イベント
[GDC 2009#03]プロとアマの差がなくなった北米インディゲーム開発事情・最前線
その成功は,ブロードバンドの浸透とともに,SteamやXbox Live Arcadeといったダウンロードサービスが台頭しただけでなく,ゲーマーもそれらのサービスを利用することに躊躇しなくなったことが主な要因であり,北米の独立系ゲーム(インディゲーム)も,「プロの開発者に向けた登竜門」ではなく,「自分の好きなゲームを開発して成功するためのオプションの一つ」という見方へと変化してきたように見える。
実際にはリリースされるインディゲームの数が多いだけに,成功するのは非常に難しいともいえるが,それでも日本とは比較にならないほど,アメリカにおけるゲーム開発の裾野の広さを感じずにはいられないのである。
GDC初日に開催されたインディゲーム開発者の会合セミナー,「Independent Game Summit」の活況を見れば,そんなパワーを感じずにはいられない。World of Gooを開発した2D Boyの二人組は,「2D Boy: Everything You Always Wanted to Know About Going Indie But Were Afraid to Ask」(2D Boy:インディゲーム開発者となることについて,知りたいけど怖くて聞けなかったことすべて)という基調講演を行った。
そこでは,生活費を含めた2年間の元手が9万6千ドル(約930万円)で開発されたWorld of Gooは,その前評判から最終的には7000万ドル(約6500万円)の前金と30%のロイヤリティというオファーを受けるほどになったが,それを蹴ってさらに大きな成功を収めたと発表されている。
また,「Indie Games: From Buzz to Business」(インディゲーム:前評判からビジネスまで)というパネルディスカッションでは,「Audiosurf」を開発したDylan Fitterer(ディラン・フィテラー)氏,「Synaethete」のZach Aikman(ザック・アイクマン)氏,そして「The Maw」のMichael Wilford(マイケル・ウィルフォード)氏が登場。いずれも,ダウンロード販売市場では非常に話題になっているゲームであり,それぞれに独立系のゲーム開発者としての利点や,マイナス点を挙げるなどして,集まった観衆の共感を得ていた。
これらの作品にいえることだが,インディ系のゲーム開発者は興味本位で自分の好きなゲームを作り始めたというケースがほとんどで,マーケティングやビジネスプランなどまったく持たないままにスタートを切っているどころか,プロの作業現場では当たり前ともいえる企画書(デザイン・ドキュメント)さえも用意しないままゲームを作り上げてしまうような人もいるのだという。
上のWorld of Gooと合わせて,これらの作品は「ローリスク・ハイリターン」という,ある意味ギャンブル的に成功を収めてしまったゲームであるといえ,そのあたりにインディゲームの虚弱性が垣間見られる。実際,三氏の話も「どうすれば群がってくるビジネスマン達とやり合うか」というような話題に広がっていったが,それでも彼らインディゲーム開発者の成功例や勢いを見るにつけ,「ひょとしたら,これもゲーム開発の一つの手法なのだろう」と納得できてしまうのだから不思議だ。
- この記事のURL: