レビュー
SteelSeries初のコンシューマ機(&PC)対応ヘッドセットの完成度をチェックする
SteelSeries Spectrum 5xb
SteelSeries Spectrum 4xb
国内では12月に発売された製品なので,タイミングとしてはちょっと遅れてしまったが,SteelSeries初となるXbox 360対応ヘッドセットの実力を確認してみたい。
「AudioMixer」を介してXbox 360と
つながるSpectrum。接続周りはやや複雑
ご存じのとおり,Xbox 360において,ヘッドセットは2.5mmミニピン端子でコントローラ側と接続されることになる。また,Xbox LIVE用と位置づけられるMicrosoft純正ヘッドセットがボイスチャット専用となっており,ゲームの効果音やBGMはXbox 360本体から別途出力されるというのも釈迦に説法だろう。
AudioMixerは,Xbox 360が持つ特殊なサウンド周りの仕様を,文字どおり「混ぜる」デバイスだ。SteelSeries SpectrumシリーズのヘッドセットとAudioMixerとを接続すると,まずボイスチャット用のヘッドセットとして機能するようになり,さらにXbox 360本体側からのアナログ出力を専用アダプタでインタラプトし,それをAudioMixerと接続することにより,ゲームの効果音やBGMをAudioMixer経由で5xb&4xbへ送れることになる。
AudioMixerからは実測全長3.7mで,最後にUSBと3.5mmアナログミニピンに分かれるケーブルが伸びているが,USB端子のほうは純然たる電源供給用。ミニピン端子のほうを,アナログRCAオス×2−アナログRCAメス×2&3.5mmミニピンメス×1変換アダプタのミニピン端子と接続し,アナログRCAオス×2側をXbox 360側のアナログサウンド出力端子と接続すれば準備完了である。
なお,AudioMixer側にはマイクのオン/オフを切り替えるスライドスイッチ,AudioMixer自体の動作状態を示すLEDインジケータと,「game」「voice」と書かれた2つのロータリーノブ,そして「LiveMix」のオン/オフ切り替え用スライドスイッチが搭載されている。
ロータリーノブとLiveMixの挙動と使い道については後述するが,マイクのミュートスイッチとボリュームコントローラがAudioMixer側に用意されているため,5xbや4xbヘッドセット単体をPCと接続して利用する場合,マイクミュートと音量調整をヘッドセット側で行えないという点は憶えておきたい。正直,PC用ヘッドセットとして使う前提ではかなり残念だ。
“Siberia系”のポップなデザイン
黒と白のセミオープンエア仕様
5xbと4xb,ヘッドセット側もチェックしてみよう。
外観はいずれも,SteelSeries Siberiaを彷彿とさせる,ポップなものになっている。黒を基調とした5xbではSteelSeriesのロゴとエンクロージャ部のライン,白を基調とした4xbではSteelSeriesのロゴ部で,それぞれXbox 360のイメージカラーであるライトグリーンが採用されているのは,外観上のアクセントといえる。
イヤーパッド部とクッションの作りは,少なくとも外から見る限りまったく同じ。40mmスピーカードライバーを搭載するのも同じだが,5xbのみ,そのドライバーユニットに「SunDancer(SCS)」という名が与えられているので,両製品では異なるスピーカードライバーを内蔵していると考えるべきだろう。
3月26日現在,SteelSeriesの日本語Webサイトだと4xbもSunDancer(SCS)ドライバーを搭載することになっているのだが,英語公式サイトだと5xbのみで,4xbがSunDancer(SCS)を搭載するという言及はないこと,そして簡単に着脱できるクッションを取り外すと,スピーカーユニットが異なるように見えることを踏まえるに,英語公式サイトの説明が正しいものと思われる。
ブームマイクは,SteelSeries製ヘッドセットでお馴染みの「左エンクロージャに収納でき,自在に設定できうえに遊びの少ないもの」が共通して採用されており,使い勝手は相変わらず良好。外観からして,マイクは単一指向性のあるモノラルタイプだ。
2モデルで大きく異なるのがヘッドバンド部とアナログケーブルで,まずヘッドバンド部は,5xbのほうが4xbよりかっちりした作りになっている。頭頂部の厚みにも違いがあるほか,頭と触れる部分も,5xbでは厚めのクッションを合皮が囲む設計なのに対し,4xbだとメッシュ加工された布で薄手のクッションを覆うといった具合になっている。
左右方向の可動範囲は5xbのほうが多少広いものの,一般的なヘッドセット製品と比べると,両製品とも狭い。
もう1つ,5xbだけが持つ特徴としては,3ピースに分解できる点を挙げられる。5xbではヘッドバンド部のクッションを両サイドから囲むような場所にストッパーボタンがあり,これを押し込みながらヘッドバンド部を引き抜くことで,エンクロージャ2つとヘッドバンドの3点に分解できるのだ。5xbは,外に持ち出しやすい設計になっているというわけである。
アナログケーブルは写真で比較すると一目瞭然だが,5xbのみ布巻仕様になっている。SteelSeriesによれば,2重の布巻となっている5xbのケーブルは,虎やライオンなど,鋭い歯を持った動物でなければ噛み切れないくらいの強度を得ているとのことで,要するにこちらのほうが耐久性は高い,ということなのだろう。
また細かい点ながら,ケーブルの先端にあるアナログミニピンが,5xbだと金メッキされているのに対し,4xbではそうではないといった違いもある。
ただ,バンドが短すぎたりすると,下側(=ケーブルの付け根側)が少し浮き,音漏れしたり,低音が抜けてスカスカに聞こえてしまったりするので,バンド幅の調整は万全を期す必要がある。
ソリッドでドンシャリの音質傾向
4xbは中高域にピークあり
ハードウェアをひととおり見てきたところで,テストに入っていこう。
PC用ヘッドセットを想定してきた筆者のレビューでは,これまで,ヘッドフォン部を試聴で,マイク部は波形測定と音声の試聴でそれぞれ行ってきたが,Xbox 360を始めとしたゲーム機ではその仕様上,PCと同じようにはできない。そこで,今回は下記のとおりテストを行うことにしている。
●PC環境
- ヘッドフォン出力テスト:「iTunes」によるステレオ音楽ファイルの再生と,「Call of Duty 4: Modern Warfare」(以下,Call of Duty 4)マルチプレイのリプレイ再生とで試聴する
- マイク入力テスト:波形測定と,サウンドカードと録音ソフトを使い,発声した音を録音し,それを試聴する(※方法の説明が長くなるため,波形測定方法は本稿の最後に別途まとめた。基本的には本文を読み進めるだけで理解できるよう配慮しているが,興味のある人は合わせて参考にしてほしい)
●Xbox 360環境
- ヘッドフォン出力&マイク入力テスト:2台のXbox 360と2台の5xb&4xbを用意し,Xbox LIVE上で「Halo: Reach」のマルチプレイを実行。その状態で,片方が発声した内容をもう片方で聞き取る
PC側のテスト環境は表のとおりだ。
前述したとおり,5xbと4xbのアナログケーブルは全長が1mしかない。今回は「PCI Express Sound Blaster X-Fi Titanium HD」(以下,Titanium HD)と接続するにあたり,オーディオテクニカ製のミニピン延長ケーブル「AT545A/3.0」(3m)を2本用いているので,この点はあらかじめご了承のほどを。
PC環境でのテスト
というわけで,まずはPCを使った検証からだ。
Titanium HDと接続し,CMSS-3Dheadphoneを無効化して音楽を試聴し,全体的な音質傾向を探ってみると,5xb,4xbとも,周波数のレンジ感が広く,同時に重低域と高域の強いドンシャリ傾向にあるのが分かる。中低域が強すぎない分,低音感はすっきりして良好だが,高域は,曲によって多少の“やり過ぎ感”もあった。
仕様上の周波数特性は5xb,4xbとも16〜28kHzだが,ドンシャリで,重低域から高域まで伸びるためか,仕様上40Ωとローインピーダンス系だからか,割とツルツル艶やか。「ソリッド」とも言い換えられるだろう。かちっとした音が好きな人なら,5xbも4xbも気に入るはずだ。
また,4xbには中高域に妙なピークがあるのも少々気になるところだ。具体的にはクラップ(拍手)の帯域にピークがあり,そのせいで少し位相がズレたように聞こえてしまうのである。全体として,5xbのほうが,上位モデルらしい音質を実現できているということになる。
CMSS-3Dheadphoneを有効にし,Call of Duty 4のマルチプレイを聞いてみると,CMSS-3Dheadphoneによるバーチャルサラウンド感が非常に良好だ。とくに後方(=リアチャネル)のシミュレートがよく,後方の音が後方にあるとはっきり分かる。側面も同様だ。正面がやや甘いのは,CMSS-3Dheadphoneの特性ゆえなのでやむを得ないが,正面の情報は映像から拾えるので,大きな問題ではないだろう。
また,非常に微小な音量で再生される「手榴弾が転がる音」も,かなりよく聞き取れる。今回,サウンドカード側のドライババージョンが新しくなっているので,CMSS-3Dのアルゴリズムに変化があったのかもしれないが,仮にそうだとしても,それをきちんと聞き分けられるようにするだけの能力が,5xbと4xbには備わっているわけだ。
気になったのは,音楽の視聴時にも指摘した,4xbが持つ中高域のピーク。このせいか,銃声がやたらキンキンして耳に痛い。5xbはそれと比べるとずいぶんマシだが,それでもドンシャリの音質傾向が影響してか少し高音が出すぎな嫌いはあるので,この点は指摘しておきたい。
低域の迫力は5xbのほうが迫力で勝る。その分,相対的に高域が弱くなるせいだろうか,ゲームをプレイすると,4xbと比べて,音はややマイルドに感じられる。
Xbox 360環境でのテスト
続いてXbox 360でXbox LIVEを介したテストを行ったときの結果だが,PCゲームや音楽でテストしたときと同様,5xbのほうが低域に厚く,高域もよりクリアなため,一聴して5xbのほうがよいと感じられる。価格も異なるので当たり前といえばそれまでだが,とくにHalo: Reachのような,重低音のドローン成分(※長い持続音,drone)を大量に含む効果音が多いタイトルでは,低域再生能力の違いがより顕著になる。
gameとvoiceの両ロータリーノブは順に,ゲームの効果音やBGM,ネットワークの向こうでしゃべっているほかのプレイヤーの声を無段階で調整できる。チャット音声を相対的に大きくしたければgameの音量を下げればよく,逆にチャット音声が大きすぎる場合はvoiceの音量を下げればいいわけだ。
USB給電ということもあり,正常に接続していない状態でも電源はオンになってしまうので,「動いている気配なのに,ボイスチャットが機能しない」という事態が起こりえる(※というか筆者も最初それにハマった)。この点はくれぐれも記憶に留めておいてほしい。
さて,Xbox LIVEでのテストにおいては,序盤で「後述する」としたLiveMixも検証する必要があるが,これは簡単にいうと,音声を聞き取りやすくする機能だ。
SteelSeries Spectrum,というかAudioMixerにおいて,ゲームの効果音とBGMは,ボイスチャットの音声と一緒にヘッドフォン出力されるようになっているわけだが,このときLiveMixスイッチをオンにすると,チャット相手の声をしっかり聞き取れるよう,銃声やら何やらといった「声以外の音」を下げてくれる。そして,チャットが終わると音量が元に戻るという仕掛けになっている。
マニュアルによると,スイッチをオンにしていた場合,チャット開始後10ms(10ミリ秒)でLiveMixは有効になり,チャット終了後は1.5s(1.5秒)かけて元の音量に戻るという仕様になっているとのことだが,一言でまとめると,仕様どおり正常に機能する。とくに,銃声など,大きな音が露骨に下がるので,乱戦であればあるほど効果ははっきり分かる印象だ。
ただ,LiveMixがはっきり機能するということは,「(手榴弾がプレイヤーの後方で転がる音などといった)小さい音量の効果音がさらに下がって,聞き逃す可能性が高まる」ということと同義でもある。音情報としての効果音が重要な場合,必ずしも常時有効にすべき機能とは言えない点には注意が必要だ。もちろん,それを理解しているからこそ,SteelSeriesはLiveMixのオン/オフスイッチを用意したのだろうが。
ただ,1つフォローしておくと,この手の“オマケ機能”は実用的でないものがほとんどなのに対し,LiveMixにははっきりした効果がある。この点,LiveMixに対する評価はポジティブであっていいと思う。使うかどうかは,プレイヤー側で適宜判断すればいいのである。
仕様も見かけも同じだが
音質傾向が異なるマイク入力
続いてはマイク入力品質だ。今回から,収録に使用している「ProTools|HD」のソフトウェアバージョンが9.0.1になっている点を報告しておきたい。
で,マイク入力テスト結果は下に示したとおり。5xb,4xbとも,仕様上は75Hz〜16kHzを受け付けることになっているが,グラフを見る限りは50Hz〜14kHzくらいといったところか。
5xbのマイク入力波形 |
4xbのマイク入力波形 |
リファレンスと比べると,5xbは5〜7kHz付近,4xbは6kHz付近にピークがあり,この効果で,クリアかつ嫌らしくない高域が生まれている。また,6kHz以上の波形は2製品でほぼ同じだ。
一方,スピーカーのクロスオーバー周波数から生じていると思われる,「1.4kHz付近にあるいつもの落ち込み」を除くと,1kHz以下の周波数帯域では,両製品に違いが認められる。5xbでは1kHz以下が大きく落ち込み,ピークよりも20dbほど低い状態を維持するのに対し,4xbでは最大でも10dB落ちていない。もっとはっきりいうと,4xbのほうが低域が強い。カバーを含めたマイク部の見た目は5xbと4xbで同じだが,内蔵するマイクユニットなどが異なるのかもしれない。
声の低い人が使うと,5xbの場合,喉鳴りのような低い音が相当弱く聞こえるはずで,その点は懸念材料だが,ゲームプレイ中,人は張った声で話すことのほうが多いので,情報としての声を相手に伝えるという観点では,5xbのはっきりした音質が好まれることのほうが多いはずだ。
なお,Xbox 360 Eliteに標準添付のヘッドセットと比べると,先ほど「籠もって聞こえる」と指摘した4xbでも明らかに優れている。標準ヘッドセットでは高域が落ちていて,ガサガサした音に聞こえ,その分何をしゃべっているのか分かりにくい。4xbのほうがはるかに明瞭である。
手堅くまとまっており,Xbox 360用としての完成度は高い
使い勝手はマイナスだが,総合的には投資に見合う
ゲーマー向けヘッドセットブランドとしては定番の位置にあるSteelSeries製品ということもあり,Xbox 360対応第1弾となった5xb,4xbとも,ヘッドセット部はいい意味でこなれている印象だ。ヘッドフォン部は手堅くまとまっており,音質も,ドンシャリ気味ゆえ好き嫌いは分かれるものの,同価格帯の音楽用ヘッドフォンと比べて,明らかに劣るような部分はない。
PC用としては「とりあえず使用は可能」という域を脱していないので,PCのみで使うつもりなら,わざわざ本シリーズを指名する理由はない。「PCでも使えなくはないXbox 360用ヘッドセット」と理解しておくのが正解だが,同時に,Xbox 360対応ヘッドセットとして,SteelSeries Spectrumが,投資に見合う製品であることも,また確かだ。
Xbox 360純正ヘッドセットに,テレビ内蔵スピーカーでゲームをプレイしている人であれば,4xbに変えるだけで数段上のサウンド環境を手に入れられるが,より迫力のある音を楽しみたいとか,とにかくチャット時の音質を重視したいということであれば,5xbを選んだほうが幸せになれるだろう。
それはそうと残念なのは,やはりケーブル周りの取り回しである。Xbox 360側の仕様によるものなので,SteelSeriesに非はないのだが,それにしてもケーブルの取り回しは面倒。プレイヤーによっては,この仕様だけでギブアップするのではないかと懸念されるほどに「うざい」のだ。常用にあたって,ケーブルの取り回しが課題になることは,記憶に留めておいたほうがいいと思われる。
SteelSeriesの5xb製品情報ページ
SteelSeriesの4xb製品情報ページ
■マイク特性の測定方法
マイクの品質評価に当たっては,周波数と位相の両特性を測定する。測定に用いるのは,イスラエルのWaves Audio製オーディオアナライザソフト「PAZ Psychoacoustic Analyzer」(以下,PAZ)。筆者の音楽制作用システムに接続してあるスピーカー(ADAM製「S3A」)をマイクの正面前方5cmのところへ置いてユーザーの口の代わりとし,スピーカーから出力したスイープ波形をヘッドセットのマイクへ入力。入力用PCに取り付けてあるサウンドカード「PCI Express Sound Blaster X-Fi Titanium」とヘッドセットを接続して,マイク入力したデータをPAZで計測するという流れになる。もちろん事前には,カードの入力周りに位相ズレといった問題がないことを確認済みだ。
PAZのデフォルトウインドウ。上に周波数,下に位相の特性を表示するようになっている
測定に利用するオーディオ信号はスイープ波形。これは,サイン波(※一番ピュアな波形)を20Hzから24kHzまで滑らかに変化させた(=スイープさせた)オーディオ信号である。スイープ波形は,テストを行う部屋の音響特性――音が壁面や床や天井面で反射したり吸収されたり,あるいは特定周波数で共振を起こしたり――に影響を受けにくいという利点があるので,以前行っていたピンクノイズによるテスト以上に,正確な周波数特性を計測できるはずだ。
またテストに当たっては,平均音圧レベルの計測値(RMS)をスコアとして取得する。以前行っていたピークレベル計測よりも測定誤差が少なくなる(※完全になくなるわけではない)からである。
結局のところ,「リファレンスの波形からどれくらい乖離しているか」をチェックするわけなので,レビュー記事中では,そこを中心に読み進め,適宜データと照らし合わせてもらいたいと思う。
用語とグラフの見方について補足しておくと,周波数特性とは,オーディオ機器の入出力の強さを「音の高さ」別に計測したデータをまとめたものだ。よくゲームの効果音やBGMに対して「甲高い音」「低音」などといった評価がされるが,この高さは「Hz」(ヘルツ)で表せる。これら高域の音や低域の音をHz単位で拾って折れ線グラフ化し,「○Hzの音は大きい(あるいは小さい)」というためのもの,と考えてもらえばいい。人間の耳が聴き取れる音の高さは20Hzから20kHz(=2万Hz)といわれており,4Gamerのヘッドセットレビューでもこの範囲について言及する。
周波数特性の波形の例。実のところ,リファレンスとなるスイープ信号の波形である
上に示したのは,PAZを利用して計測した周波数特性の例だ。グラフの左端が0Hz,右端が20kHzで,波線がその周波数における音の大きさ(「音圧レベル」もしくは「オーディオレベル」という)を示す。また一般論として,リファレンスとなる音が存在する場合は,そのリファレンスの音の波形に近い形であればあるほど,測定対象はオーディオ機器として優秀ということになる。
ただ,ここで注意しておく必要があるのは,「ヘッドセットのマイクだと,15kHz以上はむしろリファレンス波形よりも弱めのほうがいい」ということ。15kHz以上の高域は,人間の声にまず含まれない。このあたりをマイクが拾ってしまうと,その分だけ単純にノイズが増えてしまい,全体としての「ボイスチャット用音声」に悪影響を与えてしまいかねないからだ。男声に多く含まれる80〜500Hzの帯域を中心に,女声の最大1kHzあたりまでが,その人の声の高さを決める「基本波」と呼ばれる帯域で,これと各自の声のキャラクターを形成する最大4kHzくらいまでの「高次倍音」がリファレンスと近いかどうかが,ヘッドセットのマイク性能をチェックするうえではポイントになる。
位相は周波数よりさらに難しい概念なので,ここでは思い切って説明を省きたいと思う。PAZのグラフ下部にある半円のうち,弧の色が青い部分にオレンジ色の線が入っていれば合格だ。「AntiPhase」と書かれている赤い部分に及んでいると,左右ステレオの音がズレている(=位相差がある)状態で,左右の音がズレてしまって違和感を生じさせることになる。
位相特性の波形の例。こちらもリファレンスだ
ヘッドセットのマイクに入力した声は仲間に届く。それだけに,違和感や不快感を与えない,正常に入力できるマイクかどうかが重要となるわけだ。
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