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「Rage」のレビューを掲載。id Softwareの最新技術が描き出す,救いのない終末世界を生き抜くのだ
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印刷2011/11/12 00:00

レビュー

終末世界の空気感がたっぷり味わえる,id Softwareの完全新作

Rage

Text by 稲元徹也


 ゼニマックス・アジアから2011年10月6日,新作FPS「Rage」PlayStation 3/Xbox 360)が発売された(PC版は10月27日発売)。FPSというジャンルを生み出したといえる「Wolfenstein 3D」を始め「DOOM」「Quake」など,多くの名作を世に送り出したアメリカのid Softwareが開発を手掛ける久々の完全新作として,2010年〜2011年のE3やTGSなどでも注目されていた。
 実は筆者も,2011年5月に開催されたメディア向けの体験会で本作の体験版をプレイしており,その独特の美しいグラフィックスと荒廃した世界の雰囲気に魅了されている。発売されたらぜひプレイしようと思っていた作品でもあるので,ゲームの発売から少し間は空いてしまったものの,実際にXbox 360向け製品版のキャンペーンモードをフルにプレイしての感想やプレイフィールなどをここでお伝えしてみたい。

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「Rage」公式サイト



崩壊した地球に蘇った救世主


 小惑星の衝突による氷河期の到来を予期した人類は,選ばれた者を世界各地に作られた地下シェルター“アーク”に眠らせ,来るべき地球再建の日に備えるという「エデン計画」を発動した。しかし,文明崩壊後の地球は,人類が想定したようにはならず,盗賊やミュータントがうろつく,危険で無秩序な世界となってしまった。
 プレイヤーが操作する主人公は,地下で眠っていた,選ばれし者の一人で,人類の未来のために行動することになる。いわゆる「マッドマックス」や「北斗の拳」,最近でいえば「ターミネーター4」あたりの“世紀末”……という表現はできないような気がするので,言うなれば“終末世界”の物語が描かれるわけだ。シチュエーションとして目新しいものではないが,それだけに物語への感情移入は容易で,個人的には非常に好きな世界観だ。

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 余談だが,プレイヤーをこういった世界観へと導く要素が,同梱のマニュアルにはほとんど記載されていないのは少々残念。マニュアルにはゲーム中の拠点となる街のマップが見開きで載っている程度なのだ。インゲームのチュートリアルやヘルプがしっかり作り込まれているのでゲームの進行に支障はないが,なんとなくさびしく感じてしまった紙世代の筆者であった。


オープンワールドを行ったり来たりして進めていくFPS


 ゲームについてだが,本作は「Halo」シリーズのように,終始銃をかまえて行動するFPSとは少し趣が異なる。物語の舞台となる世界「ウェイストランド」は広大なオープンワールドであり,徒歩や車で自由に行き来できる。この世界には街や居住区,敵集団の基地などさまざまな施設が点在しており,主人公はそれらの拠点で,住人などから“ジョブ”と呼ばれる依頼を請け負い,それらをクリアすることで物語が進んでいく。三人称視点のアクションゲームではよく見られるスタイルなので,ゲームの進め方が分からないという人はまず,いないだろう。

最初に訪れる街,ウェルスプリングで,主人公が着るスーツのアーマータイプを決める。スーツによって「物資のディスカウント」「防御力上昇」「アイテム作成時の数や効果の増加」という特徴をそれぞれ持っている。一度選ぶと変更はできないので,よく考えよう
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所定のボタンを押すと,手持ちの武器ごとに異なるサイティングができる。腰だめで撃ってもなかなか当たらない。ちゃんと狙いを付けるのが基本だ
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 実際に銃を突き出したFPSスタイルで行動するのは,敵が存在する基地やアジトなどの内部でのこと。これらの場所は室内もあれば屋外もあり,ジョブの目的も,そこにいる敵を全滅させたり探索をしたりなど,いろいろだ。本作の第一の見どころは,こうした敵の待つさまざまな場所を描いたグラフィックスで,廃工場,ダム,下水道,病院,そして発電所など,緻密に描かれた敵の基地やアジトを舞台に,戦いを繰り広げていくことになる。
 id Softwareが独自に開発したゲームエンジン「id TECH 5」に実装された新技術“メガテクスチャ”によって高密度に描かれた風景と,ゲームバランスを崩すことなく作り込まれた戦いの舞台は,かつてそこにあったであろう「普通の」生活を想起させる独特の空気感を醸し出している。近年は書店で廃墟の写真集などが売られているが,本作の世界を歩き回れば,それを2〜3冊まとめて読んだような気分に浸れるかもしれない。

文明の名残をとどめる廃墟の雰囲気がいい。地表に舞う砂埃などの演出もナイス
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 そんな荒廃したウェイストランドでの戦いの序盤だが,難度は若干高い。ゲームスタート直後は手持ちのピストル1丁で敵に挑まなくてはならず,対する敵の耐久力は割と高め。FPS的にいえば,「固い」のだ。
 マップ上に置いてあるものや,倒した敵から手に入る弾薬も限られているので,かなり苦労することになる。それでもある程度ゲームが進めば,アサルトライフルやショットガン,スナイパーライフルといった高性能の武器を手に入れられるようになり,少しずつ難度のバランスがとれていくという感じだ。
 また,同じ銃器でも弾薬によって性能が変わり,例えばピストルからショットガン以上に威力のある弾丸を撃てたり,水気のある場所にいる敵を電撃で一掃するクロスボウを射ることができたりなど,ゲームが進むにつれて,いかにもSFらしい武器が次々に登場してくる。
 これらは事前に装備スロットに割り当てておくことで,武器/弾薬選択ボタン(Xbox 360版のデフォルト設定はRBボタン)とスティックを使って,いつでも簡単に切り替えられる。

武器は物語を進めることで,各所で入手できる。これらは最大4種類までクイックスロットに装備でき,行動中でも素早く武器と弾薬を選べる
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 これらの銃とは別に,武器として使えるアイテムにもSFチックなものがいくつか用意されている。例えば,ラジコンカー型の爆弾や,その場に設置すると自動的に敵を攻撃するタレット,さらに,プレイヤーのそばで護衛してくれるクモ型ロボットなど,役に立つものがたくさんあるが,その中でも筆者が多用したのは「ウイングスティック」だ。
 これは,ロード中のアイコンにもなっているプロペラ型のブーメランで,うまく扱うことで正面にいる敵の首を一撃ではね,壁などに当たって壊れなければ,ちゃんと手元に戻ってくる。このゲームを象徴する武器なので,プレイのときにはぜひ使いこなしてほしい。

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ウェイストランドは広大な世界。盗賊に襲われる可能性が高いので危険だが,慣れたら徒歩で移動してみよう。その広大さが実感できるはずだ
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 ウェイストランドはなにしろ物のない世界なので,弾薬やアイテムなど各種の物資はきわめて貴重だ。ちなみにウェイストランドではまだドルが流通しているようで,弾薬やアイテムを街で買うこともできるが,ほとんどの場合,現地調達が基本になる。
 倒した敵から奪ったり,ステージに落ちていたりする弾薬やアイテムは,もちろんその場で役に立つし,街で高く売ることもできる。さらに,ゲーム中に手に入るレシピをもとに,手持ちのアイテムを使って弾薬や攻撃アイテム,回復アイテムといった消費アイテムを作り出す“エンジニアリング”というシステムも用意されており,物資調達のための探索行動はゲームの進行において極めて重要だ。
 ときにはマップの隅の入り組んだ場所の,さらにオブジェクトの影にアイテム類が置かれていることもあるので,ステージをじっくり探して回るのも本作の面白さの一つかもしれない。ちなみに,使えるのは敵の死体をルートしたものと,置いてあるものだけで,残念ながら敵が落とした武器を拾って使うことはできない。

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盗賊やミュータントと化した人間が襲いかかる!


 主人公に襲いかかってくる敵は,ウェイストランドの各地を本拠とする盗賊集団と,オーソリティと呼ばれる,この世界で大きな力を持った組織の「人間タイプ」,そして隕石落下によって発生した「ミュータント」の二つに分けられる。
 前者は銃器や防具などの装備を持ち,組織的に行動する連中。後者は凶悪なモンスターそのもので,闘争本能を向きだしに集団でこちらに向かってくる。ともに手強い相手だ。
 こちらの武器はもちろん通用するが,例えば射撃を中心に攻撃してくる盗賊相手には,こちらも遠距離攻撃ができるスナイパーライフルやボウガンなどで対抗し,積極的に向かってくるミュータントに対しては,近距離に強いショットガンを中心に戦うといった,相手によって武器を使い分けるFPSの基本戦略が必要となる。
 アサルトライフルやマシンガンはどちらのタイプの敵相手でも使いやすく,筆者は基本装備として常に装備スロットに割り当てて使用していた。

デッド・シティと呼ばれる廃墟で繰り広げられる,ミュータントとの戦い。そこにある病院の中はかなりグロテスク
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山のように巨大なミュータントと遭遇。手に入れたばかりのロケットランチャーが役に立つ。物語中盤のヤマ場となるシーンだ
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ディフィブリレータはスティックとボタンでコマンドを入れて発動させる。時間内に正しくコマンドを入れることで,復活時の体力の回復具合が変わる
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 とはいえ,固くて数が多い敵の猛攻を受けあえなく倒れてしまった……ということもマレではない。その場合でも,主人公には“ディフィブリレータ”という蘇生能力が備わっており,これを使えばその場で生き返ることができるので安心だ。
 ゲーム的にはまあ,救済措置なのだが,このディフィブリレータを発動すると周囲の敵に大きなダメージを与えることができる。倒れてしまった主人公に罵声を浴びせながら近づいてきた敵が一撃のもとノックアウトされる一連の演出はなかなか痛快であり,なかなか近寄ってこない敵を引きつけて倒す最終手段としても使用できる。
 一度使うと,次に使えるまでチャージにしばらく時間がかかるので,ここぞというときのために温存しておくべきだ。確実にゲームを進めたいなら,使ったあとはチャージされるまで安全な場所で待つという手もあるだろう。

触手のような腕を持つ“クラーケン”(上)と,体液を飛ばしてくる“スライムミュータント”(下)。どちらも耐久力が高く,かなりの強敵
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 難度とは別の部分で少々気になったのはセーブ関連で,各ステージではその場所に入ったときや,場面が大きく変わったときにしかオートセーブがされないため,戦闘でうっかりやられてしまうと,セーブポイントまでかなり戻されることになる。ディフィブリレータがあるから大丈夫とタカをくくっていた筆者はそれでずいぶん痛い目にあい,本作でのセーブの大事さに気づかされた。
 ただし,オートセーブの間隔は大きいが,マニュアルセーブはどこでもでき,保存できるファイル数は15もある。老婆心ながら,これから遊ぶという人はこまめなセーブを心がけよう。ちなみに難度はイージー,ノーマル,ハード,そしてナイトメアの4段階あり,ゲーム中にいつでも変更できる。プレイしていて,こりゃ敵わんと思ったら,難度を下げてみるのも手だ。

盗賊は組織によって武装が異なり,中には厚い装甲をまとい,こちらの攻撃が効きづらい連中も。ミュータントのように,がむしゃらに襲いかかってくる連中もやっかいだ
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崩壊した世界では,命の次に車が大事


 武器のほかに重要なのは,車だ。ウェイストランドは完全な車社会なのだ。
 拠点や敵の本拠,目的地までの移動は,もちろん歩いてもできるが,あまりにも広大なので現実的ではない。序盤では4輪バギーが,中盤からは何種類かの車が手に入り,これらが主人公の役に立つ愛車となる。ウェイストランドでは,車を乗り回す盗賊も多く,うっかり遭遇すれば,容赦なくこちらに襲いかかってくる。
 彼らを撃退するためにはマイカーをチューンナップして,武装するのがベストだ。チューンナップには,ゲーム中に手に入れたお金や,開催されているレースで稼いだクレジットが必要だが,改造車でウェイストランドをかっ飛ばすのはなかなか気持ちよく,ゲームの中盤以降は,盗賊の車を破壊した際に入る賞金もいい稼ぎになる。お好きな人は,車いじりに精を出すのもいいだろう。

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 ウェイストランドを車で走り回っていて一つ気になったのが,この世界の全体マップが見られないことだ。目的地までのルートはゲーム画面のミニマップで分かるが,どこかに寄り道したいと思ったとき,その場所がいまひとつ分かりづらい。全体マップを知らなくとも指示された道を進めばクリアはできるが,せっかくのオープンワールドであるのだし,マップを見ながらあちこち行ってみたいと思うプレイヤーも多いだろう。このへんは,少々残念であった。

 日本語版のローカライズは,完全日本語吹き替えという気合の入ったもの。街のスピーカーなどから流れているアナウンスなどもすべて日本語になっている。敵の会話に違和感があったところもあるにはあるが,全体として高い完成度だ。プレイ中に字幕を読む煩わしさがなく,ゲームに集中できるのが吹き替えのいいところだろう。
 オプションで字幕の表示も可能だが,こちらは字が小さくて少々見づらかったので,オフのままでもいいだろう。また,本体の言語設定を英語にすると,音声も字幕も英語になる。2週目以降,本来の雰囲気を味わいたいという人は試してみよう。

J.K.スタイルズが主催する“ミュータント・Bash TV”。参加型のTV番組で,次々と現れるミュータントを倒して生き残れば多額の賞金を手にできる
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ウェイストランドで出会う人物は全員,個性的だ。彼らはオーソリティによる世界の支配を嫌い,人類の未来を担う主人公に協力してくれる
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ゲーム中に出会う数少ない女性達は,なぜかルックスがいい。日本語吹き替えだとさらに魅力的に感じてしまう
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「その後」がすごく気になった結末。果たして続編は?


 そんな本作をエンディングまで一気に遊んでみたわけだが,詳しいことはもちろん書けないものの,「その後」を強く意識させるエンディングになっており,続編の可能性もあるのではないかという気がした。個人的にも,せっかくここまで作り込まれた世界なのだから,さらに遊んでみたいという気持ちだ。今後配信されるであろうダウンロードコンテンツも楽しみである。

街では,ステージなどで入手できるカードを使ったカードゲームができる。デッキを組んで,相手の出してくるカードと戦うミニゲームだ
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重要なジョブは,街の主要な人物などから受けることとなる。ジョブは複数引き受けることができ,メニュー画面で内容の確認ができる
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街の住人からジョブを依頼されることも。こちらは宅配の仕事で,車を使ってウェイストランドにある宅配ボックスに荷物を届けるジョブ
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 筆者のキャンペーン総プレイ時間を参考までに記しておくと,いくつかの寄り道などを含めて17時間程度。ただし,敵にやられてずいぶんやり直してはいる。さらに探索を進めることは可能なわけで,全体としてかなりのボリュームといえるだろう。遊び応えは十分だ。
 今回は触れることができなかったマルチプレイモードについてだが,Xbox 360版の場合,3枚組ディスクのうちの1枚に収録されており,最大4人のプレイヤーが車を使って戦う“ロード・レイジ”と,二人のプレイヤーが協力して独自のシナリオに挑むCo-op“ウェイストランド・レジェンド”の2種類が用意されている。

 FPSというジャンルを世に広めたid Softwareの,完全新IPとしては「DOOM 3」以来,実に7年ぶりとなる本作は,ハイレベルなグラフィックスで描かれた終末世界の空気感をたっぷり味わいながら,過酷なサバイバルを繰り広げるFPSであった。しかも,得意のFPSにオープンワールドという新たなスタイルを取り入れ,RPG的な要素も加えた野心作だったのだ。id Softwareの新境地といえそうな本作を,秋の夜長にじっくりと楽しんでみてはいかがだろうか。

車は移動手段としてはもちろん重要だが,街で主催されているレースにも出場できる。草レースに勝利すると,新たな車がもらえることもある
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