連載
極私的コンシューマゲームセレクション:第13回「Wiiでやわらかあたま塾」
» 今回の「極私的コンシューマゲームセレクション」は,第4回の次は第13回での登場と,縁起がいいんだか悪いんだかよく分からない編集部のoNoが,「Wiiでやわらかあたま塾」を紹介する。いわゆる“脳トレ”タイトルに興味のある人はご一読を。
すっかり市民権を得た“脳トレ”系タイトル
脳力トレーニングというジャンルは,ゲーム機というプラットフォームを利用してはいるが,厳密にいえばゲームじゃないのかもしれない。ただ,ゲーム感覚で楽しめる作品だと思うし,そもそも話が進まないので,ここではゲームということで読み進めてほしい。
筆者が記憶している限り,セガが2004年10月に発売した知育玩具「脳力トレーナー」が脳力トレーニングブームの発端であったと思う(こちらも川島隆太教授が監修している)。また,同社からPSP用タイトルとして,「東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 脳力トレーナー ポータブル」(以下,脳トレP)が2005年10月に発売されている。
ただ,普及度においては脳トレDSのほうが圧倒的に上なのは確実だし,実際にプレイしても評価は脳トレPより脳トレDSのほうが上だと思う。ニンテンドーDSのタッチペン入力に対して,PSPでは○×△□の四つのボタンでの入力という,インタフェースの差が,両者の明暗を分けたのかもしれない。
筆者もブームに乗るべく,脳トレDSやその第2弾である「東北大学未来科学技術共同研究センター川島隆太教授監修 もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング」(以下,もっと脳トレDS)をプレイしたのだが,非常に出来がいいと感じたのを憶えている。
内容自体は,計算問題だったり記憶問題だったり文章の音読だったりと,ミニゲーム集というよりSPI(適性検査)のテストを受けているような気がする。ただ,脳年齢というスコアを出したり,継続してプレイすることでトレーニングできる項目が増えたりと,達成感をくすぐるという作りが非常によくできているのだと思う。
ただ,「複数で楽しむ」ための要素がちょっと薄いのが残念に感じられた。脳トレDSやもっと脳トレDSでは,一つのソフトに4人分のデータを保存して,4人分のデータを比較したりできるのだが,携帯ゲーム機の性質上,4人でシェアするというよりは,一人1台(1ソフト)という感覚のほうが一般的なのではないだろうか。ニンテンドーDSの通信機能を使って対戦もできるが,Wi-Fiではなくワイヤレス通信のみとなる。脳トレDSがターゲットとしている大人にとっては,ニンテンドーDSを持ち寄って,皆でわいわい楽しむ,という機会はなかなか持てない。結果,あくまでも一人で黙々とトレーニングに励むという形になり,同じことの繰り返しに堪えられる人でないと,脳力トレーニングを楽しめないことにもなる。
……なんだか,脳トレDSの話で終始してしまいそうなので,そろそろ本題に移ろう。今回紹介する「Wiiでやわらかあたま塾」(以下,Wiiやわらか塾)は,ニンテンドーDS版「やわらかあたま塾」の続編といえるタイトルだ。脳トレDSの陰に隠れて知名度はさほど高くないものの,ニンテンドーDS版「やわらかあたま塾」は,売上本数150万本以上という,ミリオンセラータイトルだったりする。
Wiiでやわらかあたま塾は「脳トレ+パーティゲーム」
筆者がWiiやわらか塾を買ったのは,最近物覚えがめっきり悪くなったとか,脳の衰えを感じたとか,そういう状況を改善するのに自己啓発なんかしちゃったりして,というような理由ではなくて,「なんかパーティゲーム代わりに使えそうだな」という軽いノリだった。
思いっきり私事なのだが,最近自宅に友人を呼ぶ機会が多く,そんなときに「あ,Wiiあるんだ。ちょっと遊ぼうよ」みたいな流れになることがよくある。だが,筆者の持っているタイトルといえば,どれもこれも一人でじっくりとやり込むタイプのもので,みんなで遊ぶという目的にはかすりもしない。そんなこともあってか,友人と遊ぶためにミニゲーム集のようなパーティゲームを買ってみたのだが,いまいちウケがよくなかったのである。
その理由としては,「ルールを憶えるのが面倒」「ゲームの上手下手が勝敗につながりやすい」という傾向が強いように感じられた。バリバリのゲーマーではない友人にとっては,ミニゲームとはいってもやはりゲームであって,適性というか得手不得手が如実に表れる。また,ミニゲームごとにプレイ方法やルールを憶えるのが面倒なのか,ゲーム中の説明をすっとばして,やり方も分からないままプレイしていることもよくあった。
皆で楽しむにしても,ハンデをつけたり,いわゆる「接待プレイ」をしないと拮抗したバランスが取れなくて,盛り上がりに欠けてしまう。そもそもゲームを楽しむという感覚に慣れていない人にとっては,あまり楽しめていないという印象を受けた。……そんな観察をするのはいやらしいといわれるかもしれないが,まあ職業柄しかたないのである。
そんなことを漠然と考えていた時期に,Wiiやわらか塾を見つけて「これならいけるかも」と思ったのである。脳力トレーニング系ならゲームに興味のない人でもとっつきやすいだろうし,ルールも憶える必要がないほど簡易なものだ。また,ちょっと調べてみたら,基本的にWiiリモコンとボタン一つのみで操作可能と,こちらも好印象。皆で楽しめるかもと期待しつつ購入してみたのである。
直感
・直感モグラ(見本と同じ絵柄を持ったモグラを叩く)
・推測しゃしん(ぼかしの入った/拡大写真から答えを推測)
・暗やみどうぶつ(暗闇をライトで照らし,どの動物が一番多いか当てる)
直感モグラ |
推測しゃしん |
暗やみどうぶつ |
記憶
・鳥かごシャッフル(シャッフルされる鳥かごで,鳥の入っているものを憶える)
・瞬間かお記憶(一瞬だけ映る人の顔の特徴を覚える)
・さかさ記憶(順番に出現する絵柄を憶え,その逆順で入力する)
鳥かごシャッフル |
瞬間かお記憶 |
さかさ記憶 |
分析
・型ぬきブロック(見本のブロックと同じ形に揃える)
・早撃ちクイズ(問題文の条件を満たすパネルをすべて撃ち抜く)
・形当てキューブ(見本と同じ形をしたブロックを選ぶ)
型ぬきブロック |
早撃ちクイズ |
形当てキューブ |
数字
・順番ふうせん(数字の書かれた風船を数字の小さい順に撃ち抜く)
・たし算つみ木(積み木に書かれた数字の和が指定された数字になるよう,邪魔なブロックをはじく)
・玉入れカウント(赤/青の玉のどちらが多くかごの中に入ったか答える)
順番ふうせん |
たし算つみ木 |
玉入れカウント |
知覚
・絵合わせスタンプ(見本と同じになるよう,欠けた部分を付け足す)
・レールつなぎ(電車の線路をゴールまでつなげる)
・まちがいアニメ(四つの中から動きの違うものを見つける)
絵合わせスタンプ |
レールつなぎ |
まちがいアニメ |
とまあ,それぞれの問題は,説明する必要がないほど簡単なルールのものばかり。仮に分からないとしても,ゲームを始める前に説明を読めるし,1回プレイすれば,そのルールを把握できるというレベルだ。
モードとしては,一人用では「やわらかテスト」「あたまのストレッチ」がある。やわらかテストは,各ジャンルの問題を順番に解いて,“やわらか度”を測定するというもの。あたまのストレッチは,各ジャンルから好きな問題を選んで遊ぶ,いわゆる練習モードだ。
多人数用としては,二つのチームに分かれて次々と問題を解いていく「たいせんレース」,制限時間内にできるだけ多くの問題を皆で協力して解く「きょうりょくサバイバル」,2〜4チームに分かれて16枚のパネルの問題を解き,合計得点を競う「どきどきパネル」の3種類がある。「たいせんレース」は最大4人,「きょうりょくサバイバル」「どきどきパネル」は最大8人でプレイ可能だ。
多人数プレイモードでは,チーム対戦や協力プレイを行う | ||
「どきどきパネル」では,めくるパネルによって難度ががらりと変わる。運の要素も入るので,プレイ経験があっても有利とは限らない | ||
「どきどきパネル」でのみプレイできる問題もある |
Wiiの通信機能を使えばWiiフレンドとの疑似対戦も可能
脳トレ系に「皆で遊ぶ」という楽しさを加えた良作
実際にやってみると分かるのだが,一人プレイのモードより多人数プレイのモードのほうが格段に面白い。一人プレイは,いわゆる脳トレ系のトレーニングに近い感覚で,それなりに面白いといった感じだが,人と協力または対戦して遊ぶと,かなり白熱する。Wii本体の機能である「似顔絵チャンネル」で作ったMiiを利用すれば,感情移入度も高まる。
それだけだと単なるパーティゲームとしての評価に留まるのだが,加えて本作では,Wiiの通信機能をうまく利用している点を評価したい。本作では,「塾生ブック」(=セーブデータ)にやわらか度やジャンルによる得手不得手といったデータが記録されるのだが,これをNPC代わりに対戦相手として選べるようになっている。しかもこの塾生ブックは,Wiiフレンド登録した人と交換できるようになっていて,友達がその場にいなくても,疑似対戦が楽しめるという仕組みだ。
この塾生ブック,どの程度再現性があるのか気になってみたので,初めてプレイしたときの塾生ブック,しばらくプレイしてゲームに慣れた状態で塾生ブックを別途作成して,それぞれと1対1で対戦してみた。結果としては,はじめての塾生ブックには圧勝できたが,対戦直前に作成した塾生ブックとはかなりの接戦となった。これにはちょっとびっくり。プレイを重ねてデータが蓄積されたら,対戦がより面白くなりそうな気がする。筆者は現在,レースゲームのゴーストモードのように,直前にセーブした塾生ブックと対戦を繰り返し,究極のやわらか度目指して奮闘している最中だ。
というわけで,パーティゲームとして買ってはみたものの,使い道がかなり広いことが分かり,時間を見つけてはWiiやわらか塾をプレイしている。あ,もちろん友人が遊びに来たときの評価も上々。パーティゲームとしての役目も十分果たしている。脳トレというかトレーニング自体したくないとか,「パーティゲームって友人が遊びに来たとき以外はやらないから買うのはちょっと……」と思っていた人には,脳トレ系としてはよりゲームっぽく,パーティゲームとしてはちょっと毛色の違った本作をプレイしてみてほしい。
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Wiiでやわらかあたま塾
対応機種:Wii
メーカー:任天堂
発売日:2007年4月26日
価格:4800円(税込)
CEROレーティング:A(全年齢対象)
公式サイト:http://www.nintendo.co.jp/wii/rywj/index.html
- 関連タイトル:
Wiiでやわらかあたま塾
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