国テンカトリガー」を。
 簡単にこのゲイムを説明するとですね,「カードを集めて日本全国の戦場を勝ち進んでいく」という,この上なくこの手のゲイムっぽいものなの。で,お金を一銭も払わなくたって遊べるんだけど,お金を払うといいカードが手に入りやすくなって,結果,勝ち進みやすくなる,と。
 ただ,このゲイムの面白いところは,ほかのプレイヤーともバトルはできるんだけど,メイン要素が天下を統一していく一人プレイってところ。あとは,お金を払わなくても超頑張ればレアカードが手に入るところ。ここでいう“超頑張る”とは,まめに戦場に出ることなんだけども。
 私が昔から好きな戦国時代もののシミュレーションゲイムなんかと比べると,ゲイム的に食い足りない部分はある。それでも,戦場に出す3名の武将カードの組み合わせで,戦績が劇的に変わるってあたりには思わず夢中になっちゃうのよね。つまるところ,このゲイムの面白味っていうのは,戦場に出す武将の組み合わせを考える,という部分なの。
 組み合わせをセットして武将達を戦場へ送り込んだら,あとはひたすら時間が過ぎていくのを待つだけ。一定時間が過ぎると自動的に戻ってきて,戦果を報告してくれる。まとまった時間がとれなくても,これぐらいならできるし,短時間であれゲイムをヤってる気になれちゃう。
 要するに,プレイ時間自体が短くてもヤった気になれるゲイムにハマるくらい,ゴールデンウィークの私には時間が無かったってことです。これってつまり,ちゃんとゲイムと向かい合う時間が無い人や気持ちがあんまり人には,激しくおススメできるゲイムってことでもあるかもしれない。

 ところで,私,この手の“基本プレイ料金無料(アイテム課金制)”のゲイムって,お金を払ったら負けだという自分ルールがあるのね。だから,この戦国テンカトリガーも,お金を使わずにヤっていたの。
 ただね,このゲイムってアメとムチの使い方がうまいのよ。お金を使わなくても,ある程度は進むことができるし,さっきも書いたとおりレアカードを引くことだってできる。ただ,キツい。ほとんど負ける。でも,なんとかできないわけでもない。この辺のさじ加減が巧みなのよ。
 そして,当然のことながらお金を払ったほうが,はるかに楽にはなるの。しかしながら! カードごとに各戦場での適性もあるもんだから,強いカードが一枚あればそれでいいというわけではない。で,ほかのカードも欲しくなる……。
 そうよ。負けちゃったの。自分に。目の前の楽さに負けて。生まれつきではなく,後天的に同性に走るパターンの一つとして,同性ばっかりの環境で寂しくなってつい……っていうのがあるんだけど,今回の私もこれに近いわね。
 半裸のおっさんとリング上でくんずほぐれつして,時間が無くてあんまりゲイムできなくて,ちょっとの空き時間にスマートフォンでゲイムやって,お金を使わないでいたらあまりにも思い通りにならなくて,心にぽっかり穴があいてしまってつい……。
 それにしても,めちゃくちゃ簡単に取り引きが成立しちゃうのね,この手の課金システムって。そして,一度お金を使ってしまうと,2度め以降にはさほど心理的抵抗が無くなってしまう。
 そういえば,とあるローカルインディープロレスラーが,ソーシャルゲイムにハマり過ぎて月に10数万円使ったという話を,「いくらなんでもそれはないでしょ」なんて思って聞いていたんだけど,何となく分かったわ。ただやっぱり,この手のゲイムで遊ぶときには,強い自分を保ったほうがいいわね。自分に負けた奴に言われたくもないだろうけど。イヤ,本当に。
 何だか最近いろんな動きがあるみたいだけど,私としてはこの手の課金自体が悪いとは思わない。だけどきっと,少なくとも遊ぶ側としては,お金を使うことに対して心を麻痺させちゃいけないわ。そのうえで楽しみたいわね。私もそうしたいと思った。

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 というわけで,ゴールデンウィークはリング上で戦ったり自分と戦ったりと忙しい毎日を過ごさせていただきましたが! ようやく落ち着いたので,あらためて24時間の中にゲイムで遊ぶ時間をきっちり設けようと思うわ。
 人生においてゲイムで遊ぶ時間って,無駄っちゃあ無駄だけど,無駄を楽しむから人生が楽しいのであって,やっぱり私にとってはゲイムで遊ぶ時間が必要なのね。
 そしてそうやって得た無駄を,リング上の仕事で吐き出す。で,そこで得た賃金をゲイムに費やす。接客業で得た賃金を接客されることに費やすような感じとでも言えばいいのかしら。だが,それがいい。風流せい! 風流せい!
 だから,今後もゲイムを楽しむし,同時進行で移動中にもスマートフォンでゲイムを楽しもうと思ってる。自分と戦いながら。結局,これだけ書いてきて「戦いとは何か」なんて全然分かんないままだけど,少なくとも「人生は戦い」だと思うわ。ではまた来週!

今週のハマりゲイム
(文字通りゲイムスロットにハマっているゲイム)
PlayStation 3:「ワールドサッカー ウイニングイレブン 2012
PlayStation Vita:「プロ野球スピリッツ2012
PSP:「クロヒョウ2 龍が如く 阿修羅編
Wii:「いただきストリートWii
ニンテンドー3DS:「ファイアーエムブレム 覚醒
Xbox 360:「トロピコ4 日本語版

■■男色ディーノ(プロレスラー)■■
ディーノ選手は5月13日(日),大阪のミナミ・ムーブ・オンアリーナで開催される,DDTプロレス「大阪・道頓堀ストーリー12」に出場します。当日は飯伏幸太選手とのタッグで,ヤス・ウラノ選手と火野裕士選手が持つKO-Dタッグ選手権のベルトに挑戦予定。ですが,ディーノ選手は「淡々と面白味のない試合をしてやるわ」と,不思議な決意を語ってくれました。ちなみにこの日の21:00から,プロレスバー「カウント2.99」で,男色ディーノイベントvol.7「エリートプロレスファン養成施設 尻の穴」なるイベントもあるそうなんですが,「こっちは無茶苦茶面白くするわよ。何も決まってないけど」とのことでした。
  • 関連タイトル:

    戦国テンカトリガー

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