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GeForce 8800
  • NVIDIA
  • 発表日:2006/11/09
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ゲーマーのための「PureVideo」発達史,2008年初頭版
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印刷2008/02/08 11:52

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ゲーマーのための「PureVideo」発達史,2008年初頭版

画像集#002のサムネイル/ゲーマーのための「PureVideo」発達史,2008年初頭版
 NVIDIAのビデオ再生支援技術「PureVideo」は,GeForce 6シリーズで初めて実装されてから,着実に進化を重ねてきた。ゲーマーの立場からすると,GPUに求めるものはあくまで3Dグラフィックス処理性能であり,ビデオ再生支援技術“なんてもの”は二の次になりがちだが,少なくともいまGeForceファミリーのGPUを搭載したグラフィックスカードを購入すればPureVideo――後述するが,正確には「PureVideo HD」――がオマケで付いてくる事実はある。
 今回筆者は,NVIDIAのPureVideo担当者と話をする機会を得た。そこで得られた興味深いその内容を踏まえつつ,PureVideoの歴史とこれからを一度整理してみたいと思う。


PureVideoの歴史を振り返る

2008年時点の最新GPUでHDビデオをフルサポート


 GeForce 6世代,2004年後半に実装されたPureVideoは,インタレース解除やブロックノイズの軽減などを実現する動画の高画質再生機能としてスタートしている。もっとも,初代PureVideoは,ハードウェア的なビデオ再生支援機能よりも,ソフトウェアとピクセルシェーダユニットを使ったビデオ高画質化機能としての性格のほうが強かった。
 もう少し細かく説明しよう。最初期のPureVideoは,DVD-Videoなど,画面を偶数ラインと奇数ラインの2回に分けて描画するインターレース映像をPC用ディスプレイに表示するとき,“二つの映像”を合成するときに生じる画面のズレを,独自のアルゴリズムで解消する高画質化エンジンとしての意味合いが強かったのだ。ちなみにPureVideoを有効化するには有償配布となるNVIDIA製のコーデックソフトウェアが必要で,ビデオ再生ソフトも「Windows Media Player」に限られるなど,制約が非常に多いのも特徴だった。

GeForce 6シリーズで採用されたPureVideo。GeForce 6シリーズに搭載されたビデオプロセッサは,MPEG-2の再生などのシンプルな機能を実装したのみだったため,高画質化などの処理は,ピクセルシェーダユニットやCPUを使ったソフトウェア処理がほとんどだった
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最初期段階のPureVideoでは,インタレース映像の合成時に生じる「ジャギー」と呼ばれるギザギザや,映像のズレに起因する文字などのディテールの欠落を補完するのが主な目的だった
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 この動作条件が大幅に改善されたのが,GeForce 7シリーズの投入以降である。NVIDIAは,ドライバレベルでPureVideoの機能を実現できるように変更し,有償のコーデックソフトウェアは不要になった。また,CyberLinkやInterVideo(現Corel)といったサードパーティ製のビデオ再生ソフトもPureVideoをサポートするようになり,PureVideo環境導入のハードルはぐっと引き下げられた。

GeForce 7800シリーズの投入とともに,NVIDIAはサードパーティ製ソフトからもPureVideoを利用できるようにし,さらにノイズリダクションやエッジ補間といった機能も追加した
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 GeForce 7世代においては,PureVideoの主立った機能を統合した「VP1」というビデオエンジンが搭載され,Blu-rayやHD DVDなどといった高解像度ビデオ(※「High Definition」「ハイビジョン」ともいう。以下本稿では「HDビデオ」と表記)コンテンツの再生支援もサポートされるようになる。そして「HDビデオもサポートする本格的なハードウェアベースのビデオ再生機能」として,呼称も「PureVideo HD」に改められた。

画像集#009のサムネイル/ゲーマーのための「PureVideo」発達史,2008年初頭版
VP1とVP2の違い。VP2ベースとなる第2世代のPureVideo HDでは,BSP(BitStream Processing)エンジンとAES128エンジンの追加によって,ハードウェア再生機能が大幅に強化された
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PureVideo HDの第1世代(VP1,GeForce 7900 GT)と,復号演算回路をGPUに統合した第2世代PureVideo HD(VP2,GeForce 8800 GT)では,H.264ベースのHDビデオコンテンツ再生時におけるCPU使用率で劇的な違いがある
 しかしVP1には,Blu-rayやHD DVDで採用される「H.264」「VC-1」「HD MPEG-2」フォーマットベースのHDビデオデータに対する動き補償処理(Motion Compensation)やブロックノイズ除去(Deblocking)こそハードウェア側で行えるものの,それ以外はCPUによるソフトウェア処理になるという制限があった。HDビデオコンテンツの再生において最も負荷が高い,圧縮されたビデオデータの復号演算(Bitstream Processing)や逆変換処理(Inverse Transform)といった処理はCPU側で行う必要があり,結局のところ,「H.264方式のBlu-rayやHD DVDコンテンツのスムースな再生は,デュアルコアCPU搭載システムでようやくこなせる」状況だったのだ。ちなみに,「GeForce 8800 GTX/Ultra」が搭載するのは,GeForce 7シリーズと同じ初代PureVideo HDである。

 この制約が外れ,HDビデオコンテンツのフル再生機能を実装したのは,「VP2」ビデオエンジンを搭載した「GeForce 8600」以降のGPUからだ。
 GeForce 8600以降のGPUでは,VP2のほか,「BSP」(BitStream Processing)エンジンと呼ばれるH.264の復号演算ユニットや,(コンテンツ保護用の)AES128bitの暗号解除ユニットも併せて実装されており,HDビデオ再生時のCPU負荷を最小限に抑えることが可能になった。

GeForce 7シリーズでは,VP1で動き補償処理(Motion Compensation)とブロックノイズ除去をハードウェア支援したが,最も負荷が高い復号演算や逆変換処理はCPUで処理していた。BSPエンジンやAES128bitの暗号解除ユニットを実装したのはGeForce 8600以降
画像集#011のサムネイル/ゲーマーのための「PureVideo」発達史,2008年初頭版

 ただし,GeForce 8600など(GeForce 8800 GTX/Ultra以外のGeForce 8000シリーズ)に搭載された第2世代PureVideo HDも,まだ十全ではない。というのも,第2世代PureVideo HDで採用されているビットストリーム復号演算回路(=BSPエンジン)は,H.264で採用されている「CABAC」「CAVLC」のみのサポートで,HD DVDで採用されるVC-1フォーマットの,ハフマン符号の復号には対応していないのだ。

Patrick Beaulleu氏(Marketing Manager, PureVideo, NVIDIA)
画像集#012のサムネイル/ゲーマーのための「PureVideo」発達史,2008年初頭版
 今回は,NVIDIAでPureVideoのマーケティングを担当するPatrick Beaulleu(パトリック・ビューロゥ)氏に話を聞いたのだが,氏はこれまで「VC-1は,今日(こんにち)のデュアルコアCPUであればそれほど大きな負荷にならないため,H.264のビットストリーム復号演算の対応を優先させた」と説明してきた。それに対し,最近発表されたAMDプラットフォーム向けグラフィックス機能統合型チップセット「GeForce 8200 mGPU」ではVP2に(VC-1で採用されている)ハフマン符号の復号演算ユニットを追加することで,ついにBlu-rayやHD DVDで提供されるHDビデオコンテンツのすべてをGPU側で再生処理できるようになっている。「シングルコアCPUとも組み合わされることがあるGeForce 8200 mGPUでは,HDビデオコンテンツ再生時にCPUへの負担が少なければ少ないほどいい。これは分かり切ったことだ」(Beaulleu氏)。

AMDプラットフォーム向けの最新チップセットとなるGeForce 8200 mGPUでは,H.264のCABACとCAVLCに加え,VC-1のハフマン符号の復号演算もサポート。HDビデオコンテンツをフルレンジでハードウェア再生できるようになった
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GeForce 8200 mGPUとHybrid Power対応GPUとを組み合わせれば,HDビデオ再生時など,ゲーム以外の局面では単体グラフィックスカードの消費電力を0Wにできると謳う
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 NVIDIAはあまり積極的にアピールしていないが,「AMDプラットフォーム向けフラグシップチップセットとなる『nForce 780a SLI』などにも,この最新PureVideo機能が実装されている」とBeaulleu氏は説明する。同氏によれば「nForce 780a SLIなどは,ハイエンドグラフィックスカードや高性能なCPUとの組み合わせが想定されるため,GPU性能についてはあまりアピールしていないが,コアそのものはGeForce 8200 mGPUと同じもの」とのこと。要するに,「Hybrid Powerにより,3Dゲームをプレイするときはグラフィックスカードのフルパワーを発揮させつつ,HDビデオコンテンツの再生時は,GeForce 8200 mGPU側で処理する」といったことが可能になるわけだ。
 惜しむらくは,GeForce 8シリーズだとHybrid Powerに対応できない点。いま述べたような使い方は,次世代グラフィックスカードの登場を待たねばならない。なお,次世代グラフィックスカードに搭載されるGPUには,遅かれ早かれGeForce 8200 mGPUと同等のPureVideo機能が盛り込まれてくる見込みだ。

PureVideoの強化により,低消費電力でのHDビデオ再生が可能になるとNVIDIAは主張する。写真は2008 International CESに先立って開催された報道関係者向け説明会で展示された,GeForce 8200 mGPUベースのマザーボードを採用するシステム。Blu-rayコンテンツ再生時にも,システム全体の消費電力は60Wに届かない
画像集#015のサムネイル/ゲーマーのための「PureVideo」発達史,2008年初頭版 画像集#016のサムネイル/ゲーマーのための「PureVideo」発達史,2008年初頭版


ハイエンドGPUではリアルタイム色補正を実現

将来的にはミドルレンジ以下のGPUでも対応へ


初期PureVideoにおける“Automatic Green, Blue & Skin Tone Enhancementsと同等の機能”では,ピクセルシェーダーやピクセルパイプラインを使って色彩を補正していた。そのため,シェーダ構成の変わってしまったDirectX 10世代のGPUを利用するに当たって,新たなアルゴリズムとして実装し直されることになったわけだ
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 GPUによるHDビデオ再生フルサポートに合わせて,第2世代PureVideo HDでは,デジタルイメージの拡張機能がドライバアップデートによって実現される。
 同様の機能は初期PureVideoでも一部実現されていたが,今回のデジタルイメージ拡張では,コントラストの自動補正を行う「Dynamic Contrast Enhancement」(ダイナミックコントラスト拡張),そしてビデオデータの1フレーム1フレームを解析し,ユーザーがより好ましいと感じる肌の色や緑,青といった色彩補正を行う「Automatic Green, Blue & Skin Tone Enhancements」(緑,青および肌の色の自動拡張)が実現されるなど,大幅な進化を遂げることになる。

上は,画面全体のコントラストを解析して自動補正するという,ダイナミックコントラスト拡張の概念図。下はユーザーが好ましいと思う肌の色や青,緑などの色彩を実現する映像エンジン的な役割を果たす拡張機能のイメージだ。いずれもフレーム1枚1枚を解析しながら処理するため,ストリーミングプロセッサを数多く搭載するGeForce 8800 GTや次世代GPUが動作には必要
画像集#018のサムネイル/ゲーマーのための「PureVideo」発達史,2008年初頭版
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 Beaulleu氏はこのデジタルイメージ拡張を「デジタルHDディスプレイ時代に不可欠な技術」と位置づける。地上デジタルテレビ放送の開始や,デジタルビデオコンテンツの普及によって,PCでビデオ再生を楽しめる機会はこれまで以上に増え,またHDビデオ再生に対応した22インチクラスの液晶ディスプレイも低価格化し,PCのビデオ環境をぐっと身近なものにしているからだ。
 しかしながら,低価格な高解像度液晶ディスプレイと,一般的な液晶テレビでは,映像の見栄えや色再現性が大きく異なる。「家電メーカー各社は,液晶テレビにコントラストや色彩を拡張する映像エンジンを搭載するケースが多いだけに,一般的な液晶ディスプレイでBlu-rayやHD DVDといったHDビデオコンテンツを再生したときのギャップが大きい。そこで,新たにエンドユーザーが好ましい色に補正するアルゴリズムを開発し,PureVideoに実装した」と,Beaulleu氏は説明する。

 ただ残念ながら,このイメージ拡張機能を現行GeForceファミリーのGPUすべてで実現できるわけではない。「すべての映像に対してフレームごとに解析,補正をかける処理は,ストリーミングプロセッサを使って行っている。そのため現状では,本機能を有効にできるのはGeForce 8800 GTなどといったハイエンド製品に限られる」とBeaulleu氏。
 統合型シェーダ(Unified Shader)アーキテクチャを採用するDirectX 10世代のGPUでは,「シェーダユニットそのものの構造が,DirectX 9世代のピクセルシェーダユニットから簡素化されているため,複数のストリーミングプロセッサを組み合わせた処理を行なう必要が出てくる」とのことで,デジタルイメージ拡張は,ハイエンド製品のみの実装になるとのことだった()。

※ ドライバレベルではデジタルイメージ拡張機能を有効にできる“可能性”を持つGeForce 8600 GTだが,ストリーミングプロセッサ数がカギを握るデジタルイメージ拡張において,パフォーマンスは期待できない。そのため,GeForce 8600 GTのデジタルイメージ拡張対応は△とした
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 シェーダユニットやパイプラインを使った映像補正機能は,DirectX 9世代のGPUなら,下位モデルでも実現されていたが,これは,DirectX 9世代だとピクセルシェーダユニットやパイプラインが,より複雑な構造を取ることができたため。換言すれば,ビデオ処理をシェーダユニットやパイプラインに割り当てるときも,ハードウェアリソースをあまり消費する必要がなかったのである。
 だが,DirectX 10世代のGPUであるGeForce 8シリーズでは,ストリーミングプロセッサ16基が1クラスタとして管理されている。「GeForce 8500 GS」などといった,ストリーミングプロセッサ数が16基となる下位モデルのGPUだと,管理上は一つのシェーダクラスタとして見なされるため,(デスクトップの表示にも3D処理を用いるWindows Vistaで)ビデオと3D処理の棲み分けが難しいというのが,下位モデルでデジタルイメージ拡張機能を利用できない大きな理由となる。ただBeaulleu氏は,「将来的には,下位機種でも同等の機能が使えるようになっていくだろう」と,画質面での進化が今後も続いていくという見通しを示していた。


 というわけで,かつては動作デコード用ソフトウェアが必須だったPureVideoは,時を経て,十分に使えるものとなってきた。3Dゲームをプレイしているときは何の意味もない機能だが,ふとムービーを見ようと思ったときにメリットがあるのは疑いないので,2008年2月時点のリファレンスとして,記憶に留めておいてもらえれば幸いだ。
 なおNVIDIAは,Hybrid SLI技術を,2008年第2四半期にはIntel製CPUに対応したデスクトップPC向けチップセットに,後半にはノートPC用GPUにも拡張する計画を持っている。今後しばらくは,GPUに関連して,消費電力やHDビデオ再生機能にスポットライトが当たるケースが増えるかもしれない。
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